「血圧が160以上で現れる症状」はご存じですか?原因や血圧を下げる方法を医師が解説!

血圧が160以上のとき、身体はどんなサインを発している?メディカルドック監修医が主な原因や考えられる病気・何科へ受診すべきか・対処法などを解説します。気になる症状は迷わず病院を受診してください。

監修医師:
伊藤 陽子(医師)
目次 -INDEX-
高血圧とは?
血圧とは、心臓から全身に送り出された血液が動脈の壁を押す圧力のことを言います。血圧の高さは心臓が押し出す力と血管の拡張、弾力性により決まります。また、血液量が多くなったり、さまざまな原因で血管が収縮したり、動脈硬化により血管の弾力性が低下することで血圧が上昇するため、気をつけなければなりません。血圧の基準値と高血圧の範囲
血圧の基準値(正常血圧)は、診察室での測定で収縮期血圧120mmHg未満かつ拡張期血圧80mmHg未満です。しばしば、診察室では血圧が上昇することがあります。健康診断などで高血圧を指摘された場合、自宅での血圧も測定することをお勧めします。 家庭血圧での正常値は、収縮期血圧115mmHg未満かつ拡張期血圧75mmHg未満です。 また、診察室血圧で140/90mmHg以上、家庭血圧で135/85mmHg以上の場合高血圧と診断されます。Ⅱ度高血圧の数値
高血圧と診断された場合、さらに血圧の高さによりⅠ度高血圧、Ⅱ度高血圧、Ⅲ度高血圧と分類されます。 このうち、Ⅱ度高血圧に分類される血圧は、診察室で収縮期血圧160〜179mmHgかつ/または拡張期血圧100〜109mmHgにあたる場合です。家庭血圧では収縮期血圧145〜159mmHgかつ/または90〜99mmHgの場合がⅡ度高血圧と診断されます。Ⅲ度高血圧の数値
Ⅲ度の高血圧は診察室で収縮期血圧180mmHg以上かつ/または拡張期血圧110mmHg以上を指します。家庭血圧では収縮期血圧160mmHg以上かつ/または拡張期血圧100mmHg以上の場合を言います。家庭内と医療施設でなぜ高血圧の値が異なるのか
診察室外での血圧と、診察室での血圧が異なる原因としていくつか要因が考えられます。まず第一に白衣高血圧と言って、診察室では緊張が強く血圧が上昇してしまうことがあります。この場合には、自宅での血圧(家庭血圧)は、正常である事で区別をすることができます。緊張が強い方では、白衣高血圧がみられることが多いです。通常白衣高血圧は自宅での血圧を測定してもらい、問題が無ければ経過をみることが多いです。しかし、非高血圧と比較すると将来的な脳心血管病イベントを発症するリスクが高いと報告されています。注意して経過をみることが大切です。 第二に、仮面高血圧と言って診察室では血圧が高くないにも関わらず家庭での血圧が高い方です。これは、血圧が上昇する時間帯が異なっている可能性があります。朝に血圧が上昇していても日中は血圧が正常である方もいます。朝の血圧上昇は脳心血管イベントの発症リスクが高くなることが分かっており、治療を検討します。 自宅と医療機関での血圧の差がある場合には循環器内科を受診して相談をしてみると良いでしょう。血圧160以上だとどのような症状・リスクがある?
収縮期血圧が160mmHg以上である場合、Ⅱ度高血圧と言えます。自覚症状はあまりないことも多いですが、さまざまなリスクがあると考えられます。血圧160以上で起こりうる症状
収縮期血圧が160mmHg以上でも、自覚症状がないことが多いです。収縮期血圧が180mmHg以上のいわゆる高血圧緊急症となって初めて、頭痛などの自覚症状がみられることも多いです。しかし、160mmHg程度でも頭が重い(頭重感)、朝に頭痛がするなど軽い症状がみられることもあります。このような症状がある場合には、自宅で血圧を測ってみましょう。血圧160以上で起こりうる健康リスク・病気の危険性
収縮期血圧が160mmHg以上で症状がなかったとしても、放置することは危険です。 今までの研究から、血圧120/80mmHgを超えて血圧が高くなるほど、脳卒中、虚血性心疾患、心不全、心房細動、慢性腎臓病、認知症のリスクが上昇することが分かっています。収縮期血圧が160mmHg以上を放置することで、動脈硬化が進行し、これらの病気が発症する危険性が増します。なるべく早めに生活習慣を改め、それでも低下しない場合には内服治療を考えましょう。早めに内科・循環器内科を受診することをお勧めします。血圧が160以上になる主な原因は?
