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【専門家解説】高齢者のお風呂・入浴介助で気を付けたい注意点や対策方法は?

 更新日:2024/02/22

高齢者の介護をしている方、またはご自身が高齢者である方は日々の生活の中で事故やケガが起きないよう細心の注意を払って過ごされていると思います。高齢者の事故やケガが起きやすい場所はさまざまですが、特に浴室は多くの危険が潜んでいます。そこで高齢者が入浴する際に起こりやすい事故や注意点について介護福祉士の尾崎さんに聞きました。

尾﨑 佳奈

監修介護福祉士
尾﨑 佳奈(介護福祉士)

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福祉系の4年制大学卒業、社会福祉士と介護福祉士の資格を保有。中途の聴覚障害がありコミュニケーションに困難があるものの、大学卒業後は障害者支援施設で2年半生活支援員として勤務。その後地域密着型特別養護老人ホームで介護福祉士として5年半勤務。現在は子育てをしながら、主に福祉系のwebライターとして活動中。

高齢者の入浴時に想定されるアクシデントは?

高齢者の入浴時に想定されるアクシデントは?

編集部編集部

高齢者の入浴時によく起きる事故にはどんなものがありますか?

尾﨑 佳奈さん尾﨑さん

よく起こる事故は転倒です。浴室は床が濡れているので足を滑らせてしまったり、浴槽から出る際足が引っ掛かってしまったりすることで、転倒する可能性があります。

編集部編集部

転倒以外にも起こり得る事故はありますか?

尾﨑 佳奈さん尾﨑さん

ほかには冬の時期に起こりやすい「ヒートショック」が挙げられます。温度差のある場所から場所へ移動すると、血圧が急に上がったり下がったりしてしまい、身体がダメージを受けることをヒートショックといいます。これにより心筋梗塞などを発症してしまう可能性があります。冬場は暖かい部屋から寒い脱衣場に移動し寒さを感じることで血圧が急上昇し、熱い湯に入ることにより急上昇した血圧が今度は急降下します。この血圧の急激な高低差によってヒートショックを起こしてしまう事故が増えています。

編集部編集部

危険の多い入浴時のみ注意すればよいですか?

尾﨑 佳奈さん尾﨑さん

入浴後も注意が必要です。高齢者は脱水症を起こしやすいので必ず水分補給をする必要があります。脱水症になると血管性の疾患を発症しやすくなり、最悪の場合は命を落とすこともあるので注意しましょう。また肌の乾燥で痒みや肌荒れが起きるので保湿をしてください。乾燥がひどくなると強い痒みを感じるようになる可能性もあります。

事前にアクシデントを予防する! 高齢者の入浴の工夫

事前にアクシデントを予防する! 高齢者の入浴の工夫

編集部編集部

入浴時によく起きる事故として転倒があるといわれましたが、どのような対策をすればよいでしょうか?

尾﨑 佳奈さん尾﨑さん

脱衣場や浴室内に手すりを設置すると、掴まることによって体が安定するので転倒リスクを減らすことができます。また床が滑らないようにすのこを敷く、浴槽にベンチのような台を設置するなどの方法があります。これらは一人ひとりに合ったものを設置する必要があります。要支援・要介護認定を受けている場合は介護保険を利用し、福祉用具を活用するとよいでしょう。

編集部編集部

福祉用具にはどんなものがありますか?

尾﨑 佳奈さん尾﨑さん

前述した物のほかには、背もたれやひじ掛けのついたシャワーチェアがあります。また湯船に入ると滑る可能性がありますが、滑らないよう湯船の中に入れる椅子があります。これは浴槽台と言って、湯船から出る際に踏み台としても活用できます。

編集部編集部

福祉用具の申請方法を教えてください。

尾﨑 佳奈さん尾﨑さん

福祉用具を利用したい場合、要支援・要介護認定を受けている必要があります。まずケアマネジャーに相談し、どんな福祉用具が必要なのかをまとめた計画書を作成してもらいましょう。購入費用は市町村で定められた業者から購入した場合、1割(所得の多い方は2~3割)負担で済みます。市町村によって申請方法や業者の指定など変わりますので、お住まいの市町村の手続き内容を調べてから申請するようにしてください。

編集部編集部

ヒートショックを予防するにはどうすればよいですか?

尾﨑 佳奈さん尾﨑さん

脱衣場や浴室をヒーターや浴室暖房で温め、なるべく室内の温度と浴室の温度に差が出ないようにしましょう。また長時間湯に浸からないようにしたり、肩までしっかり入らず心臓への負担を軽減したりするなどの対策があります。

編集部編集部

公衆浴場が好きな方も多いですが、その場合どんな対策をすればよいでしょうか?

尾﨑 佳奈さん尾﨑さん

湯に浸かる前にはしっかりかけ湯を行い、身体を温めるようにしましょう。また熱めに設定されている浴槽にはなるべく入らないようにしてください。また、ほかの人が流した泡に足を取られないよう注意する、なるべく高齢者の方1人では入らない、などの対策を行いましょう。

自宅で介助が必要に。高齢者の入浴介助の注意点

自宅で介助が必要に。高齢者の入浴介助の注意点

編集部編集部

自宅介護で注意することはなんですか?

尾﨑 佳奈さん尾﨑さん

介護者も一緒になって転倒してしまう可能性があるので、滑らないよう注意するようにしましょう。また脱衣場と浴室内の室温の差が大きくならないようにしてください。ほかにはお湯を掛ける際、心臓よりも遠い場所から掛けると心臓への負担を減らすことができますので、まずは足元から掛けるようにしましょう。そして入浴後、立ちくらみによりふらつくことがあります。室内に戻り高齢者の方が落ち着くまでは気を抜かないよう注意してください。

編集部編集部

足腰が悪く、ほかは健康的な方の場合、特に転倒に気を付けておけばよいですか?

尾﨑 佳奈さん尾﨑さん

健康だと思っていても、高齢者の方は心臓など弱っていることもあります。入浴は体に負荷を掛ける行為ですので、なるべく短時間の入浴にするようにしましょう。また入浴前後の体調確認や補水は必ず行ってください。入浴後、異変があればすぐに病院や救急へ電話をしてください。

編集部編集部

湯船に入る時間はどれくらいがよいでしょうか?

尾﨑 佳奈さん尾﨑さん

長く湯船につかると、立ち上がった際のめまいにつながりのぼせてしまう可能性があります。また心臓に強い負荷が掛るため、10分以内には湯船から上がるとよいでしょう。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

尾﨑 佳奈さん尾﨑さん

高齢者の方の入浴は、健康な人や若い人よりも気を配らなければならないことが多くあります。ケガや健康に気を配りながら1日の疲れを癒してください。また自宅介護に限界を感じたら、介護サービスを利用することも考えましょう。プロに任せることは介護者・介護を受ける人お互いの心身の負担を減らすことにもつながります。

編集部まとめ

入浴の際に起こるヒートショックや入浴後の脱水症など、普段の入浴前後に少し気を配るだけで防げる事故や病気もあります。また自宅介護を行っている場合、福祉用具の利用も検討してみてください。介護者・介護を受ける方双方のケガや事故のリスクを減らすことができます。さらに、入浴時や入浴後に異変を感じたらすぐに病院や救急に連絡するようにしましょう。

この記事の監修介護福祉士