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「心房粗動で突然死」することはある?症状やなりやすい人の特徴も医師が解説!

 公開日:2024/10/08
「心房粗動で突然死」することはある?症状やなりやすい人の特徴も医師が解説!

心房粗動で突然死することはある?Medical DOC監修医が心房粗動の症状・原因・発症しやすい人の特徴・予防法や何科へ受診すべきかなどを解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。

小鷹 悠二

監修医師
小鷹 悠二(おだかクリニック)

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福島県立医科大学医学部卒業 / 専門は循環器内科 / 2009/4月~2013/3月 宮城厚生協会坂総合病院 / 2013/4月~2017/3月 東北大学病院循環器内科・同大学院 医員 / 2017/4月~2018/5月 仙台オープン病院 循環器内科医長 / 2018/5月~ おだかクリニック 副院長 / 診療所での外来業務に加え、産業医、学校医としての業務も行っている。 また、医師業務以外の副業も積極的に行っており、ビザスクなどを通して企業の医療アドバイザー業も副業として行っており、年間70社以上の会社にアドバイザーとして助言を行うなどしている。 ライティングも行っており、m3.comや、Ubie病気のQ&A(https://ubie.app/byoki_qa/doctors/yn8ueqd6kjn)などにて定期的に執筆活動を行っている。

「心房粗動」とは?

心臓は4つの部屋に分かれており、上の部屋が心房、下の部屋が心室と呼ばれ、それぞれ左右に1つずつあります。
そして、上下の部屋の間には弁と呼ばれるフタがあり、右心房と右心室の弁を三尖弁、左心房と左心室の間を僧帽弁と呼びます。
心臓は、心臓の筋肉を刺激する電気刺激が流れることで動いています。不整脈は、この電気刺激の異常で生じます。
心房粗動は、右心房側の三尖弁の周りに異常な電気の通り道ができることで生じます。
規則的な頻脈を生じ、動悸などの症状を出現させることもあり、中には血栓症や心不全を引き起こすこともある不整脈です。

心房粗動で突然死することはある?

(本文内容)
心房粗動は、それだけで直接死因となることは基本的にはありません。
しかし、心臓内に血栓(血の塊)を生じて、脳梗塞などの血栓塞栓症を生じるリスクがあります。心房粗動に伴う脳梗塞では、広範囲の脳の血流障害を生じることが多く、重症例では死亡するリスクがあります。
それ以外にも、脈が非常に速くなることで心臓の筋肉が弱ってしまい、機能が低下してしまう心不全と呼ばれる状態になることもあります。心不全状態となった際に、治療がおくれてしまうと命に係わる状態となることもあります。
それでも、いわゆる心臓発作のように突然その場で死亡するといった状態にはなりにくいため、次にあげるような症状が出現した際には早期に受診し、適切な治療をすることが必要です。

心房粗動の代表的な症状

心房粗動による症状としては、以下のようなものがあります。

動悸

脈が速くなる事で、胸がドキドキするような動悸症状を生じることが多いです。
しかし、どのような症状を動悸として感じるのかは個人差も大きいところです。そのため、「どのような動悸」なのかということが、不整脈の診断をする上では非常に大切になります。
一般的には、以下の3つのような症状を動悸と感じることが多いです。
①脈が速い
②脈のリズムの異常(ずれる、抜ける等)
③拍動を強く感じる
もし、動悸を自覚する際には、上記①~③のどのタイプか、を確認する事が重要です。
動悸が出現した際には、自分の手首で脈を確認してみましょう。
・1分間に何回の脈か
・脈のリズムは一定か、ずれたり、規則性がなくなっていないか
の2点を確認しましょう。
心房粗動では、脈拍が1分間当たり120-150回ほどの高度の頻脈が出現することが多いです。
脈のリズムは基本的には一定のことが多いですが、心房の異常な電気興奮が、心室に伝わる比率が変動することもあり、リズムがずれることがあります。

息切れ・呼吸困難・胸痛(心不全症状)

