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「慢性心不全の余命」はご存知ですか?慢性心不全になりやすい人の特徴も医師が解説!

 公開日:2025/03/25
「慢性心不全の余命」はご存知ですか?慢性心不全になりやすい人の特徴も医師が解説!

慢性心不全の余命はどれくらい?Medical DOC監修医が慢性心不全の余命・症状・原因・なりやすい人の特徴・検査法・治療法などを解説します。

大沼 善正

監修医師
大沼 善正(医師)

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昭和大学医学部卒業。昭和大学病院、関東労災病院を経て、現在はイムス富士見総合病院勤務。総合内科専門医、循環器専門医、不整脈専門医、医学博士。

「慢性心不全」とは?

心不全とは、「心臓のポンプとしての働きが悪くなり、それにより息切れ、むくみ、倦怠感などが生じる」という病気です。慢性心不全は、その状態が慢性的に続いていることを言います。
心臓の大きな働きは、血液を全身や肺に循環させることです。心臓が何らかの原因で働きが悪くなると、ポンプとしての機能が果たせなくなり、血液をうまく循環できなくなります。血液循環に異常があると、上記のような症状が生じ、日常生活に支障を来すようになり、心不全と診断されます。
ただし最近では、上記のような明らかな症状が出る前からすでに心不全は始まっていると考えられており、より早期の治療の重要性が指摘されています。

慢性心不全の余命

心不全で入院した場合、入院中に約8.2%の方が亡くなり、心不全を発症した場合には1年で7.3%の方が亡くなると報告されております。また退院しても2.4年で約35%の方が再入院するとされており、再入院率も高い病気と言えます。
心不全は進行性の病気であるため、原因にもよりますが、ほとんどの方で治療を継続する必要があります。予後は心不全の原因によって大きく異なるため、重篤な場合を除き余命を宣告されることはありませんが、増悪を繰り返すたびに心不全は進行するとされております。そのため急性心不全、慢性心不全の急性増悪をしないようにしていくことが重要となります。

慢性心不全の代表的な症状

息切れ

階段や坂道を上る、重い荷物をもって歩く、などの運動時に息が続かなくなったり、すぐに息が上がったりしてしまう症状です。
息切れを感じた場合は、それ以上ムリをせずに安静にしてください。休むことで改善するようであれば、日中の外来を受診するのがよいでしょう。ただし、休んでも改善しない、頻度が増加する場合には緊急の場合がありますので、救急外来など早期受診しましょう。

夜間の呼吸困難

夜間横になった後に呼吸が苦しくなり、すぐ目が覚めてしまう、なかなか眠れないなどの症状です。座った状態でしばらく休むと改善することがあります。再度横になっても苦しくなってしまう場合には、急性増悪の可能性があるため、夜間であっても救急外来を受診するようにしましょう。

手足のむくみ

多くは足のむくみとして生じます。むくみのために靴下、靴などがきつくなり、履けなくなることもあります。むくみの原因は多くあるため、腎機能、肝機能、甲状腺の異常などを含め、病院で総合的に診察してもらう必要があります。総合内科、循環器科を受診しましょう。
緊急性はありませんが、進行すると治療に時間を要するため、早めの病院受診をお勧めします。

食欲低下

食事を食べたくない、または食べてもすぐにお腹がいっぱいになってしまうなどの症状です。胃のあたりのムカつきとして感じることもあります。食欲低下のみであれば、消化器の病気(逆流性食道炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍)などがありますが、息切れ、むくみと一緒に食欲低下が起こることもあります。このような胃腸の症状は、慢性心不全で腸管がむくむことがあるためです。
まずは食欲低下だけであれば、消化器科にて胃カメラなどを行うことが必要です。もし息切れ、手足のむくみと同時期に生じているのであれば、循環器科も受診しましょう。

慢性心不全の主な原因

狭心症、心筋梗塞

冠動脈(心臓に栄養を供給している動脈)が、動脈硬化で狭くなることを狭心症、閉塞することを心筋梗塞と言います。心臓へ行く血液が少なくなるために、胸痛や胸部圧迫感などの症状が起こります。
胸痛や胸部圧迫感が持続している場合には心筋梗塞の可能性が高いため、症状が安静にしてもとれない場合には速やかに医療機関を受診しましょう。

