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「飲酒をすると大腸がん」を発症しやすくなるのはどうして?医師が徹底解説!

 公開日:2024/04/11
「飲酒をすると大腸がん」を発症しやすくなるのはどうして?医師が徹底解説!

大腸がんと飲酒の関係性とは?Medical DOC監修医が大腸がんと飲酒・喫煙との関係性・なりやすい人の特徴・原因・予防法や何科へ受診すべきかなどを解説します。

齋藤 雄佑

監修医師
齋藤 雄佑(医師)

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日本大学医学部を卒業。消化器外科を専門とし、現在は一般外科、消化管内視鏡検査、生活習慣病を中心に診療を行っている。現在は岩切病院、高砂内科・消化器科クリニックに勤務。
日本外科学会外科専門医。日本医師会認定産業医。

「大腸がん」とは?

大腸がんは2019年のがん統計で罹患数が1位で、男女別にみても男性と女性でそれぞれ2位と多く、特に最近の罹患数の増加が著しい疾患です。大腸がんは、大腸(結腸・直腸)に発生するがんで、腺腫という良性のポリープががん化するものと、正常な粘膜から直接発生するものがあります。

大腸がんと飲酒の関係性

ここでは飲酒による大腸がん発症のメカニズムや飲酒量に着目して説明します。

飲酒をすると大腸がんを発症しやすくなるのはどうして?

飲酒が大腸がんを引き起こすメカニズムははっきりしているわけではありませんが、アルコールの代謝産物であるアセトアルデヒドには発がん性があることがわかっています。また、アルコールやアセトアルデヒドが葉酸の働きを阻害することで、大腸の粘膜で発がんに関わる遺伝子に働きかけている可能性が示唆されています。

飲酒の許容量はどれくらい?

厚生労働省が示す「健康日本21」では日本人の適度な飲酒量として「1日平均純アルコールで約20g程度」としています。純アルコール換算を加味した、適量のお酒の量を計算する方法を示します。2500÷お酒のアルコール度数(%)=適正な飲酒量(ml)です。例えばアルコール度数が5%のビールであれば500ml、15%の日本酒であれば180ml(1合)、25%の焼酎であれば100mlが1日の適量です。アルコール度数が高いお酒を飲む場合は量を抑える必要があります。特に女性は少ない飲酒量でもリスクが上がるので男性よりも、更にお酒の量を減らすことが勧められます。

大腸がんと喫煙の関係性

たばこはどのようなメカニズムで大腸がんの発症に寄与するのでしょうか。ここではそのメカニズムとすぐにがんを発症しない理由について解説します。

喫煙をすると大腸がんを発症しやすくなるのはどうして?

たばこには約70種類の発がん性物質も含まれています。その代表格はニコチン、タール、一酸化炭素などですが、その他に発がん性の強いニトロソアミン類やダイオキシン類、カドミウムなどの金属、ホルムアルデヒド、PM2.5などの危険な物質が多く含まれているのです。これらの有害な物質は、喫煙で肺から血液中に入って全身の臓器に運ばれ、DNAに傷をつけるなどしてがんの原因となると考えられています。

喫煙をしてもがんを発症しない理由とは?

喫煙をしてもすぐにがんを発症するわけではありません。細胞レベルでがん化が起こっていても、検査などでがんの腫瘍として認識できる大きさまで進行するのには長い時間がかかるからです。また喫煙によってがんのリスクが上昇することは確実ですが、もちろんすべての喫煙者ががんを発症するわけではありません。健康面でたばこは百害あって一利なしです。早期の禁煙をおすすめします。

大腸がんになりやすい人の特徴

日本の大腸がんの2019年の罹患者数は男性で約9万人、女性で約7万人です。年齢層としては40歳以降に徐々に罹患率が高くなる傾向があります。ここでは大腸がんになりやすい人の特徴を解説します。自分の生活習慣が当てはまっていないか確認しましょう。

飲酒量が多い方

日本人男性において飲酒しない人に比べ、1日平均で1合〜2合の飲酒をする人は1.4倍、2合以上飲酒をする人は 2.1倍大腸がんになりやすくなるという研究結果が出ています。飲酒量が1日平均で1合を超える方は注意が必要です。

