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「色覚異常」の見え方・原因・対処法はご存知ですか?医師が監修!

 更新日:2023/05/19
「色覚異常」の見え方・原因・対処法はご存知ですか?医師が監修!

普段私たちが見ている景色は、さまざまな色が使われ色に囲まれた生活を送っています。人それぞれ感性が違うため、見ている色は異なることもあるでしょう。

しかし色の認識が周りの方よりズレている場合、色覚異常の症状があることが考えられます。

「微妙な色の違いが分かりにくい」「全く違う色だけど同じように見える」など、色に関することで悩んでいることはありませんか。

この記事では色覚異常について、種類・症状・検査方法・対処法をご紹介します。

郷 正憲

監修医師
郷 正憲(徳島赤十字病院)

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徳島赤十字病院勤務。著書は「看護師と研修医のための全身管理の本」。日本麻酔科学会専門医、日本救急医学会ICLSコースディレクター、JB-POT。

色覚異常とはどのような状態ですか?

色見本

色覚異常とはどのような状態ですか?

色覚異常とは、世の中にあるさまざまな色の中で特定の色の認識機能が低下している状態のことです。目の奥にある網膜は眼球をカメラに見立てたときフィルムにあたる部分といわれており、光や色を感じるときに重要な錐体細胞と杆体細胞の2種類の視細胞が存在しています。
普段見ている色は、赤錐体・緑錐体・青錐体の3つの視細胞の組み合わせで作られています。この3つの視細胞の内、1つでも機能低下が起こっていると色が識別しにくくなる状態に陥るのです。

色覚異常の症状は?

先述したように、普段の生活において色の識別がしにくい状態が現れる症状のことです。光を感知している錐体細胞には、以下の3種類があります。

  • 長波長に反応するL錐体(赤)
  • 中波長に反応するM錐体(緑)
  • 短波長に反応するS錐体(青)

この3種類の色の組み合わせにより、さまざまな色が識別できるのです。色覚異常は錐体細胞の異常によって発症し、先天性色覚異常では日本人において男性20%・女性0.2%の割合で症状が現れます。
また女性は色覚が正常であっても先天性色覚異常の遺伝子を持っている(保有者)ことがあり、その割合は10%であるといわれています。色覚異常は先天性だけではなく、緑内障・糖尿病による網膜症・視神経疾患などにより症状が現れる後天性色覚異常が起こる可能性もあるのです。
色覚異常は先天性でなければ症状が現れないというわけではなく、誰にでも起こり得る症状であるといえるでしょう。

色覚異常の種類を教えてください。

まず先天性と後天性に分けられます。さらに先天性は眼科学による定義では以下のように分類されます。

  • 1型色覚…L錐体の視機能異常・機能不全
  • 2型色覚…M錐体の視機能異常・機能不全
  • 3型色覚…S錐体の視機能異常・機能不全

このほか錐体のうち1種類が機能していない状態の2型色覚や、錐体の内1種類が正常に機能しておらず3色全て判別できるが色の識別がつきにくい状態の異常3型色覚もあります。
先天性色覚異常の多くは、1型2型色覚です。LとMどちらかが機能不全であっても中波長の領域で色の差を感じにくくなるため先天性赤緑色覚異常ともいわれています。
また3型色覚は短波長の領域で色の差を感じにくくなるため、先天性青黄色覚異常といわれる稀な症状です。色に対する感覚のない1色覚の症状も同様に稀な症状です。

色覚異常の原因を教えてください。

先天性色覚異常の場合、X染色体による遺伝の異常が関係しています。性を決める性染色体にはXとYの2種類あり、男性はXY・女性はXXの組み合わせです。
男性の場合、染色体に色覚異常の遺伝子があれば発症します。女性の場合、X染色体は2つあるため両方が色覚異常の遺伝子である場合は発症し、1つのみの場合発症はしませんが保有者となります。
遺伝の形式にはいくつかのパターンがありますが、父親が正常・母親が保有者の場合に生まれてくる子が男性なら約半数が色覚異常になり、女性なら約半数は保有者である可能性が高いです。色覚異常の症状の程度はさまざまですが、症状を持っていることは珍しいことではありません。
後天性色覚異常の場合、先述したように緑内障・網膜症・視神経疾患・心因性要因などの症状が関係しています。先天性とは違い網膜疾患や視神経疾患が起こるとS錐体の障害(青黄異常)が先行し、L・M錐体の異常が加わるのです。また明らかな後天性青黄異常を示す疾患に、糖尿病性網膜症・網膜剥離・網膜色素変性症などが挙げられます。

色覚異常の見え方は?

1色覚でない限り、見え方は正常な方と変わりありません。ただし色を表す色相環で色を見た際、隣り合う色のように似たような色は判別しにくいです。人それぞれ症状の度合いによっても見え方が違うため一概にはいえませんが、例として以下のような色の組み合わせが挙げられます。

  • 赤と緑
  • 橙と黄
  • 青と紫
  • 緑と茶
  • ピンクと白や灰
  • 赤と黒

また色覚異常の方に虹色を見せた際、例えば青緑系の同系統のわずかな違いを見分けられる場合もあれば、全く違って見える色を混合してしまうことも少なくありません。

色覚異常の診断や対処方法

診察する男性医師と女性患者(ノートパソコン)

色覚異常の検査方法は?

