「肝臓がん手術後に出る痛み」とは?出た時の対処と早く回復する方法を医師が解説!

肝臓がんの手術後に伴う痛みで、辛さを実感している方は多いことでしょう。少しでも痛みを和らげるためには、どのような対策を取るべきか気になるところです。
本記事では、肝臓がんの手術後の痛みの特徴や対策法を紹介します。
少しでも手術後の体力回復がスムーズに進められるよう、痛みを和らげるコツを身に付けましょう。

監修医師:
山本 康博(MYメディカルクリニック横浜みなとみらい)
東京大学医学部医学科卒業 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医 日本内科学会認定総合内科専門医
目次 -INDEX-
肝臓がんとは
肝臓がんとは肝臓にできるがんで、大まかに原発性肝がんと転移性肝がんの2種類があります。肝臓がんになる原因は、B型肝炎やC型肝炎などのウイルス性肝炎・過度な飲酒・生活習慣病などです。
肝臓は「沈黙の臓器」ともいわれており、初期症状は目立った症状がなく自覚が難しいといわれています。しかしがんに伴う肝機能の衰えが生じてくると、食欲不振やむくみ・腹部の痛み・圧迫感などの症状が出てきます。
肝臓がんの治療方法は、肝切除・肝移植・穿刺局所療法・塞栓療法・全身薬物療法・放射線治療の6つです。
肝臓がん手術後にでる痛みの特徴について
肝臓がんの手術の際は身体の皮膚や筋肉、細胞などにダメージを与えることになるため、麻酔の効果が切れ始めると痺れやツッパリ感などの痛みを感じやすくなります。
手術によっては末梢神経自体にダメージが及ぶこともあり、場合によっては激痛を伴うこともあります。
数ヶ月は痛みが残る
手術後の数ヶ月は、痛みが残るといわれています。ひきつり感があったり、しびれが続いたりと人によって痛みの感じ方はさまざまです。
痛みを和らげるためには、手術後は安静にし痛み止めによる処方を受けることが必要です。
1ヶ月くらいで軽作業ができる程度
手術から約1ヶ月経過すると、徐々に痛みが落ち着いてきます。順調に身体の回復が進めば、約1〜2週間で退院し日常生活を過ごすことが可能です。
身体に負荷がかかる肉体労働や激しい運動などは難しいですが、ウォーキングやストレッチなどの軽めの運動・簡単な家事などは問題ありません。
手術法により痛み方が違う
肝臓がんの手術後の痛みは、手術法によって変わります。肝臓がんに限らず手術で生じる痛みのほとんどは、身体の皮膚・筋肉・細胞のダメージによるものです。そのため、切開部分の領域によって痛み方が異なります。
例えば開腹肝切除は、約40〜50cmにわたって切開する必要があり強い痛みを伴いやすいです。しかし腹腔鏡肝切除やカテーテル治療の場合は傷の範囲が狭いため、開腹肝切除と比較して痛みが少ないといわれています。
肝臓がんの症状次第では痛みが少ない手術法で治療可能なので、担当医師に相談しましょう。
肝臓がん手術後に痛みが出たときの対策法
肝臓がんの手術後の痛みを軽減させるためには、安静に過ごすことが欠かせません。しかし、耐えられないほどの痛みが生じる場合は、担当医師に相談しましょう。
昔から「がまんは美徳」といわれていますが、辛い痛みを我慢すると、痛みによる不眠症や食欲不振など手術後の回復に影響が出やすくなります。手術後の回復をスムーズにするためにも、痛みを和らげる対策法を取りましょう。
痛み止めを使用する
肝臓がんの手術後は痛みを軽減させるために、鎮痛薬投与や神経ブロックなどの痛み止めの処置が施されます。鎮痛薬には、非ステロイド性抗炎症薬やアセトアミノフェン・モルヒネ・オキシコドンなどさまざまです。これらの痛み止めを服用することで、手術後の痛みを抑えられます。
ただし痛み止めを服用する際は、便秘や吐き気・眠気・混乱などの副作用のリスクも考えなければなりません。万が一症状が現れた場合は、担当医師に相談し下剤を組み合わせたり、使用量を減らしたりと調整しましょう。
受診する
退院後の日常生活でも、痛みや不快感などが続く場合があります。手術後から数ヶ月の痛みは、慢性痛であるケースがほとんどです。
もしこれらの痛みで悩んでいる場合は、医療機関や麻酔科・形成外科・ペインクリニックを受診し抗けいれん薬や抗うつ薬などで対処しましょう。
治療法を相談する
手術後の痛みを緩和させるためには、事前に治療法を相談するのもおすすめです。肝臓がんの場合は腫瘍の大きさやがんの進行度合い、ステージなどによって治療方法を選択することが可能です。
がんの状態によっては、カテーテルや開腹肝切除など傷の規模が少ない手術方法で治療が受けられます。
しかし症状によっては切開が必要になる場合もあるので、担当医師と相談し治療方法を決めましょう。
肝臓がん手術後の回復をよくするためにできること
肝臓がんの手術後に身体の機能をもとの状態に戻すためには、日々のケアが欠かせません。肝臓がん手術後の回復をよくするためには、どのようなケアを徹底するべきなのか紹介します。
