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「急性心不全の前兆となる3つの初期症状」はご存知ですか?予防法も医師が解説!

 公開日:2024/01/30
「急性心不全の前兆となる3つの初期症状」はご存知ですか?予防法も医師が解説!

急性心不全の前兆とは?Medical DOC監修医が急性心不全の前兆・なりやすい人の特徴・予防法や何科へ受診すべきかなどを解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。

丸山 潤

監修医師
丸山 潤(医師)

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群馬大学医学部卒業。群馬県内の高度救命救急センター救急科及び集中治療科に2022年まで所属。2022年より千葉県の総合病院にて救急総合診療科および小児科を兼務。乳児から高齢者まで幅広い患者層の診療に努める。
【保有資格】
医師/医学博士/日本救急医学会救急科専門医/日本集中治療医学会集中治療専門医/DMAT隊員/日本航空医療学会認定指導者(ドクターヘリの指導者資格)/JATECインストラクター/ICLSインストラクター

「急性心不全」とは?

急性心不全とは、心臓が血液を体中に十分送り出すことができなくなる状態を指します。これにより、各臓器が必要な酸素や栄養を受け取れず、さまざまな症状が発生します。本記事では急性心不全の特徴やその予防法について詳しく解説します。

急性心不全の前兆となる初期症状

動いた時の息切れ

心不全では心臓のポンプ機能が低下し、体中の組織に十分な酸素を送り出すことができなくなります。これにより、ちょっとした運動でも、全力で走った後のように息切れが起きてしまうことがあります。重症の心不全では安静にしていても息が苦しく、酸素投与が必要な状態となりますが、急性心不全の初期は階段の上り下りなど、日常動作の中では少し負荷のかかる運動をした時だけ息切れが出現します。階段昇降や散歩などの際に息切れを自覚した場合は「年のせいかな?」と放置せず、一度医療機関を受診しましょう。息切れの原因は心不全のみではないため、まずはかかりつけの内科への受診を検討してください。心不全が疑われる場合は循環器内科への受診が適しています。

胸痛

心臓の病気といえば「胸痛」が起こるイメージがあるかもしれません。しかし、正確には急性心不全の症状そのものというより、同時に起こっている急性心不全の原因となる病気が胸痛を起こしている可能性があります。
少し負荷のかかる日常動作をした時にだけ一時的に胸痛が出現する場合は「狭心症」が考えられます。狭心症は、心臓への血流が一時的に不足することで発生し、胸の圧迫感や痛みが現れる病気で3種類に大別されます。運動した時だけ発生するものは「労作性狭心症(安定狭心症)」と呼ばれます。これは動脈硬化で心臓への血管(冠動脈)が狭くなっており、運動で酸素の必要量が増えた時に血液供給が追いつかず、胸痛が出現します。対して、「異型狭心症」は夜寝ているとき(特に明け方)などに、運動とは関係なく胸痛が出現します。多くの場合、異型狭心症では冠動脈が一時的にけいれんを起こして収縮し、血流が途絶えることで症状が起こります。最後に、最も危険な状態は「不安定狭心症」です。不安定狭心症は完全に閉塞していないものの、冠動脈の動脈硬化が進行し、血管が非常に狭くなっている状況で、動いたときだけでなく安静にしている時さえも症状が出現することがあり、心筋梗塞の一歩手前の状態と言えます。胸痛を自覚した時点で早めに医療機関を受診すべきですが、特に安静時に突然胸痛を自覚するようなことがある場合は、すぐに循環器内科を受診しましょう。

浮腫

急性心不全では心臓のポンプ機能が低下しているため、全身に送られた水を引き戻す力も弱まっており、その結果、体の浮腫が出現します。特に心臓から遠い下腿(膝より下側)の浮腫が出やすいです。浮腫がひどくなると、歩きにくくなるだけでなく、うっ滞性皮膚炎によって潰瘍ができたり感染しやすくなったりと生活の質が大きく下がる原因となります。
長時間の立ち仕事後や夜間にのみ浮腫を自覚する程度であれば、様子を見て、市販の弾性ストッキング着用程度のセルフケアをすれば良いですが、慢性的に浮腫が続く場合は心不全が背景に隠れている可能性があるため医療機関を受診しましょう。浮腫の原因はさまざまなので、まずはかかりつけの内科を受診してください。