喫煙する方

日本人の男女を対象とした研究で、喫煙者は非喫煙者に比べて、大腸がんの発生率が1.4倍高く、また元喫煙者でも1.3倍高かったと報告しています。喫煙者の方は大腸がんのリスクが高いと言えます。

肥満の方

日本人男性の場合、Body Mass Index(BMI)25未満に比べて、BMI27以上で大腸がんのリスクが1.4倍上昇することが研究で示されています。またその数値が増えれば増えるほどリスクも上昇する傾向が出ています。

大腸がんの家族歴がある方

血縁関係のある家族に大腸がんの家族歴がある方は大腸がんの罹患率が高いです。また、家族性大腸腺腫症という大腸にポリープが多発する病気やリンチ症候群という全身にがんができる病気があります。これらの病気は遺伝子変異によって親から子へ遺伝する病気で、大腸がんの発症が高確率です。若い年齢で予防的手術をする場合もあります。大腸がんや大腸ポリポーシスの家族歴がある方は積極的に大腸がん検診を受けるか、消化器内科・外科のある病院を受診しましょう。

糖尿病の方

2型糖尿病の方は大腸がんのリスクが上がることがわかっています。2型糖尿病の方の大腸がん死亡率は2.4倍高いとの報告があります。その原因は糖尿病によって引き起こされる高血糖状態の酸化ストレスが、細胞レベルでDNAに損傷を与えることで、がん化を誘発すると考えられています。糖尿病がある方はかかりつけで適切な治療を受けた上で、若い年齢から積極的に大腸がん検診を受けることをおすすめします。

食事が極端に偏っている方

日本人男性で肉類全体の摂取量が多いグループ(約100g/日以上の群)で結腸がんリスクが高くなり、赤肉の摂取量が多いグループ(約80g/日以上)で女性の結腸がんのリスクが高くなると言われています。また野菜に含まれる食物繊維の摂取量が極端に少ないと大腸がんのリスクが上がるという報告があります。食事に極端な偏りがある方は注意が必要です。

大腸がん発症のリスクを上げる原因

この20年で大腸がんによる死亡数は1.5倍に拡大しています。その原因として生活習慣の欧米化が関与していると言われています。ここでは大腸がんの原因を説明していきます。

過度の飲酒

前述のように純アルコール量20g以上の飲酒で大腸がんのリスクが上がります。アルコール過多の方は健診で肝機能障害を指摘される場合があります。肝機能異常が指摘されたら内科を受診しましょう。

喫煙

前述の通り、喫煙は大腸がんのリスクになります。禁煙するのが理想的ですが、自分で禁煙できないときは禁煙外来を受診しましょう。

肥満

前述の通り、肥満は独立した大腸がんのリスク因子です。肥満になると血糖を下げるインスリンが効きにくい身体になります。血糖を正常にするにはインスリンが大量に必要になり、この状態が高インスリン血症やインスリン様成長因子の分泌も増えます。これらの物質が大腸がんと関係している可能性が示唆されています。BMI27以上の肥満がある方は減量をおすすめします

大腸ポリープ

大腸がんの多くは大腸腺腫というポリープががん化して発生します。大腸腺腫の発生の原因には前述の喫煙や飲酒、肥満や食生活などの生活習慣が関わっていると言われています。大腸がんや大腸腺腫の発生に関わる生活習慣を持っている人は注意が必要です。大腸ポリープがあると言われている人は定期的な消化器内科医の診察や大腸カメラを受けることをおすすめします。

大腸がんの予防法

節酒する

節酒することで大腸がんのリスクを下げられる可能性があります。どうしても飲酒したい場合は、飲酒量は日本酒で1合、ビールなら500ml程度に抑えましょう。毎日飲酒するのではなく、休肝日を作りましょう。アルコールは依存性が高いので、自分で制限が難しい場合は内科で医師に相談しましょう。

禁煙する

前述の通り、喫煙は大腸がんのリスクになります。早く禁煙して、禁煙期間を長くできれば、がん発症のリスクを非喫煙者に近づけられます。自分で禁煙が達成できないときは禁煙外来を受診しましょう。

