「食事中にワイン」食事以外での飲酒と比べて糖尿病の発症リスク低下
アメリカのテュレーン大学の研究グループが飲酒のタイミングと2型糖尿病の発症リスクとの関連を検討したところ、「食事以外で飲酒する習慣を持つ人と比べて、食事中にワインを飲む習慣を持つ人の2型糖尿病発症リスクは有意に低くなった」と発表しました。このニュースについて郷医師に伺いました。
監修医師:
郷 正憲(医師)
研究グループが発表した内容とは?
今回、アメリカのテュレーン大学の研究者グループが発表した内容について教えてください。
郷先生
今回紹介する研究は、アメリカのテュレーン大学によるもので、UK Biobankの登録者のうち2型糖尿病を発症していない飲酒者31万2388人を対象に実施されました。日常的な飲酒タイミングは、43.9%が「食事中に飲酒」、20.2%が「食事以外のタイミングで飲酒」、35.9%が「飲酒タイミング不定」という割合で分類されました。
解析の結果、「食事以外のタイミングで飲酒」のグループと比べて、「飲酒タイミング不定」グループでは2型糖尿病の発症リスクが8%低く、「食事中に飲酒」グループでは12%低くなりました。また、アルコールの種類ごとに検証すると、「食事中の飲酒による2型糖尿病の発症リスクの低下傾向について、ワインでは認められたが、ビールや蒸留酒では認められなかった」とのことです。
研究グループは「健康な飲酒者が食事中に中等量のアルコールを摂取すると、食事以外のタイミングで飲酒した場合と比べて、2型糖尿病の発症リスクが有意に低下することが示された」と結論付けています。さらに、「今回の知見は、飲酒量と2型糖尿病の発症リスクとの関連を検討する際に、飲酒のタイミングを考慮することの重要性を強く示すものだ」とコメントしています。
今回の発表内容の受け止めは?
アメリカのテュレーン大学の研究者グループが発表した内容への受け止めを教えてください。
郷先生
この研究結果について、個人的にはある程度懐疑的な見方をしています。というのも、食事との関連については調べられていますが、飲酒の量やアルコールの濃度については解析されていないためです。これは、研究の最後にも述べられている「飲酒量と糖尿病の発症リスクの関連を検討する際に、飲酒のタイミングを考慮することの重要性を強く示す」と著者らが記載しているとおりです。つまり、「食事中にアルコールを摂取することで、ある程度節度ある飲酒量となるため、このような結果になった」と研究者らも推定しているとということになります。
したがって、「食事中にお酒を飲むから、2型糖尿病の発症リスクが低くなる」という意味ではなく、「食事中における飲酒量は程度制限されるので、結果として2型糖尿病の発症リスクが低くなる」と捉えるのがいいと考えます。
糖尿病予防で気をつけるべき食習慣は?
今回は糖尿病と飲酒習慣についての研究内容を取り上げましたが、糖尿病予防で気をつけるべき食習慣について教えてください。
郷先生
糖分が多く含まれる食事は、糖尿病の発症リスクを高めます。甘い食べ物はもちろんですが、炭水化物中心の食事を摂ると、食後に血糖値が急激に上昇します。そして、インスリンが多量に分泌されることで膵臓が疲弊して、糖尿病を発症してしまいます。そのため、炭水化物中心の食事ではなく、タンパク質や脂質、野菜類などをバランスよく摂取できる食事内容を心がける必要があります。
また、食べる順番にも注意が必要です。炭水化物を最初に食べてしまうと、糖分の吸収からおこなわれてしまい、血糖値が高くなってしまいます。対策としては、野菜などを最初に食べてから炭水化物を摂取することで、血糖値の上昇を緩やかにすることができます。
加えて、食事をする時間やタイミングも重要です。寝る直前に食事をすると、より多くの栄養素が吸収されますから、血糖値も上昇しやすくなります。あと、食事は1日3回摂るようにしましょう。朝食を抜く人も多いと思いますが、食事回数が減ると1回の食事量が上昇しがちなので、やはり血糖値が上昇しやすくなってしまいます。3食バランスよく、そして寝る直前を避けて食事をするようにしましょう。
まとめ
アメリカのテュレーン大学の研究グループが、飲酒のタイミングと2型糖尿病の発症リスクの関連を検討したところ、「食事以外で飲酒する習慣を持つ人と比べて、食事中にワインを飲む習慣を持つ人の2型糖尿病発症リスクは有意に低くなった」と発表したことが今回のニュースでわかりました。今回の研究結果から、糖尿病の発症リスクを考えて飲酒するタイミングについて検討することも有用かもしれません。