高血圧となる原因はさまざま考えられます。この中でも主となる原因について解説いたします。塩分の摂りすぎ
日本人の高血圧の原因として塩分の過剰摂取が挙げられます。特に日本人は塩分摂取が多いと言われており、令和5年の国民健康・栄養調査によると日本人の塩分摂取量は男性で平均10.7g/日、女性で平均9.1g/日でした。健康日本21では塩分摂取量の平均値を7g/日未満とすることを目標としています。減塩をすることで血圧値が低下することは多くの研究で証明されています。まず減塩から始めましょう。肥満
近年は、特に男性で肥満に伴う高血圧が増加傾向にあります。肥満は動脈硬化の原因ともなります。BMI25kg/m2以上の肥満の場合には、食事や運動に気を付けて減量を心がけましょう。飲酒・喫煙
アルコール摂取は血圧が上昇する原因となります。アルコールは日本酒で平均一日1合以下の節酒がおすすめです。 喫煙も血圧上昇に影響します。禁煙をするようにしましょう。運動不足
有酸素運動や筋トレなどのレジスタンス運動を組み合わせて運動を行うことが推奨されています。運動をすることが、糖尿病や脂質異常症、肥満などの生活習慣病の発症予防にもつながります。高血圧は家族性の要因も強いと言われていますが、上記の様な生活習慣に気を付けることで発症を予防することができます。できることから少しずつでも始めましょう。血圧160以上の場合、すぐに受診した方が良い?
例えば健康診断などで収縮期血圧が160mmHg以上と高く、自覚症状がない場合には、まず自宅で血圧を測ってみましょう。自宅でも140mmHg以上の高血圧が持続する場合には早めに病院を受診して生活習慣を改善する必要があります。 もし、収縮期血圧が160mmHg以上でひどい頭痛や吐き気、視力障害などの症状がある場合には、緊急に受診をする必要があります。受診する診療科は循環器内科が良いでしょう。血圧が160以上で気をつけたい病気・疾患
ここではメディカルドック監修医が、「血圧が160以上」で気を付けたい病気を紹介します。 どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。 高血圧
高血圧は、診察室での血圧が140/90mmHg以上となった時に診断されます。初期には、自覚症状がないことが多いです。しかし、120/80mmHgを超えて血圧が高くなるほど、脳卒中や心血管疾患、慢性腎臓病などのリスクが高まることが分かっているため、注意が必要です。 高血圧は、生活習慣の見直すことにより改善することが期待できます。減塩、適正体重の維持、適度な運動、節酒、禁煙が降圧に有効であることが報告されています。高血圧を認めたら、まず自宅で何度か測定をしましょう。また、生活習慣の見直しをしても高血圧が持続する場合には、循環器内科を受診しましょう。脳卒中
脳卒中とは、脳の血管が詰まったり、破れたりすることで脳の一部の働きが悪くなる病気です。 脳卒中は血管が詰まって発生する脳梗塞、血管が破れて起こる脳出血とクモ膜下出血を合わせたものです。これらの病気は、麻痺症状、言葉が出づらい、ろれつが回らない、意識の障害など共通した症状がみられます。しかし、発症の仕方が異なり、治療方法や経過も異なります。しかし、これらの病気は、生活習慣病が関連していることが多いです。 国内の今までの研究報告から脳卒中での死亡の38%が120/80mmHgを超える血圧高値に起因すると推測されています。このため、血圧が高いと指摘された場合、生活習慣の見直しを含め早めの対応が大切です。心筋梗塞
心筋梗塞とは、心筋をめぐる血管が急激にプラークや血栓などで詰まってしまうことで血行が途絶え、心筋に十分な栄養と酸素の供給ができなくなる病気です。心筋への血流が途絶えることで放置すると心筋が壊死してしまいます。 心筋梗塞は日本人の死因の第2位であり、現在でも非常に重大な病気です。病院で治療を受けた方でも1割程度は救命ができないと報告されています。このため、心筋梗塞を事前に防ぐことが非常に大切です。心筋梗塞も脳卒中と同様に生活習慣病と非常に関係していると報告されています。 特に血圧に関しては、心筋梗塞の死亡の26%が120/80mmHgを超える血圧高値に起因していると推測されています。他の生活習慣病と同様に高血圧を早めに治療することが非常に重要です。動脈硬化
