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「抗がん剤で髪の毛が抜けない人」の特徴はご存知ですか?医師が徹底解説!

 公開日:2025/09/25
「抗がん剤で髪の毛が抜けない人」の特徴はご存知ですか?医師が徹底解説!
抗がん剤で髪の毛が抜けない人の特徴とは?メディカルドック監修医が抗がん剤で髪の毛が抜けない人の特徴・抗がん剤投与による脱毛の原因・脱毛はいつからいつまで続くか?・対処法などを解説します。
鎌田 百合

監修医師
鎌田 百合(医師)

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千葉大学医学部卒業。血液内科を専門とし、貧血から血液悪性腫瘍まで幅広く診療。大学病院をはじめとした県内数多くの病院で多数の研修を積んだ経験を活かし、現在は医療法人鎗田病院に勤務。プライマリケアに注力し、内科・血液内科医として地域に根ざした医療を行っている。血液内科専門医、内科認定医。

「抗がん剤」とは?

抗がん剤とは、がん細胞の増殖を抑える効果が期待できる薬のことを言います。抗がん剤は、細胞障害性抗がん剤(狭義での抗がん剤)、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬の3つに分けられます。中でも細胞障害性抗がん剤は、細胞が増殖する仕組みの一部を阻害することで、がん細胞を攻撃する薬です。そのため、がん以外の正常な細胞にも影響が出てしまうことが多いです。副作用として、吐き気や食欲低下、口内炎、下痢、脱毛、しびれなどがみられることがあります。 がんに対して抗がん剤を使用して治療を行う場合、これらの薬剤を組み合わせて治療する場合が多いです。治療に伴い、どのような副作用がみられるかはこの抗がん剤の組み合わせにより異なります。今回は細胞障害性抗がん剤で多くみられる脱毛を解説します。

抗がん剤で髪の毛が抜けない人の特徴

抗がん剤の種類や投与量・方法

抗がん剤の中でも免疫チェックポイント阻害薬単独・分子標的薬単独の使用では、脱毛は比較的起こりにくいです。しかし、細胞障害性抗がん剤治療と組み合わせているときや頭部への放射線治療と組み合わせているときには起こります。 また、細胞障害性抗がん剤の中でも脱毛の副作用が出やすい薬剤があります。例えば、タキサン系薬剤(ドセタキセル・パクリタキセルなど)というグループに属する抗がん剤では80%以上、抗トポイソメラーゼ薬(ドキソルビシンなど)では60~100%、アルキル化薬(シクロホスファミドなど)では60%以上で脱毛を生じやすいです。代謝拮抗薬(フルオロウラシルなど)では10~50%程度です。脱毛を起こしやすい薬剤を組み合わせて治療を行った場合には脱毛を生じる割合は高くなり、症状も重症化します。 総合的には、細胞障害性抗がん剤治療を受けている方の少なくとも65%、分子標的薬治療を受けている方の15%、免疫療法単独では2%未満、頭部放射線治療の患者さんのほぼ100%でこうした脱毛が発生します。

頭皮冷却による治療

頭皮冷却療法は、化学療法の前、治療中、治療後に専用のキャップをかぶり頭皮を冷やします。頭皮を冷却することで頭皮の血流を減少させて毛母細胞への細胞障害性抗がん剤の影響を少なくし、脱毛の抑制効果を期待するものです。「頭部冷却システムDigniCap Delta」 「Paxman Scalp Cooling システムOrbis」の2種類のシステムが製造承認されています。 副作用は、頭痛や寒気による不快感などです。この治療は、現在のところ保険が適応されておらず高額、受けられる施設も限られています。また、頭皮冷却療法の脱毛抑制効果について、蓄積されたエビデンスがありガイドラインで推奨のある疾患は乳がんのみです。

個人差

同じ抗がん剤を使用しても、脱毛の副作用があるかどうかや、その重症度には個人差があります。一般的に脱毛を起こしやすい薬剤を複数組み合わせて治療を行った場合や、そうした薬剤で長く治療を続けた場合には脱毛を生じる割合は高くなり、頭皮への影響も大きくなるといえます。

