「食道がんの検査方法」はご存知ですか?検査費用や予防の注意点も解説!
食道がんが疑われたら、まずは疑いを晴らすか確信するかの検査です。がんが確定したら効果的な治療を進めるための検査を始めます。
こうした目的に沿った各種検査により、効果的な治療が可能です。この記事では食道がん治療の指針となる検査や流れを紹介・解説します。
検査にかかる費用も紹介するので、食道に気になる症状がある方はこの記事を参考に早目の検査がおすすめです。
監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
目次 -INDEX-
食道がんとは
食道は咽頭(のど)から胃の入口にいたる管状の臓器で、がんはその内側の粘膜上に発生します。部位は中央部に多いのが特徴です。発生したがんは外側に向かって拡大(浸潤=しんじゅん)し、外膜を越えて隣接する気管・肺などに広がります。
初期の食道がんはほとんど無症状です。進行に伴って胸の違和感・食物のつかえ・胸や背中の痛み・声のかすれなどの症状が出てきます。さまざまな検査によって適切な治療法が選択されますが、根治が望めるのはほかのがんと同じで内視鏡的切除も含む手術です。
食道がんの検査方法と診断の流れ
食道がんが疑われた場合、まず存在を確認するための内視鏡検査・造影検査を受けます。続いて受けるのが、治療方法を決めるための詳細な各種検査です。流れに沿って、内視鏡検査から順に見ていきます。
上部消化管内視鏡検査
内視鏡を口から食道に入れ、内部の粘膜の様子をモニターで観察します。疑わしい箇所があればNBI内視鏡などで詳細に観察し、がんかどうかを見極める検査です。
必要なら染色して範囲を確認したり、鉗子で病変を採取したりします。採取した組織は病理検査を行い、顕微鏡を使ってがん細胞の有無を確認します。検査に使うNBI内視鏡は、波長が違う2種類の光源で病変や微細な血管の強調が可能です。
上部消化管造影検査
通常のX線を使う造影検査は静止画ですが、食道がんの有無を確認する場合は動画を使います。X線を連続して照射し、飲んだバリウムが食道を通過する様子を動画で見られる装置です。
バリウムが通過する際に、流れがつかえたり通路が狭くなったりすればリアルタイムで確認できます。がんの病変があれば、そこに付着したバリウムで不規則な凹凸として認識できる検査です。
超音波内視鏡検査
超音波内視鏡は、がんが浸潤している深さを調べられる機器です。内視鏡の先に超音波受発信器を装着して、食道内からがんの広がりや深さを詳細に観察できます。
食道の周囲には気管や肺・大動脈があり、こういった臓器への浸潤を調べるうえで超音波内視鏡は有用な検査機器です。心臓や肺の動きに左右されず、食道内から直接観察するので高精度な診断ができます。
病理検査・病理診断
内視鏡で見つけて採取した病変を顕微鏡で観察し、たしかにがんであるか・どのような種類・性質のがんなのかを調べます。これが病理検査であり、その結果を利用して行う診断が病理診断です。検体を拡大して観察する形態学的検査に加え、がんが持つタンパク質の種類・分布・特異な遺伝子の有無によってがんの種類を細かく特定します。
この結果で後のがん治療の成否が左右されることになるのです。
CT検査・MRI検査
CTはX線・MRIは磁力と電波を使い、身体を全方向から撮影して連続的に断面画像を作ります。この画像によって、周辺へのがんの広がりや深さ・転移の有無などを立体的に把握できます。
がんの進行度を判断するには欠かせない検査です。MRIは検査時間が長くなりますが、正常組織と病変部の境界がわかりやすい画像が得られます。
超音波検査
身体にプローブ(探触子)を当てて超音波を出し、反射波を受信して画像化します。食道がんの場合、腹部では肝臓・リンパ節への転移を調べ、頸部では甲状腺・リンパ節・頸動脈との関係をチェックするのが目的です。
超音波は空気層・骨・厚い脂肪層を通りにくい性質があり、胸部の食道は肺の空気が障害になるので検査はできません。
PET検査
がん細胞がブドウ糖を大量に消費する性質を利用した検査です。放射性物質を添加したブドウ糖を静脈に注入し、がん細胞に集まる様子を画像化します。
がんの位置や深さがわかりやすい画像が得られますが、さらに精度を高めるためにMRIやCTと組み合わせた検査も行われます。この検査は全身の撮影ができ、転移巣を探す場合には有効な検査です。
腫瘍マーカー検査(血液検査)
腫瘍マーカーとは、がん細胞やがん細胞に反応した細胞が作り出す特有のタンパク質です。がんの種類ごとに特徴があるため、このタンパク質を見つけることでがんの種類が特定できます。
ただし、100%正確な判定は望めず、進行度や位置の特定もできません。ほかの検査の結果と合わせて、医師による総合的な判断に使用されます。