動脈硬化とは、加齢や生活習慣病が影響して動脈の壁が厚くなり、血管が狭くなる状態のことを言います。生活習慣病などにより、血液中のコレステロールが増加したり、高血圧などで血管の壁に負担がかかると、動脈の内膜の下へコレステロールが溜まる様になります。この内膜下へコレステロールが蓄積した部分をプラーク(粥状動脈硬化巣)といい、脳卒中や心筋梗塞の原因となるため注意が必要です。動脈硬化を進ませないためにも、高血圧を含めた生活習慣病を予防しましょう。睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群とは、眠っている間に何度も呼吸が止まってしまう病気です。呼吸が止まると、血液中の酸素濃度が低下するために、何度も目が覚めて呼吸をし始めますが、しばらくたつと呼吸がまた止まってしまうことを一晩中繰り返します。そのため、十分な睡眠がとれず、日中に強い眠気を感じる様になり、日常生活にも支障が出るため注意しなければなりません。また、酸素濃度が下がるために、これを補おうとして心臓の働きが強まり、高血圧にもなりやすくなります。高血圧の他にも様々な生活習慣病を引き起こすこともあるため、注意が必要です。いびきが止まっていると指摘されたり、日中の眠気が気になるようであれば内科で相談をしましょう。「血圧が160以上」の正しい対処法・改善法は?
収縮期血圧で160mmHg以上がみられた場合、自宅で血圧を測定し、持続する場合には早めに循環器内科を受診しましょう。自宅でできる改善方法としては、減塩、節酒、禁煙です。まずできる事から始めましょう。また、睡眠不足やストレスも血圧上昇の原因となります。しっかりと休養を取り、リラックスすることを心がけることも重要です。それでも、収縮期血圧が140mmHg以上と続くなら、受診をお勧めします。「血圧が160以上」についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「血圧が160以上」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。
血圧が160以上で何の症状があったらすぐに病院に受診した方が良いですか?
伊藤 陽子(医師)
収縮期血圧が160mmHg以上だからと言って緊急で受診する必要はありません。しかし、激しい頭痛、意識障害、視力障害、胸痛、息苦しさ、吐き気などの症状を伴う場合には緊急で受診する必要があります。症状がない場合には、自宅で血圧測定を行い収縮期血圧が140mmHg以上持続する場合には循環器内科を受診しましょう。
血圧が160以上だと脳梗塞になるリスクが高くなりますか?
伊藤 陽子(医師)
血圧が上昇するほど脳卒中のリスクが上昇することが分かっています。高血圧が持続することで動脈硬化が進行し、脳梗塞が発症しやすくなるため早めに治療をすることが大切です。
血圧の上が160以上で高血圧の人は薬で治療できますか?
伊藤 陽子(医師)
血圧が高い場合、降圧剤により治療をすることができます。しかし、二次性の高血圧などでは、他の原因を調べる必要があるため、まず循環器内科を受診し、相談をしましょう。
50代で血圧が上160を超えた場合日常的に血圧を測るべきでしょうか?
伊藤 陽子(医師)
どの年代であっても収縮期血圧が160mmHg以上の場合には治療の適応となる事が多いです。持続的に血圧が高い場合には、治療が必要となりますのでまず自宅で血圧を測定してみることが大切です。その上で、血圧が高い場合には受診しましょう。
まとめ 「血圧が160以上」と言われたらまず自宅で血圧測定を!
収縮期血圧が160mmHg以上である場合、高血圧である可能性が高いです。しかし、診察室で緊張して測定した場合には、血圧が高めに出てしまうこともあります。まず高血圧を指摘されたら、自宅で血圧を測定しましょう。自宅でも収縮期血圧が140mmHg以上持続している場合には、循環器内科を受診することが大切です。 高血圧は自覚症状がないことも多いですが、放置することで動脈硬化が進行し、脳卒中や心血管疾患のリスクとなります。早めに受診して治療をすることが大切です。「高血圧」の異常で考えられる病気
「高血圧」から医師が考えられる病気は8個ほどあります。 各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。脳神経系の病気
腎泌尿器科系の病気
「高血圧」の異常で考えられる病気
「高血圧」と関連している、似ている症状は7個ほどあります。 各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。関連する病気
- 頭痛
- 吐き気
- 胸痛
- 動悸
- 胸が苦しい
- 浮腫
- 見えづらい




