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「心筋梗塞を疑う心電図」の波形や経過はご存知ですか?部位診断でわかることも解説!

 更新日:2023/10/25
「心筋梗塞を疑う心電図」の波形や経過はご存知ですか?部位診断でわかることも解説!

心筋梗塞は心電図でわかるの?Medical DOC監修医が心筋梗塞の心電図波形・心電図経過や何科へ受診すべきかなどを解説します。

丸山 潤

監修医師
丸山 潤(医師)

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群馬大学医学部卒業。群馬県内の高度救命救急センター救急科及び集中治療科に2022年まで所属。2022年より千葉県の総合病院にて救急総合診療科および小児科を兼務。乳児から高齢者まで幅広い患者層の診療に努める。
【保有資格】
医師/医学博士/日本救急医学会救急科専門医/日本集中治療医学会集中治療専門医/DMAT隊員/日本航空医療学会認定指導者(ドクターヘリの指導者資格)/JATECインストラクター/ICLSインストラクター

「心筋梗塞」とは?

皆さんは心筋梗塞にどのようなイメージをお持ちでしょうか?ドラマなどで胸を押さえて痛みを訴え倒れてしまうシーンを思い浮かべる方も多いでしょう。
心筋梗塞とは、心臓をとりまく冠動脈という血管が詰まってしまうことで心臓に十分な栄養や酸素が届かず、心臓の筋肉である心筋が壊死した状態です。自覚症状としては突然強い胸痛や圧迫感、顎や肩の強い痛みが起こり、安静にしていても改善が見られないのが特徴です。心筋の壊死が広がり心臓の動きが悪くなると全身への血流が途絶え、意識障害や呼吸困難が起こり、重篤な場合は死に至る場合もあります。心筋梗塞は日本人の死亡原因の第2位となっており、突然死の原因にもなります。

心筋梗塞の心電図波形

心電図は手足や胸部などの体表面につけた電極で測定した心臓が動く際の電気信号を波形で表したもので、一般的には12通りの測定方法があることから12誘導心電図と呼ばれています。
正常時の心電図の波形はP波、QRS波、T波、U波からなります。心臓には4つの部屋があり、それぞれ右心房・右心室・左心房・左心室と呼ばれています。P波は心房の収縮、QRS波は心室の収縮、T波は心室の拡張を反映します。U波は見られることも見られないこともあります。心臓の電気信号に異常が起こるとこれらの波形が崩れるため、心電図から疾患を予測することができます。

異常Q波

正常と異なる幅・大きさになるQ波のことを異常Q波と呼びます。陳旧性心筋梗塞で見られることのある心電図波形で、心筋梗塞などにより心臓の筋肉である心筋が強い障害を受けることで生じる所見です。異常Q波の定義は幅が0.04秒以上であるか電位がR波の25%以上であることであり、Q波が正常よりも深く切り込んだような心電図となります。
正常でも見られることのある所見ですが、健康診断で指摘された場合は追加の検査が必要となることもあります。心筋の壊死範囲が小さい場合などは異常Q波を認めないこともあります。

STの上昇

心筋に冠動脈からの血流が途絶えると心臓の壁に貫壁性の虚血が起こり、心筋梗塞が起こります。この状態を反映した心電図所見がSTの上昇です。心電図の中でSTの上昇の起こる誘導により心筋の虚血が起こっている部位を予想することができます。
心筋梗塞の中でもSTが上昇する型と上昇しない型がありますが、STの上昇が見られる場合は心筋の虚血の程度が強いことを示しており、症状出現から血流再開までの時間が遅れるにつれ心筋の破壊が進んでしまうため、一刻も早い治療介入が必要となります。

冠性T波

冠性T波とは、左右対称に下向きに見られるT波のことです。本来T波は上向きにみられる波なのですが、心筋梗塞による虚血のダメージを受けた心筋の部分ではイオンの流れが変わり電気信号の向きが変わるためT波の向きが変わることがあります。

心筋梗塞の心電図経過

発症前

心筋梗塞の前兆となる症状として、発症前に胸痛や胸部の圧迫感などの自覚症状がある場合もありますが、心電図で変化を捉えるのは難しいと考えられます。発症前であれば正常の心電図と変わりません。

急性期

心筋梗塞が起こった直後数時間を超急性期、発症後数時間から1週間程度を急性期と呼びます。
超急性期の典型例ではT波の増高の後にSTの上昇が見られます。発症直後はT波がわずかに増高しているだけで正常の心電図とほとんど変わらないように見えることもあります。発症後12時間以内に明らかになってくるSTの上昇は心筋の壊死が貫壁性に起こっていることを示しているため、この所見を認める場合は早急に治療開始することが重要です。カテーテル治療が必要となるため、専門医による診察・治療を受ける必要があります。
急性期にはST上昇の部位に一致して異常Q波が出現した後、発症後数日の間に冠性T波が見られます。

