「コーヒーの摂取でがんを予防」することはできる?医師が徹底解説!

コーヒーの摂取でがんを予防することはできる?Medical DOC監修医がコーヒーの摂取で予防することのできる病気・疾患・発症のリスクを上げやすい食べ物・がん予防のために大切な生活習慣などを解説します。

監修医師:
伊藤 陽子(医師)
目次 -INDEX-
「がん」とは?
日本における死因の第一位は「がん」です。がんは全体の死因の約1/4を占めており、非常に身近な問題となっています。「がん」とはどのような病気でしょうか?
「がん」は、喫煙や細菌・ウイルスなどの感染症、化学物質、放射線などのさまざまな要因が原因となり、正常な遺伝子が傷つくことで起こります。この遺伝子の傷を変異といいます。遺伝子変異によって無秩序に増殖し続けるようになった細胞の塊が腫瘍です。腫瘍には、良性腫瘍と悪性の「がん」があります。悪性の「がん」は、細胞が無秩序に増えながら周囲に浸潤したり、血液やリンパの流れに乗って転移したりする性質をもっています。
コーヒーの摂取でがんを予防することはできる?
「がん」は誰にでも発生する可能性があります。生活習慣や感染などさまざまな要因が、がんの危険因子となり得ます。がんを完全に防ぐことはできません。しかし、がんの原因となる危険因子を避けることや、がんを予防する可能性のある因子を積極的に取り入れることで、がんをある程度予防する事は可能です。
がんを予防する可能性があるものの候補の一つがコーヒーです。コーヒーに含まれるポリフェノールは抗酸化作用が高く、がんの予防効果として期待できます。この中でもクロロゲン酸はポリフェノールの一種で強い抗酸化作用があります。このクロロゲン酸は、がんの増殖を抑制する効果もあると考えられ、コーヒーのがんに対する予防効果について今までいろいろな研究がなされてきました。今回はコーヒーのがんへの予防効果について焦点を絞り、解説いたします。
コーヒーの摂取で予防することのできる病気・疾患
ここでは、コーヒーの摂取でがんの発生リスクが低くなる可能性のある病気についてがんを中心に解説いたします。
肝臓がん
コーヒー摂取量が多い群では肝がんのリスクが減少する傾向がみられました。肝臓がんを予防するために、適量のコーヒー摂取が有効であると考えられています。
コーヒーは肝機能を改善する効果があると考えられています。この効果は、コーヒーに含まれるクロロゲン酸やカフェインが関与しているのではないかと言われています。
子宮体がん
コーヒーの摂取量が多いと子宮体がんになりにくいと報告されています。コーヒーを飲む量が少ないグループと比較して、3杯以上飲むグループでは子宮体がんのリスクは0.38と減少しているという結果でした。コーヒーがなぜ子宮体がんを予防するのか、はっきりとした機序はわかっていません。コーヒーがインスリン分泌を促進することが子宮体がんの発症に影響しているのではないかと考えられています。
女性の腎がん
女性においてコーヒー摂取が腎がんを予防すると報告されています。女性において1日1~2杯コーヒーを飲む群では飲まない群と比較して腎がんのリスクが62%低くなっているという結果でした。しかし、この傾向は男性では見られませんでした。
女性の大腸がん
日本人における大腸がんとコーヒー摂取の関係性について研究されています。この研究では、
女性では、コーヒーをほとんど飲まない群と比較して1日に3杯以上飲む群で大腸がん全体のリスクが約3割、浸潤がん(診断時にはすでに粘膜を超えて広がっているがん)のリスクは約4割低いと報告されています。男性ではこの傾向は認められませんでした。
膵臓がん
日本におけるコーヒー摂取量と膵がんの関係性についての研究では、男性においてコーヒー摂取により膵がんのリスク低下が認められました。女性ではこの傾向は認められませんでした。男女による差の理由ははっきりせず、今後の研究が待たれます。
このように限定的ではあるものの数々のがんにコーヒー摂取が良い影響を与えると報告されています。また、生活習慣病、心疾患や脳血管疾患のリスク低下にもつながるため、コーヒーを積極的に楽しむことも良いでしょう。
がん発症のリスクを上げやすい食べ物・飲み物
これまでの研究から、がん発症のリスクとなる食べ物や飲み物が、いくつかわかっています。ここでは、このうちのいくつかの食べ物・飲み物を解説いたします。
アルコール
過剰なアルコールの摂取はがんの危険因子となります。特に肝がん、食道がん、大腸がんと強い関連が示されており、女性でも乳がんのリスクが高くなる可能性が示されています。また、元々女性の方が体質的にアルコールの影響を受けやすいと考えられています。アルコールの適正な摂取量としては、男性で純エタノール23g未満、女性でその半分程度です。純エタノール23gは日本酒1合、ビール大瓶1本(633ml)、焼酎で2/3合、ウィスキーダブル1杯、ワイングラス2杯程度です。適度な量での飲酒を心がけましょう。
塩分・塩蔵食品
いくら、塩辛などの塩蔵食品は胃がんの危険因子です。胃がんを予防するためには、塩分を控えめにすることが大切です。また、減塩は高血圧、腎臓病などの生活習慣病の発症低下にもつながります。普段から減塩を心がけましょう。「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、1日当たりの塩分摂取目標値を男性で7.5g未満、女性で6.5g未満とすることを推奨しています。元々日本人は、塩分の摂取量が多いと言われています。素材の味を楽しむことや、だしを効かせたり、酢やからしなどを加えて味の変化をさせて塩分を減らす工夫をするのも良いでしょう。日ごろから減塩に努めることでがんを予防しましょう。
過剰なカロリー摂取
過剰にカロリーを摂取し続けることで、肥満となります。肥満は食道がん、膵臓がん、肝臓がん、大腸がん、閉経後の乳がん、子宮体がん、腎臓がんの危険因子です。がんを予防するために適正なカロリーで、バランスの良い食事を摂取することをお勧めします。