急性心不全になりやすい人の特徴

男性

生涯における心不全発症リスクは男女ともに5 人に1人と高いのですが、男性の方がより若いうちに心不全を発症し、女性より生命予後が悪い(余命が短い)との報告があります。女性ホルモンであるエストロゲンには、心血管に対するさまざまな間接的もしくは直接的な保護作用があることが知られており、男女差に影響を与えている一因と考えられています。また、特に中年期以降の男性では、喫煙、運動不足、不健康な食生活などが心臓病のリスクを高め、結果として急性心不全へとつながる可能性があります。

高齢者

日本での慢性心不全の大規模観察研究であるCHART-2(Chronic Heart Failure Analysis and Registry in the Tohoku District 2)研究では、心不全患者全体の68%が65歳以上、全体の34%が75歳以上の後期高齢者であり、高齢者は若者に比べて急性心不全のリスクが高まります。これは、加齢により心臓の機能が低下すること、また高齢になるとさまざま な心不全につながる生活習慣病などを抱えていることが多いためです。
高齢者は症状が出にくい、または典型的でないことが多いため、心不全の初期症状を見逃しやすいという特徴もあります。高齢の家族がなんとなく元気がない場合は心不全で苦しんでいる可能性もあります。いつもと様子がおかしい時にはお近くの内科を受診し相談しましょう。

メタボリックシンドローム(メタボ)

メタボリックシンドローム(メタボ)は、内臓肥満に高血圧症、糖尿病、脂質異常症などが組み合わさっている状態を指し、急性心不全のリスクを大幅に高めるとされています[1] 。心臓病は動脈硬化が原因となって起こることが多く、高血圧症、糖尿病、脂質異常症、喫煙は動脈硬化の危険因子です。そして、これらの病気は生活習慣病と呼ばれ、内臓肥満とのつながりが強いということがわかっています。
日本ではウエスト周囲径(ヘソの高さの腹囲)が男性 85cm、女性 90cm を超え、高血圧・糖尿病・ 脂質異常症の3つのうち、1つに当てはまるとメタボ予備群、2つに当てはまるとメタボと診断されます。健康的な食生活と運動による肥満予防、定期的な健康診断による肥満や生活習慣病の早期発見が大切です。

心疾患の既往

心筋梗塞や心臓弁膜症などの心疾患になったことがある人は、急性心不全になりやすいといわれています。心筋梗塞は、冠動脈の一部が閉塞し心筋が酸素不足に陥る病態であり、これにより心筋が壊死してしまうと、壊死した心筋が動かなくなり心臓のポンプ機能が低下します。また、心臓弁膜症は、心臓の弁が正常に機能しないことで血液がスムーズに流れなくなり、心不全を引き起こす可能性があります。弁膜症は心雑音でわかることがあるため、定期的な健康診断(心臓の聴診)を受けることが早期発見につながります。

すぐに病院へ行くべき「急性心不全の前兆」

ここまでは急性心不全の前兆を紹介してきました。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。

動くと息が苦しい症状の場合は、循環器内科へ

軽い運動や日常生活動作で息切れを感じる場合、急性心不全の可能性があります。特に、階段を上る、重い物を持つ、速歩きなどで息切れを感じる場合は注意が必要です。このような症状がある場合は、循環器内科への受診を検討してください。循環器内科では、心電図、エコー、血液検査などを通じて、心不全の診断と治療が行われます。ただし、息切れは肺や呼吸器系の疾患でも起こり得るため、必要に応じて呼吸器内科などの診察も必要になることがあります。

受診・予防の目安となる「急性心不全の前兆」のセルフチェック法

  • ・動くと息が苦しい症状がある場合
  • ・動くと胸が痛い症状がある場合
  • ・水っぽい咳がずっと続いている症状がある場合
  • ・手足の浮腫が悪くなっている場合

急性心不全を予防する方法

定期的な運動

肥満の予防として健康的な食事と定期的な運動が大切です。また、定期的な運動は筋肉だけでなく心肺機能も高めるため、運動耐容能(体力)の維持・向上につながります。運動の具体的な内容としては、速歩き、ジョギング、水泳、サイクリングといった軽い有酸素運動を週に数回、30分程度行うことが推奨されます。ただし、心疾患や肺疾患が元々ある方の場合は他の人と同じ運動をしても、本人にとっては負担が大きすぎる可能性があるため、必ずかかりつけの医師と相談して運動量を決定しましょう。

