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「抗がん剤のクール」とは?抗がん剤投与が長くなりやすい病気も医師が解説!

 公開日:2025/11/05
「抗がん剤のクール」とは?抗がん剤投与が長くなりやすい病気も医師が解説!

抗がん剤のクールとは?メディカルドック監修医が抗がん剤のクールの数え方・間隔・抗がん剤投与が長くなりやすい病気・疾患などを解説します。

横田 小百合

監修医師
横田 小百合(医師)

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旭川医科大学医学部卒業。
都内の大学病院・がんセンターにてがん治療と緩和ケア診療に従事。現在はがん専門病院にて緩和ケア診療を行っている。
保有資格:医師、がん治療認定医、総合内科専門医、日本緩和医療学会認定医

「抗がん剤」とは?

抗がん剤は、がん細胞の増殖・進行を防いで死滅に導くための薬剤です。抗がん剤を使用した治療は化学療法とも呼ばれ、外科手術・放射線治療と並ぶがんの主な治療法のひとつです。また、がん治療はこれらの治療を組み合わせることが多いです。
抗がん剤のみで完治を目指す場合もありますが、手術前に病巣を小さくする目的で抗がん剤を使用したり、術後の転移・再発を防ぐ目的で抗がん剤を使用したりするなど、補助的な役割で用いられることも多くあります。

「抗がん剤のクール」とは?

がん薬物療法は、レジメンという投与計画書に則って行います。レジメンでは、治療に必要な抗がん剤の投与量・投与順序・投与速度のほか、何日間かけて・何日おきになどの治療の間隔も、がんの種類やがんの拡がりの程度によって決められています。

抗がん剤をつかった治療は1日や1回で終わるものではなく、レジメンで決められた投与過程を1〜2週間かけて行い、その後1〜2週間程度休薬します。これを複数回繰り返して行います。この1〜4週間かけて行う投与と休薬の1セットの抗がん剤治療の過程がクールと呼ばれます。

抗がん剤治療のレジメンは理論と経験則に基づいて決定され、実臨床の現場で世界的にデータが蓄積されて改良されて決められています。

抗がん剤のクールの数え方

抗がん剤治療のレジメンでは、治療間隔が決められています。レジメンで決められた抗がん剤の投与過程とその直後の休薬過程をひとまとめにして1~4週間かけて行う1クールが、複数回繰り返されて、そのレジメンが終了します。抗がん剤のクールの数え方は、この抗がん剤の投与過程とその直後の休薬過程をひとまとめにした期間を1クールとして、何クールかを数えるのです。クールの回数に決まりや制限があるレジメンと、ないレジメンがあり、同じ内容の治療が繰り返されればクールのカウントが増えていきます。1クール目、2クール目、3クール目と増えていき、この治療レジメンの3クール目の何日目などの表現をします。がん治療に深く関わっている医療従事者なら、この治療レジメンの何クールの何日目であれば、どのような抗がん剤の副作用が起きやすいかなどをあらかじめお伝えすることもあります。

抗がん剤のクール間隔とは?

抗がん剤を投与すると、少なからず患者さんの体には副作用が見られます。個人差はあるものの、起こりやすい副作用や時期などについてわかっている事も多いです。抗がん剤投与後に起きる副作用から患者さんの体が回復して次のクールを開始できることが一般的にわかっている間隔をもとに、レジメン内での1クールが休薬期間も含めて設定されています。休薬期間が長すぎると、抗がん剤でダメージを受けたがん細胞も回復して再増殖してしまうと考えられており、レジメンでは休薬期間も決まっています。

医師はどのような基準で抗がん剤の投与期間を短くする?

抗がん剤のレジメンでは、1クール内の投与期間や投与直後の休薬期間が決まっています。しかし、状況に応じてクール内の休薬期間を延ばすことがあります。休薬期間が伸びる以外にも、決められたレジメンよりも予定クール数を少なくして早期に終了することがあります。レジメン通りに抗がん剤が投与できないと、抗がん剤の投与期間は短くなり、当初想定していた抗がん剤の予定投与量よりも少なくなります。こうしてレジメンが予定通りにいかない場合、レジメンを当初より短く終了するというのは3つのパターンがあります。以下に説明します。

抗がん剤の副作用が強くでた場合

1つ目は、抗がん剤の副作用が強く出てしまい、有害事象共通基準(略称:CTCAE)と呼ばれる基準で重度にあたるグレード3以上が複数出た場合などです。治療は、抗がん剤をレジメンより減量したり、効果的な支持療法を新たに組み合わせたりしながら、続けられるように試みられます。しかし、残念ながら身体が回復せず、それ以上レジメンを継続できないこともあります。

