「大腸がんの主な5つの症状」はご存知ですか?初期症状・末期症状も医師が解説!
大腸がんの症状とは?Medical DOC監修医が大腸がんの症状・初期症状・末期症状や何科へ受診すべきかなどを解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。
監修医師:
丸山 潤(医師)
【保有資格】
医師/医学博士/日本救急医学会救急科専門医/日本集中治療医学会集中治療専門医/DMAT隊員/日本航空医療学会認定指導者(ドクターヘリの指導者資格)/JATECインストラクター/ICLSインストラクター
目次 -INDEX-
「大腸がん」とは?
大腸がんとは、大腸(直腸・結腸)に発生するがんで、腺腫という良性のポリープががん化してできるものと、正常な粘膜から直接発生するものがあります。
がん罹患数における大腸がんの割合は全体の1位であり、日本人にとって身近ながんの1つです。日本人では特に直腸とS状結腸にできることが多く、大腸がん全体の70%を占めます。
動物性の脂肪を摂取すると、胆汁酸によって分解され大腸へ運ばれますが、大腸へ移動した胆汁酸は悪玉菌によって二次胆汁酸へと変化します。
この二次胆汁酸には発がん物質が含まれているため、胆汁酸が増えるとがんの発生リスクが高まると言われており、食生活の欧米化が進んだ日本において大腸がんは増加傾向です。
大腸がんの代表的な症状
早期の大腸がんは無症状であることが多いのですが、進行に伴ってさまざまな症状が出現します。代表的な症状は、血便、排便習慣の変化(便秘、下痢)、便が細くなる(狭小化)、残便感、貧血、腹痛、嘔吐などです。
大腸がんの位置により現れやすい症状は異なります。硬い便が通る下行結腸やS状結腸、直腸のがんでは便の通りが悪くなることによる腹痛、嘔吐が起こりやすいとされ、血便や便の狭小化も見られやすいです。
一方で、便がまだ固まりきらない状態で通過する盲腸、上行結腸、横行結腸にできるがんは進行しても腹部症状が目立たないことも多く、貧血や腹部のしこりといった症状で発見されることもあります。
血便
便の中に血液が混じっている状態を血便と言います。
血便は大腸がんに限らず、虚血性大腸炎や大腸ポリープといった他の病気でも見られるため、血便の有無だけで大腸がんとは言い切れません。
しかし、血便が出た場合、診察の際は可能性の一つとして必ず大腸がんを疑います。
大腸のどの部分にがんが発生するかで血便の色が変わることが特徴です。
ただし、大腸の奥の方、右側大腸にがんが存在する場合、出血が少ないと便と混ざって出血に気付かないことがあります。出血量が多い場合は、暗赤色の便として排出されることもあります。
出口に近い直腸・肛門部位にがんが発生している場合、真っ赤な出血や、便に赤黒い血液の付着が見られることがあります。
下行結腸やS状結腸が占める左側大腸の部分にがんが発生した場合、血液が便に混ざって赤褐色の便が出たり、S状結腸でも直腸に近い部位であれば鮮血として排出されたりすることもあります。
いずれにせよ、血便だけで大腸がんの有無を判断することはできないため、血便が見られた際は大腸カメラでの検査を受けるようにしてください。
大腸がんを専門に扱う診療科は消化器内科・消化器外科です。
貧血
大腸がんからの出血が続くと、体内の血液量が低下して貧血の症状が現れることがあります。
少量の出血が続き、血便の自覚がなく、他の症状も伴わない場合だと大腸がんだと気づかないこともあります。また、骨髄にがん細胞が入ってしまうと、骨髄で赤血球を作れなくなり貧血を引き起こすことがあります。その他、がんが原因で食欲がなくなり、赤血球を作るために必要なタンパク質や鉄分、ビタミンなどが不足することでも貧血が起こることがあります。
慢性的な出血が起きている場合、進行度としてステージ2以上であることも考えられますので、消化器内科・消化器外科を受診し、大腸カメラでの検査を受けることをおすすめします。
便秘・下痢・便の狭小化
大腸がんで見られる代表的な症状の一つに、便秘や下痢、便の狭小化(便が細くなること)があります。
これはがんが大きくなることで腸の内側の空間が狭くなり、便が通過しにくくなることで便秘や下痢といった便通の異常が起きるためです。
がんが下行結腸(左側の大腸)や直腸に発生している場合に便通異常を自覚しやすいですが、上行結腸(右側の大腸)にがんが発生している場合は、そこを通過する便は液状であるため便の狭小化は起こらず、便通異常には気付きにくいです。
