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喫煙経験者5人に1人がかかる「COPD」とは? もう禁煙しても手遅れ?【医師解説】

 公開日:2025/05/28

喫煙を主な原因として発症するCOPD(慢性閉塞性肺疾患)。体を動かしたときに息切れしたり、咳や痰が長引いたりするだけでなく、重症化すると日常に支障が及ぶこともある疾患です。COPDを発症したらまずは禁煙をすることが絶対必要ですが、発症してから禁煙したのでは遅いのでしょうか? 実際のところについて、宮澤内科・呼吸器クリニックの宮澤先生に教えてもらいました。

宮澤 知行

監修医師
宮澤 知行(宮澤内科・呼吸器クリニック)

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鹿児島大学医学部卒業後、東京慈恵会医科大学外科学講座助教を経て聖マリアンナ医科大学呼吸器外科講師となる。2019年より、宮澤内科・呼吸器クリニック勤務。医学博士。日本外科学会外科専門医。呼吸器外科専門医合同委員会(日本呼吸器外科学会・日本胸部外科学会)呼吸器外科専門医。産業医。

COPD(慢性閉塞性肺疾患)とは?

COPD(慢性閉塞性肺疾患)とは?

編集部編集部

COPDとはなんですか?

宮澤 知行先生宮澤先生

COPDとは、chronic obstructive pulmonary diseaseの省略形。日本語では慢性閉塞性肺疾患と呼ばれます。簡単にいうと、タバコの煙などが原因となって、肺に慢性的な炎症が起こり、呼吸をするたびに息苦しさを感じる疾患です。これまで慢性気管支炎や肺気腫と呼ばれていた疾患が、現在ではCOPDとまとめて呼ばれています。

編集部編集部

もう少し詳しく教えてください。

宮澤 知行先生宮澤先生

タバコの煙などに含まれている有害物質を吸い込むと、気管支の細かな組織が炎症を起こします。すると咳や痰が出やすくなったり、気管支が細くなったりして、酸素を取り込みづらくなってしまいます。また、気管支の先にあるブドウの房のような形をした肺胞という組織が破壊されると、肺気腫という状態になり、酸素を取り込んだり二酸化炭素を排出したりする機能が弱まります。

編集部編集部

なぜ、COPDになると酸素を取り込みづらくなるのですか?

宮澤 知行先生宮澤先生

気管支は空気の通り道であり、肺胞へとつながっていきます。肺胞は網の目状の毛細血管によって覆われており、肺全体を埋め尽くしています。そして、この血管を通して酸素を血液に取り込んだり、不要な二酸化炭素を排出したりしています。これをガス交換といいます。しかし、COPDを発症するとこの肺胞が壊れてしまい、ガス交換をおこないづらくなってしまうのです。

編集部編集部

最近、COPDという言葉を耳にすることが増えました。患者数は増加しているのですか?

宮澤 知行先生宮澤先生

厚生労働省の統計によれば、COPDによる2023年の死亡者数は1万6941人、人口10万人あたりの死亡率は14.0人であることがわかっています。過去のデータと比較してみると、近年、少しずつ増加傾向となっていることがわかります。これは過去に喫煙率が上昇していたことが原因と考えられます。

COPDの症状と原因

COPDの症状と原因

編集部編集部

「過去の喫煙率が関係している」とはどういうことですか?

宮澤 知行先生宮澤先生

COPDは大気汚染や遺伝などでも発症しますが、一番の原因は喫煙です。つまり、過去の喫煙が現在の病気を招いているのです。研究により、喫煙年数が長かったり、1日に吸う本数が多かったりすればするほど、COPDの症状もひどくなることがわかっています。怖いのは、本人が吸っていなくても周りに吸っている人がいれば、その影響を受ける可能性があるということ。つまり、受動喫煙もCOPDの原因になるのです。

編集部編集部

タバコを吸っている人は、必ずCOPDを発症するのですか?

宮澤 知行先生宮澤先生

必ずというわけではありませんが、研究により喫煙者の15~20%がCOPDを発症することがわかっています。喫煙者の5〜6人に1人はCOPDを発症するのですから、これは非常に高い数値です。喫煙が発症に関係していることから、COPDは肺の生活習慣病とも言われています。

編集部編集部

症状がひどくなるとどうなるのですか?

宮澤 知行先生宮澤先生

COPDは進行性の疾患です。そのため放置すると呼吸がますます苦しくなり、呼吸困難で寝たきりの状態になることもあります。また、肺炎や肺がんのリスクが高まることもあり、大変危険です。COPDと診断されたらすぐに治療を開始することが必要です。

編集部編集部

COPDを早期に発見するために、どんな症状が出たら受診すればよいでしょうか?

宮澤 知行先生宮澤先生

たとえば現在40歳以上で、喫煙している、あるいは過去に喫煙していた人で、息切れや咳、痰などが続く人は、早めに呼吸器科を受診しましょう。また階段を上がると息切れがしたり、早歩きすると呼吸が乱れたりする人も要注意。それから、人間ドックなどで肺機能検査を受け、精密検査を受けるように指示された人も早めに受診してください。

COPDの治療法

COPDの治療法

編集部編集部

COPDはどのようにして治療するのですか?

宮澤 知行先生宮澤先生

症状に応じて薬物療法、運動療法、栄養療法などをおこないます。しかし、何よりも最も必要なのは、禁煙です。もし今、タバコを吸う習慣があるなら、ただちに禁煙するようにしましょう。

編集部編集部

禁煙することで完治を目指すことはできるのですか?

宮澤 知行先生宮澤先生

一度壊れてしまった肺機能を回復させることはできません。しかし、禁煙することで肺の機能を高め、ある程度回復させることはできます。そのため、今喫煙の習慣がある場合は直ちに禁煙するようにしましょう。

編集部編集部

薬物療法や運動療法、栄養療法ではどのようなことをおこなうのですか?

宮澤 知行先生宮澤先生

薬物療法では、主に気管支を広げて呼吸をしやすくする気管支拡張薬を使用します。また有酸素運動、筋力トレーニング、柔軟性トレーニングなどの運動療法も、息切れを改善したり肺機能を向上させたりするのに効果的です。そのほかCOPDでは栄養障害が起こり、特に重症度の高い人は体重減少が多く見られることから、栄養療法では十分なエネルギー量を確保することも大切です。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

宮澤 知行先生宮澤先生

喫煙はCOPDや肺がんの原因になるだけでなく、胃がん、食道がん、咽頭がん、喉頭がんなどの原因になることもわかっています。受動喫煙により一緒に過ごすご家族の健康も害することになります。喫煙習慣は、現在ではニコチン依存症という病気として捉えられるようになり、禁煙補助薬を用いた治療を禁煙外来で受けることができます。禁煙に失敗したことがあり自信が持てない人や、禁煙の意欲はあるのに踏み出せない人は禁煙外来の受診をお勧めします。

編集部まとめ

現在、日本の喫煙率は減少傾向にありますが、一昔前までは多くの人が喫煙の習慣を持っていました。その人たちが現在、COPDのリスクにさらされているのです。咳が続く、息苦しいなど「COPDかもしれない」と感じたら、早めに呼吸器科を受診するようにしましょう。

医院情報

宮澤内科・呼吸器クリニック

宮澤内科・呼吸器クリニック
所在地 〒225-0003 神奈川県横浜市青葉区新石川2-4-12 フォーラムたまプラーザ1階
アクセス 東急田園都市線「たまプラーザ」駅南口より徒歩3分
診療科目 内科、呼吸器内科

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