目次 -INDEX-

  1. Medical DOCTOP
  2. 医科TOP
  3. 健康診断
  4. 「腹部エコー検査でわかること」とは?メリット・デメリットも医師が解説!

「腹部エコー検査でわかること」とは?メリット・デメリットも医師が解説!

 公開日:2025/11/11
「腹部エコー検査でわかること」とは?メリット・デメリットも医師が解説!

腹部エコー検査でわかることは何でしょう?メディカルドック監修医が腹部エコー検査で診れる臓器、発見できる病気について解説します。気になる症状は迷わず病院を受診してください。

木村 香菜

監修医師
木村 香菜(医師)

プロフィールをもっと見る
名古屋大学医学部卒業。初期臨床研修修了後、大学病院や、がんセンターなどで放射線科一般・治療分野で勤務。その後、行政機関で、感染症対策等主査としても勤務。その際には、新型コロナウイルス感染症にも対応。現在は、主に健診クリニックで、人間ドックや健康診断の診察や説明、生活習慣指導を担当している。また放射線治療医として、がん治療にも携わっている。放射線治療専門医、日本医師会認定産業医。

腹部エコー検査の流れ

腹部エコー検査(腹部超音波検査)は、痛みや放射線被ばくがなく、安全に腹部の臓器の状態を調べられる検査です。では、この検査で具体的に「何がわかる」のでしょうか。 この記事では、腹部エコーで確認できる臓器や発見できる病気、検査の流れや注意点まで解説します。

腹部エコー検査とは?

腹部エコー検査は、超音波を体にあてて臓器の状態を映し出す検査です。対象となるのは主に肝臓・胆嚢・膵臓・腎臓・脾臓・大動脈などです。臓器の形や内部構造、血流の異常、腫瘍や結石の有無などをリアルタイムで確認できます。 健康診断の一環として自費で受ける場合には、4,000〜7,000円ほどが相場でしょう。何らかの症状があり、保険適用となる場合には、3割負担の方では2,000円ほどが目安となります。

腹部エコー検査前日の流れ

検査前には絶食(通常6〜8時間)が必要です。午前に検査予定の方は、前日22時以降は固形物や乳製品を取らないようにします。午後の検査予定の方は、検査前6時間は同様の食事制限があります。食後は腸内にガスが発生しやすく、臓器の映像が見えにくくなるためです。飲水は少量の水なら問題ありませんが、牛乳や炭酸飲料は避けましょう。

腹部エコー検査当日の流れ

当日の午前に検査がある方は、朝食を抜きます。午後の方は、朝食は軽めにし、昼食は抜くようにします。水分は検査2時間前までは200ml程度であれば飲んでも大丈夫ですが、胃カメラ検査などの他の検査がある場合にはそちらの指示に従うことが必要です。検査当日は上着をめくり、腹部にゼリーを塗ってプローブ(探触子)をあてていきます。検査時間は20分程度です。終了後はゼリーを拭き取ります。検査後の食事や運動の制限はありません。また、検査による痛みや不快感はほとんどありません。

腹部エコー検査で分かること

腹部エコー検査は、お腹の実質臓器、つまり空気の干渉を受けにくい臓器の観察を得意としています。ここでは、各臓器の検査でわかることを説明します。

肝臓

脂肪肝、肝血管腫、肝嚢胞(かんのうほう)、肝硬変、肝がんなどを発見できます。健康診断でよくみられるものとして、肝嚢胞や脂肪肝があります。肝嚢胞は水のようなものを包む風船のようなもので、特に問題がない場合がほとんどです。一方、脂肪肝は超音波で白っぽく映る特徴があり、進行すれば肝硬変や肝がんに移行する可能性もあります。 また、肝細胞がんに典型的な所見として、モザイクパターンがあります。これは、腫瘤内部の小結節がモザイク状に配列して形成されたエコーパターンのことです。

胆嚢・胆管

胆石症や胆嚢ポリープ、胆管拡張、胆のう炎などを見つけることができます。エコー検査は、特に胆嚢の壁の肥厚などの細かな所見も観察することができます。

膵臓

膵臓がんや膵嚢胞、慢性膵炎などがわかります。また、膵臓の腫大(腫れていること)や先天的な膵臓の変形も観察することができます。膵臓は胃の裏にあるため見えにくいこともありますが、可能な範囲で観察を行います。 特に、嚢胞が複数連なるような病気である膵嚢胞性病変の場合には、エコー検査の役割は大きいです。検査では嚢胞の壁の厚みや内部での出血、感染などの状況も確認することができます。

腎臓

腎結石、腎嚢胞、腎がん、水腎症などがわかります。腎臓の超音波検査をすると、尿は水として描出されます。そのため、尿の流れが正常かどうか観察しやすいです。もし腎盂(じんう:腎臓の中にある、尿を集めるためのじょうごのような形をした袋状の部分)や以下の尿管に結石があると、痛みを生じます。こうした尿路結石疑いの痛みの原因を調べる目的で、エコー検査が行われることもあります。

脾臓

脾腫(脾臓が腫れる状態)や脾嚢胞などを発見できます。肝臓や血液疾患との関連で評価することもあります。

その他

ルーチンの超音波検査では、腹部大動脈も観察します。腹部大動脈瘤などの異常や大きなプラークなどが見つかるケースもあります。そのほか、前立腺肥大、卵巣嚢胞、子宮筋腫など、腹部に近い臓器も確認できる場合があります。ただし、腸や胃などガスを多く含む臓器は観察が難しいため、CTや内視鏡検査が併用されます。

