「心房細動の自覚症状」はご存知ですか?原因についても医師が徹底解説!
心房細動の自覚症状とは?Medical DOC監修医が心房細動の自覚症状・原因・治療法や何科へ受診すべきかなどを解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。
監修医師:
小鷹 悠二(おだかクリニック)
目次 -INDEX-
「心房細動」とは?
心臓は4つの部屋に分かれており、上の部屋が心房、下の部屋が心室と呼ばれ、それぞれ左右に1つずつあります。
心房細動は、心房内に異常な電気刺激が発生してしまうことで生じ、本来であれば、規則的に血液を送り出すように縮んだり広がる動きをする心房が、小刻みに震えるような不規則な動きをするようになってしまいます。
それに伴い心室も不規則な動きをするようになり、脈のリズムがでたらめになってしまいます。脈が速くなることも多く、動悸や息切れなどの症状を生じることもあります。
また、心房が痙攣したような状態になることで血液の流れが滞ってしまい、心臓の中に血栓ができ、脳梗塞などの重大な病気の原因となることもあります。
心房細動を疑う自覚症状
心房細動を生じると、脈が速くなりやすく、リズムの異常も生じるため動悸等の胸の症状が出現しやすくなります。主な症状としては以下のようなものがあります。
動悸
脈のリズムが不規則になってしまうことや、脈が速くなることで動悸症状を生じることが多いです。
動悸を自覚する際には、自分の手首で脈を確認し、脈のリズムが乱れていないかを確認しましょう。脈のリズムがバラバラになっているようであれば、心房細動を起こしている可能性があるため、速やかに病院の受診が必要となります。
息切れ・呼吸困難
心房細動となり脈が乱れた状態や早い状態が続くと、心臓の機能が低下する心不全状態となってしまいます。
心不全症状として、普段できるような動作で息切れが出現することがあります。さらに悪化すると安静にしていても息切れ・呼吸困難が出現するようになります。
それ以外にも、胸の苦しさやむくみ、体重の増加などが出現することがあるため、このようなそれまでなかった症状が出現してくるようであれば、早期に循環器科を受診しましょう。特に呼吸が苦しく、安静にしていられないくらいであれば、救急外来の受診や救急要請も検討が必要です。
麻痺症状
心房細動によって心臓内に血栓が形成され、その血栓が心臓から流れ出てしまい、脳の血管に詰まってしまうと脳梗塞を生じます。
脳梗塞では突然体の半身が動かせなくなる、しゃべりにくくなる・ろれつが回らないなどの麻痺症状が出現します。
心房細動による脳梗塞では広範囲の脳に障害を生じるため症状の程度が強いことが多く、中には命に関わることもあります。
突然の麻痺症状が出現した際には、非常に緊急性が高くなるため速やかに救急要請を行う必要があります。
心房細動の主な原因
心房細動はさまざまな生活習慣や病気が原因となることが知られています。
どのようなリスク因子があるか、詳しく解説していきます。
高血圧
高血圧は心臓に高い圧力がかかり続けることで、心臓に負担をかけ、心房細動を引き起こす原因となることが知られています。高血圧があると、高血圧がない場合と比較して約1.4~2倍程度、心房細動を発症しやすくするという報告もあります。
血圧が高いと診断された場合には放置せず、しっかりと治療を受けることが重要です。
糖尿病
糖尿病があると、心臓の組織の線維化や炎症、酸化ストレスの増加に伴い、心房細動を起こしやすくするとされています。空腹時の血糖が18㎎/dl増加するごとに心房細動発症リスクが約33%増加するとした報告もあります。そのため、血糖が高い場合には早期からの対応が必要です。
心臓病
冠動脈疾患(狭心症や心筋梗塞など)、心不全、心臓弁膜症などの心臓病があると、心臓の細胞へのダメージによって組織が異常な電気興奮を生じやすくなり、心房細動の発症リスクになります。
年齢、肥満、生活習慣
高齢化は心房細動発症の大きなリスクになります。
また、肥満によるBMIの増加も心房細動と関連があることがわかっています。
それ以外にも、喫煙も心房細動の発症に大きく関わっており、禁煙をすることが心房細動予防のためには大切になります。
飲酒過多もリスク因子であり、1日のアルコール摂取が10g増加するごとに、心房細動の発症リスクが5%上昇するとされています。
すぐに病院へ行くべき「心房細動の自覚症状」
