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前立腺がんの発症リスク、乳製品の摂取過多で上昇

 更新日:2023/03/27
乳製品の摂取過多で前立腺がんの発症リスク上昇

アメリカのロマリンダ大学らの研究グループは、乳製品の摂取量と前立腺がんの発症リスクとの関連を検討した結果、乳製品の1日当たりの摂取量が少ない男性に比べて、多い男性では前立腺がんの発症リスクが1.27倍であることが示されたと発表しました。このニュースについて竹内先生にお話を伺います。

竹内尚史 医師

監修医師
竹内 尚史(医師)

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東京医科大学卒業。その後、複数の病院を経て、2021年より新松戸中央総合病院にて泌尿器科医として勤務。著書は「前立腺がんは「ロボット手術」で完治を目指す!青月社(共著、改訂版)」。日本泌尿器科学会泌尿器科専門医・指導医、日本性機能学会性機能専門医、日本内分泌学会内分泌代謝科(泌尿器科)専門医、日本泌尿器内視鏡学会 泌尿器ロボット支援手術プロクター認定医(手術指導医)、日本ロボット外科学会Robo Doc認定医・ロボット(da Vinci)手術認定医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医 、日本メンズヘルス医学 テストステロン治療認定医、日本医師会認定産業医。

ロマリンダ大学らによる発表内容とは?

今回、ロマリンダ大学が発表した内容について教えてください。

竹内尚史 医師竹内先生

今回の研究はアメリカのロマリンダ大学らの研究グループが、乳製品の摂取量と前立腺がんの発症リスクについて検討したものです。対象となったのは、アメリカ人とカナダ人の男性2万8737人です。平均追跡期間は7.8年間で、1254例が前立腺がんを発症しました。そのうち190例は進行性のがんでした。

解析の結果、1日あたりの乳製品摂取量が20.2gのグループに比べて、1日あたりの摂取量が430gのグループでは前立腺がんの発症リスクが1.27倍になったとのことでした。動物性食品を一切とらないヴィーガンの男性を除いた解析でも、低摂取グループに比べて高摂取グループでの前立腺がん発症リスクは1.22倍と、有意に高くなりました。

また、前立腺がんの進行度別に同様の解析をおこなったところ、進行性・非進行性のいずれも低摂取グループに比べて、高摂取グループで前立腺がんの発症リスクが有意に高くなりました。一方、乳製品以外でのカルシウム摂取量と前立腺がん発症との関連について、イソフラボン、α-トコフェロール、食物繊維、α-リノレン酸、リコピンの摂取量を加味した上で解析したところ、乳製品以外でのカルシウム摂取量が少ないグループと乳製品以外でのカルシウム摂取量が多いグループの間には、前立腺がん発症リスクの上昇における有意な関連は認められませんでした。

研究グループは「乳製品の摂取量が多い男性は前立腺がんの発症リスクが高い、乳製品に含まれるカルシウム以外の成分が前立腺がんの発症リスクに関与していると考えられる」と結論づけています。

前立腺がんとは?

今回の研究対象になった前立腺がんについて教えてください。

竹内尚史 医師竹内先生

前立腺がんは、前立腺の細胞が無秩序に自己増殖することによって発生する病気で、比較的ゆっくりと進行していくことが多い傾向にあります。多くの場合、早期の前立腺がんは自覚症状がありませんが、「尿が出にくい」「排尿の回数が多い」などの症状が出ることもあります。また、進行すると、「血尿」や「腰痛などの骨への転移による痛み」などがみられることがあります。

発表内容への受け止めは?

ロマリンダ大学らの研究グループによる発表についての受け止めを教えてください。

竹内尚史 医師竹内先生

食事の欧米化に伴い、前立腺がんが増加していることは以前よりよく知られている事実でした。しかし、今回の論文では欧米化した食事の中でも、とくに乳製品の具体的な品目を挙げていることに意義があると考えます。

乳製品以外のカルシウム摂取量が多いクループには前立腺がんの発症リスクに優位な関連を認めなかったと言うことは、乳製品の中の動物性タンパク質もしくは脂質が影響している可能性があります。ただし、これはアメリカ人とカナダ人を対象におこなわれた研究であるため、日本人にも同様の結論が当てはまるかどうかは不明です。

今回のような研究を進めることで、「前立腺がんのリスクが高い人にはどういう食事を勧めればいいのか」など、個別化した栄養療法の提供が可能となる未来になることを期待します。

まとめ

アメリカのロマリンダ大学らの研究グループが乳製品の1日当たりの摂取量が少ない男性に比べて、多い男性では前立腺がんの発症リスクが1.27倍であることが示されたと発表したことが今回のニュースでわかりました。前立腺がんは2018年には日本全国で9万2021人の診断例がある病気なので、今回の発表内容は注目を集めそうです。

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