抗がん剤投与による脱毛の原因

毛母細胞へのダメージ

通常発毛サイクルは、「成長期」→「退行期」→「休止期」という毛周期を繰り返しています。正常では2~6年ある発毛サイクルですが、実は、サイクルのうち2~6年のほとんどの期間が「成長期」の段階です。 抗がん剤は分裂が盛んな細胞に影響しやすいです。成長期の毛母細胞の細胞増殖や分化が抗がん剤により阻害されると、成長期が短縮し、体毛が成長する前に抜けてしまう成長期脱毛が生じます。

間違った頭皮ケア

洗髪時の脱毛が気になり、洗髪を避けてしまう方もいるかもしれませんが、不潔な状態では毛穴が詰まって炎症を起こすことも考えられます。頭髪は清潔に保つようにしましょう。また、爪を立てたり、頭髪を強くこすったりすることは避けましょう。元々使用していたシャンプーをそのまま使いましょう。わざわざ低刺激のものに変更する必要はありませんし、発毛効果のエビデンスがあるといえるシャンプーは今のところありません。 治療中に育毛剤を使用することは、脱毛の予防効果を持ちません。頭皮の血行を促進することで、抗がん剤の影響が強くでてしまう可能性もあります。育毛剤の使用は治療終了後から行いましょう。アピアランスケアガイドライン2021年版でも化学療法後の脱毛に対するミノキシジル外用剤の発毛促進効果が期待されていますが、質の高いエビデンスではありません。また、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬による脱毛にはミノキシジルではなくステロイドの外用薬が使われますので注意しましょう。 これらのことに気を付けて、適切な頭皮ケアを行いましょう。

抗がん剤投与による脱毛はいつからいつまで続く?

抗がん剤使用による脱毛は、治療開始後平均18.0日頃から始まります。そして、治療終了から再発毛まで平均して3.4ヶ月です。脱毛してウィッグを使用した乳癌患者さんの平均ウィッグ使用期間は12.5ヶ月となっています。生えてきた髪質などは白髪・縮毛など元の髪質と異なることが多くみられますが、徐々にもとの髪質まで戻っていくことが期待できます。しかし、移植後慢性的に頭部皮膚炎が続いたり、分子標的薬で頭皮皮膚炎を起こした結果脱毛となってしまったなどの場合には永久的に脱毛してしまうこともあります。

抗がん剤投与による脱毛は抜けきるまでどれくらい?

通常頭皮の毛髪の9割程度が成長期にあるため 、大部分の毛髪が抗がん剤の影響を受けて抜け落ちる可能性があります。この抗がん剤の影響による脱毛は投与開始後1〜3週間後(平均18.0日後)に生じます 。脱毛の程度は治療内容により異なりますが、重症度が高いときは2〜3か月でほぼ完全な脱毛となる事が多いと言われています 。そして、治療終了後3か月後以降(平均3.4か月)で、発毛し始めることが多いです。すべての毛髪が抜け切るとは限りませんが、脱毛の症状が出やすい時期、持続する期間が分かっているとご自身の毛髪の経過の目安となると思います。

抗がん剤投与で毛が抜け始めた際の対処法

脱毛が始まる前の準備

脱毛が起こり、髪の毛や眉毛が抜けてしまうことは事前に分かっていても精神的な負担がかかります。なるべく、負担を軽くするためにも事前に準備をすることをお勧めします。 ・髪の毛は短く切っておくことをおすすめします。脱毛した時に抜け毛の量が少なく感じ、精神的なダメージを減らせますし、毛髪のケアそのものも簡便になります。 ・育毛剤は血行を良くすることで頭皮に抗がん剤の副作用が出やすくなる可能性があるため控えましょう。 ・ウイッグや帽子、バンダナなど気に入ったものを準備することもおすすめです。 ・ご自身の眉毛の写真を撮っておくと良いでしょう。毛髪だけではなく、眉毛も抜けてしまうこともあります。眉毛が抜けてしまうと上手く眉毛を書くことが難しくなることもあるため、脱毛前の眉の形を記録しておくとメイクしやすくなります。