回復期

回復期とは心筋梗塞発症後1ヶ月から2ヶ月が経ち症状が安定してきている時期を指します。急性期の治療が終わり、退院しリハビリを行っている時期かもしれません。
急性期に現れたSTの上昇は徐々に正常化し、冠性T波も一時的に深くなりますが徐々に改善が見られ、浅くなっていきます。

慢性期

心筋梗塞の慢性期にはほとんどの心電図変化が正常化していきますが、異常Q波のみは長期間残存するため、陳旧性心筋梗塞の心電図所見の代表となります。心筋の壊死の程度によっては徐々に正常化し目立たなくなることもあります。

「心筋梗塞の心電図」についてよくある質問

ここまで心筋梗塞の心電図を紹介しました。ここでは「心筋梗塞の心電図」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

心筋梗塞の心電図検査における部位診断とはどんなことが分かるのでしょうか?

丸山 潤医師丸山 潤(医師)

心電図は心臓の電気信号を多方向から測定しているため、心電図異常が見られる方向から心筋の血流が悪化しているのが心臓のどの部位に当たるのかを推測する部位診断を行うことができます。特に心電図でSTの上昇が見られる場合は、その部位の心筋壊死が今まさに進行しているという意味なので早急に該当する部位の血流再開のための治療が必要となります。心電図から虚血部位を特定することで心筋梗塞の原因となっている血管を予測することもできます。

症状がなくても心電図検査で心筋梗塞の疑いと診断されることはあるのでしょうか?

丸山 潤医師丸山 潤(医師)

症状がなくても心電図検査で心筋梗塞の疑いと診断された時には、実際に心筋梗塞が起こっているが本人が症状を感じていない場合と心臓自体は正常なのにも関わらず心筋梗塞と似た心電図変化を示している場合の2つの可能性があります。
無症候性心筋梗塞の場合は、心臓の血管に狭窄や閉塞が起こって心筋の虚血が起こっているにも関わらず、高齢者や糖尿病患者などは心臓の自律神経障害のため自覚症状を感じにくいことがあります。無症状でも血管の狭窄や心筋の虚血が疑われる場合は治療の対象となります。
正常な人で心筋梗塞と似たような心電図波形を示すこともあります。その場合は検査では心筋梗塞の疑いとなりますが、実際は「偽陽性」で異常はなく、心臓には変化が起こっていないため治療の必要もありません。自覚症状がなくても異常Q波やSTの上昇を疑う所見を認める場合は、他の検査や年齢などの患者背景を総合して正常かどうかを判断します。

編集部まとめ

心筋梗塞は一般的に突然の胸痛などの症状から始まることが多く、心電図検査で気づかれるより先に症状から疑われることが多い疾患です。心筋梗塞が疑われる際は心電図検査を行い、発症しているかどうかや心筋梗塞の原因がどの血管によるものなのかを判断します。
心筋梗塞では一刻も早い治療が心臓のダメージを小さくするために重要なので、疑った時点で診断・治療を早急に行う必要があります。特に超急性期の心電図変化は見逃してしまう可能性もあるため、慎重な判断が重要です。
高血圧、高コレステロール血症、肥満、喫煙などは動脈硬化の原因となります。動脈硬化が進むと狭くて脆い血管となり、血栓で血管が詰まりやすくなるため心筋梗塞が起こりやすくなります。予防のためにも日頃の生活習慣を見直し、定期的に健康診断を受けて異常がないかを確認しましょう。カテーテル検査など詳細な検査を受けることで、心臓の血管に狭窄がないかを確認することもできます。

「心筋梗塞の心電図」と関連する病気

「心筋梗塞の心電図」と関連する病気は6個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

循環器科の病気

心筋梗塞を疑う心電図所見が見られても、実際は上記のような病気が原因となっていることもあります。それぞれの病気により治療法が異なるため、心電図以外にも検査を追加することがあります。

「心筋梗塞の心電図」と関連する症状

「心筋梗塞の心電図」と関連している、似ている症状は8個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

心筋梗塞の心電図変化があるからといって必ず心筋梗塞であるとは限りません。しかし、上記のような自覚症状があれば心筋梗塞の可能性は高まります。上記のような症状が見られる場合はすぐに病院を受診しましょう。

この記事の監修医師