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「若年性アルツハイマーの寿命」はご存知ですか?寿命が短い理由も医師が徹底解説!

 公開日:2024/12/18
「若年性アルツハイマーの寿命」はご存知ですか?寿命が短い理由も医師が徹底解説!

若年性アルツハイマーの寿命とは?Medical DOC監修医が若年性アルツハイマーの寿命・寿命が短い理由・症状・原因・なりやすい人の特徴・治療法などを解説します。

神宮 隆臣

監修医師
神宮 隆臣(医師)

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熊本大学医学部卒業。熊本赤十字病院脳神経内科医員、熊本大学病院脳神経内科特任助教などを歴任後、2023年より済生会熊本病院脳神経内科医長。脳卒中診療を中心とした神経救急疾患をメインに診療。脳神経内科疾患の正しい理解を広げるべく活動中。診療科目は脳神経内科、整形外科、一般内科。日本内科学会認定内科医、日本神経学会専門医、日本脳卒中学会専門医、日本脳血管内治療学会専門医、臨床研修指導医の資格を有す

「若年性アルツハイマー」とは?

認知症は一般的には高齢者に多い病気です。65歳未満で発症するものを若年性認知症と呼びます。若年性認知症の約3割は50代未満で発症しますが、中には20代以下の若い方の発症例もみられます。若年性認知症の原因としては、日本の場合、脳血管障害が原因となる血管性認知症が最も多くを占め、アルツハイマー病がそれに続いています。
今回は、若年性アルツハイマー病の方の寿命や症状、発症原因について解説します。

若年性アルツハイマーの寿命

若年性アルツハイマー病の寿命についての研究は、まだ十分に行われているとは言えません。しかし、若年性アルツハイマー病を含む、若年性認知症の患者の生存期間と平均余命を調査したオランダの研究があります。そこで、この研究の結果をご紹介しましょう。
この研究では、若年性認知症としてアルツハイマー型認知症、血管性認知症、及び前頭側頭葉型認知症の患者198名が対象となっていました。
6年間の追跡の結果、症状発症からの平均生存期間は209ヶ月(約17年)、診断後の平均生存期間は120ヶ月(約10年)でした。アルツハイマー病の方に限れば、それぞれ187ヶ月(約16年)、111ヶ月(約9年)となっていました。アルツハイマー病の方は血管性認知症の方と比べて症状発症・診断後からの平均生存期間(余命)が短いことが統計学的に有意でした。つまり、若年性アルツハイマー病は、その他の若年性認知症よりも短い寿命ということがこの研究からは明らかになったと言えます。
若年性アルツハイマー病に限らず、アルツハイマー病は今のところ完治することは難しいとされています。症状を遅らせるための薬物治療や、認知行動療法などが用いられます。

若年性アルツハイマーの寿命が短い理由

若年性アルツハイマー病の方の寿命が、他の若年性認知症よりも短い理由について解説します。
若年性アルツハイマー病は通常のアルツハイマーと比べて病気の進行が早く、脳の神経細胞が早くダメージを受けることが多いです。さらに、仕事や家事などで忙しい時期に発症することが多いため、身体的・精神的な負担が大きく、これが症状の悪化に影響することもあります。現在の治療法では病気の進行を遅らせることはできても完治は難しく、患者や家族にとっても大きなサポートが必要です。

若年性アルツハイマーの代表的な症状

若年性アルツハイマー病は、高齢になってから発症する一般的なアルツハイマー病とは少し異なります。ここでは、若年性アルツハイマー病の代表的な症状について解説します。

記憶力の障害

若年性アルツハイマー病の代表的な症状としてまず挙げられるのは「記憶障害」です。新しい情報を覚えることが難しくなり、最近の出来事や予定を頻繁に忘れてしまうことが特徴です。このような場合、メモやリマインダー機能を活用することが対処の一つとなり、家族が優しくサポートしてあげることで本人の不安を和らげることができます。
症状が続く場合は脳神経内科や認知症外来の受診をおすすめします。受診の際は、具体的な症状の記録を持参すると診断がスムーズです。緊急性は高くありませんが、早期の受診が生活の質の維持につながります。

視空間認知の障害

次に「視覚空間認識障害」も見られる症状です。これは物の距離感や空間の認識が難しくなり、階段の上り下りや車の運転が困難になることが特徴です。
家の中では滑り止めや手すりを設置する、見やすい照明にするなど環境を調整し、運転は控えるなどの工夫が役立ちます。生活に支障が出ている場合には脳神経内科や精神科での診察を検討するとよいでしょう。転倒などのリスクがあるため、具体的なエピソードを医師に伝え、早めの受診を心がけると安心です。