熱すぎる食べ物・飲み物
熱い飲み物や食べ物をそのまま食べることは、粘膜への刺激となります。このため、熱すぎる飲食物を摂取し続けることは、食道がんの危険因子となります。食道粘膜への刺激とならないように、熱い食べ物は少し冷ましてからゆっくり食べる様にすることが大切です。がんの予防のためにも、普段の食事の習慣についても気を付ける必要があります。注意しましょう。
がん予防のために大切な生活習慣
ここでは、がんを予防する上で大切であると考えられる生活習慣について解説いたします。参考にしながら、がんを予防するようにしましょう。
野菜や果物の適正摂取・バランスの良い食事
野菜や果物を摂取することが口腔がん、咽頭がん、肺がん、大腸がんの予防につながると言われています。肉や炭水化物ばかりで野菜や果物の摂取量が少なくならないように、普段から食事のバランスに気を付ける必要があります。また、前述したように肥満が様々ながんの危険因子となっていることや、がん以外の生活習慣病発症にも関係していることから、適正なカロリー摂取とすることも大切です。普段から食事に気を付け、適正なカロリーとバランスの良い食事をすることががんの予防になると考えられます。
適度な運動
適度な運動をすることががんを予防することも報告されています。結腸がん、閉経後の乳がん、子宮体がんのリスクは適度な運動により改善されます。また、適度な運動は肥満を予防することにも有効です。前述のように肥満もがんのリスクとなる事から、適度な運動をして肥満を防ぐ事でもがんの予防となります。また、適度な運動が、がんの予防となります。日ごろから運動をする習慣を身につけましょう。
感染症の検査・治療・予防
感染症が関係して発症するがんはいくつか報告されています。胃がんの原因となっているヘリコバクター・ピロリ菌や、肝臓がんの原因となっているB型・C型肝炎ウイルス、子宮頸がんや陰頸がん、口腔がん、中咽頭がんの原因となっているHPVウイルス(ヒトパピローマウイルス)が有名です。このほかにもがんの原因となる感染症があります。これらの原因となる感染症の検査をして、必要があれば治療する事は将来がんへ進行することを予防することができます。また、感染していることが分かることで、定期的に検査をして早期にがんを発見することにもつながります。感染症を予防するためのワクチンがあるものは、ワクチンを接種をすることでがんを予防することが可能となります。健康診断などの機会を利用して、なるべく必要な感染症の検査を受けましょう。
禁煙
喫煙は肺がんをはじめ多くのがんにおいて危険因子となります。このため、禁煙することはさまざまながんを予防することにつながります。また、喫煙はご自身だけではなく、周囲の人へも健康被害を及ぼします。まず本数を減らすことからでも始めてみてはいかがでしょうか。ご自身だけではなく、周囲の大切な人のためにも禁煙をしましょう。
節酒
過剰な飲酒はさまざまながんの危険因子であることをお伝えいたしました。アルコールを飲むことで体に取り込まれたエタノールはアセトアルデヒドに代謝されます。このアセトアルデヒドには発がん性物質であるため、がんの発症に影響すると考えられています。このため、アルコールを過度に摂りすぎないことが非常に大切です。先に解説したアルコールの適量(男性で1日あたり純エタノール23g、女性ではその半分)を守り、適量で楽しみましょう。
「コーヒーによるがん予防」についてよくある質問
ここまでコーヒーによるがん予防などを紹介しました。ここでは「コーヒーによるがん予防」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
一日にどれくらい飲むとがんを予防できるのでしょうか?
伊藤 陽子(医師)
コーヒーはがんの予防効果など良い効果が期待できる反面、多く飲みすぎると頭痛や不眠、動悸など起こることがあります。コーヒー5杯以上ではこのような症状が出るため、コーヒーを飲むのであれば5杯以下にとどめた方が良いでしょう。5杯以下でも、胃の痛みや違和感を感じた場合にはコーヒーにより胃に負担がかかっている可能性があるので控えましょう。
編集部まとめ コーヒーはがんの予防効果がありますが、適量で楽しみましょう!
コーヒーの成分の一つであるクロロゲン酸は抗酸化作用などを持ち、がん細胞の増殖を抑える効果があると言われています。今までの研究でも、さまざまながんに予防効果がある事が分かっています。これまでの研究では、肝臓がん、膵臓がん、腎がん、女性の大腸がん、子宮体がんなどでコーヒーによるがんの予防効果が報告されてきました。このようにコーヒーを摂取することががんの予防につながります。しかし、過剰に摂りすぎると胃腸障害や不眠、動悸などの体に悪影響を及ぼす可能性があり、一日5杯以下程度の量で適度にコーヒーを飲むことを楽しみましょう。
「コーヒーによるがん予防」と関連する病気
「コーヒーによるがん予防」と関連する病気は5個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
婦人科の病気
上記のがんはコーヒーを適量飲むことでがんの発症が予防できるとの報告がされています。このほかのがんにも、コーヒーが予防効果があるのではないかと考えられているものもあり、今後の研究が待たれます。しかし、コーヒーは過剰に摂ることで頭痛、不眠、胃腸障害など悪い影響が出ることも考えられ適量摂取することがお勧めです。
「コーヒーによるがん予防」と関連する症状
「コーヒーによるがん予防」と関連している、似ている症状は6個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 頭痛
- 不眠
- 動悸
- 心窩部痛
- 嘔気
- 黒色便
コーヒーを飲むことは、がんの予防効果など良い効果も期待できますが上記の様な悪い影響が出ることもあります。過剰な摂取はせず適量でコーヒーを楽しむようにしましょう。
参考文献