脱毛開始後の頭皮のケア

脱毛が始まってからは、日常生活で以下のようなことに気をつけましょう。 ・抜け始めたときに、無理に抜くと毛根が傷ついてしまうこともあります。毛根が傷つくと発毛が遅れてしまうこともあるため、気をつけましょう。 ・頭皮は清潔に保ちましょう。洗髪をしないと毛穴が詰まってしまったり、炎症を起こすこともあります。シャンプーなどは、かゆみやかぶれが無ければ通常使用していたものを使用して問題ありません。 ・洗髪後は、ごしごしとタオルでこすらず、なるべく吸水性の良いタオルで押し当てて水分を吸収させるようにしましょう。 ・髪の毛がもつれない様にブラッシングすることは大切です。頭皮を刺激しないようにやさしくゆっくりとかしましょう。

「抗がん剤で髪の毛が抜けない人の特徴」についてよくある質問

ここまで抗がん剤で髪の毛が抜けない人の特徴などを紹介しました。ここでは「抗がん剤で髪の毛が抜けない人の特徴」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。

抗がん剤治療中に毛が生える人はいますか?

鎌田 百合鎌田 百合 医師

抗がん剤は余命を伸ばすと言えますが、抗がん剤を使わなかった場合の余命がどうなるかは、正直なところ誰にもわかりません。一般的に放置されたがんは時間が経つごとにそのまま大きくなったり、体内の別の場所へ転移したりしますが、人によってはそのまま大きくならないこともあるからです。がんの存在による痛みやつらさで生活の質が低くなっている場合、がん治療でがんを小さくして症状を和らげたりなくしたりすることも期待できます。まずは専門医のもとで診断とお勧めの治療についての説明を受けましょう。がんが大きくなるかどうかまだ初期のためわからず、専門医が経過観察を治療として指示する人もいます。主治医とよく話し合いましょう。

編集部まとめ 抗がん剤の脱毛中は、事前の準備が大切です

抗がん剤で治療を行う際に、さまざまな副作用が起こることがあります。抗がん剤の副作用の中でも、脱毛はQOLに影響を与える因子として上位に挙げられることが多いです。脱毛は、見た目から精神的なダメージを受けやすく、強い不安感を持つ方も多いようです。 しかし、抗がん剤の副作用による脱毛は、治療が終了した後には約3か月で発毛してきます。また、ウィッグなどを使用していた方でも約1〜2年程度で使用を必要としなくなるようです。この期間を快適に過ごす工夫を治療前から準備しておくと良いでしょう。

「抗がん剤」と関連する病気

「抗がん剤」と関連する病気は9個ほどあります。 各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。

外科の病気

消化器科の病気

呼吸器科の病気

血液内科の病気

婦人科の病気

  • 子宮がん
上記に挙げた病気は抗がん剤を使用するがんのうちの一部です。このほかにも様々ながんがあり、これに対し抗がん剤を使用した治療を行うこともあります。しかし、使用する抗がん剤はその方のがんの状態や、他の病状により異なります。ご自身の抗がん剤の副作用について主治医に確認をしましょう。

「抗がん剤」と関連する症状

「抗がん剤」と関連している、似ている症状は8個ほどあります。 各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 吐き気、嘔吐
  • 脱毛
  • 皮疹
  • しびれ
  • 下痢
  • 貧血
  • 白血球減少
抗がん剤を使用する際、抗がん剤の種類によってさまざまな副作用がみられます。上記以外の副作用もみられることも多いです。使用する抗がん剤の特徴を良く理解すると良いでしょう。そのためにも、主治医に治療前に相談しましょう。

この記事の監修医師