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「転移性肝臓がんの進行速度」はご存知ですか?治療法も解説!【医師監修】

 公開日:2024/03/23
「転移性肝臓がんの進行速度」はご存知ですか?治療法も解説!【医師監修】

転移性肝臓がんはほかの臓器から肝臓に転移してきたがんです。すでにステージ4で手術ができない例が多く、治療成績も上がりにくいというのが特徴でした。

近年では抗がん剤の進歩が著しく、切除手術との組み合わせによる治療も行われています。ほとんどが延命治療だった時代から、根治の可能性も期待できるように変化しました。

この記事では転移性肝臓がんの解説と、進行速度・治療方法の種類から将来を見通す予後因子について紹介します。がん治療に関心がある方はぜひ参考にしてください。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

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大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

転移性肝臓がんとは?

転移性肝臓がんは、原発性肝臓がんに対して区別するための病名です。ほかの臓器にあったがん細胞が血液などに乗って肝臓に流れ着いてできました。そして、同じ肝臓にできる原発がんとは違う動きで増殖します。どのようながんなのか、詳しくみましょう。

ほかの臓器から転移

ほかの臓器にもともとあったがん(原発巣)が進行して、臓器の内部から周辺の血管やリンパ管に広がります。がん細胞が血液やリンパに乗って体中を巡るうち、肝臓に到達して増殖・定着したものが転移性肝臓がんです。肝臓には体中の臓器からの血流が集中するので、どの臓器にある原発巣からもがん細胞が到達する可能性があります。
その中でも肝臓に転移しやすいのは、大腸がんなど消化器のがんです。

肝細胞がんとは区別される

肝細胞がんは原発性肝臓がんの中でも多数派で、肝臓内にある肝細胞ががん化したものです。この原発性肝細胞がんと転移性肝臓がんは、元になった細胞の違いによって性質が大きく違います。
肝細胞がんは肝細胞がその場でがん化したものに対し、転移性肝臓がんは原発巣のがんが肝臓に移動したもので、性質は原発巣のがん細胞のものです。治療する際にもその違いには十分配慮する必要があり、転移性肝臓がんには原発巣に準じた治療法を適用します。

転移性肝臓がんの進行速度

がんの進行速度とは、がん細胞が分裂して増殖するスピードのことです。転移性肝臓がんは原発巣から移ってきたがん細胞が定着したがんになります。進行速度など性質は元の原発巣のものを受け継いでいて、転移性肝臓がんとしての固有の進行速度はありません
転移性肝臓がんの原発巣は大腸がんが特に多い傾向です。大腸がんは進行速度が遅く悪性度も低い性質のため、大腸がん由来の転移性肝臓がんでも、進行速度が遅くおだやかな性質になります。

肝臓がんの治療方法

肝臓がんに対する治療は手術や薬物などさまざまな方法があります。進行度や性質・患者さんの体調に応じて適切な方法が選ばれます。個別に詳しくみていきましょう。

肝切除術

肝切除術はがん細胞とその周囲を切り取る外科手術です。がんを物理的に切除するので、根治効果が期待できます。この方法が選ばれるのは、がんが3個以内で転移がなく、悪性度が中または低レベルで肝機能に余裕がある場合です。
がんがある場所や数によっては負担の少ない腹腔鏡手術ができますが、技術的な難易度が高くどこでもできるわけではありません。

化学療法

化学療法とは化学薬品(抗がん剤)を使う方法で、物理的な治療法(手術・肝移植・穿刺療法・肝動脈塞栓術)が使えない場合に行われます。日常生活が支障なくできる体調レベルで重症度が低レベルの場合、抗がん剤による治療が可能です。この方法では、使う薬剤によってさまざまな副作用が高い頻度で起こることが予測されます。
医師や薬剤師に、使う抗がん剤でどのようなことが起こるのかを事前に確かめておきましょう。

肝動脈塞栓術

肝臓内部にあるがんに栄養を送っている動脈をふさぎ、栄養補給を止めて死滅させる方法です。肝動脈にカテーテルを入れ、先端から細胞障害性抗がん剤と造影剤を注入します。
そのあと塞栓材を注入して、血管をふさいだうえ抗がん剤で増殖を抑える方法です。この方法は、悪性度が中か低レベルで3cm異常のがんが3個まで、または大きさを問わず4個以上で手術が難しい場合に適用されます。

経皮的エタノール注入療法

この方法は、超音波画像でがんの位置を確認しながら細い針をがん組織に刺し、内部にエタノールを注入してがん細胞を死滅させます。対象になるがんは直径が3cm以内で3個までの場合です。サイズが大きい場合、エタノールが組織内でうまく拡散しにくいため、治療効果が不十分になることがあります。
この方法は肝細胞がんには効果的ですが、胆管がんや転移性肝臓がんには効果が出にくい方法です。

ラジオ波焼灼療法

この方法もエタノール注入法と同様に、超音波画像を見ながらがん組織に細い針を刺します。針が電極になっており、先からラジオ波電流を流して発熱させてがん組織を壊死させる方法です。
針先の直径2~3cmの球形に壊死がおこり、ほかの肝臓組織には及びません。対象は直径3㎝までで数が3個以内の場合への適用です。死滅させる効果はエタノールより高く、少し大きくても効果が期待できます。

肝移植

患者さんの肝臓を全部取り出して、提供された肝臓を移植する方法です。国内では親族などの肝臓を一部取り出して移植する生体肝移植が主流ですが、2009年の法改正以降は脳死の遺体から提供された肝臓を移植する死体肝移植が増えています。
移植の対象は、他臓器への転移がないことと、がんのサイズや数・腫瘍マーカーの数値が基準をクリアしている方です。成績は良好で、20年生存率は生体肝移植で66%、脳死肝移植で56%になっています。

肝臓がんの予後因子とは?

