「慢性心不全の主な5つの症状」はご存知ですか?末期症状も医師が解説!
慢性心不全の症状とは?Medical DOC監修医が慢性心不全の症状・原因・治療法や何科へ受診すべきかなどを解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。
監修医師:
春日 武史(医師)
目次 -INDEX-
「慢性心不全」とは?
慢性心不全は、心臓が全身に十分な血液を送ることができなくなる状態を指します。呼吸困難、疲労感、及びむくみなどのさまざまな症状を引き起こし、生活の質が下がってしまう点が特徴です。この記事では、慢性心不全の症状、治療法、及び日常生活での管理方法について詳しく解説します。
慢性心不全の代表的な症状
呼吸困難・息切れ
呼吸困難・息切れは、心不全による代表的な症状です。軽度の身体活動、たとえば階段を上がることや、家の周りを歩くことでも引き起こされます。おしゃべりをしたり笑ったりといった日常の小さな動作でも息切れが生じることがあります。
最初は走った時だけ症状が出現したものが、心不全の悪化に伴って徐々に簡単な動作でも症状が起きるようになります。また、慢性心不全の急性増悪の場合は、いつもならできる動きで突然苦しくなってしまうことがあります。息苦しさはすぐに治療すべき症状であるため、ためらわず医療機関を受診しましょう。
浮腫
慢性心不全では浮腫が見られます。水は下に溜まるので、特に足や足首の浮腫が目立つことが多いです。この症状は心臓のポンプでしっかり血流を生み出し、余分な水を尿として排泄することできず、身体に水が溜まってしまうため起こります。
むくみを減らすためには、足を高くして休む、塩分摂取を減らすといったセルフケアも可能です。薬物療法では利尿薬も有効であるため、浮腫が強い場合はかかりつけ医と相談しましょう。
慢性的な疲労感
前述の通り、簡単な動作で息切れを起こしてしまうため、日常生活の簡単な動作の繰り返しでさえ、大きな負担となり慢性的に疲労感につながります。
不眠
心不全の患者はしばしば睡眠中に息苦しさを感じ、夜間に何度も目を覚ますことがあります。これは横になることで心臓に戻ってくる血液の量が増えてしまい、心臓の負担が増えて息苦しくなってしまうことが原因です。
まずは心不全の治療を行い、横になっても心臓に負担がかからない状態にすることが先決ですが、セルフケアとして睡眠前のカフェインやアルコールを避け、寝室を睡眠に適した環境にすることも大切です。
動悸
心不全は心臓に負担がかかっており、不整脈を起こしやすい状態となっています。不整脈は心臓の鼓動が異常に速くなったり、不規則になったりすることを指し、動悸や胸の違和感、めまい、失神の原因となることもあります。
不整脈は安静にしていると勝手に良くなることもありますが、動悸がなかなか良くならない場合や血の気が引くような感じがする場合には、治療が必要な不整脈かもしれません。そのような場合はすぐに医療機関を受診するようにしましょう。顔色がひどく悪い時には救急車を呼ぶことをためらわないでください。
慢性心不全の末期症状
食欲不振
疲労や全体的な不調感を感じるために食欲が低下してしまいます。また、心不全によって消化器系の血流が減少すると、消化不良や吸収不良が起こりやすくなり、嘔気や胃もたれが起こります。これが食欲減退につながることがあります。食欲不振は栄養状態の悪化を招き、さらに体調が悪くなりやすい状態にしてしまいます。できる範囲で食事を摂るようにしましょう。ただし、塩分の多いものは心不全を悪化させるため避けることが好ましいです。
意識障害
慢性心不全が末期になると、体内の血液循環が著しく低下し、脳への酸素供給が不十分になることがあります。これが意識障害を引き起こす原因となります。この状態はかなり危険な状態であり、すぐに薬や医療機器によるサポートで血液循環を改善しなければ命に関わる可能性があります。もし慢性心不全をお持ちの方がいつもと様子が違う時は、すぐに医療機関を受診しましょう。
すぐに病院へ行くべき「慢性心不全の症状」
ここまでは慢性心不全の症状を紹介してきました。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。
胸が痛くて苦しい場合は、循環器内科へ
胸が痛くて苦しい場合は、心臓や血管に重大な問題が発生している可能性があります。慢性心不全のある方は心臓血管疾患のリスクが高いため、新たに心筋梗塞を起こす可能性は十分あります。また、慢性心不全の急性増悪といって、心不全が突然悪くなる場合も胸苦しさが出現する可能性があります。いずれにせよ、迅速な診断と治療を要する状態であるため、すぐに循環器内科を受診しましょう。症状が強く動けない場合は、ためらわず救急車を呼んでください。
受診・予防の目安となる「慢性心不全の症状」のセルフチェック法
- ・動くと息が苦しくなる場合