高血圧症

高血圧症は、診察室での血圧が収縮期血圧 140mmHg以上、または拡張期血圧が90mmHg以上の時に診断されます。家庭血圧では基準値が収縮期血圧 135mmHg以上、または拡張期血圧が85mmHgと低くなります。
症状がないことがほとんどですが、頭重感、頭痛などを感じることがあります。
緊急性はないため、日中の外来を受診しましょう。

弁膜症

弁膜症には僧房弁閉鎖不全症、大動脈弁狭窄症などがあります。閉鎖不全症は、弁がうまく閉じられなくなることで、血液が逆流してしまう病気です。狭窄症は弁の動脈硬化などにより、弁の開く面積が小さくなり、弁を通過する血流が少なくなってしまう病気です。
症状としては息切れのほかに、大動脈弁狭窄症では胸痛、意識消失なども起こります。
弁膜症は健康診断で心雑音を指摘されたり、心不全の入院時に発見されたりします。緊急性はありませんが、進行するため定期的な通院が必要です。重度の場合には治療を行い、カテーテル手術、外科的手術を行います。循環器科や心臓血管外科を受診するようにしましょう。

心筋症

高血圧や狭心症、心筋梗塞などの明らかな原因がないにもかかわらず、心筋の機能障害を起こす病気です。心臓の筋肉が薄くなり収縮力が低下する拡張型心筋症や、心筋の一部または全体が肥大する肥大型心筋症などがあります。遺伝的な要素もありますが、誘因がなく起こることも多く認められます。自覚症状がないことも多く、健康診断で心電図異常を指摘されたり、心不全や不整脈を発症してから気づいたりすることもあります。
心電図異常があれば日中の循環器科を受診しましょう。

不整脈

不整脈は、脈が遅くなる洞不全症候群や房室ブロック、脈が速くなる心房細動などがあります。脈が遅くなる場合には、めまい、ふらつき、失神などの症状が出やすく、脈が速くなれば動悸などを自覚します。
いずれにしても循環器科での検査、治療が必要となります。

慢性心不全になりやすい人の特徴

年齢、男女差

年齢は70歳以上が多くを占めています。一生のうちで心不全を発症リスクは、男女ともに5人に1人と言われています。また一般的に女性は男性と比較すると心不全発症リスクは低いですが、70歳以上になってくると女性の心不全発症リスクが高まります。また日本では男性の心不全の原因として狭心症、心筋梗塞が多い一方、女性は弁膜症の割合が多いと報告されています。

狭心症、心筋梗塞、心房細動

心不全の原因としては、狭心症や心筋梗塞などの動脈硬化性疾患や、不整脈の一種である心房細動が多いとされています。狭心症や心筋梗塞は動脈硬化により発症するため、高血圧症、喫煙などの生活習慣を改善することが重要です。心房細動も高血圧、糖尿病などにより発症するリスクが高まるため、同様に生活習慣の改善が望ましいと言えます。また心房細動は健康診断で発見されることもあるため、定期的な健康診断を受診することも必要です。

高血圧、糖尿病、脂質異常症

心不全の方は、高血圧症、糖尿病、脂質異常症の合併症が多いと報告されています。塩分過多の食事、偏った食事(糖質、炭水化物の過剰摂取)、喫煙、運動不足などの生活習慣が心不全発症のリスクを高めます。生活習慣病を改善することで、心不全発症リスクを低下させることができると考えられます。

慢性心不全の検査法

胸部X線、心電図、採血

一般的な検査であるため、どの病院でも検査可能です。
胸部X線にて心拡大、肺うっ血(肺に血液がたまり、むくむこと)、胸水などを確認します。心電図では、不整脈の有無や以前と比較し変化しているかなどを確認します。採血ではBNPまたはNT-proBNPというバイオマーカ―をチェックします。BNP≧100 pg/mLまたはNT-proBNP≧400 pg/mLでは心不全の可能性が高くなります。

心エコー

心臓超音波とも言われ、超音波を使い心臓の機能を測定します。外来で行う検査であり、所要時間は30分~1時間程度です。心筋の状態、弁膜症の有無など、心臓の現在の状態を把握するために重要な検査です。非侵襲的であり、治療の経過も確認できるため、1回のみではなく定期的に実施します。

CT、MRI、核医学検査

心臓CTは、冠動脈の狭窄や閉塞、または心臓の解剖学的形態を評価することができます。冠動脈を評価することで狭心症、心筋梗塞を診断することができます。心臓MRIでは左心室、右心室の形態、駆出率(心臓から1心拍でどれだけ血液が拍出されるか)、心筋重量、心筋症などの評価が可能です。核医学検査では狭心症や心筋梗塞などの冠動脈疾患の検査が出来、そのなかでもガリウムシンチグラフィーは、心サルコイドーシス(心筋症の一種)の診断にも有用です。

