喘息治療薬「シクレソニド」が新型コロナウイルス肺炎に有用?

現在、世界中に広がり多数の死者を出している新型コロナウイルス肺炎。日本国内でも3月10日現在で567名の感染が確認され、12名が命を落としているとのこと。

未だ終息する気配のない新型コロナウイルスに世界が震撼しており、ワクチンや抗ウイルス薬の開発が急ピッチで進められていいます。しかし、有効な治療法は確立していないのが現状です。

そんな中、喘息治療薬「シクレソニド」を服用したら、新型コロナウイルス肺炎の症状が改善されたと、患者の治療にあたった医師チームが発表しました。

そこで今回は、新型コロナウイルス肺炎と「シクレソニド」について詳しく解説します。

成田 亜希子 医師

監修医師
成田 亜希子 医師

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弘前大学医学部卒業後は、内科医として勤務。また、国立医療科学院でも研修を積み生活習慣病や感染症予防などの公衆衛生分野の知見を習得。日本内科学会、日本感染症学会、日本結核病学会、日本公衆衛生学会の各会員。

喘息治療薬「シクレソニド」とは?

「シクレソニド」は喘息治療薬の一種。ステロイド(副腎皮質ホルモン)を主成分とするエアゾール式吸入薬です。微粒子化したエアゾールが肺に浸透しやすく、製造販売を行う帝人ファーマ株式会社の公表データによれば、肺内到達率なんと52%! また、主成分は肺内の酵素の働きで気道の炎症を抑制する活性代謝物に転換される性質を持ちます。このため、有効成分が肺の中に長く留まり、1日1回の吸入で高い効果が得られるとされています。

副作用が現れにくいのも特徴の一つで、小児に対する安全性も確認されているとのことです。

「シクレソニド」が新型コロナウイルス肺炎に効く?

新型コロナウイルス肺炎患者の治療にあたる神奈川県足柄上病院の医師グループは、「シクレソニド」を発症者3名に使用したところ症状の改善が認められたことを発表しました。

報告書によれば、3名の患者はいずれも投与開始から2日ほどで呼吸状態の改善が認められ、食思不振や倦怠感などの症状も軽快したとのことです。

成田 亜希子 医師成田先生

現在、世界では抗HIV薬や抗マラリア薬など様々な既存薬が新型コロナウイルス肺炎の諸症状を改善する可能性があるとして、試験的に広く用いられています。

今回の報告では、「シクレソニド」が投与された3名のうち1名(73歳女性)は、当初抗HIV薬が使用されていたものの、症状改善は認められなかったとのこと。そこで、「シクレソニド」の吸入を開始したところ、2日ほどで症状が改善し、その後のウイルス検査で陰転したことが確認されました。

これらの治療成績から、医師チームは「シクレソニド」には抗ウイルス作用と抗炎症作用があり、新型コロナウイルス肺炎による肺のダメージを改善することが期待できるとの見解を示しています。(※)

※日本感染症学会「COVID-19 肺炎初期~中期にシクレソニド吸入を使用し改善した3例」より
http://www.kansensho.or.jp/uploads/files/topics/2019ncov/covid19_casereport_200302_02.pdf

既存の薬と新興感染症

交通網が発達し、世界中の人々が色々な国を自由に行き来することができるようになった現在。世界のどこかで新たなウイルスや細菌による感染症が発生すれば、瞬く間に世界中に広がる可能性があります。今回の新型コロナウイルス肺炎のように、世界を巻き込む新興感染症は今後も発生するかも知れません。

そして、医学的なエビデンスが確立した治療法が生み出されるまでは、今回のように既存薬を試験的に使用していくこととなるでしょう。

成田 亜希子 医師成田先生

実は、今回試験的に使用された「シクレソニド」は、2012年に流行した中東呼吸器症候群の原因ウイルスである「MERSウイルス」に対して抗ウイルス作用を持つというデータがあります。MERSウイルスもコロナウイルスの一種。新型コロナウイルスにも抗ウイルス作用を持つのではないか……と期待されたことから投与が行われました。

とはいえ、まだまだ症例数が少ないため、多くの患者に投与して効果を判定していく必要があります。