「肺がんのステージ別生存率」はご存じですか?肺がんの症状も医師が解説!
公開日:2025/10/30

肺がんは、早期発見が難しいため、症状が現れたときには進行していることが多い病気です。 本記事では、肺がんの症状や治療法について解説していきます。また、ステージ別の生存率についても詳しく解説します。 気になる症状がある方は早めに医療機関を受診しましょう。

監修医師:
松本 学(きだ呼吸器・リハビリクリニック)
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兵庫医科大学医学部卒業 。専門は呼吸器外科・内科・呼吸器リハビリテーション科。現在は「きだ呼吸器・リハビリクリニック」院長。日本外科学会専門医。日本医師会認定産業医。
目次 -INDEX-
肺がんとは?
肺がんは、気管支や肺胞の細胞が何らかの原因でがん化したものです。肺がんの治療法は、がんの組織型(種類)によって大きく異なります。肺がんの主な種類は次の4つです。- 腺がん
- 扁平上皮がん
- 小細胞がん
- 大細胞がん
どの組織型の肺がんでも、喫煙が発生要因の1つとされています。特に扁平上皮がんや小細胞がんは喫煙との関連が強いですが、喫煙経験がない人でも肺がんを発症する可能性があるため、注意が必要です。
肺がんのステージ別生存率
がんの治療成績を示す指標の一つに生存率があります。がん治療の成果を評価する際には、診断から5年後の生存率、いわゆる5年生存率がよく用いられます。以下に示すのは、国立がん研究センターがん対策研究所がん登録センターが公表した、院内がん登録に基づく生存率です。この生存率は、死因を問わずすべての死亡を含めた生存率を示しています。
ステージ1の生存率
5年生存率は74.0%です。この段階は、がんが肺内にとどまり、リンパ節やほかの臓器への転移がない状態を指します。ステージ2の生存率
5年生存率は46.2%です。この段階は、がんが肺内にとどまり、同側の肺門リンパ節に転移しているものの、ほかの臓器への転移は見られない状態を指します。ステージ3の生存率
5年生存率は26.6%で、4人に1人は肺がんと診断されています。この段階は、がんが肺を越えて隣接する臓器に浸潤しているか、縦隔リンパ節に転移しているもののほかの臓器への転移は見られない状態です。これらのいずれかの状態であれば、ステージ3とされます。1年生存率だと69.3%となっており、一つ手前のステージであるステージ2の1年生存率と比べると15%程度低くなっています。
ステージ4の生存率
5年生存率は7.4%です。この段階は、がんが肺だけでなく、脳・肝臓・骨・副腎などほかの臓器にも転移している状態です。肺がんの治療は進歩しており、手術の成績も向上しています。しかし、進行したステージの5年生存率は早期の患者さんに比べて低く、治療はかなり難しいです。1年生存率でも39.1%と、ステージ3の1年生存率と比べても半分程度まで落ち込んでいます。がんの治療において、いかに早期発見・早期治療が重要かわかる指標の一つになっています。
肺がんの症状
早期の肺がんでは症状が現れないことが多く、進行してから初めて症状が現れることもあります。主な症状には、咳や痰・血痰(痰に血が混じる)・胸の痛み・動いたときの息苦しさ・動悸・発熱などがあります。ただし、これらの症状は気管支炎や肺炎などの呼吸器の病気にも見られるため、必ずしも肺がんを意味するわけではありません。また、症状がないまま進行し、医療機関での定期的な検診やほかの病気の検査で偶然発見されることもあります。
咳・痰・血痰
肺がん患者さんのほとんどの症例でみられる症状が、2週間以上続く持続的な咳です。腫瘍が気道を刺激し、咳症状が引き起こされます。咳や痰が2週間以上続き、痰に血が混じる場合は、注意が必要です。咳は一般的な風邪や呼吸器疾患でも広く認められる症状であり、咳の程度も腫瘍の位置によって異なるため、咳のみで肺がんを診断するのは難しいです。問題ないと自己判断して、病院を受診しない患者さんも少なくありません。
胸の痛み・息苦しさ・動悸
肺がんが胸膜に進展し、がん性胸膜炎を引き起こすと、胸痛や咳などの症状が現れます。初めは軽い息苦しさを感じる程度でも、がんの進行に伴い動作時以外にも息が吸えないまたは吐き出せないと感じるようになるでしょう。さらに病状が進むと、胸水が大量に溜まり、呼吸困難を引き起こすことがあります。腫瘍が大きくなることで気管の分泌物が増え、空気の通りが悪くなり、がん自体が気管支を圧迫して呼吸を妨げることが原因です。特にステージ4では呼吸困難になる割合が多く、余命6ヵ月以内の患者さんの約70%が呼吸困難を感じているといわれています。