検査方法はいくつか挙げられます。色覚異常の疑いを検出したい場合は石原色覚検査表や標準色覚検査表を用います。
色覚の程度判定を行いたい場合はパネルD-15という色が少しずつ違うパネルを順番に並べる検査方法がとられ、色覚異常の有無や日常生活で色の識別に問題がないかどうか調べるのです。これらの検査方法は色覚に異常があるかどうかは判断できますが、医学的に確定はできません。
確定診断を行いたい場合、アノマロスコープという機器を用います。特殊な機器のため一般の眼科専門医には置いていないことが多く、大学病院や色覚専門医で検査が受けられます。仕事の関係で確定診断を受けたい場合、アノマロスコープ検査ができるかどうか調べてから専門医を受診しましょう。

色覚異常の対処法を教えてください。

日常生活において色に関する間違いやすい環境を無くしていくことが大切です。色覚異常の方は薄暗い場所では同じような色に見えてしまうことがあるため、クローゼットなどから物を取り出す際は明るい環境下で確認しましょう。
お子さんが色覚異常の場合は、箸・筆記用具・歯ブラシなどの小さい物は色ではなく、触り心地で覚えるようにすると間違いが少なくなるでしょう。クレヨンや色鉛筆などは色名が書かれている物を用意し、色名で覚えるよう教えてください。
また、洋服などはパステルカラーやくすみ系の色を使っている物は選ばず鮮やかではっきりとした色合いの物を選ぶと1人でも判別しやすいでしょう。また物などのほか食べ物の色が分かりにくい場合もあり、新鮮な色が傷んで見えてしまうこともあります。
1人で対処せずに、ときに周りのサポートも受けながら日常生活を送るようおすすめします。色覚異常の方は色以外の情報を利用しながら生活を送っていくことで、色の判断ができるようになる能力が身に付いてくるのです。

色覚異常は治療できますか?

残念ながら現段階では有効な治療法はありません。先述したような対処法を行い色に関する訓練を行うことで、色覚検査表が読めたり治ったと思い込んだりするケースは珍しくありません。
しかし医学的根拠はないため、治るとはまた違います。多くの場合、日常生活で困ることは少なく、社会的背景においても一昔前に比べ学業や仕事に関しての差別も少なくなり理解されてきています。色覚異常が治らないからといって不安に感じることはないでしょう。

色覚異常の注意点

赤信号

日常生活で気を付けるべきことを教えてください。

色覚異常を持っている方は、さまざまな物を色でなくても見分けられるため日常生活に困ることは少ないです。とくに2型色覚の方は自身で色覚異常だと認識していると、自然に対応能力が身に付くものです。
ただし、色覚異常の方が色を間違えやすい条件下の1つとして暗い環境が挙げられます。例えば夕暮れ時や雨が降っている環境下では、信号の赤色が見えにくく判断がつきにくいです。
また1型色覚の方は赤色が薄暗く見えるため、信号や運転する方は前の車のテールランプに気がつきにくいことがあり、思わぬ事故に繋がることも考えられます。明るかったら見えるかといったらそうではなく、晴天時もランプが見えにくいです。赤色が見えにくいことを念頭において生活するよう心がけましょう。

学校や職場で注意するべきことはありますか?

学校生活において例えば緑色の黒板に赤色のチョークで書いた場合、見えにくいと感じるでしょう。ただし時代が進むにつれ色覚異常の方への理解が進み、教員は赤色チョークの使用を控え、色のバリアフリーに配慮している教科書に切り替わり誰でも見やすいように色使いが工夫されています。
進学や就職に関しても厚生労働省から根拠のない採用制限は行わないよう指導しているため、制限はあまりありません。ただし職業選びに関して、パイロットなどの航空乗客員・自衛官・警察官など、色覚により制限を受ける場合があるため、募集要項をよく確認しましょう。
ほかにも印刷・塗装・野菜や魚などの生鮮食品を扱う職種も、色の判断が必要となるため、ときに周りへの理解を求めたりサポートが必要なこともあります。多くの学校や職場に制限はありませんが、自己責任で物事を進めたり選んだりしなければいけない場面もあることを覚えていてください。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

色への認識は人それぞれ違うため、自身が色覚異常だと気が付かないこともあります。「大人になり適性検査を受けたら発覚した」というケースも珍しいことではありません。治療法がないため治ることはありませんが、心配することはないでしょう。
色が分からないことへ不安になったり恐怖心を持ったりするのではなく、個性の1つとして捉えることが大切です。人は誰しも同じ感性の方はいません。また、例えば信号の色が分かりにくいなどの日常生活においてのさまざまな注意点を知るためにも、色への認識を知ることは大切です。お子さんに色覚異常の症状がみられた場合、ことあるごとに色を聞く・驚きの声を上げることは控えてください。
何気ない一言や親の表情で子供は「自分は異常なのでは」と感じ取ってしまいます。自然に色を伝えサポートし、気になるようであれば検査を行ってください。色覚検査は学校でも受けられます。検査の結果、異常の疑いがあるなら専門医に相談しましょう。

編集部まとめ

キャップをかぶった後ろ姿
特定の色の認識が難しいと感じる色覚異常の方がいることは、珍しいことではありません。多くの方は先天性であることが多く、生まれながら色への認識が異なっています。

色覚異常だと気が付かないまま日常生活を送っていると、危険に晒されることも考えられます。色の見え方に少しでも気になることがあるなら、検査を受けてみましょう。

時代が進むにつれ色覚異常の方への理解や配慮が進みつつありますが、当事者からすると不便に感じることもまだまだあるでしょう。

周りやお子さんに色覚異常の方がいる場合、サポートし理解を深めるよう努めてください。

この記事の監修医師