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「排尿障害」とは?治療法・原因・検査についても解説!【医師監修】

 更新日:2023/06/30
「排尿障害」とは?治療法・原因・検査についても解説!【医師監修】

排尿障害は尿をためる機能や排出する機能に障害がみられる状態です。尿が漏れる、尿が出にくいなどの症状がみられます。原因は病気や感染、心因性などさまざまです。それぞれの原因に応じて薬物療法や保存的療法を行い、改善しない場合は手術も検討されます。
今回は排尿障害の症状や原因、代表的な病気や治療法も詳しく解説します。

竹内 尚史

監修医師
竹内 尚史(新松戸中央総合病院)

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東京医科大学卒業。その後、複数の病院を経て、2021年より新松戸中央総合病院にて泌尿器科医として勤務。ダヴィンチ手術を多く手がけている。著書は「前立腺がんは「ロボット手術」で完治を目指す!青月社(共著、改訂版)」。日本泌尿器科学会泌尿器科専門医・指導医、日本性機能学会性機能専門医、日本内分泌学会内分泌代謝科(泌尿器科)専門医、日本泌尿器内視鏡学会 泌尿器ロボット支援手術プロクター認定医(手術指導医)、日本ロボット外科学会Robo Doc認定医・ロボット(da Vinci)手術認定医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医 、日本メンズヘルス医学 テストステロン治療認定医、日本医師会認定産業医。

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排尿障害とは

排尿障害の症状とは?

排尿障害とはどのような病気でしょうか?

排尿障害とは、尿をためる蓄尿機能と、尿を出す排出機能の2相からなる排尿の過程に異常をきたした状態です。
機能別に蓄尿症状、排出症状、排尿後症状に分けられます。
蓄尿障害と蓄尿症状はほぼ同義です。

蓄尿障害

蓄尿障害とはどのような状態でしょうか?

腎臓でつくられた尿を膀胱にためる機能が障害され、尿をためておくことができなくなります
膀胱排尿筋の過活動、膀胱出口の抵抗の低下、尿道を締める圧の低下などが原因となって起こる障害です。

排出障害

排出障害とはどのような状態でしょうか?

尿を体の外へ排泄する機能が障害され、尿を体の外へ排出しにくくなります。膀胱の筋肉の収縮力の低下や、膀胱出口の抵抗が増して起こる障害です。

排尿障害の症状

排尿障害の症状とは?

排尿障害ではどのような症状がみられますか?

蓄尿症状、排出症状、排尿後症状の3つの症状に分けられます。排尿障害の症状は、頻尿や尿もれのため外出しにくい、夜間頻尿で睡眠障害をきたすなど、生活の質(QOL)も低下します。

蓄尿症状

蓄尿症状ではどのような症状がみられますか?

    蓄尿症状では次の症状がみられます。

  • 日中でも夜間睡眠中でも意思と関係なく尿が出てしまう
  • 強い尿意で我慢ができない
  • 日中、8回以上の排尿がある(頻尿)
  • 夜間睡眠中、1回以上の排尿がある(夜間頻尿)
  • 咳やくしゃみ、重いものを持つなど、腹圧がかかる動作で尿が漏れる(腹圧性尿失禁)
  • 強い尿意とともに尿が漏れてしまう(切迫性尿失禁)

排出症状

排出症状ではどのような症状がみられますか?

    排出症状では次の症状がみられます。

  • 尿の勢いが弱い(尿勢低下)
  • 尿が2本に分かれて出たり、飛び散ったりする
  • 排尿の途中で尿が途切れてしまう
  • 尿が出はじめるまでに時間がかかる
  • お腹に力を入れていきまないと排尿できない
  • 排尿の終わりに尿がぽたぽたと垂れる

排尿後症状

排尿後症状ではどのような症状がみられますか?

    排尿後症状では次の症状がみられます。

  • 排尿後、まだ尿が残っている感じがする(残尿感)
  • 排尿後、下着に尿が少し漏れてしまう

排尿障害の原因

排尿障害の原因は何ですか?

