「お腹が痛くないのに下痢」をするのは「大腸がん」が原因？医師が徹底解説！

お腹が痛くないのに下痢をする症状で、身体はどんなサインを発している？Medical DOC監修医が主な原因や考えられる病気・何科へ受診すべきか・対処法などを解説します。気になる症状は迷わず病院を受診してください。

監修医師：
中川 龍太郎（医師）

「お腹が痛くないのに下痢になる」症状で考えられる病気と対処法

「お腹が痛くないのに下痢になる」症状は、誰もが一度は経験しているのではないでしょうか。症状の原因は様々ですが、下痢が持続する期間（2週間以内か4週間以上か）で急性か慢性なのか、下痢の性状（水っぽさや色合いなど）、下痢とともに出現した症状によって、考えられる病気が変わっていきます。どんな場合に病院受診を行う必要があるのか解説していきます。

お腹が痛くないのに下痢になる症状で考えられる原因と対処法

お腹に痛みはないのに、排出される便が下痢になっている状態を指します。
このような場合は、食生活の乱れが原因として考えられます。そもそも便の形（硬い便や水っぽい便）はどのようにして決まるのかというと、摂取した栄養素の食物繊維の量や、水分量に影響を受けます。食物繊維の量が不足していると、腸内細菌叢が乱れ、便通異常（便秘や下痢）の原因になります。他に水分摂取量が多すぎると、固形の便に対して水分の割合が過剰になり、結果的に水っぽい便になってしまいます。
対処法は、食物繊維量を増やすこと、水分を取りすぎないようにすることです。アルコールを多く摂取される方は、食物繊維量が不足し水分摂取は過剰になる傾向にありますので気をつけてください。
上記の対応をしても1週間以上症状が続く場合は、一度医療機関を受診しましょう。緊急性はありませんので日中に、消化器内科を受診してください。

お腹が痛くないのに下痢が続く症状で考えられる原因と対処法

お腹が痛くないのに下痢が続く場合、特に高齢の方では大腸がんや薬剤性の可能性を考えます。大腸の粘膜に発生した大腸がんによって、水分の吸収がうまくいかず、下痢を引き起こします。一部の薬剤も大腸の粘膜障害を引き起こし、下痢につながることがあります。症状に対して整腸剤などを飲むことで一時的な効果が得られるかもしれませんが、原因を突き止めたわけではないので、効果は乏しいでしょう。
主な診療科は消化器内科です。もし下痢の中に明らかに血が混じっている場合は、すぐに精密検査を受ける必要があります。早急に受診してください。
また最近新しく飲み始めた内服薬があり、その後に下痢が続く場合は、該当する薬を処方された医療機関を受診しましょう。処方した医師と相談の上、下痢の原因になる薬なのか、また中止できる・変更できる薬なのかを検討する必要があります。

お腹が痛くないのにお腹がゴロゴロして下痢の症状で考えられる原因と対処法

お腹の痛みはないのに、お腹がゴロゴロして下痢が続く場合、吸収不良症候群の可能性が考えられます。吸収不良症候群とは、栄養素が十分に腸管から吸収できないために、下痢を起こしてしまう病気です。下痢の性状は水っぽい便（水様便）、泥のような便（泥状便）、油のようなドロッとした便（脂肪便）など様々です。
主な原因としては、①薬剤②栄養素③術後の影響などが考えられます。

• ①の薬剤ですが、普段の飲み薬が下痢の原因になる可能性があります。特に何か新しい薬を飲み始めてから下痢が出現した際は注意が必要です。その薬剤を処方した医療機関に相談しましょう。
• ②栄養素ですが、炭水化物や乳糖がうまく消化できずに下痢を起こしてしまう場合に当てはまります。すごくガスが溜まってお腹が張る、特定の食物（炭水化物や乳製品）を食べてから90分以内に出現する場合は、栄養素が原因である可能性が高くなります。主な診療科は消化器内科です。
• ③術後の影響ですが、特に胃や腸の手術後の影響で起こる場合があります。このような手術歴がある場合、可能であればその手術を受けたところを受診しましょう。難しければ、消化器外科を受診するようにしてください。①②③のいずれも緊急性は高くないので、日中に受診するようにしましょう。

すぐに病院へ行くべき「お腹が痛くないのに下痢」に関する症状

ここまでは症状が起きたときの原因と対処法を紹介しました。
応急処置をして症状が落ち着いても放置してはいけない症状がいくつかあります。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。