心房粗動となり脈が極端に速い状態が続くと、心臓が疲れてしまい、心臓の機能が低下する心不全状態となってしまいます。
心不全症状として、普段できるような動作で息切れが出現することがあります。さらに悪化すると安静にしていても息切れ・呼吸困難が出現するようになります。
それ以外にも、胸の苦しさやむくみ、体重の増加などが出現する事があるため、このようなそれまでなかった症状が出現してくるようであれば、早期に循環器科を受診しましょう。
特に胸が痛い、呼吸が苦しいなどの症状が強く、安静にしていられない位であれば救急外来の受診や救急要請も検討が必要です。

麻痺症状

心房粗動によって心臓内に血栓が形成され、その血栓が心臓から流れ出てしまい、脳の血管に詰まってしまうと脳梗塞を生じます。
脳梗塞では突然体の半身が動かせなくなる、しゃべりにくくなる・ろれつが回らないなどの麻痺症状が出現します。
心房粗動による脳梗塞では広範囲の脳に障害を生じるため、症状の程度が強い事が多く、中には命に関わる事もあります。
突然の麻痺症状が出現した際には、非常に緊急性が高くなるため速やかに救急要請を行う必要があります。

心房粗動を発症する原因

心房粗動は様々な原因で引き起こされることがあり、主なものとしては以下のようなものがあります。

高血圧

高血圧は心臓に高い圧力がかかり続けることで、心臓に負担をかけ、心房粗動を引き起こす原因となる事が知られています。
血圧が高いと診断された場合には放置せず、しっかりと治療を受けることが重要です。

糖尿病

糖尿病があると、心臓の組織の線維化や炎症、酸化ストレスの増加に伴い、心房粗動を起こしやすくするとされています。そのため、血糖が高い場合には早期からの対応が必要です。

心臓病

冠動脈疾患(狭心症や心筋梗塞など)、心不全、心臓弁膜症などの心臓病があると、心臓の細胞へのダメージによって組織が異常な電気興奮を生じやすくなり、心房粗動の発症リスクになります。

年齢、肥満、生活習慣

高齢化は心房粗動発症の大きなリスクになります。
また、肥満によるBMIの増加も心房粗動と関連がある事がわかっています。
それ以外にも、喫煙も心房粗動の発症に大きく関わっており、禁煙をすることが心房細動予防のためには大切になります。
飲酒過多もリスク因子であり、1日のアルコール摂取の増加とともに心房粗動の発症リスクが上昇するとされています。

心臓の手術後

弁膜症や心臓バイパス手術、カテーテルアブレーション治療などで心臓内に傷ができることで、異常な電気の通り道ができ、心房粗動の原因となることがあります。

心房粗動を発症しやすい人の特徴

心房粗動は、生活習慣病や心臓疾患が原因で生じる事が多いため、生活習慣病がある方、心臓の病気がある方は注意が必要です。心臓の手術をしていると、発生しやすくなることも知られています。
また、喫煙や過度の飲酒、高度の肥満や運動不足などによって生活習慣病を引き起こすことで心房粗動の原因になることもあります。

生活習慣病がある方

高血圧や脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病によって、動脈硬化の進行や心臓の負担が増えることで、心房粗動を発症しやすくなります。
特に治療期間が長い、未治療の状態などは高リスクとなるため、しっかりと通院・治療をすることが必要です。

心臓の病気がある

心房粗動の原因として、心筋梗塞や不整脈、弁膜症、心筋症など様々な心臓の病気があります。
これまでなかった動悸、息切れなどの症状が出現する場合には心房粗動を発症している危険もあるため、早期に病院を受診することが重要です。
元々心臓病を指摘されている、あるいは心臓病の病歴がある人は、通院・治療をしっかり継続し、定期的に検査を受けて心臓の状態を評価することが大切です。

心臓の手術歴がある

心臓の弁膜症に対する手術(弁置換術、弁形成術など)や、冠動脈バイパス手術などの心臓の手術に伴う治療の痕に異常な電気刺激の通り道ができてしまうことで、心房粗動を引き起こすことがあります。
手術歴がある方で、突然の動悸や頻脈が出現する場合には、早期の受診が必要です。

