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その夏バテ、もしかしたらエアコンが原因かも!? 医学的な視点から適切な温度設定や注意点を解説

 公開日:2023/07/31
エアコンによる体調不良の原因・対処法を医師が解説

快適な夏を過ごすために欠かせない「エアコン」、恐らくほとんどの人が使っているのではないでしょうか。しかし、一部の人々にとっては、エアコンが原因で体調不良になることもあるようです。今回は、エアコンによる体調不良の正体、原因と対処法について医師の丸山先生に解説していただきました。

丸山 潤

監修医師
丸山 潤(医師)

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群馬大学医学部卒業。群馬県内の高度救命救急センター救急科及び集中治療科に2022年まで所属。2022年より千葉県の総合病院にて救急総合診療科および小児科を兼務。乳児から高齢者まで幅広い患者層の診療に努める。
【保有資格】
医師/医学博士/日本救急医学会救急科専門医/日本集中治療医学会集中治療専門医/DMAT隊員/日本航空医療学会認定指導者(ドクターヘリの指導者資格)/JATECインストラクター/ICLSインストラクター

夏にエアコンで体調を崩すのはなぜ? 原因を医師が解説

夏にエアコンで体調を崩すのはなぜ? 原因を医師が解説

編集部編集部

なぜ、エアコンが原因で体調を崩すのでしょうか?

丸山潤先生丸山先生

エアコンが原因で体調を崩す理由は、いくつか考えられます。まず、エアコンの風による体の冷えが影響します(※)。人間は体温を一定に保つために、寒さに対しては体を温め、暑さに対しては汗をかくなどの調節機能を持っています。この調節は「自律神経」という交感神経と副交感神経からなるシステムによっておこなわれます。交感神経が優位になると、末梢血管が収縮して血流が悪くなり、手足が冷たくなります。一方、副交感神経が優位になると、末梢血管が拡張して血流が良くなり、手足が温かくなります。しかし、エアコンを使用することで、室内と室外の温度差がある場所を何度も行き来することになると、自律神経に負担がかかり、体調に異変が生じることがあるのです。

※近畿大学メディカルサポートセンター「冷房による冷えからくる体調不良について」
https://www.kindai.ac.jp/health/about/air_conditioning/

編集部編集部

ほかにもありますか?

丸山潤先生丸山先生

エアコンの冷たい風による乾燥も、体調に影響を与える要素です。エアコンが運転されている間に、室内の湿度は低下して乾燥します。この湿度の低い環境では、粘膜や皮膚の乾燥が進み、鼻や喉の粘膜が刺激を受けることによって免疫機能が低下して、風邪やインフルエンザなどの感染症にかかりやすくなる可能性があります(※)。

※Seasonality of viral respiratory infections in southeast of Brazil: the influence of temperature and air humidity
https://www.semanticscholar.org/paper/Seasonality-of-viral-respiratory-infections-in-of-Gardinassi-Simas/31390ea0f2fc73d3cd3fee80ca0de765ddd68429

編集部編集部

体の冷えやエアコンの風による乾燥などが原因なのですね。エアコンで体調を崩すと、どのような症状が出るのでしょうか?

丸山潤先生丸山先生

このようなエアコンによる体調不良は「冷房病(クーラー病)」とも呼ばれ、症状は多岐に渡ります。冷たい空気や冷えた環境が筋肉を収縮させ、血流が悪くなるために肩こりや頭痛が生じるほか、手足の冷え感やむかつき、食欲の低下、全身のだるさや疲れやすさも一般的な症状です。また、エアコンによって消化器官の機能が低下し、消化不良や腸の運動異常が引き起こされ、腹痛や下痢を招くこともあります。さらに女性の場合は、体内の温度調節が乱れて女性ホルモンのバランスにも影響が及び、生理不順や生理痛の症状が増強されることもあります。

編集部編集部

エアコンで体調を崩しやすい人の特徴はありますか?