ここまでは心房細動の自覚症状を紹介してきました。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。
突然発症する動悸、頻脈がある場合は、循環器科へ
それまでなかったような突然の動悸、頻脈が出現してきた際には、できるだけ早期に循環器科を受診(夜間や休日ならば救急外来など)が必要です。
呼吸困難で動くのも大変な場合や、手足が動かしにくい・話しにくいなどの麻痺症状を伴う場合は緊急性が高くなるため、救急要請も検討が必要です。
受診・予防の目安となる「心房細動」のセルフチェック法
・脈のリズムが乱れている場合
心房細動の治療法
心房細動の治療は薬物療法やカテーテル治療があります。
それぞれの治療方法について、詳しく説明していきます。
薬物治療
薬物治療としては大きく分けて以下のようなものがあります。
・血栓をできにくくする治療:
心房細動で最も怖いのが、血栓による脳梗塞です。そのため、年齢や合併症(高血圧、心不全、脳梗塞の病歴、糖尿病など)に応じて、血栓リスクが高いと判断した場合には血栓をできにくくする抗凝固療法が必要となります。一昔前はワーファリンという薬がメインでしたが、近年では直接阻害型経口抗凝固薬(DOAC)という薬剤が主に使用されるようになっています。
・脈の速さのコントロール:
心房細動では頻脈となることが多いため、脈が速くなりすぎないようにする治療を行うことがあります。β遮断薬やジゴキシン製剤、カルシウム拮抗薬などの薬が主に使用されます。
・不整脈を止める治療
心房細動そのものを止めて、脈のリズムを正常に戻す、抗不整脈薬を使用することがあります。
カテーテルアブレーション治療
心房細動は、左心房に流入する肺静脈から異常な電気刺激が発生することが多いため、その異常な電気の通り道を焼却する、カテーテルアブレーション治療を行うことがあります。
最近では冷凍バルーンを使用する方法やレーザーを使用する方法などさまざまな手法が開発されており、病状に応じて適切な方法が選択されます。
ただし、発症後長い時間が経過している場合、心房が大きく拡大している場合、背中の変形などであおむけの姿勢が保てない場合などでは、アブレーション治療の適応とならないこともあります。
電気的除細動
心房細動によって心臓に大きな負荷がかかり、重症な心不全状態となっている場合、呼吸や血液の循環に支障が出ている場合には電気ショックで脈を元に戻す治療を行うこともあります。
「心房細動の自覚症状」についてよくある質問
ここまで心房細動の自覚症状などを紹介しました。ここでは「心房細動の自覚症状」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
心房細動に気づく方法を教えてください。
小鷹 悠二 医師
多くの場合では動悸などの症状を伴うことが多いため、症状がある際にはまず自分で脈を確認することが大切です。
手首の脈を確認し、以下の2点をチェックしてみましょう。
①脈の速さは1分間でどのくらいか
②脈のリズムは規則的か、不規則か
脈の速さが1分間で100回を超える状態が安静時に突然出現する、脈のリズムが一定ではない、という場合には心房細動などの不整脈の可能性があるため、速やかに受診を検討する必要があります。
編集部まとめ
心房細動は高齢化が進んだ現代では、非常にありふれた不整脈の一つとなっています。
心房細動は脳梗塞などの大きなリスクであり、もし脳梗塞を起こすと重度の麻痺症状が後遺症として残ってしまうことや、ひどいと命に関わることもある、恐ろしい病気です。
もし突然の動悸、脈の乱れが出現した場合には、安易に放置せず、速やかに循環器科の病院を受診することが大切です。
「心房細動の自覚症状」と関連する病気
「心房細動の自覚症状」と関連する病気は3個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
脳神経科の病気
心房細動が見つかった場合に適切な治療を速やかに行うことで、脳梗塞や心不全の発症を予防することができます。
「心房細動の自覚症状」と関連する症状
「心房細動の自覚症状」と関連している、似ている症状は5個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 動悸
- 息切れ、呼吸困難
- 胸痛、胸苦しさ
- むくみ
- 麻痺
心房細動に気がつくことは、脳梗塞や心不全を予防する第一歩となります。上記のような症状が出現した際には速やかに医療機関を受診してください。