食道がんの検査費用の目安
食道がんの各種検査にはどれ程の費用がかかるのかも見ておきましょう。食道がんは公費で補助される対策型検診の対象外です。がんが疑われる所見や症状がない場合は、人間ドック同様に費用は全額自己負担になります。
以下は健康保険適用で3割負担の金額で、全額自己負担の場合はこの3.3倍です。
- 上部消化管内視鏡検査:6,000~18,000円
- 上部消化管造影検査:3,000円程度
- 病理検査(生検):4,000円程度
- CT・MRI:CT 5,000~10,000円、MRI 8,000円程度
- 超音波エコー検査:1,000~1,800円
- PET:30,000円程度
- 腫瘍マーカー検査:1,000~2,000円
なお、検査には処置料や薬剤費などがかかり、患者さんの状態によって変動します。
食道がん予防のため注意すること
食道がんの多くは生活習慣に起因することが示唆されています。普段の生活を見直すことで食道がんの予防が期待できるので、そのポイントを3つ程挙げて紹介しましょう。
飲酒・喫煙
食道がんの原因として、まず指摘されるのが飲酒と喫煙です。お酒のアルコールが体内で分解されるとアセトアルデヒドになりますが、これが発がん性を持ち発がんリスクを高めます。
タバコの煙には発がん物質が70種類もあり、DNAを損傷してがんを作る原因物質です。有害物質も多く、これらが付着して食道にがんが発生するとされます。食道がん予防には禁酒禁煙が必須です。
食事
食事の内容も食道がんに関連があります。例えば塩辛のような塩分濃度の高い食品を好む方は、粘膜を損傷してがんのリスクを高めます。また熱い食物・飲料を習慣的に摂ることも食道粘膜にダメージを与え続け、発がんを促す原因です。
薄味に慣れて熱いものを冷まして食べる食習慣に改めましょう。さらに、野菜や果物を積極的に摂ることで栄養バランスが改善され、発がんリスクの低下が期待できます。
運動
生活のなかで身体を活発に動かしている方程、がんの発症リスクが低いとの研究が発表されています。同様に心疾患のリスクも低下するとされ、適度な運動が健康につながるようです。
具体的には、64歳以下では毎日60分以上の身体活動が推奨され、65歳以上では毎日40分以上の身体活動が推奨されます。がんの予防には、健全で抵抗力がある身体の維持が大切な要件です。
食道がんの検査についてよくある質問
ここまで食道がんの検査方法・診断の流れ・費用の目安などを紹介しました。ここでは「食道がんの検査」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
食道がんの検査に入院は必要ですか?
中路 幸之助(医師)
食道がんの検査では、基本的に入院する必要はありません。各種検査のなかで時間がかかるのはPET検査で、薬剤を注入してから終了まで2~3時間程度です。MRIは1時間程かかりますが、そのほかはすべて1時間未満で終わります。数種類の検査を組み合わせても日帰りでき、入院は不要です。
毎年胃の内視鏡検査を受けていれば食道がんの早期発見は可能ですか?
中路 幸之助(医師)
がん発症リスクがない健康な方でも、検査の頻度は2年に1回が推奨されます。毎年検査を受けるのであれば、早期発見の可能性はより高くなるでしょう。なお、手術後の方・飲酒や喫煙の習慣がある方など、リスクが高い方は1年ごとの検査が推奨されます。
編集部まとめ
食道がんの検査は2種類あり、がんを見つけるための検査と、治療方法を決めるための検査です。状況に応じて適切な検査方法が選択でき、効果的な治療が期待できます。
費用では、何か気になる症状があれば健康保険が適用され、高額なPET検査でも30,000円程度で検査が可能です。
食道がんは生活習慣との関係が深く、予防も可能です。普段の生活で注意しながら、何か不安があれば早目に検査を受けてください。
食道がんと関連する病気
「食道がん」と関連する病気は4個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
これらのがんは食道がんの20%に見られる「重複がん」です。同時期に別の場所に現れるがんで、食道がんの治療が終わったら重複がんの有無を検査します。
食道がんと関連する症状
「食道がん」と関連している、似ている症状は5個程あります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 胸のつまり感
- 胸やけ
- 胸の痛み
- 咳
- かすれ声
いずれも食道がんの症状ですが、逆流性食道炎・食道アカラシア・食道潰瘍などでもおこる症状です。こうした症状が出たら、食道がんも疑って検査を受けてください。