- ・日常生活で動悸を感じる場合
- ・息が苦しくて寝付けない場合
- ・足の浮腫が徐々に悪化している場合
慢性心不全の治療法
慢性心不全の治療は多岐にわたり、患者さんの状態や心不全の原因に基づいて治療法が選択されます。以下に、慢性心不全の主な治療法について説明します。
薬物療法
薬物療法は慢性心不全の治療の基本です。心臓の負担を減らし、症状を緩和する薬剤を使用します。血管を広げる薬や血圧を下げる薬は血液の流れを改善し、心臓への負担を軽減します。利尿薬は余分な水分を体外に排出し、むくみや息切れを軽減します。血液の循環が悪く命に関わる場面では心臓の収縮力を高める強心薬を使用することがありますが、基本的には心臓を休ませる薬を使うことで心臓を保護する治療を行います。
カテーテル治療
カテーテル治療では、小さな管(カテーテル)を太ももの付け根にある大腿動脈に刺して心臓へと進め、動脈硬化や血栓などで狭くなってしまった心臓の血管を拡張する治療などを行います。これにより、心臓への血流を改善し、心不全の症状を軽減します。不整脈が原因の場合には、カテーテルアブレーションという治療が行われることもあります。これは、不整脈の原因となる心臓の部位を特定し、その部分を焼灼することで心臓の電気回路の異常を治す治療です。
外科手術
外科手術は、慢性心不全の原因となっている病気を治療するために行われます。たとえば、心臓に栄養を送る冠動脈が詰まってしまった場合、詰まった冠動脈の先に迂回路(バイパス)を作る「冠動脈バイパス手術」を行います。心臓弁膜症の場合は、異常な弁を修復する手術や新しい弁に置き換える手術(弁置換術)が必要となることもあります。
運動療法
運動療法は、運動耐容能(体力)を維持・向上することで、呼吸困難や疲労感などの心不全症状を軽減し、生活の質を改善することを目標に行います。
心不全患者に推奨される運動は、歩行、自転車エルゴメータなどの軽い運動です。水泳やランニングのような心臓への負荷が大きい運動は推奨されません。運動は1回30〜60分程度で少なくとも週に3回以上運動を行うのが理想的です。
食事療法
食事療法は、塩分の摂取を制限し、適切な栄養バランスを保つことによって、心不全の管理を助けます。塩分の過剰な摂取は体内の水分を増やし、心臓への負担を高めるため、特に注意が必要です。また、適切な食事は糖尿病・脂質異常症など他の病気の予防や体重管理としても効果的です。
「慢性心不全の症状」についてよくある質問
ここまで慢性心不全の症状などを紹介しました。ここでは「慢性心不全の症状」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
慢性心不全を疑う症状が現れた場合、周囲の人はどのように看護するべきでしょうか?
春日 武史 医師
慢性心不全を疑う症状が現れた場合、周囲の人はまずその患者さんを安静にさせましょう。具体的には、椅子に座らせて背もたれに寄りかかる姿勢を取らせます。脚を下げて、上体を起こし、心臓の位置を高くすることで心臓への血液の戻りを減らすことで、呼吸が少し楽になります。安静にしていても症状が改善しない場合は心不全が悪くなっている可能性があるため、かかりつけの内科(特に循環器内科)を受診しましょう。顔色が悪いような場合はすぐに酸素投与をする必要がある状態かもしれません。救急車を呼んで救急隊に診察してもらい、酸素投与をしながら病院へ救急搬送してもらいましょう。
編集部まとめ
心不全は、動いた時の呼吸苦や動悸といった身体のサインを正しく理解し、適切な対応をとることで、その進行を遅らせ、生活の質を保つことができます。この記事を通じて慢性心不全の症状や治療法についての理解が深まり、ご自身や大切な人の健康管理に役立てていただければ幸いです。
「慢性心不全の症状」と関連する病気
「慢性心不全の症状」と関連する病気は6個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
循環器科の病気
- 心筋梗塞
- 高血圧症
これらの疾患は慢性心不全と相互に影響し合うことがあります。慢性心不全患者はこれらの合併症にも注意を払い、適切な医療チームと協力して統合的な治療計画を検討することが重要です。
「慢性心不全の症状」と関連する症状
「慢性心不全の症状」と関連している、似ている症状は10個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 呼吸困難
- 動いた時の息切れ
- 咳
- ゼイゼイと喘鳴がある
- 胸痛
- 脚の浮腫
- 全身倦怠感
- 動悸
- 食欲低下
- 意識障害
これらの症状がある場合は慢性心不全の他に、心筋梗塞、慢性閉塞性肺疾患、喘息、上気道炎、甲状腺機能低下症などの疾患の可能性が考えられます。何もしていないのに苦しい場合やいつもは感じない胸痛などが出てきた場合は早急に医療機関を受診しましょう。