尿をためるときには膀胱はゆるんで尿道は閉まります。反対に、尿を出すときには尿道はゆるんで開き、膀胱は縮んで尿を押し出します。排尿時の膀胱と尿道のはたらきは、脳からの神経により、コントロールされています。
排尿をコントロールしている神経が障害される脳や神経の病気や、膀胱・尿道の病気、加齢に伴う膀胱や尿道の機能低下、服薬中の薬の影響、心因性

などが原因となって排尿障害は起こります。

排尿障害をきたす代表的な病気

排尿障害をきたす代表的な病気は何ですか?

前立腺肥大症、脳疾患、脊髄疾患、糖尿病、過活動膀胱、膀胱結石、膀胱炎などさまざまな病気で排尿障害は起こります。
代表的な病気として、前立腺肥大症、過活動膀胱、神経因性膀胱の3つについて説明します。

前立腺肥大症

前立腺肥大症はどのような病気ですか?

前立腺は内腺とその外側を包む外腺に分かれています。内腺にできたできものが徐々に内側に膨らみ、尿道が狭くなるのが前立腺肥大症です。
進行すると、頻尿、尿の勢いが弱くなる、残尿感、夜間頻尿などの症状がみられます。尿道がかなり狭くなると尿が出なくなることもあります。

過活動膀胱

過活動膀胱はどのような病気ですか?

加齢とともに膀胱の筋肉が硬くなって、尿がたまることにとても敏感になっている状態です。尿が少したまっただけで膀胱が収縮してしまい、強い尿意頻尿、尿意とともに尿を漏らしてしまう、排尿したのにすぐに尿意をもよおすなどの症状がみられます。

神経因性膀胱

神経因性膀胱はどのような病気ですか?

脳・脊髄の中枢神経や、脊髄から膀胱までの末梢神経の病気によって、蓄尿・排尿の調節が崩れて排尿障害を起こす病気の総称です。
神経因性膀胱をきたす病気には、脳卒中、パーキンソン病、アルツハイマー病、多発性硬化症、二分脊椎症、小脳変性症、脊椎管狭窄症、椎間板ヘルニア、直腸がん・子宮がん手術後の膀胱の末梢神経障害などがあります。

排尿障害の受診科目

排尿障害の受診科目

排尿障害が疑われたら、何科を受診すればよいでしょうか?

頻尿、尿失禁、尿が出にくい、残尿感などの症状は、泌尿器科の診療領域です。原因が膀胱炎の場合は、内科で対応している病院もあります。
排尿障害は、内科領域の心不全・高血圧・糖尿病などの生活習慣病などでも起こるので、はじめに泌尿器科を受診していても、泌尿器科以外での診療が必要になることもあります

排尿障害の検査

排尿障害ではどのような検査を行いますか?

尿検査、採血、超音波検査、尿流動態検査など原因に応じた検査を行います。

尿検査

尿検査はどのような検査ですか?

尿潜血、尿蛋白、尿糖、尿ウロビリノーゲン、尿比重や白血球の量などを調べ、尿の異常がないか、膀胱炎などの感染がないか、がんなどの悪性腫瘍がないかを確認します。

採血

採血はどのような検査ですか?

腎機能障害前立腺がんの可能性を調べます。

超音波検査

超音波検査はどのような検査ですか?

膀胱内に残っている尿の量を測定し、しっかりと尿を排出できているかを確認します。
そのほか、腎臓の腫れの有無、腎臓や膀胱などの悪性腫瘍の有無、前立腺肥大の程度などを調べます。

尿流動態検査

尿流動態検査はどのような検査ですか?

排尿時の尿流、膀胱内圧、直腸内圧、排尿筋圧を測定する検査です。
検査用のトイレで排尿し、排尿量や排尿の勢いを測定します。
圧を測定するカテーテルを膀胱内、直腸内に入れた状態で、下部尿路機能の閉塞の有無や程度、膀胱収縮機能も調べます。蓄尿期の膀胱内圧の測定も行います。

その他の検査

尿検査、採血、超音波検査、尿流動態検査のほかにはどのような検査がありますか?

膣や尿道の出口の内診や、24時間にわたって排尿した時間・1回ごとの尿量・尿もれの有無・摂取した水分量の記録をつける排尿日誌、尿道から膀胱内に内視鏡を入れて膀胱内を検査する膀胱鏡検査なども必要に応じて実施します。

排尿障害の治療

排尿障害の治療

排尿障害ではどのような治療を行いますか?