実行機能の低下

「実行機能の低下」も若年性アルツハイマー病の特徴の一つです。これは段取りを考えるのが難しくなり、判断力や問題解決力が低下する症状で、例えば料理や買い物などで混乱しがちです。この場合、作業を細かく分けてリスト化する、または一度に一つの作業に集中するなどが効果的です。家族のサポートも大変重要ですので、理解と協力を心がけると良いでしょう。この症状が生活に影響を与えている場合、脳神経内科や認知症外来で相談することをおすすめします。早期の受診が進行を抑えるために重要となります。

若年性アルツハイマーの主な原因

若年性アルツハイマー病の主な原因について解説します。

遺伝的要因

若年性アルツハイマー病では、遺伝的要因が大きな役割を果たすケースが多く、特定の遺伝子変異が原因であるとされています。アミロイド前駆体タンパク質(APP)、プレセニリン1(PSEN1)、プレセニリン2(PSEN2)といった遺伝子の変異が認知症を引き起こすことがわかっています。家族に若年性アルツハイマー病の患者がいる場合は、この遺伝的要因が影響している可能性が高まります。
遺伝的要因が疑われる場合は、脳神経内科または認知症外来での早期受診をおすすめします。家族と一緒に病歴や症状の進行について説明できると、より適切な診断が受けられます。遺伝的要因による若年性アルツハイマー病は進行が早いため、初期段階での受診が重要であり、家族歴がある場合は、些細な記憶の変化でも早めの相談が望まれます。

アミロイドβの蓄積

アルツハイマー病の主要な原因の一つとして、アミロイドβという異常タンパク質が脳内に異常にたまってしまうことが挙げられます。若年性アルツハイマー病でもこのアミロイドβの蓄積が見られ、特に若年発症では、蓄積速度が速く、早期に症状が現れやすいことが知られています。アミロイドβの蓄積が進むと、脳の神経細胞が傷つき、結果的に認知機能が低下します。
症状や家族歴などからこうした異常が疑われる場合は、脳神経内科での検査が必要です。特にMRIやPETスキャンなどで脳の状態を確認します。記憶障害が始まったらすぐに専門医の診察を受けるのが望ましいでしょう。病院へは、家族が症状を整理し、時系列で記録を持参すると診断がスムーズです。

タウタンパク質の異常

タウタンパク質は、神経細胞の構造維持に重要な役割を果たしていますが、若年性アルツハイマー病では、このタウタンパク質が異常に変性して神経細胞内に絡まりを形成し、神経伝達が妨げられることが多いです。このタウタンパク質の異常は、特に若年性アルツハイマー病の進行を加速させる要因の一つとされ、記憶や判断力の低下に大きな影響を与えます。
認知症の初期段階での受診がとても重要です。緊急性が高いとは限りませんが、家族とともに症状を観察し、必要に応じて早めに受診をすることで、症状進行の抑制に役立ちます。

若年性アルツハイマーになりやすい人の特徴

ここでは、若年性アルツハイマー病になるリスクが高まるのではないか考えられている要因について説明します。

家族歴がある

若年性アルツハイマー病は、遺伝的要因が発症リスクを高めることが多く、特に家族に同様の疾患歴がある場合、発症リスクが高くなります。発症年齢は40〜50代が多く、性別に大きな差は見られませんが、肥満傾向にある人や運動不足の人はさらにリスクが高まります。
また、睡眠不足や偏った食生活、ストレスが多い生活なども、家族歴がある場合の発症リスクを高める要因とされています。逆に、家族歴があっても定期的な運動やバランスのとれた食事、十分な睡眠を確保する生活を心がけることで発症リスクを低減することが可能です。

高血圧

高血圧は血流を悪化させ、脳の血管にダメージを与えることで、若年性アルツハイマー病の発症リスクを高めることがわかっています。発症年齢は40代以降が多く、男女ともに高血圧のある人は注意が必要です。特に肥満体型の人は、血圧が高くなることで脳への負担が増えるため、生活習慣の見直しが勧められます。
高血圧の人は、塩分の多い食事やアルコール、喫煙といった習慣を控え、適度な運動を行うことが大切です。逆に、血圧を適正に保つ生活を続けることで、脳への負担を減らし、発症リスクを低減することが可能です。

糖尿病

糖尿病もまた、若年性アルツハイマー病のリスク要因とされています。糖尿病は血管の炎症や血糖値のコントロールが不十分になることで、脳の健康に悪影響を及ぼすためです。発症年齢は男女ともに40代以降が多く、特に肥満や運動不足の人は注意が必要です。
糖尿病があると発症リスクが高まるため、糖分や脂肪分の多い食事を避けると同時に、適度な運動と血糖値の管理が不可欠です。また、血糖値を安定させる生活習慣を続けることが、発症リスクの低減に役立ちます。