定期的な運動による体型の維持

定期的な運動の大腸がん予防効果は確実視されています。日本人を対象とした研究で、男性では身体活動量の最大の群で、大腸がんリスクが30%低下し(0.69倍)、大腸がんのうち結腸がんリスクの低下が顕著でした(0.58倍)。定期的な運動によって適切な血糖のコントロールや肥満の予防、免疫力の増強、腸管蠕動の促進がその要因になっていると考えられています。減量についてはすべての人に勧められるわけではありませんが、特に男性で、BMIが27以上の肥満の傾向がある方は減量することで、大腸がんのリスクを低下させられる可能性があります。

大腸がん検診を受ける

大腸がん検診では問診と便潜血検査をします。便潜血検査が陽性であれば、大腸カメラで大腸がんや大腸ポリープの有無を検査しましょう。便潜血検査の各隔年検診で優位に大腸がんの死亡率を低下させることが報告されています。また大腸カメラを受けることで大腸がんの死亡リスクを60%減少させることが示唆されています。大腸がんは一度の検査で見つからない場合もあるので、定期的な受診が必要です。

大腸ポリープを切除する

大腸腺腫というポリープはがん化する可能性があります。大腸カメラで大腸腺腫を早期に発見し、切除することで大腸がんの予防ができます。40歳以降の方は定期的に大腸カメラを受けて、大腸ポリープがないか検査をするのがおすすめです。

バランスの摂れた食事を摂る

前述のように極端に肉の摂取量が多かったり、野菜の摂取量が少ない食事は大腸がんのリスクを上昇させている可能性があります。肉類中心の食事は脂肪を多く含み、肥満の原因にもなります。昔からよく言われていることですが、肉だけでなく、魚や食物繊維を多く含む野菜などをとる習慣は、大腸がんの予防の意味だけでなく、健康的な食事であることは知識として持っておきましょう。

「大腸がんと飲酒」についてよくある質問

ここまで大腸がんと飲酒について紹介しました。ここでは「大腸がんと飲酒」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

大腸がんの術後に飲酒はできますか?

齋藤 雄佑齋藤 雄佑 医師

大腸がんの手術には2種類あります。内視鏡的切除と外科的切除です。内視鏡的切除は大腸カメラを使って病変を切除することで、外科的手術はお腹を切って手術をすることです。術後の飲酒について厳密な決まりはありませんが、目安として内視鏡的切除の場合は術後1週間程度、外科的手術の場合は退院後1-2ヶ月程度、飲酒を控えていただく場合が多いです。いずれにしても主治医に確認の上、適量の飲酒にとどめましょう。

編集部まとめ

大腸がんは罹患率と死亡率がともに上昇しています。その原因は生活習慣が大きく関わります。大腸がんの予防のためには、過度な飲酒や喫煙はせず、定期的な運動で体型維持し、食事はバランスよく摂取することが大切です。40歳以上の方は大腸がん検診を受けて、大腸がんの原因になる大腸ポリープがないか検査しましょう。また大腸がんの家族歴や糖尿病、遺伝性大腸疾患のある方は、通常よりもさらに注意深く検査が必要です。消化器内科を受診して定期的な診察や検査を受けましょう。

「大腸がんと飲酒」と関連する病気

「大腸がんと飲酒」と関連する病気は12個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

内分泌代謝科の病気

大腸がんは飲酒や喫煙、肥満など生活習慣に影響される病気です。生活習慣病をお持ちの方は、特に気をつけなければなりません。また、家族に大腸がんの既往があるなど家族歴も非常に重要です。これらに当てはまる方は、大腸がん検診を定期的に受け、大腸がんに気をつけましょう。

「大腸がんと飲酒」と関連する症状

「大腸がんと飲酒」と関連している、似ている症状は6個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

上記のような症状がある時には、大腸がんの可能性も考えられます。まず、内科を受診して詳しく検査をうけましょう。血便がある場合には、消化器内科を受診すると良いでしょう。

この記事の監修医師