「膀胱がんの末期症状」はご存知ですか?治療法も解説!【医師監修】

さまざまながんがあるなかで、膀胱がんはあまり馴染みがない方も多いでしょう。40歳以上の方に多くみられるがんですが、若年層でも発症する場合があります。
この記事では診断方法や治療法についても解説していきます。進行する前に早期発見できるよう参考にしていただけますと幸いです。

監修医師:
村上 知彦(薬院ひ尿器科医院)
目次 -INDEX-
膀胱がんとは
膀胱がんとは、膀胱の内側を覆う粘膜にできるがんの総称です。膀胱がんの90%は尿路上皮がんと呼ばれるもので、がんが膀胱壁への深達度によって、筋層非浸潤性がんか筋層浸潤がんに分類されます。上皮がんのほかにも扁平上皮がん・腺がん・小細胞がんなどもあります。
頻度としては、人口10万人あたり毎年約17人発生し、さほど多くはありませんが、年々増加傾向のがんです。骨やリンパ節、肝臓や肺に転移することがあります。
膀胱がんの末期症状
膀胱がんが進行すると、さまざまな身体症状が現れ、日常生活にも影響を与えます。具体的な症状について1つずつ解説していきます。
血尿(腫瘍からの出血)
初発症状として、確認されやすい症状が血尿です。膀胱炎とは異なり、痛みが伴わないことが多いです。そのため、数日経過すると症状が止まることもありますが、改善したわけではありません。肉眼的血尿があるからといって必ずしも膀胱がんとは限りませんが、見逃せない症状の1つです。
膀胱がんの初期にも痛みを自覚する場合があります。膀胱炎も類似した症状がみられますが、抗生剤を使用しても治すことが難しい点が違いです。
頻尿・排尿の痛み
腎臓から膀胱への尿の流れが悪くなることで、腰痛を伴うことがあり、骨転移による痛みも起こる場合があります。膀胱がんが進行すると、がん細胞の増殖や治療による免疫反応で疲労感を自覚するでしょう。がんはエネルギーを吸収するため、腫れや倦怠感を生じる場合もあります。
腰痛・骨痛
膀胱がんが骨に転移した場合、腰や背中・骨盤などに痛みが現れることがあります。この痛みは進行するにつれて強くなり、日常生活に支障をきたすことも少なくありません。また、がんによる骨の弱化により、骨折しやすくなることもあります。
腫れ・疲労感
がんが進行すると、体内でリンパや血液の循環が阻害されることがあり、四肢やお顔にむくみ(腫れ)が生じます。さらに、体力が消耗し、極度の疲労感や倦怠感を感じることが多くなるでしょう。これらの症状は、がんによる全身状態の悪化や、治療による副作用が原因です。
臓器・リンパ節への転移
膀胱がんのなかでも浸潤性膀胱がんは転移しやすく、主にリンパ節や骨、肺や肝臓に転移することがあります。表在性入頭状膀胱がんの場合は、がん病巣が膀胱の粘膜にとどまっていることが多く、転移や浸潤は起こりません。
膀胱がんの診断方法
膀胱がんの診断はがんの有無だけではなく、進行度を評価するためにも重要な役割があります。具体的にどのような方法があるのか解説していきます。
膀胱鏡検査
膀胱がんに罹患しているかどうかは、膀胱鏡検査で判断が可能です。膀胱がんの診断と治療方針を決めるために必ず行います。内視鏡を尿道から膀胱へ挿入し、がんの有無や部位・大きさ・数・形状などを確認する検査です。
膀胱内の粘膜に異常があると判断された場合には、組織を採取する生検を行うこともあります。一般的には外来で局所麻酔を使用して行います。
画像検査
膀胱がんの診断には、CTやMRIなどの画像検査が重要です。CT検査ではX線を用いて体内の断面を撮影し、がんの位置や形状、ほかの臓器やリンパ節への転移の有無を確認します。特にCT尿路造影は腎盂や尿管、膀胱などの尿路全体を詳しく観察するのに有効で、造影剤を用いる場合はアレルギーや腎機能の確認が必要です。
また、MRI検査では磁気を使って体内を詳細に映し出し、がんの浸潤や骨盤内のリンパ節への転移を調べます。MRIは正常組織との識別が容易で、がんの進行度や周囲への影響を評価するのに適しています。
生検