丸山潤先生丸山先生

以下のような特徴を持っている人は、エアコンで体調を崩しやすいとされています。

・若い女性
季節の変わり目に頭痛やめまいなどの体調不良を訴える若い女性は、もともと自律神経が敏感である可能性があります。そのような人は室内外の気温変化により、自律神経が乱れやすいのです。

・高齢者
高齢者は体温調節能力が徐々に衰え、エアコンによる室温変化に身体がついていかない場合があります。高齢者の場合は症状を自覚するのに時間がかかり、状態が悪くなってから気づくケースもあるため周囲の人々は注意が必要です。

・子ども
小児(特に未就学児)は体温調節機能が未熟なため、エアコンによる外気温の変化に対し、体温管理を素早くおこなうことができず、体調を崩しやすい傾向があります。

・長時間エアコンの冷風に当たっている人
長時間、冷たい風にさらされることで、体が冷えてしまうと症状が出現しやすくなってしまいます。特にエアコンの風を直接浴びると、室温以上に体が冷えてしまうため避けるべきです。

夏風邪の正体と対処法

夏風邪の正体と対処法

編集部編集部

夏風邪特有のウイルスについて教えてください。どんな病気が考えられますか?

丸山潤先生丸山先生

夏風邪特有のウイルス感染としては、主に以下のような病気が考えられます。

・プール熱(咽頭結膜熱)
夏風邪として知られているプール熱は、主にアデノウイルスによる感染が原因となります。扁桃腺やリンパ腺に影響を与えるアデノウイルスは、痛みや高熱、激しい咳などの症状を引き起こします。子どもたちがプールで感染することがよくあるため、プール熱という名前がついていますが、幼稚園や小学校での集団生活でも感染が広まるものであり、プールに入っていなくても感染する可能性があります。また、大人が感染した場合は扁桃炎や肺炎などを引き起こす可能性があります。

・ ヘルパンギーナ
ヘルパンギーナは夏風邪の代表的な病気であり、主に乳幼児が感染し、夏季に流行します。この疾患は、発熱と口腔粘膜に水疱性の発疹が表れる急性咽頭炎です。口内炎や水疱が口や喉に表れるのが特徴です。ヘルパンギーナの原因とされるウイルスは、コクサッキーウイルスA群が最も一般的な原因とされますが、コクサッキーウイルスB群やエコーウイルスによっても発症することがあります。

・手足口病
手足口病は、口の中や手足に水疱性の発疹が表れるウイルス性感染症であり、夏季に乳幼児を中心に流行します。代表的な原因ウイルスは、コクサッキーウイルスA群やエンテロウイルスです。感染経路は、飛沫感染や接触感染、糞口感染が知られています。集団生活をする保育施設や幼稚園などでの感染が多くみられます。感染後3~5日後に口の中や手のひら、足底や足背などに小さな水疱性の発疹が表れます。発熱は一部の患者さんにみられますが、通常は高熱にはなりません。多くの患者さんは数日間で回復しますが、中枢神経系の合併症や心筋炎を発症するなど、重症化する場合もあります。

編集部編集部

それぞれの対策について教えてください。

丸山潤先生丸山先生

まず、プール熱の予防法としては、手洗いとうがいをこまめにおこない、タオルの貸し借りを避けましょう。プールに入った後はシャワーを浴びてウイルスを洗い流し、感染者との密接な接触を避けることが重要です。また、プール施設の衛生状態にも注意することで感染の広がりを抑えることができます。対処法としては、発熱や痛みを伴う症状が表れたら早めに医療機関を受診し、食事は刺激の少ないものを摂り、こまめな水分補給を意識しましょう。アデノウイルスに対する薬は存在しないため、症状が出たら解熱鎮痛剤を使用して回復を待ちます。感染が確認された場合は周囲の人に感染を広げないように、症状が消えてから2日間は登校を控えるようにしましょう。

編集部編集部

ヘルパンギーナに対する対処法はいかがでしょうか?

丸山潤先生丸山先生

ヘルパンギーナの感染予防のためには、こまめな手洗いや消毒、うがいが重要です。咳やくしゃみによる感染を防ぐために、マスクの着用が有効です。また、食器やタオルの共用は避け、感染後も2週間程度はウイルスが便や鼻水に含まれているため、感染リスクがある前提で食器や衣服を洗浄するようにしましょう。ヘルパンギーナに対する治療薬はないため、対症療法として解熱鎮痛薬が処方されます。基本的な治療は自然治癒を待ちながら、水分と栄養補給に注意を向けましょう。喉や口内の水ぶくれにより食事が困難になるため、熱い・辛い・塩分の多い食品を避け、柔らかくて咀嚼が少ない食事を摂ることが推奨されています。ヘルパンギーナによる感染力は高いのですが、登園や登校停止は義務付けられていません。ただし、感染の拡大や学校生活への影響がある場合は、学校の判断で出席停止となることもあります。