塩分を控えた食事

塩分の高い食事をすると血液が濃くなり、身体に水を引き込みます。体の水分量(特に血液量)が増加すると、血圧が上昇し心臓に負担をかけ、心不全を起こす原因となります。そのため、塩分を控えた食事を摂ることで高血圧を予防することが大切です。
日本人の食生活では、特に味噌汁、漬物、加工食品などに塩分が多く含まれています。新鮮な果物、野菜、全粒粉の穀物、低脂肪のたんぱく質などに置き換えることで、塩分量を減らしても満足感の得られる食事が摂れるでしょう。また、新鮮な果物や野菜にはカリウムが多く含まれますが、カリウムは高血圧を予防する効果があるため、積極的に摂取することをお勧めします。ただし、腎機能が低下している方はカリウムをうまく尿で排泄できないため、致死的な不整脈を起こす危険性があります。必ず医師の指示のもと適切な量を摂取するようにしましょう。

体重の管理

内臓肥満の増加は生活習慣病の原因となり、急性心不全の高いリスクとなるため、体重管理は非常に大切なセルフケアです。適切な食事と定期的な運動が体重管理の鍵です。食事では食べ過ぎ(特に糖質の過剰摂取)を避けましょう。糖質の過剰摂取は肥満のみならず、糖尿病や脂質異常症のリスクを高め、メタボリックシンドロームにつながるため注意が必要です。

禁煙

タバコに含まれるたくさんの化学物質は、動脈硬化を進行させて血管を狭くさせるため、心臓の負担を増やします。喫煙は心疾患だけでなく肺疾患の原因にもなります。心疾患と肺疾患の両方を発症すると息切れが強くなり、状態によっては常に酸素が必要な身体となってしまいます。喫煙は一切しないことをお勧めしますが、もしすでに喫煙をしている場合はなるべく早く禁煙しましょう。一度ダメージを受けた血管や肺は元に戻りませんが、禁煙することでそれ以上悪化するのを防げます。

「急性心不全の前兆」についてよくある質問

ここまで急性心不全の前兆などを紹介しました。ここでは「急性心不全の前兆」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

若い人の急性心不全の初期症状について教えてください。

丸山 潤医師丸山 潤(医師)

若い人の場合も息切れや脚の浮腫が主な初期症状です。特に運動後や横になった時に息苦しい時は急性心不全の可能性があります。若い人の場合、喘息発作でも似たような症状を自覚することがあるため、息苦しさを自覚した時は早めに医療機関を受診し適切な治療を受けましょう。まずは内科への受診をご検討ください。もし、症状が強い場合は救急外来を受診しましょう。

急性心不全の初期症状に腹痛はありますか?

丸山 潤医師丸山 潤(医師)

急性心不全の初期症状として腹痛が出現することはあります。例えば、心筋梗塞は「みぞおちの痛み」であり、それを「上腹部痛」と表現する方がいらっしゃいます。また、心筋梗塞は放散痛といって胸痛だけでなく顎・奥歯・肩・腹などに痛みが広がることもあり、その初期症状はさまざま です。その他、大動脈解離では腹部の血管が破裂した場合、腹痛や背部痛が出現します。腹痛が出現した時は、それがどんなタイミングで起きたのか、その痛みはどのくらいの強さで、痛い部分が移動するのかといった情報を集め、医師に伝えましょう。

編集部まとめ

急性心不全は予防できる可能性が高い病気であり、また、重症化する前に発見・治療することで余命を延ばすことができる病気です。健康的な生活習慣を心がけ、定期的な健康診断を受けることが、心不全を予防するための鍵です。また、日常生活で感じるささいな変化に注意を払い、息切れや浮腫に気づいた時には早めに医療機関を受診しましょう。

「急性心不全の前兆」と関連する病気

「急性心不全の前兆」と関連する病気は16個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

循環器科の病気

呼吸器科の病気

  • 慢性閉塞性肺疾患(COPD)

腎臓科の病気

加齢に伴い運動で息切れしやすくなっているのを自覚する程度であれば様子を見ることができますが、階段昇降や平地での散歩で息が苦しくなったり、脚のむくみが慢性的に続いていたりするような場合には、病気が隠れている可能性があります。

「急性心不全の前兆」と関連する症状

「急性心不全の前兆」と関連している、似ている症状は10個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 呼吸困難
  • 息切れ(特に運動時や夜間)
  • 急激な体重増加
  • 足や足首の浮腫
  • 全身倦怠感
  • 頻繁な咳
  • 胸痛
  • 不整脈
  • 食欲不振

これらの症状がある場合、「急性心不全」「喘息発作」「腎不全」などの疾患である可能性が考えられます。階段昇降など日常生活で少し負荷のかかる場面で息切れしたり、横になると胸が苦しくなってしまったりするような場合には、早めに医療機関を受診しましょう。

この記事の監修医師