便通に異常が出る程度にがんが大きくなっていることの現れでもあるため、進行度としてはステージ3相当の可能性があります。
上述の貧血や腹部のしこりなど、他に気になる症状がないかチェックし、早めに消化器内科または消化器外科を受診してください。
腸閉塞
大腸に発生したがんが大きくなると、便通異常の症状が見られる点については既にご紹介しました。
そこからさらにがんが進行して大きくなると、がん組織が大腸を塞ぐ、いわゆる腸閉塞の状態へと進むことがあります。
がんが(ほぼ)完全に大腸を塞いでしまうことで、腸管内に便やガスが溜まり、腹痛や腰痛、お腹の張り、嘔吐といった症状が起こります。
便通や腹部の異常が先に出現し、その後に腸閉塞が起こるケースもあれば、初めて症状を自覚した時には腸閉塞になっていたケースもあります。
そのため、何か少しでも異常を自覚した場合は過信せずに病院へ行きましょう。
こちらも適した診療科は消化器内科・消化器外科になります。
体重の減少
大腸がんに限らずがん全体に言えることですが、がん組織は正常な組織より多くの栄養を消費するため、食事の量は変わらないのに体重が減ってくることがあります。
他の自覚症状が出にくい上行結腸(右側の大腸)にがんができている場合、体重の減少をきっかけに気付くこともあります。
体重が減るほどに栄養を奪っているということは、それ相応にがん組織が大きくなっていると言えます。
特に消化器症状を伴っている場合や、半年で4~5kgほどの減少が起きている場合は速やかに消化器内科を受診しましょう。
大腸がんの初期症状
大腸がんの初期では、目立った症状が見られないことが多いです。
先に挙げた代表的な症状とも重なりますが、以下の症状が出ている場合はすでにある程度がんが大きくなっている可能性があります。
気になる症状があれば早めに医療機関を受診してください。
便の性状変化
便秘や下痢を繰り返したり、便が細くなったりする場合は大腸がんの症状の可能性があります。
排便の変化は腸の機能に何らかの異変が起きているサインです。
同じような食事、生活パターンにも関わらず、それまで普通だった便が急に便秘や下痢になった場合は大腸がんの疑いがあります。
腹部膨満感
お腹周りの張りや苦しさといった腹部膨満感は、がんそのものによる張りのほか、がんが腸の働きを妨げることによる消化物やガスの滞留によって起こります。
消化器の症状として吐き気や食欲不振、便秘、下痢を伴うこともあります。
腹部膨満感はがん以外の病気でも見られることがありますので、早く原因を特定して適切な治療を進められるよう、我慢せずに消化器内科を受診してください。
腰痛
大腸がんの症状が腰痛として現れることは、決して多いとは言えません。
しかし、それゆえに単なる疲労や凝りと捉え、放置しやすい症状ですのでここに挙げさせていただきました。
腰の骨や筋肉が原因の腰痛のほか、内臓の疾患で腰が痛くなることもあります。
腰痛が続き、整形外科を受診しても原因がはっきりせず改善しない場合は、一度筋骨格系以外の腰痛を疑ってみても良いでしょう。
その場合、まずは内科で相談してみてください。
大腸がんの末期症状
大腸がんの末期症状とは、大腸がんが進行して他の臓器に転移し、さまざまな症状を引き起こす状態です。
大腸がんは他のがんと比べて生存率は高い部類に入りますが、ステージ4まで進行した状態での生存率は10~15%と、その予後は厳しいものとなっています。
積極的な治療の効果が期待できない段階に入ると、終末期として苦痛を取り除く緩和ケアへ移行することになります。
腹膜播種(ふくまくはしゅ)
大腸にできたがん組織が大きくなり、腸壁の外まで広がると、がん細胞が腹腔内にこぼれて散らばったような状態になります。これを腹膜播種と呼びます。
腹膜播種の状態になると、腹水が溜まったり、激しい腹痛が起きたりとさまざまな症状が出現します。
腹膜播種は抗がん剤による化学療法が治療の主体となります。
一般的に腹膜播種発生後の予後は不良ですが、発生源である大腸がん(原発巣)の切除や縮小で腫瘍の量を減らすことで生存期間が延びた事例もあります。したがって、主治医と相談しながら最適な治療を選択していくことが重要となります。
強い倦怠感
余命一ヶ月を迎えたあたりから身体の状態は急速に変化し、身体の強い倦怠感が生じると言われています。
がんそのものの症状や、治療や薬剤の副作用が主な原因として挙げられます。