発熱
がん患者さんは、治療やがんそのものの影響で体力が低下し、免疫力が低下することがあります。さらに、がんの進行や抗がん剤治療、合併症によって体力が一層低下し、発熱のリスクが高まることがあります。肺がんの治療方法
通常、ステージ4と診断された患者さんには手術は行われません。ステージ4ではがんがほかの臓器に転移しているため、主な治療法は薬物療法となります。肺がんの治療方法はステージによって異なり、一般的にはステージ1とステージ2、さらに一部のステージ3が手術の対象となります。治療方法の選択には、がんの部位・組織型・年齢・既往歴・合併症・臓器の機能・全体的な健康状態を考慮することが重要です。治療には、外科療法・放射線療法・抗がん剤による薬物療法・免疫療法・痛みや苦痛を軽減する緩和治療があります。例えば、放射線療法は、がんのある部位に放射線を当ててがん細胞を攻撃する方法です。細胞障害性抗がん剤と呼ばれる細胞の増殖を障害するタイプの抗がん剤が使用可能な場合には、放射線療法と合わせて化学放射線療法を行います。
ステージ1の治療方法
ステージ1は、がんが原発巣のある肺内にとどまっている状態です。治療の基本は手術による悪性腫瘍の摘出であり、これによって完治を目指します。早期にがんを摘出し、経過観察を行いながら体調に気をつけることで、社会復帰の可能性も高くなります。ステージ2の治療方法
ステージ2では、がんが原発巣と同じ肺にとどまっているものの、リンパ節への転移が見られます。治療は、手術で腫瘍の大部分を切除した後、全身に広がる可能性のあるがん細胞を薬物療法で治療します。特に、腫瘍が2cmを超える場合には、術後に薬物療法が必要です。ステージ3の治療方法
ステージ3では、腫瘍が広がりすぎて手術が困難になることが多いです。この段階では、主に薬物療法と放射線療法が治療の中心となります。ステージ4の治療方法
ステージ4の肺がんでは、手術が困難な場合がほとんどです。そのため、治療の主軸は薬物療法になります。肺がんの薬物療法には、化学療法(抗がん剤)・分子標的薬・免疫チェックポイント阻害薬・化学療法と免疫チェックポイント阻害薬の併用などが含まれます。肺がんのステージ別生存率についてよくある質問
ここまで肺がんのステージ別生存率・症状・治療方法などを紹介しました。ここでは「肺がんのステージ別生存率」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。
肺がんのステージはどのように決定されますか?
肺がんの病期は、がんの大きさや広がり・リンパ節への転移。遠隔転移の状況に基づいて、ステージ1からステージ4の4段階に分類されます。ステージ1は早期であり、がんが肺内に限局している場合が多いのに対し、ステージ4はがんがほかの臓器に広がっている状態を示します。
ステージ4でも寛解の可能性はありますか?
ステージ4でほかの臓器に転移している場合、通常は手術が難しく、治療の中心は抗がん剤を用いた薬物療法になります。寛解の可能性は低いものの、治療によってがんの進行を抑えることができる場合もあります。
編集部まとめ
肺がんは、気管支や肺胞の細胞ががん化する病気で、種類によって治療法が異なります。 肺がんのなかには、特に喫煙と強く関連するものもあるため、喫煙者の方は注意が必要です。 治療はステージに応じて異なり、早期には手術が、進行期には薬物療法が中心となります。 早期発見が重要で、咳や痰が続く場合は早めに医療機関を受診することをおすすめします。肺がんと関連する病気
「肺がん」と関連する病気は9個程あります。各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
上記の疾患では、長引く咳や息切れといった症状が現れることがあり、これらは肺がんの症状と似ているため注意が必要です。
肺がんと関連する症状
「肺がん」と関連している、似ている症状は13個程あります。各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
上記の症状には、肺がんがほかの臓器に転移した場合の症状も含まれます。肺がんは初期段階では症状が現れにくく、気付いたときには進行していることが多いため、特別な症状がなくても定期的な検査を受けることが重要です。