下痢に血が混じっている場合は、消化器内科へ

下痢だけでなく便に血が混じっている場合、潰瘍性大腸炎の可能性が考えられます。症状の特徴は、長期間持続する粘血便（粘り気のある血の混じった便）や血便が特徴的です。発症の詳しい原因は分かっていません。
診断は、臨床症状と大腸内視鏡検査や組織を顕微鏡で観察する病理診断などを用いて総合的に行われます。治療は主に5-ASA製剤という内服薬が一般的です。
下痢を1ヶ月程度、何度も繰り返す場合は、早めに消化器内科を受診しましょう。もし血便も繰り返している場合はできるだけ早く受診するようにしてください。

受診・予防の目安となる「お腹が痛くないのに下痢」のセルフチェック法

• ・お腹が痛くないのに下痢以外にゴロゴロした腸の動きがある場合
• ・お腹が痛くないのに下痢以外に血便がある場合

「お腹が痛くないのに下痢」の症状が特徴的な病気・疾患

ここではMedical DOC監修医が、「お腹が痛くないのに下痢」に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。

過敏性腸症候群（IBS）

過敏性腸症候群（IBS）は、ストレスのかかる状況になると慢性的なお腹の痛みと下痢が続き、かつ排便するとその症状が改善するという疾患です。IBSの発生原因は腸の運動機能障害や知覚過敏、精神的な不調が関わっているとされていますが、詳しい原因は分かっていません。対処法としては、高炭水化物食、脂っこい食べ物、コーヒー、アルコール、香辛料など刺激の強いものは避けて、食物繊維が豊富な食べ物を多く摂取することが挙げられます。また睡眠・休養を十分にとり、運動習慣をつけることも有効とされています。
主な診療科は心療内科、消化器内科です。社会生活を満足に送ることができる程度に、症状をコントロールすることが目標になります。消化器内科の医師による腸の状態の把握は重要ですが、ストレス負荷による精神的な不調が原因のこともありますので、カウンセリングや認知行動療法などの心理療法を行う医師の診察を受けることをお勧めします。

胃腸炎

急性胃腸炎は一般的に、下痢に加えて腹痛や吐き気がみられる病気です。原因は細菌性、ウイルス性、寄生虫などが考えられます。特定に食物に対して、集団で同様の症状が出た場合は食中毒という分類になります。また旅行の後に個人・あるいは集団で１週間持続する下痢がみられた際は、旅行者下痢症の可能性があります。旅行者下痢症とは海外に滞在中、あるいは帰国後１～２週間以内に発病する下痢症のことを指します。
急性胃腸炎は多くの場合、自然治癒しますが、1週間持続している場合は病院受診を勧めます。
主な診療科は感染症内科・消化器内科です。病原体によって治療方針が変わるため、便や血液の培養検査を行うことがあります。緊急性はありませんが、できるだけ早く医療機関を受診しましょう。

大腸がん

大腸がんとは、主に大腸の粘膜から発生した悪性腫瘍のことを指します。
喫煙者や、40歳以上で定期的な大腸がん検診を受けていない方、運動不足の方は大腸がん罹患リスクが上がります。大腸の粘膜に発生した大腸がんによって、水分の吸収がうまくいかず、下痢が長期間続くことがあります。
このような場合、ご自身で何かすれば症状を落ち着かせられるというものはありません。
主な診療科は消化器内科です。もし下痢の中に明らかに血が混じっている場合は、すぐに精密検査を受ける必要があります。早急に受診してください。

「お腹が痛くないのに下痢」の正しい対処法は？

ご自身でできる対処法は、食物繊維量の確保と水分量の調整、整腸剤を飲むなどがあります。これらの方法で改善がなければ、医療機関を受診しましょう。

まとめ

下痢自体は、普段の生活の中で誰もが経験する症状です。自然に治る場合が多いですが、中にはがんや炎症性腸疾患など重篤な病気が隠れている場合があります。下痢が長く続く場合以外にも、他に血便などの症状がある場合などは医療機関を受診するようにしましょう。

「お腹が痛くないのに下痢」の症状で考えられる病気

「お腹が痛くないのに下痢」から医師が考えられる病気は6個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

がんや炎症性腸疾患などといった重篤な病気も候補に挙がります。

「お腹が痛くないのに下痢」に似ている症状・関連する症状

「お腹が痛くないのに下痢」と関連している、似ている症状は3個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

「お腹が痛くないのに下痢」症状の他に、これらの症状がある場合も「大腸がん」「潰瘍性大腸炎」「急性胃腸炎」「過敏性腸症候群」などの疾患の可能性が考えられます。
複数併発している場合は、なるべく早く医療機関への受診をおすすめします。