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【新発見】治らないと言われている糖尿病「100人に1人は寛解」との研究報告

 公開日:2023/06/13
2型糖尿病患者 約1%が寛解に至るとの研究報告

新潟大学らの研究グループは、「2型糖尿病患者の臨床データを解析した結果、糖尿病発症例の100人に1人は血糖値が正常化し薬物療法に至らない、もしくは不要となることが明らかになった」と発表しました。このニュースについて竹内医師に伺います。

竹内 想

監修医師
竹内 想(名古屋大学医学部附属病院)

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名古屋大学医学部附属病院にて勤務。国立大学医学部を卒業後、市中病院にて内科・救急・在宅診療など含めた診療経験を積む。専門領域は専門は皮膚・美容皮膚、一般内科・形成外科・美容外科にも知見。

今回の発表の内容とは?

今回、新潟大学らのグループによって行われた研究内容について教えてください。

竹内 想 医師竹内先生

今回紹介する研究は、新潟大学らの研究グループが実施したもので、学術誌「Diabetes, Obesity and Metabolism」に掲載された内容となります。研究グループは、18歳以上の日本人2型糖尿病患者4万8320例について、寛解および寛解から1年後の再発の発生率と関連因子を検討しました。このとき、寛解の定義については、「血糖降下薬を中止または未使用で、少なくとも3カ月間HbA1c値6.5%未満を維持している場合」としています。

研究グループが検討した結果、中央値で5.3年の追跡期間中に寛解に至ったのは3677例でした。1000人/年あたりの寛解発生率は10.5となりました。とくに寛解発生率が高くなった因子をみると、薬物療法未施行では1000人/年あたりの寛解発生率が21.7、HbA1c値7.0%未満では27.8、1年間の減量幅が5.0~9.9%は25.0、1年間の減量幅が10%以上では48.2%でした。ただ、こうした寛解例の67.7%の2490例が1年以内に再発する結果になりました。再発の関連因子を観察開始時の背景から検討したところ、糖尿病診断後の期間が長いことや、BMI低値、観察開始時に比べて体重が増加した例で再発しやすい傾向がみられたとのことです。

今回の結果について、研究グループは「日本人2型糖尿病患者における寛解および再発の発生率と予測因子が初めて明らかになった。これまで『糖尿病は治らない』と⾔われていたが、たとえ2型糖尿病と診断されても早期から⽣活習慣改善や薬物治療に取り組み、減量することで寛解は可能であり、体重の適正な管理が再発の予防に重要である可能性が⽰された」と結論付けています。

2型糖尿病とは?

今回の調査対象になった2型糖尿病とは、どのような病気なのでしょうか?

竹内 想 医師竹内先生

いくつか種類がある糖尿病の中でも、患者数が最も多いのが2型糖尿病です。遺伝的な理由によるインスリン分泌能力の低下に加えて、環境的素因としての生活習慣の悪化に伴うインスリン抵抗性が起こり、インスリンが相対的に不足した場合に2型糖尿病を発症します。一般的に生活習慣病と呼ばれる2型糖尿病ですが、インスリン分泌能力の低下が鍵を握ります。2型糖尿病患者は、生活習慣が乱れることだけではなく、糖尿病になりやすい遺伝的な理由を持っているとも言えます。ゲノム解析では、2型糖尿病の要因となる多くの遺伝子が報告されており、中でもKCNQ1という遺伝子は、日本人の2型糖尿病発症に非常に強く関連していることがわかっています。2型糖尿病の治療法としては、インスリン療法やインスリン以外の薬物療法、GLP-1受容体作動薬という注射薬や内服薬などが使われています。

発表された内容への受け止めは?

今回発表された研究結果についての受け止めを教えてください。

竹内 想 医師竹内先生

2型糖尿病は一度罹患すると治らないことが多い病気とされてきました。しかし今回の研究では、2型糖尿病患者のうち100人に1人は薬物療法が不要となるケースがあることがわかりました。心理的にも「ずっと薬を飲み続けないといけません」と言われるよりは、「薬が不要になる場合もあります」と言われる方が、食事や運動に注意して頑張ろうという気にもなりやすいのではないでしょうか。

まとめ

新潟大学らの研究グループが「2型糖尿病患者の臨床データを解析した結果、糖尿病発症例の100人に1人は血糖値が正常化し薬物療法に至らない、もしくは不要となることが明らかになった」と発表したことが今回のニュースでわかりました。糖尿病は「ひとたび発症したら治らない」とも言われてきた病気なだけに、今回の発見は注目を集めそうです。

この記事の監修医師