「群発頭痛」発症のリスクを上げやすい食べ物はご存知ですか?医師が徹底解説!

群発頭痛の原因とは?Medical DOC監修医が群発頭痛の原因・ストレスが原因で発症することはあるか・予防する食べ物・発症リスクを高める食べ物などを解説します。

監修医師:
村上 友太(東京予防クリニック)
2011年福島県立医科大学医学部卒業。2013年福島県立医科大学脳神経外科学入局。星総合病院脳卒中センター長、福島県立医科大学脳神経外科学講座助教、青森新都市病院脳神経外科医長を歴任。2022年より東京予防クリニック院長として内科疾患や脳神経疾患、予防医療を中心に診療している。
脳神経外科専門医、脳卒中専門医、抗加齢医学専門医、健康経営エキスパートアドバイザー。
目次 -INDEX-
「群発頭痛」とは?
群発頭痛は、頭痛の中でも最も激しい痛みを伴う病気の一つで、「世界三大激痛」や「自殺頭痛」とも呼ばれるほどです。国際的な頭痛の分類では「三叉神経・自律神経性頭痛(TACs)」というグループに分けられており、片側の目の奥からこめかみにかけて、激しい頭痛が特定の期間に集中して(群発的に)起こるのが特徴です。
群発頭痛は、人口10万人あたり56~401人という報告があり、片頭痛に比べて患者数は少ないものの、その激しい痛みと生活への影響は深刻です。発症する年齢は、一般的に20歳から40歳代が多く、男性が女性の3~7倍も発症しやすいとされています。。
群発頭痛の主な原因
視床下部の機能異常
群発頭痛の最も有力な原因の一つとして、脳の視床下部(ししょうかぶ)という部位の働きに異常があると考えられています。視床下部は、私たちの体内時計(サーカディアンリズム)をコントロールする重要な役割を担っており、群発頭痛の患者さんには、この視床下部に以下のような特徴的な異常が見つかっています。
・PET検査(脳の活動を見る検査)を行うと、群発頭痛の発作時に視床下部の後ろの部分が活発になることがわかっています。
・MRI検査(脳の構造を見る検査)による研究では、視床下部にある細胞の密度が高くなっていたり、神経細胞に障害がある兆候が見つかったりしており、視床下部そのものに構造的な異常がある可能性が示されています。
さらに、視床下部にある「オレキシン」という神経から出る物質も、群発頭痛の発症に関わっている可能性が報告されています。
三叉神経血管系の異常
三叉神経と血管がうまく連携できないことも、群発頭痛の重要な原因だと考えられています。群発頭痛の患者さんが発作を起こしているとき、血液中には「CGRP」などの神経から出る物質が増えていることが確認されています。
これらの物質は、酸素を吸ったり、特定の薬(スマトリプタンなど)を投与したりすると正常なレベルまで下がります。このことから、三叉神経と血管のシステムが活発になることが、群発頭痛の発作が起こる仕組みに深く関わっていることが示されています。
内頸動脈周囲の血管異常
内頸動脈とその周辺の構造に異常があることも、群発頭痛の原因として提唱されています。主に以下の3つのメカニズムが考えられています。
・海綿静脈洞説:目の奥の近くにある海綿静脈洞という場所で、内頸動脈が広がると、目の方への血流が増え、血液の流れが悪くなります。その結果、片側の目の周りの痛みや、涙や鼻水が出るといった症状が現れるという説です。
・海綿静脈洞近傍説:翼口蓋神経節(よくこうがいしんけいせつ)という神経が集まる場所にある神経が異常に興奮することで、自律神経の症状(まぶたが下がったり、汗をかいたり)や内頸動脈の拡張が引き起こされるという説です。
・破裂孔近傍説:側頭骨(耳の奥の骨)の中にある頸動脈管で内頸動脈が拡張すると、交感神経の働きが抑えられ、副交感神経が刺激されることで、自律神経のバランスが崩れ、発作が起こるという説です。
ストレスが原因で群発頭痛を発症することはある?
