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「糖尿病」に筋力トレーニングが効果的な理由を解説! 日常生活でできるメニューや注意点も

 公開日:2023/08/14
「糖尿病」に筋力トレーニングが効果的な理由を解説! 日常生活でできるメニューや注意点も

糖尿病の改善には筋力トレーニングが効果的である」と言われていますが、一体どのような効果があるのでしょうか。継続することがなかなか難しい運動ですが、週2〜3日のトレーニングや日常生活でできる簡単な筋力トレーニングの方法もあるようです。一方で、筋力トレーニングをおこなう際には注意が必要な点もあるとのことです。今回は「理学療法士」の相澤さんが、糖尿病に効果的な筋力トレーニングを解説します。

相澤 郁也

監修理学療法士
相澤 郁也(理学療法士)

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2015年、国家公務員共済組合連合会吉島病院に就職し臨床に従事。2020年、千葉の三咲内科クリニックに招聘。現在は糖尿病患者の運動指導をおこない、糖尿病の発症・重症化予防に貢献。糖尿病に関する多くの研究業績をもつ。2022年、広島大学大学院医歯薬保健学研究科保健学専攻博士課程前期修了。日本糖尿病療養指導士、代謝認定理学療法士、日本糖尿病理学療法学会広報委員会委員、全国臨床糖尿病医会関東・北日本コメディカルの会世話人、千葉県糖尿病対策推進会議世話人。

筋力トレーニングは糖尿病の改善に効果的?

筋力トレーニングは糖尿病の改善に効果的?

編集部編集部

筋力トレーニングは、糖尿病にどのような効果がありますか?

相澤 郁也さん相澤さん

まず、筋肉が動くときのエネルギーとして糖が利用されます。また、筋肉は体内で糖を利用する臓器の中で最も多くの利用率を誇るため、筋肉が増えることは糖を利用する臓器が増えるということになり、効率よく血糖を利用することができるようになります。さらに、代謝の改善(インスリン抵抗性の改善や基礎代謝の増加、脂肪の燃焼など)も見込めます。

編集部編集部

筋力トレーニングによる代謝の改善には、どのようなメリットがあるのでしょうか?

相澤 郁也さん相澤さん

筋肉量と同時に基礎代謝量が増えるため、体重減少(体脂肪の減少)に伴うインスリン抵抗性(インスリンの効きづらさ)の改善がメリットの1つと考えられます。ただし、体重が多い人が減量を目的にした場合は、消費するエネルギー量(基礎代謝量+動いて消費するエネルギー量)が、食事で摂取するエネルギー量を上回る必要があります。

編集部編集部

筋力トレーニングによって血糖値も下がるのでしょうか?

相澤 郁也さん相澤さん

はい。先述したとおり、筋力トレーニングなどの運動をおこなうと、糖をエネルギーとして利用します。筋力トレーニングは筋肉の量を増やすため、それに伴って利用する糖が増えます。また、内臓や筋肉に溜まった脂肪などは、インスリン抵抗性を強くしますが、体重の減少に伴って、体脂肪の減少や筋肉量と基礎代謝量の増加が生じることで、結果としてインスリン抵抗性の改善につながります。これらの仕組みによって、筋力トレーニングにより血糖値が低下するというわけです。

筋力トレーニングを実施する頻度・時間・回数など、知っておいた方がいいこと

筋力トレーニングを実施する頻度・時間・回数など、知っておいた方がいいこと

編集部編集部

どのような筋力トレーニングが効果的なのですか?

相澤 郁也さん相澤さん

筋力トレーニングで糖を利用すると考えた際、大きな筋肉の使用が効率的です。さらに、筋肉を増やして効率的に糖を利用できるようにすることを考えた際にも、大きな筋肉をさらに増やすための筋力トレーニングをおこなうことが重要です。したがって、体の中で大きな筋肉は下半身に集中しているので、下肢の筋力トレーニングを実施することが効果的です。

編集部編集部

筋力トレーニングをおこなう際の効果的な頻度や強度、時間、回数について教えてください。

相澤 郁也さん相澤さん

まずは連続しない日程で週2〜3日、10〜15回繰り返すことができる程度の強度で1セットおこなうことから開始しましょう。慣れてきたら負荷を徐々に増やして、8〜12回繰り返すことができる程度の強度で1〜3セットおこなうことを目標にして実施することが推奨されています。また、食後30分~2時間の間におこなうことが最適とされています。

編集部編集部

日常生活で簡単にできる筋力トレーニングはありますか?

相澤 郁也さん相澤さん

下半身の大きな筋肉を使う筋力トレーニングとしては、最も大きい筋肉である太ももの筋肉(大腿四頭筋)を使用する「スクワット」や、2番目に大きな筋肉であるふくらはぎ(下腿三頭筋)を使用した「カーフレイズ(踵上げ)」が例として挙げられます。器具や機器を使用せずに、自分の体1つでできる運動が日常生活の中で取り入れやすいです。

糖尿病の人が筋力トレーニングをする際の注意点

糖尿病の人が筋力トレーニングをする際の注意点

編集部編集部

筋力トレーニングを始める前にするべき準備や医療従事者への相談について教えてください。

相澤 郁也さん相澤さん

筋力トレーニングは筋肉に負荷をかけて筋肉を強くしたり、大きくしたりするための運動であるため、いきなり筋力トレーニングを始めると怪我をする恐れがあります。そのため、筋力トレーニングを実施する前にはストレッチをする必要があります。また、心臓や血管、関節への負荷が大きい運動でもあります。これらの部位に問題を抱えている人は、筋力トレーニングを実施する前に、医師や理学療法士に相談することをおすすめします。

編集部編集部

糖尿病の人が筋力トレーニングをする際の注意点や中断すべきタイミングなどについて教えてください。

相澤 郁也さん相澤さん

筋力トレーニングは大きな力を必要とする運動であるため、どうしても息をこらえやすくなります。息をこらえることで血管への負荷が大きくなり、血圧が高くなりやすくなるので、力を入れる時には息を吐きながらおこないましょう。また、血圧が高くなると顔が赤くなったり、頭がくらっとしたりすることがあるので、異変があれば筋力トレーニングを中断してください。

編集部編集部

筋力トレーニングをしてはいけない条件や覚えておくべき禁忌事項はありますか?

相澤 郁也さん相澤さん

コントロールされていない高血圧がある人(高血圧があるが服薬していない人)は、筋力トレーニングを控えた方がいいと考えます。また、糖尿病による合併症がある人は、病期などによっては筋力トレーニングが禁忌であったり、筋力トレーニングに詳細な注意が必要になったりする場合もあるので、医師や理学療法士に相談してから実施することが大切です。

編集部まとめ

筋力トレーニングをおこなうことで筋量が増加して糖の利用効率が上がり、代謝が改善されるため糖尿病に有効とのことでした。実施する際は、徐々に筋力トレーニングの強度を調整し継続しておこなうのがおすすめです。また、日常生活でもスクワットや踵上げなどの簡単な筋力トレーニングが可能とのことでした。一方で、高血圧や糖尿病の合併症がある場合は、詳細な注意点などを理解してからトレーニングをおこなう必要があるので要注意です。

この記事の監修理学療法士