膀胱がんの明確な診断には、膀胱粘膜生検を行います。多くの場合は、初期がんの治療のために行われる経尿道的膀胱腫瘍切除術を兼ねており、筋層浸潤性がんだった場合、ここで外科的な治療と検査が終了することもあります。
膀胱がん末期の治療方法
膀胱がんの末期はがんの進行により、さまざまな症状が現れることがあります。この時期は、病気の進行を遅らせるだけではなく、精神的サポートも大切になってきます。
詳しい治療方法について確認していきましょう。
薬物療法
がんが進行していて切除が難しい場合や手にや再発したがんに対して薬物療法を行います。この治療ではがんの成長を抑えたり、進行を遅らせたりすることが目的です。具体的には、細胞障害性抗がん薬や免疫チェックポイント阻害薬が使われます。
さらに、近年では細胞障害性抗がん薬に抗体をつないだ抗体薬物複合体も用いられるようになっているのが特徴です。これらの薬は、がんと戦う力を強化するためにさまざまな方法で体内のがんに作用します。
免疫療法
免疫療法は、身体の免疫システムを活用してがんを攻撃する治療法です。2024年6月時点で、膀胱がんに対して効果があると確認されているのは、免疫チェックポイントを使った薬物療法と、BCGを使った膀胱内注入療法の2つのみです。ほかの免疫療法については、膀胱がんに対する効果がまだ証明されていません。
膀胱がんの末期症状についてよくある質問
ここまで膀胱がんの末期症状・診断方法・治療方法などを紹介しました。ここでは「膀胱がんの末期症状」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
膀胱がんの末期の生存率はどのくらいですか?
膀胱がんが末期(Ⅳ期)に進行した場合、国立研究開発法人国立がん研究センターのデータによると、5年生存率は約16.6%と報告されています(2014年から2015年のデータ)。末期の膀胱がんでは、がんがほかの臓器に転移していることが多く、治療の難易度が高まるため生存率が低くなる傾向があります。具体的な生存期間は患者さんの体調や治療法によって異なりますので、主治医と相談して見通しを確認することが重要です。
膀胱がんの末期の緩和ケアについて教えてください。
膀胱がんの末期の緩和ケアでは、治療方法を選択するサポートや病状の進行による痛みを取り除くケアを行います。また、精神面の負担に対しても悩みを取り除けるよう、前向きに生活できるケアを提供します。患者さんだけではなく、患者さんの家族にもアプローチすることが特徴です。これら緩和ケアは入院していないと受けられないイメージがありますが、自宅や緩和ケア病棟のある施設でも受けることができます。自宅で緩和ケアを受ける場合は、訪問介護や往診を受けられます。医療的なケアに留まらず、療養生活の援助や入浴介助も可能です。緩和ケア病棟の施設では、デイケアやショートステイの利用も可能です。
編集部まとめ
膀胱がんの末期を診断された患者さんは、身体的治療だけではなく精神面や生活全般の質を重視したサポートが大切です。
また、患者さんの家族への精神面の負担を軽減しながら、支援することも重要になります。
患者さんとその家族がともに過ごせる時間を大切にしながら、尊厳ある生活を送れるよう、この記事を活かして頂ければ幸いです。
膀胱がんと関連する病気
「膀胱がん」と関連する病気は5個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
血尿など膀胱がんと類似する症状があるため、自己判断で放置せず、定期的な健診を行い、早期発見・早期治療に努めましょう。
膀胱がんと関連する症状
「膀胱がん」と関連している、似ている症状は4個程あります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 血尿
- 排尿痛
- 残尿感
- 背部痛
残尿感など、加齢によるものと自己判断して見過ごす可能性があります。今までと異なる症状が出現した場合は、早期に医療機関を受診しましょう。