結論から言うと、精神的・肉体的なストレスや疲労は、群発頭痛の直接的な原因ではありませんが、発作を引き起こす重要な「きっかけ」になり得ます。
群発頭痛の根本的な原因が視床下部の機能異常にあることは、すでに述べた通りです。ストレスは、この視床下部がコントロールしている自律神経のバランスを崩す要因となります。
具体的には、精神的なストレスが三叉神経を活発にさせ、炎症を引き起こす物質を放出させます。その結果、脳内の血管が広がり、痛みが生じるという仕組みが考えられています。また、不規則な生活や睡眠不足も、体内時計を狂わせることで発作のリスクを高めると考えられています。したがって、群発期には、精神的なストレスを避け、十分な睡眠と規則正しい生活を心がけることが、発作の予防において非常に重要になります。
群発頭痛を予防する可能性の高い食べ物
群発頭痛を直接治す食べ物は存在しませんが、特定の栄養素を意識して摂ることが、発作の予防や症状の緩和に役立つ可能性が研究で示唆されています。これらは、日々の食事を整えるための補助的なアプローチとして考えてください。
マグネシウムを豊富に含む食品
マグネシウムは神経細胞の興奮を抑える働きがあり、神経から出る物質や血管の収縮・拡張に深く関わっています。マグネシウムが不足すると神経が過剰に興奮し、頭痛を悪化させる一因となることがしら南城旭「ています。
具体的な食品名:わかめや昆布などの海藻類、納豆や豆腐などの大豆製品、ナッツ類、玄米、ほうれん草、魚介類などが挙げられます。
ビタミンB2(リボフラビン)を豊富に含む食品
ビタミンB2は、脳のエネルギー代謝をサポートする重要な役割を担っています。脳の細胞が正常に機能するためには十分なエネルギーが必要であり、ビタミンB2を積極的に摂ることで、脳を安定させることにつながる可能性があると考えられています。
具体的な食品名:肉類、魚類、牛乳、乳製品、卵、レバー、納豆などが挙げられます。
オメガ3脂肪酸を豊富に含む食品
オメガ3脂肪酸は、強力な抗炎症作用を持つことで知られています。群発頭痛の発作には血管の炎症が関わっているため、炎症を抑えることで頭痛の頻度や痛みの強さを和らげる可能性が示唆されています。
具体的な食品名:カニやムール貝などの甲殻類、サケ、マグロ、マスなどの脂肪分の多い魚などが挙げられます。
メラトニンを豊富に含む食品
メラトニンは、睡眠と覚醒のリズムを調整するホルモンで、視床下部がその分泌をコントロールしています。群発頭痛が視床下部の機能異常と体内時計の乱れから起こることを考えると、メラトニンを食品から補うことで、体のリズムを整え、発作の予防につながる可能性があります。
具体的な食品名:さくらんぼ、バナナ、ナッツ類、赤身肉などが挙げられます。
群発頭痛発症のリスクを上げやすい食べ物
アルコール類
アルコールは、血管を広げる強い作用を持っています。群発頭痛は目の奥の血管の広がりや炎症が関わっているため、アルコールを摂取すると、ほぼ確実に頭痛発作が誘発されます。群発期には、たとえ少量でも発作を引き起こす可能性があるため、絶対に控えましょう。
加工肉(亜硝酸塩)
ハム、ソーセージ、ベーコンなどの加工肉には、保存料として亜硝酸塩(あしょうさんえん)や硝酸塩(しょうさんえん)が含まれています。これらの成分は血管を広げる作用があり、頭痛を誘発する可能性があります 。
熟成チーズ、チョコレート(チラミン)
熟成されたチーズやチョコレートには、血管に影響を与えるチラミンという物質が含まれています。チラミンは血管を一度縮ませた後、その反動で広げる作用があり、この血管の動きが頭痛を誘発すると考えられています 。
グルタミン酸ナトリウム(MSG)含有食品
グルタミン酸ナトリウム(MSG)は、血管を広げる作用により頭痛を誘発する可能性があります。醤油、肉を柔らかくする調味料、加工食品、中華料理の調味料などに含まれており、群発頭痛患者の約15%がMSGによって発作が誘発される経験があると言われています。
カフェインを含む飲料
適量のカフェインは頭痛を和らげる効果がある一方で、摂りすぎたり、急に飲むのをやめたりすると頭痛を誘発する可能性があります。コーヒー、紅茶、エナジードリンクなどの摂取は適量に留め、急激な変化は避けることが重要です。
「群発頭痛の原因」についてよくある質問
ここまで群発頭痛の原因などを紹介しました。ここでは「群発頭痛の原因」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
群発頭痛はスマホの使い過ぎで発症することはありますか?
村上 友太(むらかみ ゆうた)医師
スマートフォンの使いすぎが直接的に群発頭痛を発症させることはありませんが、間接的な影響は考えられます。
スマートフォンから出るブルーライトは、視床下部の体内時計(サーカディアンリズム)に影響を与える可能性があります。特に夜間のスマートフォンの使用は、睡眠を促すホルモン「メラトニン」の分泌を抑え、睡眠の質を低下させることが知られています。
群発頭痛は視床下部の機能異常と密接に関係しており、体内時計の乱れが発作を引き起こすきっかけになる可能性があります。また、スマートフォンの長時間の使用による眼精疲労も、頭痛を引き起こす要因となることがあります。
ただし、これらは群発頭痛の根本的な原因ではなく、もともと発症しやすい体質の人において、発作の引き金となる可能性があるという理解が適切です。群発頭痛の予防のためには、規則正しい睡眠習慣を保ち、夜間のスマートフォンやパソコンの使用を控えることが推奨されます。
編集部まとめ
群発頭痛は根本的な原因が完全に解明されていない、非常に厄介な病気です。しかし、視床下部を中心とした脳の体内時計の異常が、三叉神経や自律神経に影響を与え、激しい痛みを引き起こすというメカニズムの解明は進んでいます。
群発頭痛の診断は専門医による正確な診断が必要です。その激しい痛みや症状は、脳腫瘍や脳動脈瘤といった、命に関わる病気のサインと見分けがつかないことがあります。自己判断で済ませず、必ず脳神経外科や脳神経内科を受診し、画像検査で他の病気が隠れていないことを確認してください。
発作が起こりやすい時期(群発期)には、アルコールや喫煙といった強い引き金になるものを避け、規則正しい生活や適切な食事を心がけることが、症状の管理に大きく役立ちます。群発頭痛は決して一人で抱え込むべき病気ではありません。専門医との協力のもと、対策を講じて行くことが重要ですので、担当医とよく相談してください。
「群発頭痛」と関連する病気
「群発頭痛」と関連する病気は3個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
眼科の病気
症状から頭や目の病気の関連があります。頭痛の診断自体が難しいこともあります。
「群発頭痛」と関連する症状
「群発頭痛」と関連している、似ている症状は13個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
頭痛や目周囲の痛みがメインですが、目の充血や鼻汁、発汗など多彩な自律神経症状が見られることや夜間痛みのために眠れずじっとしていられないという症状は特徴的です。疑わしい症状がある場合には、早めに医療機関への受診を考慮しましょう。
参考文献