生活習慣が乱れている方

心房粗動などの不整脈は、不適切な生活習慣によって引き起こされることがあります。
塩分やカロリーの取りすぎ、喫煙、過度の飲酒、肥満、運動不足、不規則な生活リズム、過度のストレスなどは心房粗動だけでなく、様々な心疾患の原因となるため、注意が必要です。

心房粗動を予防する方法

生活習慣病に気をつける

心房粗動を含め、多くの心疾患は動脈硬化が原因となるため、最も基本的な点は生活習慣に気をつける事です。気をつけるポイントとしては、以下のような点があります。
・塩分をとり過ぎない:1日の塩分量は6g以下を意識する
・カロリーをとり過ぎない:通常成人では、年齢や活動量に応じて1800-2600kcal程度のカロリー摂取が推奨されます。さらに、野菜や果物の積極的な摂取、脂分が多い食品をとり過ぎないことが推奨されます。
・太り過ぎない:BMI(体重[kg]÷身長[m]2)25未満を心がける
・運動習慣:軽く汗ばむ位の有酸素運動を1日60分(歩行なら1日8000歩以上)行う
・節酒:エタノールとして1日、男性20-30ml(日本酒1合、ビール中瓶2本、焼酎0.5合、ワイン2杯、ウイスキーダブル1杯に相当)、女性は約半分の10-20ml以下の制限が推奨されます。
・禁煙:喫煙は高血圧、心臓・脳血管疾患、肺疾患、悪性腫瘍等、様々な疾患リスクとなる事が証明されています。

健康診断、定期的な検査を受ける

心房粗動の原因となる高血圧等の生活習慣病や、心臓の異常は、定期的に健康診断を受けて、身体診察、心電図やレントゲン、採血検査等を受けることで早期の診断、早期治療に繋げることが可能です。
より早い段階で診断・治療を行う事で、危険な状態になるまで病気を放置する事がなくなり、心房粗動の予防になります。

治療している病気をしっかりコントロールする

心房粗動の原因となるような病気は生活習慣病や慢性的な心臓病が多く、適切な治療を受けることで病気の進行や心臓に過度の負荷がかかる事を防止する事ができます。
高血圧や脂質異常、糖尿病などの生活習慣病や慢性的な心臓病は、治療が不十分であったり、治療を中断してしまうと動脈硬化を進行させ、心臓の負担を増やし、心房粗動などの心疾患の原因となります。内服をしっかり継続する事、医師による定期的な病状評価をうけること(診察や検査)、治療が不十分であれば治療強化を検討する事が非常に重要です。

「心房粗動で突然死」についてよくある質問

ここまで心房粗動で突然死などを紹介しました。ここでは「心房粗動で突然死」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

心房粗動が悪化するとどんな症状が現れますか?

小鷹 悠二小鷹 悠二 医師

心房粗動では脈が1分間に120-150回程度と非常に速くなるため、放置して悪化してしまうと心臓の機能が低下する心不全状態となってしまいます。心不全となると、心臓から血液をうまく送り出せなくなり、臓器の障害や息切れや呼吸苦、胸痛などの症状を引き起こすことがあり、心臓がさらに弱ってしまうと命を落とすこともあります。

編集部まとめ

「心房粗動」という不整脈は普段あまり耳にすることは少ないと思いますが、ほかの心疾患や不整脈と合併して出現することもあり、注意が必要な不整脈の一つです。
適切に治療を受けないと命に関わる状態となってしまうこともあるため、正しい知識を身につけていただき、日頃の生活習慣などに気を付けて頂き、少しでも皆さんや皆さんの大切な方が心疾患で大変な目に合う危険を減らすことができればと思います。

「心房粗動」と関連する病気

「心房粗動」と関連する病気は4個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

循環器科の病気

  • 虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)
  • 心筋症
  • 心臓弁膜症

いわゆる心臓発作のように急死するような状態にはなりにくい病気ではありますが、これらのような病気を発症させる可能性もあるため早めから適切な治療をすることが必要です。

「心房粗動」と関連する症状

「心房粗動」と関連している、似ている症状は5個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 息切れ、呼吸困難
  • 胸痛、胸苦しさ
  • むくみ
  • 麻痺

これらのような症状が改善しない場合には早めに医療機関を受診するようにしてください。

この記事の監修医師