若年性アルツハイマーの治療法

若年型アルツハイマ病に対しては、現在のところ完治させるような治療法はありません。しかし、以下のような治療により病気の進行を遅らせることが期待できます。

薬物療法

若年性アルツハイマー病の治療の基本として、薬物療法が行われます。脳神経内科や認知症外来で、脳内の神経伝達を助ける薬(アセチルコリン分解酵素阻害薬であるドネペジルや、NMDA受容体拮抗薬のメマンチンなど)を処方し、症状の進行を抑えることを目指します。これらの薬は、記憶力や認知機能の低下を緩和し、日常生活での機能維持に役立つとされています。
この治療のために入院は基本的に必要ありませんが、薬の効果や副作用を確認するために定期的な通院が求められます。初期段階では1〜3か月ごとの頻度で経過観察を行い、症状の進行や必要に応じて薬の調整が行われます。

認知療法とリハビリテーション

薬物療法に加えて、認知療法やリハビリテーションを取り入れることも重要です。認知療法では、記憶力や問題解決能力を維持するための訓練を行い、日常生活での動作がスムーズに行えるようサポートします。
専門のリハビリテーション施設や介護老人保健施設、あるいはデイサービスで行うことができます。内容としては、パズルや記憶ゲーム、日常的な行動シミュレーションなどを通じた認知訓練が含まれます。

生活習慣改善

若年性アルツハイマー病の進行を抑えるために、生活習慣の改善も治療の一環として取り入れられます。バランスの取れた食事、適度な運動、十分な睡眠、そしてストレス管理が推奨され、これらが脳の健康を支える重要な要素となります。医師や栄養士が、個人に合わせた食事指導や運動計画を作成し、健康的な生活習慣の維持をサポートします。
生活習慣改善も入院は不要で、定期的に通院して指導を受け、進捗を確認します。家族も含めてアドバイスを受けることで、日常生活全体でのサポートが可能となり、患者が健康的な生活を続けやすくなります。

「若年性アルツハイマーの寿命」についてよくある質問

ここまで若年性アルツハイマーの寿命などを紹介しました。ここでは「若年性アルツハイマーの寿命」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

若年性アルツハイマーの末期症状について教えてください。

神宮 隆臣神宮 隆臣 医師

若年性アルツハイマーでは、40代〜50代と若い時期に発症します。そして、進行が比較的早く、末期では記憶がほぼ失われ、家族の顔や名前も認識できなくなります。身体機能も急速に低下し、日常生活のほぼ全ての動作が介助なしでは困難となります。また、意思表示や会話ができなくなり、表情やジェスチャーでの意思疎通も困難になりがちです。
通常の高齢者の認知症よりも身体機能の低下が目立ち、感染症リスクも増えます。特に誤嚥性肺炎などによる体力低下が進行しやすいため、介護者による細やかなケアと医療的サポートが欠かせません。

編集部まとめ

今回の記事では、若年性アルツハイマー病について詳しく解説しました。
若年性アルツハイマー病は、通常の高齢者の認知症とは異なり、進行が早く、特に40〜50代といった働き盛りに発症します。記憶力の低下だけでなく、視空間認知や実行機能の障害が見られ、進行すると身体機能も急激に低下します。早期診断と薬物療法、認知療法、生活習慣改善により進行を抑えられるものの、治癒は難しいため、家族の理解や適切なサポートが重要です。

「若年性アルツハイマー」と関連する病気

「若年性アルツハイマー」と関連する病気は8個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

脳神経内科・脳神経外科の病気

  • 血管性認知症
  • 前頭側頭葉型認知症
  • レビー小体型認知症

精神科の病気

若年性アルツハイマー病と関連する病気には、こうした病気があります。これらの病気が進行や発症に影響を及ぼす場合があり、早期のケアが大切です。

「若年性アルツハイマー」と関連する症状

「若年性アルツハイマー」と関連している、似ている症状は15個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 最近のことをすぐ忘れる
  • 時間や場所がわからなくなる
  • 判断が難しくなる
  • 計画を立てられなくなる
  • 集中力が続かない
  • 日常の流れがわからなくなる
  • 距離や位置がつかめなくなる
  • 道に迷いやすくなる
  • 物の見分けがつかなくなる
  • 感情が不安定になる
  • やる気がなくなる
  • 見えないものが見える
  • 歩きづらくなる
  • 力が弱くなる
  • 飲み込みが難しくなる

これらの症状が進行すると、生活の中で困る場面が増え、周りのサポートが必要になります。

この記事の監修医師