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「転移性肝臓がんの余命」はご存知ですか?診断方法や治療法も解説!

 公開日:2024/06/23
「転移性肝臓がんの余命」はご存知ですか?診断方法や治療法も解説!

同じ肝臓がんであっても、転移性肝臓がんのステージング・予後などは、肝臓から発生した原発性肝がんとは異なる場合があります。

今回の記事では、転移性肝臓がんの病気の概要・ステージング・診断方法・治療方法などを詳しく解説します。

記事の後半では、転移性肝臓がんに関してよくある余命・再発についての質問にも答えていくので、そちらも併せて参考にしてください。

中路 幸之助

監修医師
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

プロフィールをもっと見る
1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

転移性肝臓がんとは

肝臓がんには原発性肝がん・転移性肝臓がんという2つの分類があります。原発性肝がんとは、肝臓の組織から発生したがんです。
一方、今回のテーマである転移性肝臓がんとは、他臓器にできたがんが肝臓に転移したものを指します。
では、転移性肝臓がんとはどのような特徴のあるがんなのでしょうか。

転移性肝臓がんの症状

肝臓は、異常が起こっても痛み・自覚症状が現れにくい臓器とされています。そのため、原発巣でのがんの症状が目立ち、一方肝臓に転移したことによる症状は現れにくいでしょう。
しかし、腫瘍が大きくなってくると腹部の圧迫感をおぼえたり、腹部に触れると腫瘤を感じたりするようになる場合があります。

多いのは大腸がんの肝転移

他臓器からの転移が起こりやすい臓器として肝臓・肺などが挙げられます。
数ある臓器のなかでも、肝転移の原発巣として多いのが大腸です。大腸から肝臓への転移は、主にがん細胞が血液の流れに乗って移動したことによるもので、これを血行転移といいます。
大腸から肝臓への血行転移が多い理由の一つが、門脈の存在です。門脈は大腸で吸収した栄養を肝臓に運ぶための血管で、直径は1cmにもなります。
この豊富な血流に乗って、がん細胞が肝臓に運ばれやすくなると考えられます。

進行度はステージ4に該当

がんのステージは、原発巣からの広がりによって決定されます。また、多くのがんで遠隔転移がみられた場合の区分はステージ4です。
そのため、ステージ0~3の転移性肝がんは存在せず、転移性肝がんがある場合は原発巣のがんがステージ4であることを指します。

転移性肝臓がんの余命はどれくらい?

余命を考える際に参考にされることの多い統計的指標として、5年生存率があります。
5年生存率とは、対象とする集団のなかで5年後に生存している方が、日本人全体で5年後に生存している方の何%にあたるかを示す数字です。
転移性肝がんの場合は、原発巣によって予後が大きく異なるため、もとになっているがんごとにステージ4の5年生存率を確認する必要があります。肝臓に転移しやすいがんの、ステージ4の5年生存率は下記のとおりです。

  • 大腸がん18.3%
  • 胃がん5.8%
  • 膵がん1.5%
  • 肝内胆管がん5.5%

なお、余命とは上記の5年生存率をはじめとする統計的情報・現在の全身状態・がんの状態・治療などから、一人ひとりの患者さんに合わせて医師が見立てるものです。そのため、病名・ステージのみから画一的に余命を割り出すことはできません。

転移性肝臓がんの診断方法

転移性肝がんは、原発巣の治療を続けていくなかで発見されることもあれば、原発巣よりも先に肝腫瘍として発見されることもあります。
では、転移性肝がんが疑われた場合にはどのような検査を経て診断に至るのでしょうか。

腫瘍マーカー測定

がんにはさまざまな種類があり、それぞれ原発巣になりやすい臓器・性質などが異なります。また、がん細胞は種類ごとに特異性のあるタンパク質を作り出す性質があります。
このタンパク質が血中に含まれているかどうかを調べることで、腫瘍の有無を推測する検査が腫瘍マーカー検査です。
肝臓に腫瘍があるにも関わらず、腫瘍マーカーで別の臓器のがんに関わるタンパク質が検出されれば、その臓器が原発巣である可能性があります。

CT・MRI・超音波などの画像検査

腫瘍マーカーはあくまで補助的な検査であり、実際にどの臓器に腫瘍があるか、腫瘍ががんかどうかなどは確定できません。
そこで、さらに詳しい検査として画像検査が行われます。超音波検査は、超音波(エコー)を使用して腹腔内の様子をリアルタイムに確認できる検査です。また、CT・MRIでは、X線や磁力を利用して腹腔内の輪切りのような映像を撮影することができます。
これらの検査は、原発巣を探すほか、がんの広がりを確認するためなどに行います。