特徴として、休息や睡眠での回復が見られず、常に倦怠感が続くことから不安や抑うつ状態に陥ることもあります。
症状に合わせ、苦痛を取り除く対処を緩和ケア科やホスピスケアと相談していきます。緩和ケアについてはこのような末期症状が出現する前から少しずつ相談を始めることで、穏やかに過ごすことができるため早めの導入が推奨されています。
意識障害
がん闘病中には「せん妄」という日内変動のある(1日の間で波がある)意識障害が出現することがあります。
これは、治療に用いる薬物や低酸素状態などの理由で、脳の神経伝達に異常が出ることが一因と考えられています。
主な症状に幻覚、妄想、見当識障害、不穏(気分が落ち着かずそわそわする)、昏睡などが挙げられます。
また、がんの疼痛を和らげるために使用する麻薬や鎮静薬の副作用で、うとうとして意思疎通が取れない状態になることもあります。痛みをコントロールする際はなるべく意思疎通が取れるように薬を少なめにするよう努めますが、どうしても末期がんの疼痛が強い場合は、痛みを抑えることが優先されるケースもあります。
すぐに病院へ行くべき「大腸がんの症状」
ここまでは大腸がんの症状を紹介してきました。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。
便通異常を繰り返す場合は、消化器内科へ
特に思い当たる原因がないにも関わらず、下痢や便秘、血便や残便感といった便通異常を繰り返す場合、大腸がんの可能性があります。
それ以外でも、炎症性腸疾患や過敏性腸症候群などが原因のこともあり、原因を確かめるために検査が必要です。
特に、家族に大腸がんの罹患者がいる方で上記の症状が見られる場合は注意が必要です。
消化器内科、または消化器外科で検査を受けるようにしてください。
受診・予防の目安となる「大腸がんの症状」のセルフチェック法
- ・便秘や下痢がある場合
- ・血便や下血がある場合
- ・貧血がある場合
- ・意図しない体重減少がある場合
「大腸がんの症状」についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「大腸がんの症状」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
大腸がんがリンパ節転移するとどんな症状が現れますか?
丸山 潤(医師)
大腸がんがリンパ節に転移すると、首の周りや脇の下、足の付け根などにしこりができることがあります。しかし、はっきりとリンパ節転移を示す症状が現れないことも多く、自覚症状からの発見は難しいです。リンパ節転移前に発見できることが望ましいので、定期健診や大腸がん検診などを受診し、定期的にチェックすることが大切です。
おならで大腸がんの症状を見分ける方法はありますか?
丸山 潤(医師)
おならで大腸がんの症状を見分ける方法は基本的にありません。おならの回数や臭いは食事内容や腸内環境によって変化するため、大腸がんとは必ずしも関係ありません。しかし、便通の異常や腹部の張り、痛みなどの症状を伴う場合は早めに内視鏡内科や消化器内科もしくは消化器・外科を受診してください。
編集部まとめ
近年、生活習慣の変化などの理由で大腸がんの罹患者数は増加傾向にあります。
しかし、早期に発見すればほぼ治癒が可能ながんであり、定期健診などでのチェックを通して早期発見することが大事です。
特に40歳を超えると発生率が高くなりますので、定期的に検診を受けるようにしましょう。
「大腸がんの症状」と関連する病気
「大腸がんの症状」と関連する病気は7個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
感染症内科の病気
内分泌内科の病気
心療内科の病気
便秘や下痢、腹痛といった症状はさまざまな病気で見られるものであり、必ずしも大腸がんであるとは言えませんが、症状が続いていたり、血便が確認されたりする場合は大腸がん検診を定期的に受けるようにしましょう。
「大腸がんの症状」と関連する症状
「大腸がんの症状」と関連している、似ている症状は12個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
これらの症状だけでは原因となる病気の断定はできません。大腸がん以外にも、例えば痔、大腸憩室症、大腸ポリープなどの可能性があります。
心配な症状がある場合は早めに医師に相談してください。特に大腸がんは早期発見で治癒率が高くなります。