軽い運動
手術から1ヶ月が経過した後は、適度に軽い運動をしましょう。入院期間中は、体力や筋力などが衰えている可能性があります。筋力や体力を回復させるためにも、軽めの散歩やスクワッドなど身体を動かす習慣が必要です。筋力を増やすことで、肝臓の機能回復にもつながりやすくなります。
ただし腹筋や重りを付けた筋力トレーニング、激しいスポーツなどは身体に負担がかかるので注意が必要です。
特にお腹に力を入れるトレーニングは、腹壁瘢痕(ふくへきはんこん)ヘルニアを起こすリスクがあります。肉体労働でも、身体への負担がかかる可能性があれば控えましょう。
進行を防ぐためのストレッチ
肝臓がんの手術後のケアには、軽い運動に加えストレッチも欠かせません。肝臓がん治療後のストレッチには、肝炎体操がおすすめです。
簡単にできる体操プログラムとなっており、背中の筋肉やお尻・脚などさまざまな部位で無理なくストレッチができます。
肝臓がんのみならず関節症やうつ病などの疾患を抱えている方でも受けられるので、無理のない範囲でエクササイズをしましょう。
禁酒につとめる
肝臓がんの治療後は、禁酒につとめましょう。肝臓はアルコールを解毒する働きを持っているため、飲酒をしてしまうと負担がかかり再発にもつながりやすくなります。
もし肝臓がんの治療後でも飲酒を楽しみたい場合は、担当医師の指示の下、1日の飲酒量の目安を把握しましょう。1日のアルコール摂取量は20g程度といわれています。1日の摂取量を超えないようにしたり、アルコールを飲まない日を設けたりして工夫しましょう。
食事で十分な栄養補給を行う
肝機能を再生させるためには、タンパク質・ミネラル・ビタミンなど豊富な栄養成分を補給することが重要です。野菜や果物などの植物性食品は、栄養豊富なので積極的に摂取しましょう。
反対にアルコールや塩分高めの食品・ファーストフード・ジュース類は生活習慣病のリスクがあるため控えるのが望ましいです。
体重管理を行う
肝臓がんの治療後は、体重管理を徹底しましょう。肝臓がんの治療後は、食欲不振によって体重減少が起きたり、食習慣の乱れによって体重が増加しやすくなったりします。
また手術後の肝臓は機能が弱っていることもあり、腹水がたまったり、足がむくんだりする場合もあります。
体重の変化は肝機能の状態を把握するうえでも重要な指標となるので、毎朝欠かさず測定しましょう。
肝臓がん手術後の痛みについてよくある質問
ここまで肝臓がんの手術後の痛みの特徴や痛みが出たときの対策法などを紹介しました。ここでは「肝臓がんの手術後の痛み」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
痛みに合わせて赤みや液体がでたら受診すべきですか?
山本 康博(医師)
肝臓がんの手術後に痛みと同時に赤みや液体などの症状が出た場合は、速やかに医療機関を受診しましょう。炎症部位によっては、ケロイドと呼ばれる赤く膨れ上がる疾患が出る場合もあります。痛み止めに加え、塗り薬やステロイド注射・飲み薬などさまざまな処置を施すことで症状を落ち着かせられます。
痛みで再発しているとされることがありますか?
山本 康博(医師)
手術後に再び痛みが出た場合は、肝臓がんの再発が疑われます。1度手術したとしても肉眼では視認しにくいほどの小さながん細胞が残っていたり、転移していたりするケースは珍しくありません。肝臓がんは5年以内に再発しやすい病気ともいわれているので、手術後の身体に異常があれば医療機関で診察してもらいましょう。
編集部まとめ
本記事では、肝臓がんの手術後の痛みの特徴と対策法を解説しました。
肝臓がんの手術後で痛みを和らげるためには、鎮痛薬投与や神経ブロックなどで対策をすることが必要です。
また、カテーテルや開腹肝切除など傷の規模が少ない手術方法を選択することで、手術後の痛みを抑えられます。肝臓がんの手術後で辛い痛みがあれば、医療機関に相談しましょう。
肝臓がんと関連する病気
「肝臓がん」と関連する病気は6個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
B型肝炎やC型肝炎・肝硬変など慢性肝疾患を患っている方は、肝臓がんを発症しやすいです。また脂質異常症や糖尿病などの生活習慣病を抱えている方も注意しなければなりません。
肝臓がんと関連する症状
「肝臓がん」と関連している、似ている症状は5個程あります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 食欲不振
- 倦怠感
- むくみ
- 腹部でのしこりや痛み
- 腹部の圧迫感
肝臓がんは沈黙の臓器と呼ばれているように、初期の段階では症状が出にくいです。しかし症状の進行に伴い肝機能が低下すると、黄疸やむくみ・かゆみなどさまざまな症状が現れます。
参考文献