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糖尿病網膜症、緑内障などの眼科で行うレーザー治療は保険適用? 治療費について教えて!

 更新日:2023/03/27

眼科だけでなく、さまざまな科目で行われているレーザー治療。身体への負担が少なく、短期間で大きな効果が得られる治療法として、一般的に活用されています。眼科の領域でよく用いられるのが、糖尿病網膜症や緑内障に対する治療。一体、どのような効果が得られるのでしょうか。また、保険が適用になるのでしょうか。川崎・多摩アイクリニックの高木先生に教えてもらいました。

高木 均医師

監修医師
高木 均(川崎・多摩アイクリニック 院長)

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1987年京都大学医学部卒業、1991年京都大学大学院医学研究科博士課程修了。網膜剥離、糖尿病網膜症、加齢黄斑変性症、黄斑円孔、黄斑前膜など網膜硝子体疾患を専門に30年以上の経験、国内のオピニオンリーダーの一人。特に糖尿病網膜症の診療・研究に関しては聖地といわれるハーバード大学医学部附属ジョスリン糖尿病センター留学などを経て、内科系学会においても要職を担っている。最先端の薬物治療から手術まで最善の治療を提供する。聖マリアンナ医科大学眼科学 元主任教授。日本眼科学会評議員、日本糖尿病眼学会理事、日本網膜硝子体学会理事、日本糖尿病合併症学会評議員、日本糖尿病学会学術評議員。

眼科で行う「レーザー治療」とは?

眼科で行う「レーザー治療」とは?

編集部編集部

そもそもレーザー治療とはなんですか?

高木 均医師高木先生

レーザー治療とは、簡単にいえば、特定の波長のレーザー光を目の組織に当てて熱を発生させ、病的な部分を凝固させることにより病気の進行を食い止める治療法です。

編集部編集部

どんな特徴があるのですか?

高木 均医師高木先生

ひとくちに「レーザー」といっても、波長の違いによってさまざまな種類があり、それぞれ特性が異なります。そのため、症状や疾患に合わせて最適な波長のレーザー光を患部に当てることで、安全で効率的に治療を行うことができます。これが、レーザー治療の最大の特徴です。

編集部編集部

「波長の違い」とは、どういうことですか?

高木 均医師高木先生

レーザーの光は波のようなカーブを描いていて、波のピークからピークまでの長さを「波長」といいます。そして、この波長が長くなれば、光の色は黄色や赤になり、レーザー光が深部にまで届くようになります。反対に、レーザー光の波長が短くなると、光の色は青や緑色になり、表面に近い浅い組織に吸収されやすくなります。つまりこのようにして、患部がどの位置にあるかによってレーザー光の波長を調整することができるため、より、効率的に治療を行うことができるのです。

編集部編集部

どのような病気に対して行われるのですか?

高木 均医師高木先生

さまざまな病気に用いられますが、代表的なものとしては、糖尿病網膜症や緑内障があります。また、白内障の治療を行ったあとに出現する混濁にも用いられます。そのほかには、網膜静脈閉塞症網膜裂孔網膜細動脈瘤などの治療にも用いられます。

レーザー治療はどのように行う?

レーザー治療はどのように行う?

編集部編集部

具体的に、どのようにレーザー治療が行われるのか教えてください。

高木 均医師高木先生

レーザー治療が行われる代表的な疾患「糖尿病網膜症」の場合で説明します。糖尿病網膜症は糖尿病の三大合併症のひとつで、網膜の毛細血管が出血を起こして視力が低下したり、かすみ目を起こしたりする病気です。ひどくなると失明することもあり、現在、日本人が身体障害者となる原因の第3位です。その糖尿病網膜症が進行すると、血液の流れが悪くなり、毛細血管が詰まってしまいます。すると血液を流すために、新しく血管が作られます。これを新生血管といいます。この新生血管は非常にもろくて出血を起こしやすく、また、新生血管の周りに「増殖膜」と呼ばれる組織が作られ、これが網膜を引っ張ってしまい、網膜剥離を引き起こすことがあります。レーザー治療では眼底の血流の悪くなった部位を焼いて凝固することにより、新生血管を作る成分が分泌されないようにするのです。

