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前立腺生検は痛いって聞くけど実際どうなの? 検査当日の流れも教えて!

 更新日:2023/03/27

ナイーブな箇所に針を刺される前立腺の生体検査。しかし、通常の痛みなら麻酔が有効なはずです。はたして、「痛い」という噂はただのイメージなのでしょうか、それとも事実なのでしょうか。事の真相を「馬車道さくらクリニック」の車先生に取材しました。

車英俊

監修医師
車 英俊(馬車道さくらクリニック 院長)

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防衛医科大学校卒業。防衛医科大学校病院や各大学病院などで臨床を重ねた後の2013年、神奈川県横浜市に位置する「馬車道さくらクリニック」を継承。前立腺がんを中心とした内科のほか、皮膚科にも注力している。日本泌尿器科学会認定専門医。日本癌治療学会、日本皮膚科学会、日本排尿機能学会、日本性機能学会の各会員。

硬膜外麻酔なら、日帰り検査でも痛みは少ない

硬膜外麻酔なら、日帰り検査でも痛みは少ない

編集部編集部

前立腺の生検って、どこからおこなうのでしょうか?

車英俊車先生

肛門内に挿入した機器から針を刺す「経直腸式」と、肛門の少し上の部分に直接、針を刺す「経会陰式」の2種類の方法があります。なお、肛門の先の直腸には、痛みを感じる神経があまり通っていません。機器を肛門へ挿入する際に痛みを感じる人はいらっしゃるようですね。

編集部編集部

肛門の中に入れるのですか?

車英俊車先生

前立腺は体表から遠い反面、直腸と接しています。そのため、肛門から直腸に棒状の超音波プローブを挿入することで、前立腺を近接で観察することができます。経直腸式でも経会陰式でも、超音波プローブを直腸に挿入するのは同じです。

編集部編集部

経直腸式と経会陰式のメリット・デメリットについて教えてください。

車英俊車先生

経直腸式は、麻酔を用いずに実施できるメリットがあります。とはいえ、実際には肛門から超音波プローブを挿入するときや針を刺すときには痛みを伴います。その一方、経会陰式は痛みが強いので、多くの施設で脊椎麻酔をおこないます。そのため、入院が必要となることが多いですね。なお、生検の精度は同等といわれています。ただし、それぞれの方法で採取しやすい部位としにくい部位があり、両方を組み合わせて実施することもあります。デメリットとして、経直腸式は直腸から感染を起こすリスクが少し高いといわれています。当院では、十分な感染対策を講じたうえで、経直腸式で12~14か所を日帰りで生検しています。

編集部編集部

経直腸式の場合、麻酔は使わないということですか?

車英俊車先生

当院の場合は、硬膜外麻酔の一種である「仙骨麻酔」を用いています。背骨の近くに麻酔薬を入れることで、下半身の痛みを抑えます。それでも怖いという人は、鎮静剤の投与を検討します。いずれのケースにしても日帰りでおこなえるのですが、どの検査機関でも日帰り検査を実施しているとは限りません。入院で経直腸式というパターンもありますので、事前に調べておきましょう。

医療機関によって検査時の細かな違いがある

医療機関によって検査時の細かな違いがある

編集部編集部

続いて全体の流れですが、知りたいのは日帰り検査の方です。

車英俊車先生

最初は、健康診断などで前立腺がんの疑いがもたれるところからでしょう。そこで「精密検査」を指摘されるわけですが、いきなり生検というわけではなく、事前に超音波検査やMRI、直腸診・問診で確認します。

編集部編集部

そして、いよいよ疑わしければ生検に進むと?

車英俊車先生

はい。前立腺がんの確定診断には、生体検査が欠かせません。そこで、検査日を予約していただきます。なお当日の食事制限については、どのタイプの麻酔を用いるかによって異なってきます。検査する医療機関の指示を仰いでください。また、感染防止のための抗生剤も、あらかじめ服用するのか、施術時に点滴で投与するのかなど、医院により違いが出るところです。

編集部編集部

検査は、どのような体勢でおこなうのでしょうか?

車英俊車先生

当院は、大腸内視鏡を撮るときと一緒の「横向き」です。その一方、「仰向け」で検査する医院もあります。ただし、両者の違いはなく、医師の考え方によるものでしょう。検査時間は10分程度で終わるものの、麻酔が覚めるまでは院内で休んでいただきます。この待機時間を1時間ほどみておいてください。

編集部編集部

休憩が終わったら、帰宅ということですか?

車英俊車先生

その前に、「排尿がきちんとできるか」を試してみてください。針を刺したことで、前立腺がむくむかもしれないからです。また、針の経路によっては、血尿が出ることもあります。そして、検査結果は1週間から2週間後に出ます。

生検を毎年するケースとしないケースに分かれる

生検を毎年するケースとしないケースに分かれる

編集部編集部

「経過観察」と言われた場合、生検を毎年するのですか?

車英俊車先生

生体検査を経て「異常がみられなかった場合」は、以後、PSAという血液検査だけで経過観察します。毎年、生体検査を受け続けるわけではありません。PSAの値が高くなってきたら、そのときの状況によって生体検査をするかどうか考えます。また、初回の生体検査で「がんがみつかった」にも関わらず、経過観察で済ます場合もあります。

編集部編集部

がんをそのまま放置してもいいと?

車英俊車先生

前立腺がんの初期で進行が遅ければ、経過観察していきます。この場合は原則として、「1年おきに生検」です。ただし、がんの大きさや進み具合によっては、MRIなどの画像診断で済ませることもあります。

編集部編集部

前立腺がんは、死亡率そのものが低いのですよね?

車英俊車先生

いいえ。長期的に見ると、前立腺がんによる死亡率は男性の「4位」を占めています。それなのに「死亡率が低い」と思われているのは、5年生存率や10年生存率の短期のデータが多用されているからでしょう。15年以上の長期的なデータをみる限り、けっして「死亡率が低い」とは言えません。誤解しないようにしてください。

編集部編集部

針生検を省略して、治療に進むことはできないのですか?

車英俊車先生

針生検ができないほどご高齢だったり、服用している薬によって出血障害を抱えていらっしゃったりする人は、見送ることもあります。治療にしても手術ではなく、主に薬物治療でおこないます。また、事前のPSA検査の数値があまりに高い場合、全身への転移を疑います。このようなケースでは、前立腺の針生検を省略するかもしれないですね。局所だけを検査する意義が薄れます。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージがあれば。

車英俊車先生

現在の主流な考えは、「意味のない生検は減らそう」と「手術不要ながんを見極めよう」です。ですから、みなさんの見方によっては、「なぜ、すぐに生検をして確かめないのか」と思われるケースが生じるかもしれません。しかし、血液検査などによる経過観察が「適正なプロセスである」側面もご理解ください。わからないことや疑問に思うことがあったら、遠慮なく医師へ聞いてみましょう。そこには、必ず理由があるはずです。

編集部まとめ

今回、痛みに関するお話を伺えたのは、主に「経直腸式の日帰り入院で、硬膜外麻酔を用いるケース」でした。どうやら、主流である経直腸式で進める限りでは、あまり痛みに神経質にならずともよさそうです。とはいえ、実施する医療機関によって、細かな点が違っているとのことです。

医院情報

馬車道さくらクリニック

馬車道さくらクリニック
所在地 〒231-0011 神奈川県横浜市中区太田町6-73 コーケンキャピタルビル2F
アクセス みなとみらい線「馬車道駅」 徒歩2分
診療科目 泌尿器科、皮膚科、内科

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