予後因子とは、病気が今後よくなるか悪くなるかを予測するための要素のことです。
肝臓がんでは肝機能・血管皮膜浸潤・多発性・腫瘍性などが挙げられ、これらの状態で肝臓がんの今後が決まります。

肝機能

肝臓がんの患者さんは、多くが肝硬変です。肝硬変では肝機能が著しく低下して、本来の予備能が失われます。
この状態では、肝臓がん治療の決め手になる切除手術ができません。対応として、手術に代わる代替治療があります。切除に近い効果が期待できるエタノール注入療法・ラジオ波焼灼療法がそれで、肝機能が低下した状態の肝臓がん治療に選択肢が増えました。肝機能や進行度を勘案して適切な治療法が選択でき、予後は決して悪くありません。

血管・被膜浸潤

肝臓がんでは進行して周囲の血管に浸潤したり、皮膜から肝臓実質に浸潤する例があります。血管浸潤では門脈や肝静脈へ浸潤して腫瘍栓ができ、難しい手術ですが近年では切除が可能です。また、皮膜浸潤で肝実質へ進行した場合、内科的な化学療法を実施します。
進歩した抗がん剤で腫瘍が縮小し、その後外科的な切除が可能になる例も珍しくはありません。そして、陽子線治療も選択肢にあります。予後は楽観できませんが、進行がんでも治癒や長期生存例が増える傾向です。

多発性

肝臓がんには腫瘍が複数できる多発性のものがあります。他臓器からの転移や、リスクの強い肝硬変や慢性肝炎によるものです。数が多い場合は効果が高い切除手術や穿刺療法ができない例があり、一般的には予後は良くありません。
対応として検討される治療法は、冠動脈塞栓術または放射線治療です。また放射線でがんを小さくして手術で取れるだけ取り、肝機能の回復を待って再度の切除で取り切る方法も採用されています。こちらの予後はかなり期待できそうです。

腫瘍径

腫瘍の径が4cmを越えるほど大きく増殖している場合、その半数以上では肝臓内には微小ながんが散在しているとされます。このような場合は穿刺療法では対応できません。手段としては切除手術か冠動脈塞栓術と放射線の併用が考えられます。切除手術に大きさの制限はないので、大きいものでも切除できます
冠動脈塞栓術も血管さえふさげば自滅するので難易度はさほど高くありません。ただし、転移や浸潤により予後に悪影響があります。

転移性肝臓がんの進行速度についてよくある質問

ここまで、転移性肝臓がんの進行速度・治療方法の種類から将来を見通す予後因子などを紹介しました。ここでは「転移性肝臓がんの進行速度」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

転移性肝臓がんはステージごとに症状が変わりますか?

甲斐沼孟医師甲斐沼 孟(医師)

転移性肝臓がんはほかの臓器から転移してきたがんなので、発見当初からステージ4のがんとして扱います。症状は元のがんの進行に伴って現れるもので、転移性肝臓がんの症状は初期ではほぼありません。進行につれて倦怠感や痛みが出て、やがて黄疸など肝臓の症状が現れます。

転移性肝臓がんはほかのがんと比較して進行速度が速いですか?

甲斐沼孟医師甲斐沼 孟(医師)

転移性肝臓がんは転移元のがんと同じ性質をもちます。そのため、転移性肝臓がんとして特徴的な進行速度はありません。進行が遅い大腸がんが転移元なら、それが転移した転移性肝臓がんの進行も遅くなります。

編集部まとめ

転移性肝臓がんは転移元のがん(原発巣)と同じ性質を持って肝臓に転移します。肝臓でも原発巣と同じような進行速度で増殖する特徴的ながんです。

治療は原発巣と同じ扱いが基本ですが、近年はさまざまな治療法が開発されています。以前のような延命だけではなく、適切な治療で治癒が望めるようになりました。

予後因子をみても、さまざまな選択肢が用意されています。転移性肝臓がんでも、すでに進行している原発巣とともに治療を進めることが十分可能です。

肝臓がんと関連する病気

「肝臓がん」と関連する病気は4個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する病気

こうした病気は肝臓がんの患者さんが併発していることが多い病気です。どれも慢性の肝臓病で、肝機能が低下したときにこれらの病気の症状が現れます。重い病気なので、併せて治療することが大切です。

肝臓がんと関連する症状

「肝臓がん」と関連する症状は8個ほどあります。
各症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 食欲不振
  • むくみ
  • 腹部のしこり
  • 圧迫感
  • 腹水
  • 黄疸
  • 肝性脳症

肝臓がんの初期は無症状で、先に現れるのは併発している肝臓病の症状です。進行すると肝臓がんの症状が出始め、末期では腹水や黄疸など特有の症状が現れます。

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