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「糖尿病患者」はフレイルに要注意! その理由と対策を理学療法士が解説

 公開日:2023/11/27
「糖尿病患者」はフレイルに要注意! その理由と対策を理学療法士が解説

糖尿病は虚弱状態である「フレイル」と関係しており、糖尿病を発症するとフレイルになるリスクが上昇するようです。生活習慣病とフレイルの予防では重なる部分が多く「食事」と「運動」がキーワードと専門家は言います。予防のための食事・運動のコツについて鹿児島大学教授で理学療法士の牧迫飛雄馬先生に詳しく解説していただきました。

牧迫 飛雄馬

監修理学療法士
牧迫 飛雄馬(理学療法士)

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2001年国際医療福祉大学理学療法学科卒業、2009年早稲田大学スポーツ科学学術院博士後期課程修了。国際医療福祉大学病院、リハビリ推進センター株式会社、札幌医科大学特任助教、日本学術振興会特別研究員(PD)、ブリティッシュコロンビア大学(Research Fellow)、国立長寿医療研究センター予防老年学研究部健康増進室長を経て、2017年より現職。日本老年療法学会副理事長、日本転倒予防学会理事など。

糖尿病とフレイルの関係

糖尿病とフレイルの関係

編集部編集部

糖尿病とフレイルの関係について教えてください。

牧迫 飛雄馬さん牧迫さん

糖尿病とフレイルは相互に関係します。つまり、糖尿病を有する高齢者ではフレイルになりやすく、フレイルの高齢者では糖尿病の発症リスクが高まります。血糖値とフレイルの発症リスクはU字型の関連性があるとされています。高血糖だけでなく、低血糖の状態も身体機能の低下や転倒の危険を高めることとなり、フレイルのリスクを増大させることにつながります。

編集部編集部

糖尿病患者はサルコペニアにも関係しているのでしょうか?

牧迫 飛雄馬さん牧迫さん

そうですね。糖尿病の患者さんはサルコペニアになりやすいと言われています。糖尿病の患者さんがサルコペニアに陥る要因のひとつには、糖の代謝を調節して血糖値を一定に保つ働きを持つインスリンが関係します。糖尿病の患者さんは、血糖を下げるインスリンの作用が不足し、筋肉量・筋力が低下しやすいことが知られています。筋肉量が減少して筋力が低下すると、さらに活動量が減少してしまい、インスリン抵抗性が進みやすくなり、糖尿病が悪化する危険も高くなるという悪循環に陥ります。

編集部編集部

その他、生活習慣病もフレイルと関係するのでしょうか?

牧迫 飛雄馬さん牧迫さん

多くの生活習慣病がフレイルと関係します。例えば、高血圧はフレイルや脳梗塞のリスクとなる脳内の白質病変と関連する可能性が示唆されており、高血圧による臓器障害の進展にフレイルが影響する可能性があります。その他、慢性腎臓病を有する高齢者では多くがフレイルに陥っていることが懸念されます。腎臓病が進行している場合、タンパク質の量を抑えた食事が必要となり、筋肉が減りやすい状態であることなどが原因のひとつに考えられます。

糖尿病予防はフレイル予防を兼ねるのか?

糖尿病予防はフレイル予防を兼ねるのか?

編集部編集部

糖尿病を予防することでフレイルも予防できるのですか?

牧迫 飛雄馬さん牧迫さん

糖尿病を予防することでフレイルを予防することができるかの根拠のある成果は十分に示されていません。しかし、糖尿病の患者さんではフレイルのリスクが高くなりますので、糖尿病を予防することでフレイルになる危険を下げることが期待されます。また、活動量の低下や不適切な食生活など糖尿病とフレイルでは共通した危険因子も多くありますので、これらの危険因子に対処することは糖尿病を予防すると同時にフレイルの予防にもつながります。

編集部編集部

糖尿病予防はフレイル予防に具体的にどのような影響を与えますか?

牧迫 飛雄馬さん牧迫さん

糖尿病とフレイルでは共通した危険因子が多くあります。運動不足や食事の偏り、睡眠不足などが挙げられます。特に、身体活動を促進して、筋肉量や筋力を維持することは、糖尿病とフレイルの両方の予防にとって重要です。習慣的な運動や栄養バランスの良い食事、ストレスをためないといった糖尿病を予防するための生活習慣はフレイルを予防することにもつながります。

編集部編集部

糖尿病予防の具体的な方法について簡単に教えてください。

牧迫 飛雄馬さん牧迫さん

糖尿病の予防のためには、「食事」と「運動」が重要となります。食事では、適切なエネルギー量と栄養バランスの良い食事を心がけることが第一です。また、野菜を先に、ゆっくりよく噛んで、腹八分目に抑えることも良いとされます。運動は、ウォーキングなどの有酸素運動がお勧めですが、運動する時間をとることが難しい場合は、できるだけ階段を利用したり、近所の散歩からはじめたり、普段の生活で活動時間を増やす工夫もよいでしょう。また、ぬるめのお風呂にゆっくりつかったり、しっかりと睡眠をとったりして、ストレスを溜めないようにすることも重要です。

予防行動の注意点とは?

予防行動の注意点とは?

編集部編集部

すでに糖尿病の人はどのようにフレイルを予防すると良いでしょうか?

牧迫 飛雄馬さん牧迫さん

糖尿病を有する人では、適切な服薬や生活習慣に気を配り、まずはしっかりと血糖の管理をすることが重要です。血糖値の急激な変化や高い血糖状態は、筋肉量の減少や筋力の低下をまねき、フレイルのリスクを高めることになります。そのため、適度な運動と栄養バランスの良い食事がフレイル予防のための基本となります。

編集部編集部

日常生活で意識すべき点にはどのようなことがありますか?

牧迫 飛雄馬さん牧迫さん

日常生活で意識すべき点として、習慣化するために心がけをするとともに、ストレスになり過ぎない程度の心もちで取り組むことが挙げられます。予防のための対策は継続することが重要ですが、なかなか続けることは難しいと思います。楽しみに取り入れたり、ときには自分へのご褒美を設定したり、心にゆとりも持ちながら取り組むことがお勧めです。

編集部編集部

運動や日常生活の改善の際に注意すべき点はありますか?

牧迫 飛雄馬さん牧迫さん

予防の効果はなかなか目に見えて現れにくいものです。また、短期間で効果を感じることは少ないかもしれません。予防のための対策は「継続すること」が大切となります。運動習慣や食生活を継続するための工夫を取り入れてみましょう。例えば、歩数計を使って日々の目標を決めて歩いたり、食事カレンダーで摂取した食品群にチェックしたりして、健康的な行動を強化することもお勧めです。また、体重や血圧を定期的に計測して記録することも日常生活を整えるうえで重要な役割を担います。

編集部まとめ

糖尿病が怖い病気であることは多くの人が知っていると思います。今回は、糖尿病がフレイルに与える影響やそれぞれの予防行動について学ぶことができました。ほかの生活習慣病もフレイルと互いに関係しており、日常生活にも目を向け、健康的な生活を継続することが重要であるとのことでした。読者の皆様も本稿をきっかけに、生活習慣病予防に取り組んでみてはいかがでしょうか。

この記事の監修理学療法士