排尿障害の治療には、保存的療法、薬物療法、手術療法があります。

保存的療法

保存的療法ではどのような治療を行いますか?

    保存的療法では、生活指導や骨盤底筋訓練、膀胱訓練などを行います。

  • 生活指導
    前立腺肥大症や尿失禁、過活動膀胱などの原因とされる肥満や糖尿病を改善する生活習慣の指導を行います。具体的には食事制限、運動、減量、過剰な水分・塩分摂取の制限、禁煙、便秘の解消などです。
  • 骨盤底筋訓練
    骨盤臓器脱に対して、骨盤底筋群の収縮を促すトレーニングです。腟や尿道を体の中にひっこめるように締める練習を坐位、立位、仰臥位などのさまざまな姿勢で行います。
  • 膀胱訓練
    頻尿に対して、強い尿意を感じたときに排尿を我慢する訓練です。我慢する時間を5分、10分と少しずつ伸ばしていきます。

薬物療法

薬物療法ではどのような治療を行いますか?

    蓄尿障害改善薬、排出障害改善薬、そのほかの薬剤を用います。

  • 蓄尿障害改善薬
    異常な膀胱収縮を抑える抗コリン薬や、膀胱を拡げてためられる尿の量を増やすβ3受容体刺激薬を用います。
  • 排出障害改善薬
    膀胱、前立腺、尿道の緊張を緩和するα1受容体遮断薬や、血流と酸素供給の改善を図るPDE5阻害薬、肥大した前立腺を小さくする作用のある5α還元酵素阻害薬などを用います。
  • そのほかの薬剤
    腹圧性尿失禁に対しては、尿道を締める作用のあるβ2受容体刺激薬や、自覚症状の改善を目的とした植物由来の成分を使った薬、漢方薬などを用います。

手術療法

手術療法はどのような治療を行いますか?

    薬物療法でも改善しない場合は手術を行うケースもあります。

  • 前立腺肥大症
    肥大した前立腺を一部削る経尿道的前立腺切除術(TURP)や、前立腺をくりぬく経尿道的前立腺核出術(TUEB)などを行います。
  • 腹圧性尿失禁
    医療用のメッシュのテープを尿道の裏を支えるように通して尿漏れの軽減を図る尿道スリング手術(TOT手術、TVT手術)を行います。
  • 骨盤臓器脱
    下垂した臓器を医療用メッシュで下から支える手術(TVM手術)や、医療用メッシュで下垂した臓器を上から引き上げる腹腔鏡下仙骨膣固定術(LSC)を行います。
  • 過活動膀胱
    過活動膀胱による尿失禁の改善として、排泄に関与する神経に電気刺激を与え続けられる装置を体の中に植え込む仙骨神経刺激療法があります。

排尿障害の性差・年齢差

排尿障害に性差・年齢差はありますか?

排尿障害は男性、女性どちらにもみられます。高齢になるにつれて、過活動膀胱や夜間頻尿の症状がある割合は上昇し、排尿障害がある患者の男女差はなくなります
男性と女性の解剖学的な差により、男性は尿が漏れにくいけれども尿排出障害は起こりやすく、女性は尿排出障害が起こりにくいけれども尿は漏れやすいという特徴があります。
前立腺肥大症は男性のみにみられます。腹圧性尿失禁は女性に多い排尿障害です。

編集部まとめ

排尿障害は尿をためる機能と尿を排出する機能で成り立つ排尿サイクルに異常をきたした状態です。時期によって尿をためる症状、尿を排出する症状、尿を排出した後の症状に分けられ、代表的な病気は前立腺肥大、過活動膀胱、神経因性膀胱が挙げられます。

原因は蓄尿、排尿に障害をきたす病気や、加齢による機能低下、飲んでいる薬の影響、心因性など多岐にわたります。原因に応じた薬物療法や保存的療法を行い、改善しない場合は手術療法も検討されます。

排尿障害は生活の質にも大きくかかわるため、気になる症状があれば医療機関を受診して適切な治療を受けましょう。

参考文献

この記事の監修医師