編集部編集部

最後、手足口病の対処法について教えてください。

丸山潤先生丸山先生

手足口病の予防には、飛沫感染や接触感染を防ぐことが重要です。ほかの感染症と同様に、手洗いやうがいを徹底しましょう。手足口病の治療に対する薬はなく、対症療法がおこなわれます。安静にして十分に休み、脱水症状を防ぐために経口補水液で水分と電解質を補給するのがポイントです。喉の痛みが強い場合は、食べやすい柔らかい食材や冷たい食事を摂るのがいいでしょう。栄養補給も重要で、プリンやヨーグルトなどの食べやすい食品を少しずつ摂るように心がけてください。手足口病は治った後も2~4週間ウイルスが排出されるため、しばらくは感染予防策を継続する必要があります。

編集部編集部

受診の目安はありますか?

丸山潤先生丸山先生

夏風邪の場合、通常は症状が軽く、自然治癒することが多い傾向にあります。ただし、熱が3日以上続く場合や39℃以上の高熱が出る場合、呼吸困難や激しい咳がある場合は、早めに医療機関を受診しましょう。また、強い喉の痛みや嚥下困難があり、飲み物や食べ物が摂れずに脱水が強い場合は、点滴をする必要が出てくることもあるので、受診を検討してください。症状が長期間続く場合は夏風邪以外の病気が隠れている可能性があるため、医師の診察が必要です。

エアコンによる体調不良を防ぐための温度設定や注意点を医学的に解説

エアコンによる体調不良を防ぐための温度設定や注意点を医学的に解説

編集部編集部

エアコンで体調を崩さないためには、何度に設定するのがおすすめですか?

丸山潤先生丸山先生

エアコンの温度設定は個人の好みや体調によって異なりますが、適度な涼しさを保つために、室温を25℃~28℃程度に設定することが一般的には推奨されています。室温との寒暖差が5℃以内になるようにエアコンの温度を設定することで、寒暖差による体調不良を引き起こしにくくなります。室温が27~28℃であっても、扇風機やサーキュレーターを使って風を加えることで、体感温度を下げることができます。また、エアコンの除湿モードで湿度を適切に保つことで快適に過ごせるようになるでしょう。

編集部編集部

温度以外の注意点はありますか?

丸山潤先生丸山先生

エアコンの風が直接体に当たらないように気をつけましょう。エアコンの冷たい風に直接当たることで喉や鼻の粘膜が乾燥し、風邪を引きやすくなる可能性があります。また、長時間の連続使用は体が冷えすぎたり、喉の渇きを引き起こしたりすることがありますので、特に夜間はタイマー機能を利用して適切な時間で運転を停止させることも大切です。

編集部編集部

ほかにも注意すべき点はありますか?

丸山潤先生丸山先生

エアコン内部にカビや汚れがあると、カビによる真菌性肺炎やホコリによるアレルギー症状(くしゃみや咽頭痛など)を起こす可能性があります。したがって、エアコンのフィルターや排水パイプなどの定期的な掃除や清潔な状態の維持も重要です。メーカーの取扱説明書に従って、定期的なメンテナンスをおこないましょう。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

丸山潤先生丸山先生

エアコンは適切に使用すれば快適に過ごすための大きな助けとなりますが、体の冷えすぎや乾燥は冷房病や夏風邪の原因にもなり得ます。そのため、エアコンの温度は低すぎないよう温度設定をおこなうことが重要です。室温が比較的高めでも、湿度を下げてサーキュレーターなどを用いて送風することで体感温度をさげることができます。また、夏風邪予防として、こまめな手洗いやうがいを忘れずにおこないましょう。

編集部まとめ

エアコンの効いた部屋で過ごしているはずなのに具合が悪くなる原因や風邪の種類について、詳しく解説していただきました。エアコンが効きすぎていることが、むしろ体調不良の原因になっているということが意外でした。また、夏であっても夏特有の風邪があるため、日頃から手洗い・うがいを習慣にすることが大切ですね。

この記事の監修医師