「ヒートショック」を発症すると「脳梗塞」などの「後遺症」が残るの?医師が解説!
公開日:2024/12/09


監修医師:
大沼 善正(医師)
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昭和大学医学部卒業。昭和大学病院、関東労災病院を経て、現在はイムス富士見総合病院勤務。総合内科専門医、循環器専門医、不整脈専門医、医学博士。
目次 -INDEX-
「ヒートショック」とは?
急激な温度変化により、体に悪影響を及ぼすことをいいます。暖かいところから急に寒い場所に行くと血管が収縮し、血圧が上昇することが原因で脳出血、脳梗塞、心筋梗塞などを引き起こすことがあります。冬場の浴室などで、ヒートショックによる事故が多発しており注意が必要です。ヒートショックの後遺症
脳梗塞、脳出血
脳の血管が詰まることを脳梗塞、血管が破れ出血することを脳出血といいます。突然のしゃべりにくさ、手足のしびれや麻痺、片方の目が見えない、歩行できない、意識障害などが起こります。早期発見、早期受診により完治する可能性が高くなるため、症状が出現した場合には、すみやかに医療機関を受診しましょう。歩行困難などがある場合は、救急車を要請することが必要です。くも膜下出血
脳の表面にある大きな血管にできた瘤(脳動脈瘤)が破れ、脳を包んでいる軟膜とクモ膜の間に出血がたまります。それにより、突然の頭痛、意識障害、吐き気、嘔吐をおこします。 発症してから治療までの期間が完治に重要であるため、今までにないような突然の激しい頭痛や、上記症状がある場合には、すみやかに医療機関を受診しましょう。自分で歩行せずに、救急車を要請することが望ましいでしょう。心筋梗塞
突然の胸痛として発症することが多い病気です。その他肩や腕の痛み、歯の痛み、気分不快や嘔吐という症状もあります。冠動脈という、心臓を栄養している血管が突然詰まることにより発症します。治療がすみやかに行われ、合併症がない場合には、社会復帰が可能です。症状が発生したときには、循環器科、救急外来を受診しましょう。大動脈解離
突然の胸痛、背部痛として発症します。大動脈という、体の中心を走っている大きな血管の壁の内側の膜(内膜)が破れて、壁の中間層からはがれることで、血流障害を起こす病気です。血管のはがれる場所により完治できる可能性が変わってきます。突然発症し、痛みが持続する、冷や汗が出る場合は、救急外来を受診しましょう。ヒートショックの代表的な症状
めまい、ふらつき
頭がふらふらして、倒れそうになったり、立ち上がれなくなったりすることをいいます。水分を取り、横になることで改善することが多いと思われます。会話や歩くことがいつも通り可能であり、手や足のしびれ、麻痺がないようでしたら、緊急性はありません。しかし、そのいずれかがある場合は脳梗塞などの可能性があります。すみやかに救急外来、脳神経科を受診しましょう。意識消失、失神
目の前が暗くなり、意識を失って倒れてしまうことをいいます。倒れそうになったら、しゃがむ、またはすぐに横になりましょう。意識消失、失神は血圧が下がる、または脈拍が遅くなることが原因で起こります。横になってすぐに意識が回復するようであれば、緊急性はありませんが、脱水症などが隠れている可能性もあるため、内科、循環器科を受診しましょう。また意識が回復しない場合は、救急外来を受診しましょう。胸痛
胸の真ん中あたりに締め付けられる、圧迫されるような痛みを感じます。胸がつかまれると感じることもあります。数秒程度の痛みですぐに改善する場合は問題ありませんが、横になっても5~10分以上持続し、冷や汗も出てくるような痛みであれば、すぐに救急外来や循環器科を受診しましょう。ヒートショックを発症しやすい状況・状態
浴室、脱衣所
寒暖差の多い場所で発症しやすくなります。とくに、飲酒後の入浴では、血管が拡張することにより血圧が下がりやすくなり、めまい、ふらつき、失神を起こします。また浴室と脱衣所の気温が違うと、ヒートショックを起こしやすくなります。温泉
露天風呂など、気温と温泉との温度差がある場合や、お湯の温度高い場合には、ヒートショックを起こしやすくなります。サウナ
サウナ後に冷水に入ると、急激に体が冷やされることで血管が収縮し、血圧が上昇します。それによりめまい、立ちくらみなどの症状を引き起こします。トイレ
トイレに暖房設備がなく、外の気温と同じぐらい低い場合には、寒さで血管が収縮し血圧が上がりやすいことに加え、排便時のいきみなどで血圧がさらに上昇しやすくなります。ヒートショックを発症した場合の対処法
浴室の栓を抜く
浴室内で気分が悪くなったり、立ち上がれなくなったりした場合は、溺水などの可能性があるため浴室の栓を抜きましょう。人を呼ぶ
ぐったりしている人を見たら、可能であれば浴室から救出しますが、ムリならばすぐに救急車を要請しましょう。浴室から救出できたのならば、意識状態を確認し、呼びかけに全く反応せず、意識がなければ心臓マッサージ(胸骨圧迫)を開始します。しゃがむ、横になる
めまい、ふらつきなどの症状が起きたら、それ以上歩こうとせず、その場ですぐにしゃがむ、または場所があれば横になってすぐに休みましょう。ヒートショックの予防法・対策
脱衣所を暖める
脱衣所にヒーターを置くなど、浴室と脱衣所の寒暖差をなるべく小さくなるようにしましょう。浴室を暖める
入浴する前に浴室内でシャワーを出し、浴室内を温めておく、浴槽をかき混ぜて湯気を立てることで浴室内を暖めましょう。水分補給をする
入浴前に水分をとる、入浴後もこまめに水分を取り、熱いお湯に入らない、長湯をしないなどを心がけましょう。食後、飲酒後すぐの入浴をさける
食後や飲酒後は、血圧が下がりやすくなっているため、入浴にて血管が拡張し、さらなる血圧低下を招くことがあります。食後すぐの入浴をさけ、アルコールが抜けてからの入浴が望ましいと思われます。「ヒートショックの後遺症」についてよくある質問
ここまでヒートショックの後遺症について紹介しました。ここでは「ヒートショックの後遺症」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
ヒートショックを発症すると脳にどんな影響が考えられますか?
大沼 善正 医師
寒い場所から暖かい場所に移動すると、血管が拡張します。とくに冬場の寒い脱衣所から急に暖かい浴室に入ると、血管が拡張し、血圧が低下します。そのため脳に行く血流が少なくなり、めまい、ふらつき、失神を起こすことが考えられます。また、外気温に近いような寒いトイレなどでいきむと、急に血圧が上昇し、脳出血などを起こす可能性があります。




