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フレイル予防に運動が有効? 始めるべき年齢や運動の種類・頻度は? 【理学療法士監修】

 公開日:2023/10/30
フレイル予防に有効な運動療法(エクササイズ)の種類は? 【理学療法士監修】

老化により生じる心身の虚弱状態「フレイル」の予防に運動療法は欠かせません。また、高齢期に入る前の段階で運動を取り入れることは、フレイル予防だけでなく慢性疾患の予防にも繋がります。そこで今回は、効率的にフレイル予防をするための運動の種類や頻度の目安について、鹿児島大学教授で理学療法士の牧迫先生に詳しく解説していただきました。

牧迫 飛雄馬

監修理学療法士
牧迫 飛雄馬(理学療法士)

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2001年国際医療福祉大学理学療法学科卒業、2009年早稲田大学スポーツ科学学術院博士後期課程修了。国際医療福祉大学病院、リハビリ推進センター株式会社、札幌医科大学特任助教、日本学術振興会特別研究員(PD)、ブリティッシュコロンビア大学(Research Fellow)、国立長寿医療研究センター予防老年学研究部健康増進室長を経て、2017年より現職。日本老年療法学会副理事長、日本転倒予防学会理事など。

運動とフレイルの関係とは

運動とフレイルの関係とは

編集部編集部

運動(エクササイズ)を取り入れることは、フレイル予防・改善に有効ですか?

牧迫 飛雄馬先生牧迫先生

はい、フレイルの予防や改善の対策として、運動(エクササイズ)はとても有効です。まず、肥満や血中脂質、血圧、血糖値の上昇はフレイルを悪化させる要因にもなりますが、ウォーキングなどの有酸素運動を行うことで、これらの改善効果が期待できます。また、筋力トレーニングは、筋力の向上・筋肉の増量が期待できます。ですので、フレイル予防や改善に、有酸素運動・筋力トレーニングはとても効果的です。

編集部編集部

フレイル予防のための運動はどのくらいの年代の人が取り入れるべきですか?

牧迫 飛雄馬先生牧迫先生

フレイルは高齢期に問題となることが多いですが、フレイルの予防のためには中年期からの運動習慣が欠かせません。40~50代での習慣的な運動は、虚血性心疾患、高血圧、糖尿病、肥満、骨粗鬆症、結腸がんなど、多くの疾患の罹患リスクを低下させることにつながります。高齢期に生じるフレイルの背景にはさまざまな疾患のリスクも存在します。そのため、40~50代での習慣的な運動は、筋力や筋肉量の維持のみならず、種々の疾患の罹患率を低下させ、将来的なフレイルのリスクを低減させることにつながります。

編集部編集部

フレイル予防におすすめな運動にはどのような種類がありますか?

牧迫 飛雄馬先生牧迫先生

フレイル予防のための運動としては、レジスタンス運動(筋力トレーニング)、ウォーキング、ジョギング、サイクリング、水中運動(アクアエクササイズ)などが有効です。そのほか、バランストレーニングやストレッチなどの運動にも取り組んでみましょう。

具体的な運動(エクササイズ)の方法

具体的なエクササイズの方法

編集部編集部

レジスタンス運動の方法やポイントについて教えてください。

牧迫 飛雄馬先生牧迫先生

レジスタンス運動とは筋肉に抵抗をかけて動作を繰り返し行う運動のことで、いわゆる筋力トレーニングです。スクワットや腕立て伏せ、ダンベルを使ったトレーニングなどが含まれます。レジスタンス運動を実施する際は、ややきついと感じるくらい抵抗のある運動を10回で1セットとし、これを1日2~3セット行いましょう。呼吸をとめて行うと血圧の上昇の原因にもなりますので、ゆっくり呼吸をしながら行います。目安としてこれを週に2~3回程度で実施し、痛みや関節などに不快感がある場合は専門家に相談して無理をせずに行いましょう。

編集部編集部

ウォーキングの方法やポイントについて教えてください。

牧迫 飛雄馬先生牧迫先生

ウォーキングを行う際は、かかとから地面に着地して親指で地面を蹴るように足を踏み出すようにしましょう。最初は10分程度から始めて、20~30分以上を継続して実施・習慣化してみてください。ウォーキングなどの有酸素運動もフレイルの予防のために有効となりますが、有酸素運動だけでは筋力や筋量の向上への効果をあまり期待できません。歩幅をやや大きくする、ウォーキングコースに坂道(上り坂)を含めるなど、足にしっかりと負荷のかける工夫も必要です。

編集部編集部

バランストレーニングの方法やポイントについて教えてください。

牧迫 飛雄馬先生牧迫先生

フレイルのリスクがある高齢者では、筋力やバランスの低下による転倒のリスクが高くなります。そのため、バランス感覚を鍛えることも大切です。バランストレーニングは、転倒に気をつけて無理せずに安全な環境で行いましょう。足底が地面に接地する面積が小さくなるほど、バランスを保持するのが難しくなります。例えば、一直線上に足を揃えて立つ(タンデム立位)、つま先立ち、片足立ちなどの姿勢を10秒間保持するような運動がおすすめです。

エクササイズ実施時の注意点

エクササイズ実施時の注意点

編集部編集部

予防のために運動を始めようと考えた際に注意すべき点はありますか?

牧迫 飛雄馬先生牧迫先生

まずは無理のない範囲で運動を始めましょう。また、運動の身体的効果はすぐには表れませんが、爽快感や充実感など運動を始めるとすぐに感じられる効果もあります。それらを感じつつ、楽しみながら運動を始めることが重要です。運動の原理のひとつに、可逆性というものがあります。これは、運動すると効果は徐々に表れますが、やめてしまうと元に戻ってしまうことを指します。つまり、継続することが大切です。無理なく、続けられる運動から始めましょう。

編集部編集部

運動の時間をなかなか確保できない場合にはどうしたら良いですか?

牧迫 飛雄馬先生牧迫先生

運動のために時間を割くことが難しい人は多くいらっしゃいます。まず、身体活動は「運動」と「生活活動」に分けられます。生活活動とは、日常生活における労働、家事、通勤・通学などを指し、買い物・洗濯物を干すなどの家事や犬の散歩・子どもと屋外で遊ぶなどの生活上の活動、通勤・階段昇降・荷物運搬などの仕事上の活動が該当します。運動のために時間を確保することが難しい場合は、生活活動を通して身体活動を高めることがおすすめです。また、短い時間でも良いので、生活の中の隙間時間で実施できる運動を少しずつ継続する心がけをしましょう。

編集部編集部

その他、運動をするにあたって意識すべき点やアドバイスはありますか?

牧迫 飛雄馬先生牧迫先生

運動は継続することが重要なので、目標を持つこともおすすめです。例えば、1日の目標とする歩数や運動する目標時間を決め、体重や何かの検査の値を改善させることを目標にすることもよいでしょう。また、ひとりではなかなか続けることが難しい場合は、一緒に運動する仲間を作ったり、ジムや運動教室などに通ったりするなどがおすすめです。運動を継続しやすい環境を作ることが大切ですね。

編集部まとめ

今回は、理学療法士の牧迫先生にフレイルを効率的に予防するためにおすすめな運動の種類や頻度について教えていただきました。運動の種類としては、レジスタンス運動や有酸素運動、バランス運動などがあります。これらを、一度取り組むだけではなく継続して取り組むことが重要だと分かりました。また運動のみならず、生活活動を通してもフレイルの予防は可能なようです。皆様も、今回の記事を参考にご自身にあった運動習慣を身につけてみましょう。

この記事の監修理学療法士