慢性心不全の治療法

薬物療法

むくみを取るための利尿剤のほかに、降圧薬に分類される、レニン・アンジオテンシン系阻害薬、β遮断薬などがあります。降圧薬ですが、レニン・アンジオテンシン系(体液量、血圧を調整する体の調節機構)の過剰作用を抑制したり、交感神経を抑制したりすることで、心臓を保護する作用に働きます。また最近では脈拍を低下させるHCNチャネル遮断薬、降圧薬の一種であるアンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬、糖尿病薬としても使われるSGLT2阻害薬などがあります。
いずれも外来での治療が可能です。

心臓再同期療法

左心室と右心室の収縮に時間差があると、心臓の収縮力が低下することがあります。心臓同期療法では、左心室と右心室からタイミングを合わせてペーシング(電気刺激で筋肉を収縮させる)をすることで、左右心室の時間的なずれを修正します。それにより心収縮能を向上させることができます。
ペースメーカを植え込む方法とほとんど同様の手術であり、入院は1週間程度必要です。

経皮的冠動脈形成術(PCI)

狭心症、心筋梗塞が原因である心不全に対して実施します。狭くなった、または閉塞した冠動脈にステント(金属の網)を挿入することで、心筋に行く血流を改善します。
循環器科で行う治療であり、3~4日程度の入院を必要とします。

カテーテルアブレーション、ペースメーカ治療

カテーテルアブレーションは心房細動などの頻脈性不整脈に対して行われます。不整脈の原因となる、異常な電気信号の発生部位を焼灼する治療です。ペースメーカは洞不全症候群や房室ブロックなど徐脈性不整脈(脈が遅くなる病気)に対して行われます。
カテーテルアブレーションであれば3〜4日、ペースメーカであれば1週間程度の入院を必要とします。

外科手術

弁膜症、狭心症などに対して治療します。弁膜症では人工弁に取り換える弁置換術、弁の形を整える弁形成術、狭心症に対しては冠動脈バイパス術を行います。
いずれも心臓血管外科にて行われる治療です。入院期間は手術術式によって異なりますが、一般的に2週間前後を必要とします。

「慢性心不全の余命」についてよくある質問

ここまで慢性心不全の余命などを紹介しました。ここでは「慢性心不全の余命」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

慢性心不全の急性憎悪とはどういう状態ですか?

大沼 善正大沼 善正 医師

慢性心不全は外来で通院可能な安定した状態です。急性増悪では、心臓のポンプとしての働きが急激に悪化することで、呼吸不全、呼吸困難が短時間のうちに起こります。酸素療法、点滴治療のために入院での治療が必要となります。

慢性心不全が悪化するとどのような症状が現れますか?

大沼 善正大沼 善正 医師

息切れ、呼吸困難を自覚することが多く、また横になると寝苦しくなるため、座っていないと眠れないといった症状を起こすことがあります。そのような場合には、急激に悪化する可能性があるため、速やかに医療機関を受診したほうがよいでしょう。

編集部まとめ

慢性心不全の多くは高血圧、糖尿病、脂質異常症など、生活習慣病が原因で発症します。そのため、予防には健康診断を定期的に行うことや、食事、運動など生活習慣の改善が重要です。
また慢性心不全は急性増悪するごとに、心臓の状態が悪化してしまうため、いかに増悪、再発しないかが重要となってきます。症状が安定している場合でも治療を中断せず、医療機関の受診を続けるようにしましょう。

「慢性心不全」と関連する病気

「慢性心不全」と関連する病気は8個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

循環器科の病気

慢性心不全は、多くの場合、生活習慣病(高血圧、糖尿病、脂質異常症など)が原因で発症するため、生活習慣の改善が発病予防につながります。

「慢性心不全」と関連する症状

「慢性心不全」と関連している、似ている症状は4個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 動悸・息切れ
  • 呼吸困難
  • むくみ
  • 食欲低下

心不全は息切れ、呼吸困難を起こすことが多い病気ですが、胸部症状以外にむくみ、食欲低下も症状としてあらわれることもあります。内科などで原因が不明な場合は、循環器科を受診するようにしましょう。

この記事の監修医師

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