1. Medical DOCTOP
  2. 医科TOP
  3. コラム(医科)
  4. 高齢者の「フレイル」とは何? 予防策を介護福祉士に聞く

高齢者の「フレイル」とは何? 予防策を介護福祉士に聞く

公開日:2021/12/18  更新日:2021/12/17

予防医療や介護予防など、「予防」が国の政策でも重要視されるようになってきた昨今において、高齢者のフレイルが注目を集めています。フレイル」が高齢化社会とどのような関連性があるのか、「介護福祉士」の西原さんに話を伺いました。

西原 裕貴さん

監修
西原 裕貴(介護福祉士)

プロフィールをもっと見る

西九州大学健康福祉学部社会福祉学科介護福祉専攻卒業。介護福祉士。社会福祉法人にて老人福祉施設や通所介護、障がい者就労継続支援A型などにおいて介護職や支援員に従事。5年で管理職昇格後は新規事業立ち上げや事業企画・採用・広報など現場と兼務しながらマネジメント領域に従事。退職後はフリーランスとして営業職などを経験し、現在は株式会社いきいきらいふの社長室マネージャーとして、採用責任者や事業・研究開発などを推進。

高齢者の「虚弱」というネガティブイメージから脱却する「フレイル」という概念

高齢者の「虚弱」というネガティブイメージから脱却する「フレイル」という概念

編集部編集部

はじめに、フレイルという言葉の意味について教えてください。

西原 裕貴さん西原さん

フレイルという言葉は、もともと「Frailty」という単語が由来で、加齢とともに筋力や認知機能などの心身の活力が低下し、生活機能における障害や要介護状態、そして死亡などの危険性が高くなった状態のことを指しています。自立から要介護状態になる前の「中間的段階」における概念として、2014年5月に日本老年医学会によって提言されました。

編集部編集部

それまではどのような言葉が使われていたのでしょうか?

西原 裕貴さん西原さん

それまでの日本では特に後期高齢者に対し、老化による「虚弱」という言葉が使われていたのですが、「老衰」、「衰弱」、「脆弱」といった日本語訳が使われることもあり、「加齢に伴って不可逆的に老い衰えた状態」といったネガティブな印象を与えてきました。しかし、フレイルには、「しかるべき介入により再び健常な状態に戻る」という可逆性が包含されており、これからの日本において重要な観点であると表現されています。つまり、「フレイルの状態に意識をおいて身体的・精神的機能維持や向上などの早期のアプローチを図ることで、健常状態に戻すことができる」という考え方になります。

編集部編集部

状態の表現であり、段階の一つであるということですね。

西原 裕貴さん西原さん

そうなります。これから国の政策はもとより、様々な医療・介護領域において活用される概念の一つとなります。

「フレイル」はこれからの健康増進に向けて重要な視点

「フレイル」はこれからの健康増進に向けて重要な視点

編集部編集部

このフレイルの状態を具体的に教えて頂けますか?

西原 裕貴さん西原さん

例えば、加齢によって引き起こされる状態に低栄養、転倒、尿失禁、軽度認知障害(MCI)などの身体的・精神的なものがあります。その前兆として食欲の低下、活動量の低下(社会交流の減少)、筋力低下、認知機能低下などの変化が見られるのですが、この前兆段階のことを指してフレイルとしています。

編集部編集部

ではこのフレイルに対してはどのようなアプローチが必要になりますか?

西原 裕貴さん西原さん

介護予防においては、「フレイルの基本チェックリスト」で評価を行い、その結果によって適切な予防事業やサービスに繋げていきます。例えば、このチェックリストによって、対象者の「食欲低下」が発見された場合、低栄養などによりフレイルの進行を加速させてしまう危険性が考えられます。その対策として運動の機会を増やしたり、地域の集会やイベントなど社会とのつながりを増やしたりすることにより食欲増進に繋げ、フレイルからの改善を図ります。

編集部編集部

確かに、そのような形であれば客観的に介護予防、フレイル予防をすることができそうですね。

西原 裕貴さん西原さん

はい、フレイルが介護予防において非常に重要な概念だとわかっていただけたかと思います。

高齢化社会における「フレイル」への政策

高齢化社会における「フレイル」への政策

編集部編集部

それだけ医療・介護領域で注目されているということは、国の政策にもこの「フレイル」は反映されているのでしょうか?

西原 裕貴さん西原さん

はい。日本は高齢化が進行していく中で、多くの問題を抱えています。その一つとして社会保障費のひっ迫です。2018年5月に政府が公表した「2040年を見据えた社会保障の将来見通し」によれば、2018年度の121.3兆円から、2025年度に140.6兆円、2040年度に188.2兆円(2018年度対比で約1.5倍)になると推計されています。このうち医療費や介護給付費は、合わせて4割以上の割合を占めています。この割合を少しでも抑止しようとする介護予防、フレイル予防の取組みは財政ひっ迫の改善も期待されています。

編集部編集部

フレイル予防に対する施策が打ち出されることで国の財政状況にも影響するのでしょうか?

西原 裕貴さん西原さん

すでに国は政策を打ち出しており、平成27年に高齢期の疾病予防・介護予防等の推進の中で、高齢者のフレイルに対する総合対策を進めると説明しています。これにより健康長寿モデルの実現と、医療費・介護費の伸びの抑制を目指すことで、日本の社会課題である社会保障費のひっ迫に対応しようという動きは出てきています。

編集部編集部

この「フレイル」に着目した政策や事業が、今後の日本では注目されていくのでしょうか?

西原 裕貴さん西原さん

最近ですとコロナ禍の影響も相まって、健康に対する国民一人ひとりの意識が高まっているように感じます。この機会に、フレイルやその他の予防に関する意識が多くの国民に根付くことを期待したいです。

編集部まとめ

フレイルという新しい考え方は、要介護状態になる前段階での予防に非常に有用だと感じると同時に、フレイル予防が広まることで状態の変化の早期発見、的確なアプローチにも繋がり、結果的に日本の財政にも良い影響を及ぼす可能性があるとも感じました。