本人が希望する場合

2つ目は、抗がん剤の副作用が中等度のグレード2以下であっても、患者さん自身がその副作用に耐えられなかったり、続けることそのものを希望されなかったりする、本人希望によるレジメンの中止です。

抗がん剤の治療効果が乏しいと判断された場合

3つ目は、抗がん剤レジメンを続けて複数回クールごとにおこなう効果の評価タイミングで、抗がん剤が治療効果に乏しいと判断された場合の、効果無効によるレジメンの中止です。

がんによっては3〜5、多い時では10以上のレジメンが規定されています。医療の進歩でレジメンは少しずつ増えている状況ですが、1つ目のレジメンが中止、2つ目のレジメンが中止となって、最後のレジメンが中止になると、抗がん剤による治療はそれ以上行われません。代わりに、それまでも支持療法として行っていた緩和ケア治療がメインの治療になります。

抗がん剤投与期間が長くなりやすい病気・疾患

乳がん

乳がんは進行がゆっくりであることも多く、抗がん剤の投与期間が長くなる場合があります。
ホルモン受容体陽性のタイプは、術後の補助療法が10年間推奨されています。

前立腺がん

前立腺がんでは、抗がん剤の投与期間が長くなることも多いです。
前立腺がんは、進行がゆっくりであることが多く、経過観察やホルモン療法などを数十年続けることがあります。

肺がん

肺がんの種類によっては抗がん剤の治療期間が長期になります。
肺がんの中でも分子標的薬治療が効果的なタイプは、副作用がほかの抗がん剤と比べて少なめなこともあり、何年も続けることがあります。

血液がん

血液がんでは、抗がん剤の治療期間が長期になる事が少なくありません。
濾胞性リンパ腫(FL)や慢性リンパ性白血病(CLL)など急性経過でない血液がんは、無治療経過観察期間が年単位であることが多く、治療開始となっても病状を長く安定させることを目的とした治療が長く続くことがあります。

「抗がん剤のクール」についてよくある質問

ここまで抗がん剤のクールについてなどを紹介しました。ここでは「抗がん剤のクール」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。

抗がん剤投与は何クール目が身体面で苦しいのでしょうか?

浅野 智子浅野 智子 医師

レジメンごとの違いや副作用の出かたに個人差があるため、一概には言えません。新しいレジメンを開始して投与のたびにダメージがどんどん蓄積してきますので、初回よりも3~5クール目ごろからは感染症にかかって高熱が出たり、貧血が進んでだるさがふえたりと、副作用も重くなってきがちといえるでしょう。苦しい症状が出てしまったら、次のクールから抗がん剤の投与量を減らすなども考慮されます。クール数を重ねるごとに本人が治療の体調の変化に慣れてきて、日常生活が送りやすく感じる方もいて感じ方は様々です。

まとめ 抗がん剤についての疑問は、そのままにせず担当医へ相談しよう

抗がん剤治療は決まったレジメンに沿って行われます。レジメンのクール数はがんの種類や拡がりによって決まります。がんを抑えることが目的ですが、1クールごとに抗がん剤投与と休薬を繰り返すごとに副作用が目立ってくることもあります。つらい症状は我慢せずに医療スタッフに相談してください。支持療法の追加や抗がん剤の減量でつらさを軽減できるかもしれません。また、つらい症状を我慢しながら治療を続けることがベストとも限らないので、どのように過ごしていきたいのかを考えながら、それを叶えるための適切な治療方法を家族や医療従事者と相談しながら決めていきましょう。

「抗がん剤」と関連する病気

「抗がん剤」と関連する病気は10個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。

循環器の病気

  • 心毒性

呼吸器の病気

  • 間質性肺炎

血液の病気

  • 骨髄抑制
  • 白血球減少
  • 血小板減少

消化器の病気

  • 肝機能障害

腎泌尿器の病気

  • 腎機能障害

その他の病気

抗がん剤治療中に現れる上記の疾患は、抗がん剤の副作用である可能性があります。
もしも上記の疾患の受診先とがん治療の病院が違う場合には、必ず抗がん剤治療中であることを医師に伝えてください。

「抗がん剤」と関連する症状

「抗がん剤」と関連している、似ている症状は6個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。

関連する症状

抗がん剤治療中に現れる上記の症状は、抗がん剤の副作用である可能性があります。症状が強い場合は、早めに主治医に報告し、治療計画を相談しましょう。

この記事の監修医師