編集部編集部

そのほか、緑内障や白内障でもレーザー治療が用いられるのですね。

高木 均医師高木先生

そうです。そもそも緑内障では、目の中の水(房水)の流れが悪くなり、眼圧が高くなることで発症します。そのため緑内障のレーザー治療では、角膜と水晶体の間にある薄い膜「虹彩」にレーザーを照射して小さな穴を開けて、房水の通りをよくする「虹彩光凝固」や、隅角にレーザーを照射して房水を流れやすくする「隅角光凝固」の治療が行われます。

編集部編集部

白内障ではいかがでしょうか?

高木 均医師高木先生

通常、白内障の手術では、濁った水晶体を取り除き、眼内レンズを装着します。しかしこの手術をしたあと、眼内レンズを包む袋(水晶体嚢)が汚れ、混濁してしまうことがあります。レーザー治療ではこの袋に小さな穴を開け、濁りを取り除くことで、クリアな視界を再現します。

レーザー治療は保険適用になる?

レーザー治療は保険適用になる?

編集部編集部

レーザー治療は保険が適用になるのですか?

高木 均医師高木先生

レーザーの種類や疾患によって金額が異なりますが、一般的には保険が適用になります。また、治療費が高額になる場合は、医療費控除・限度額適用認定証の発行ができる場合があるため、役所や保健機関に確認すると良いでしょう。

編集部編集部

保険が適用になるのはありがたいですね。

高木 均医師高木先生

ただし、基本的には1回の治療で症状が改善しますが、症状によっては3〜4回治療が必要になることもあります。治療の回数や内容については、治療を始める前に、主治医に確認することをおすすめします。

編集部編集部

治療時間はどれくらいですか?

高木 均医師高木先生

レーザーを打つ時間は、5〜10分程度ですが、それ以前に前処置として瞳孔を開く時間が必要です。トータルで1〜2時間くらいかかると考えていただければ良いでしょう。

編集部編集部

治療で痛みはありますか?

高木 均医師高木先生

個人差はありますが、ズキっとした痛みを感じる方もいます。しかし、まったく痛みを感じない方もいます。「レーザー治療は痛い」というイメージを持っている人も多いかもしれませんが、近年では機器の改良も進んでいるので、それほど痛みについては心配しなくても大丈夫だと思います。

編集部編集部

レーザー治療を受けるにあたって、注意すべきことはありますか?

高木 均医師高木先生

レーザー治療を行ったあとも、日常生活の制限は特にありません。ただし、治療当日は激しいスポーツやアルコールは控えましょう。また、ときどきレーザー治療を受けたあとに炎症を起こしたり眼圧が上がったりすることもあります。そうした事態を避けるため、レーザー治療を受けたら1週間以内に、診察を受けることをお勧めします。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージがあればお願いします。

高木 均医師高木先生

レーザー治療の機器は、ここ数年で格段に進化しています。安全性も増し、患者さんへの身体的な負担も大きく軽減されました。事前に検査が不要な治療であれば、診察当日にレーザー治療を受けられることもあります。興味がある方は、レーザー治療を行っている眼科へ相談してみると良いでしょう。

編集部まとめ

痛みが少なく、短時間で大きな治療効果が得られるレーザー治療。眼科を含め、さまざまな領域で行われており、安全性も高く評価されています。すべての眼科でレーザー治療を行っているわけではないので、治療を考えている人は、レーザー治療の実績があるクリニックを調べてみると良いでしょう。

医院情報

川崎・多摩アイクリニック

川崎・多摩アイクリニック
所在地 〒214-0014 神奈川県川崎市多摩区登戸2428番地NoboritoGateBuilding4階
アクセス 小田急線、南武線「登戸駅」から徒歩1分
診療科目 眼科

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