腹部エコー検査のメリット

腹部エコー検査には、以下のようなメリットがあります。

身体の負担が少ない

放射線を使わないため被ばくの心配がなく、痛みもほとんどありません。妊婦や高齢者にも安全に行うことができます。

リアルタイムで表示される

超音波画像はリアルタイムで表示されるため、その場で異常の有無を確認できるのが大きな利点です。必要に応じてすぐ追加検査へつなげることも可能です。

早期発見されやすい

がんの種類にもよりますが、肝臓や腎臓などのがんを数cm以下の段階で発見できることもあります。肝臓や胆嚢、腎臓のがんにおいて、健診エコーで見つかったがんの方の方が、何らかの症状が出てから病院で分かったがんの方よりも生存率が高いという報告もあります。 肝炎ウイルス陽性の方などは肝がんの発症リスクが高まります。こうした方は、エコー検査を定期的に行うことで、がんの早期発見やその後の生存率向上につながる可能性があります。

腹部エコー検査のデメリット

検査にはそれぞれメリットとデメリットがあります。ここでは、腹部エコー検査のデメリットについて紹介します。

検査しにくい臓器がある

胃や腸はガスを多く含むため、超音波が通過しにくく観察が難しい臓器です。これらを詳しく調べたい場合は、胃カメラ(上部消化管内視鏡)や大腸カメラが推奨されます。

検査しにくい人がいる

肥満や内臓脂肪が多い人、腹部ガスが多い人では、画像が不鮮明になる場合があります。その場合はCTやMRIで補完します。

腹部エコーでわかる可能性がある病気・疾患

ここではメディカルドック監修医が、「腹部エコー検査」に関する症状が特徴の病気を紹介します。どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。

大腸がん

大腸がんは、結腸や直腸の粘膜にできる悪性腫瘍です。食生活の欧米化や加齢、遺伝が主な要因とされます。血便や便通の変化が初期サインで、放置すると転移の危険もあります。腹部エコーで肝転移や腹部大動脈周辺のリンパ節転移が見つかることがあります。気になる症状があれば消化器内科を受診しましょう。

脂肪肝

脂肪肝は、肝臓に脂肪が過剰にたまった状態で、飲酒や肥満、糖尿病などが原因です。自覚症状がほとんどなく、放置すると肝炎や肝硬変へ進行することもあります。腹部エコーで白っぽく映るのが特徴です。生活習慣の改善が治療の基本です。内科または消化器内科を受診しましょう。

膵臓がん

膵臓がんは、膵臓に発生する悪性腫瘍で、早期発見が難しい病気です。膵管の拡張や腫瘤が腹部エコーで見つかることがあります。診断にはCTやMRIも併用します。 背中の痛みや体重減少、黄疸が見られたら要注意です。消化器内科で早めの相談が大切です。

腎結石

腎結石は、尿中のカルシウムや尿酸などが固まり、腎臓内に石ができる病気です。腹部エコーで高エコー像として確認されます。背中やわき腹の激痛、血尿を伴うことがあります。水分摂取と薬物療法で改善することが多いですが、重症例では尿道から内視鏡を挿入し、レーザーなどで結石を砕いて体外に排出する、経尿道的腎尿管砕石術(transurethral ureterolithotripsy)が必要です。 気になる症状がある際には、泌尿器科の受診をおすすめします。

子宮筋腫

子宮筋腫は、子宮の筋肉に発生する良性腫瘍で、女性ホルモンの影響が大きいとされます。子宮は腹部エコーの検査範囲には基本的には含まれません。通常は婦人科の経腟エコーで確認しますが、大きい場合は腹部エコーで見つかることもあります。月経過多や下腹部の張りがある場合は婦人科を受診しましょう。

腹部エコー検査を受けたほうが良い人は?

お腹の痛みや違和感がある、健診で肝臓や腎臓の異常を指摘された方などは、一度消化器内科を受診しましょう。必要であれば、腹部エコー検査を行う、あるいは再検査することもあります。また、脂質異常症や糖尿病など生活習慣病がある、家族に肝疾患・膵疾患の既往がある方は、腹部エコー検査を受けることも検討してみましょう。

「腹部エコー検査でわかること」についてよくある質問

ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「腹部エコー検査でわかること」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。

腹部超音波検査を受けると胆石や結石が見つかりますか?

木村 香菜木村 香菜 医師

はい。胆石や腎結石はエコーで反射が強く、大きなものであれば比較的容易に確認できます。

大腸がんや大腸ポリープは腹部エコーで見つけられますか?

木村 香菜木村 香菜 医師

大腸自体は観察が難しいため、内視鏡検査が適しています。ただし肝臓やリンパ節などへの転移など、間接的な所見から疑うことはあります。

女性の脂肪肝は腹部エコー検査で発見できるのでしょうか?

木村 香菜木村 香菜 医師

はい。脂肪肝は男女ともにエコーで特徴的に映るため、健診でもよく発見されます。

まとめ 腹部エコー検査でわかることは

腹部エコー検査は、肝臓や胆嚢、腎臓、膵臓などの健康状態を安全かつ手軽に確認できる検査です。自覚症状がなくても異常が見つかることがあるため、定期的な受診が大切です。健康診断で異常を指摘された方や、生活習慣病をお持ちの方は、ぜひ一度腹部エコーを受けてみましょう。

「腹部エコー検査」の異常で考えられる病気

「腹部エコー検査」から医師が考えられる病気は11個ほどあります。各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。

消化器内科系の病気

泌尿器科系の病気

  • 腎結石
  • 腎がん

血管外科系の病気

腹部エコー検査では、さまざまな病気を調べることができます。

この記事の監修医師

注目記事