肝生検

肝生検は、腹部から経皮的に針を刺して肝腫瘍の一部を採取する検査です。
採取した細胞を調べることで、腫瘍の性質などがわかり診断・治療方針の検討などに役立ちます。
検査そのものは20分程で終わりますが、検査後に安静を保つ時間を含めると4~6時間が必要となります。そのため、基本的には入院して行う検査です。

転移性肝臓がんの治療法

転移性肝がんの治療は、原則として原発巣に対する治療ガイドラインに沿って行われます。しかし、そのなかで原発巣からの広がりを抑えるだけでなく、肝臓の腫瘍に対する積極的な治療を行う場合もあるでしょう。
肝臓に対する局所的な治療も含めて、治療にはどのような選択肢があるのか紹介します。

肝切除

原発腫瘍の種類によって、肝臓に転移した腫瘍を切除することで予後の改善が見込まれる場合があります。
なかでも、大腸を原発巣とする転移性肝臓がんは、手術を行うことがよい結果につながる可能性があるとされるがんです。

放射線療法

放射線療法は、高い線量の放射線を照射してがん細胞の縮小を図る治療方法です。
肝臓がんに対する標準治療としての放射線療法は、まだ確立されていません。しかし、原発腫瘍の状態により放射線治療が適していると考えられる場合・手術などほかの方法が適さないと判断された場合には、放射線療法を行うケースがあります。

化学療法

化学療法は、がん細胞を攻撃する薬物を投与する治療方法です。
点滴・内服により投与された薬剤は血液に乗って全身に広がるため、転移性肝臓がんをはじめとした他臓器・リンパ節への転移がみられる場合には、化学療法が選択されることが多いでしょう。また、転移性肝がんを切除する前後に補助的に化学療法を行う場合もあります。

局所療法(ラジオ波焼灼療法)

ラジオ波焼灼療法は、腹部から腫瘍に通電した針を刺して焼灼する治療方法です。
麻酔・入院などが必要な治療ですが、手術と比較すると患者さんの負担が少ない治療方法といえるでしょう。
ただし、ラジオ波焼灼療法を適用するには、転移性肝臓がんの数・大きさなどが一定の基準以下である必要があります。

転移性肝臓がんの余命についてよくある質問

ここまで転移性肝臓がんの症状・治療方法などを紹介しました。ここからは転移性肝臓がんについてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

転移性肝臓がんになると必ず余命宣告されるのでしょうか?

中路 幸之助医師中路 幸之助(医師)

前述のとおり、余命とは患者さんの状況・統計的数値・医師の治療経験などを参考に医師が予測した数字です。しかし、必ずしもすべての医師が診断・治療にあたって余命を伝えるとは限りません。治療方法・療養環境を検討していくために必要な情報だと判断した場合に、今後の見通しとして患者さん・家族などに余命を伝えることがあります。

転移性肝臓がんは治療後に再発する可能性はありますか?

中路 幸之助医師中路 幸之助(医師)

転移性肝がんは、手術・局所療法などを行った後の再発率が高いがんといわれています。そのため、手術・局所療法のみで治療が完了するケースは少なく、化学療法の併用などにより再発を抑えるよう努めます。

編集部まとめ

転移性肝臓がんは肝臓がんの一種ですが、治療方法・予後は、原発腫瘍のできた臓器により異なる場合があります。

そのため、転移性肝がんと診断され「なにか情報を知りたい」という方は、肝臓がんだけでなく原発腫瘍についての情報も参考になるでしょう。

なお、治療・症状・予後に関する情報は医師からも得られるほか、療養上の不安などは看護師・ソーシャルワーカーなどに相談できる医療機関もあります。

がん診療連携拠点病院・地域がん診療病院となっている医療機関にはがん相談支援センターが設置されているため、必要に応じて活用してみましょう。

※窓口の名称は医療機関ごとに異なる場合があります。

転移性肝臓がんと関連する病気

「転移性肝臓がん」と関連する病気は4個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する病気

肺・肝臓は他臓器からの遠隔転移が多い臓器といわれています。なかでも上記は、特に肝臓に転移しやすいとされているがんです。

転移性肝臓がんと関連する症状

「転移性肝臓がん」と関連している、似ている症状は2個程あります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 腹部の圧迫感
  • 腹部の腫瘤(しこり)

肝臓はがんができても症状が現れにくい臓器ですが、がんが進行すると上記のような症状が現れることがあります。

この記事の監修医師