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インフルエンザワクチン接種で「アルツハイマー型認知症」リスク3割減 テキサス大推計

 更新日:2023/12/01
ワクチン接種によって「アルツハイマー病」リスクが3割減と推計

テキサス大学ヘルスサイエンスセンターの研究グループは、「インフルエンザワクチンを接種した人は、認知症の一種のアルツハイマー病の発症リスク低下の可能性がある」と発表しました。研究結果は医学雑誌「Journal of Alzheimer’s Disease」に掲載されています。この内容について、中路医師に伺いました。

中路 幸之助

監修医師
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

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1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

研究グループが発表した内容とは?

テキサス大学の研究グループが実施した研究の内容について教えてください。

中路 幸之助 医師中路先生

今回紹介するのは、テキサス大学ヘルスサイエンスセンターが65歳以上の患者約160万人のワクチン接種記録を元におこなった「インフルエンザワクチンの接種によって、アルツハイマー病の発症リスクが軽減されるかもしれない」という研究結果です。

研究によると、三種混合ワクチン、帯状疱疹ワクチン、および肺炎球菌ワクチンを接種した人は、接種していなかった人と比較して、その8年後以内にアルツハイマー病を発症するリスクが著しく低いと報告しています。具体的には、三種混合ワクチンを受けた人はリスクが30%低く、帯状疱疹ワクチンでは25%、肺炎球菌ワクチンは27%低かったという数字が示されています。2022年6月に同じ研究チームがおこなった研究では、インフルエンザワクチン接種がアルツハイマー病の発症リスクを40%軽減させるというデータも出ています。さらに、2021年にセントルイス・ワシントン大学医学部が実施した研究でも、「インフルエンザワクチンは認知症リスク軽減に関係がある」と同様の結果を示しています。

研究グループは「この研究結果はワクチン接種が特定の感染病予防ではなく、免疫システムを訓練することで認知症リスクを低減する可能性があるという仮説と一致するものである。もし、ワクチンが認知症を低減する原因要素と認められれば、現在の予防策より優れた効果を持つ安価で低リスクな治療法を提供できる」と述べています。

認知症とは?

今回の研究で取り上げている認知症について教えてください。

中路 幸之助 医師中路先生

認知症は病名と誤解されがちですが、認識したり、記憶したり、判断したりする力が障害を受け、社会生活に支障をきたす状態のことを指します。認知症を引き起こす原因には様々なものがありますが、「アルツハイマー型認知症」もその1つです。そのほかの原因疾患には、「血管性認知症」「レビー小体型認知症」「前頭側頭型認知症」があります。

認知症患者は65歳以上で3~7%、80歳以上では20%以上を占めると報告されていますが、アルツハイマー病患者は65歳以上で1~3%いるとされています。一方、65歳未満の認知症については、認知症患者全体で人口10万人に対して30人程度であり、アルツハイマー病患者は人口10万人に対して20人程度であると考えられています。今後、高齢者の数が増加していくとともに、アルツハイマー病の患者数もますます増えていくと予想されています。

認知症の中には早期発見して治療をすれば、進行を遅らせたり、周辺症状を軽くできたりします。もの忘れなど認知症の症状があれば、放置せずに医療機関を受診し、早期発見を目指しましょう。

今回の発表内容への受け止めは?

テキサス大学の研究グループがおこなった研究についての受け止めを教えてください。

中路 幸之助 医師中路先生

「既存のデータベースを用いたレトロスペクティブ(後ろ向き)の研究であること」や「ワクチン接種を受けた人はワクチン接種を受けなかった人と比べて、普段から病気の予防に関心が高く、アルツハイマー病にかからないための予防策をとっていた可能性がある」などを考慮すると、今回の研究には限界があると感じます。ただ、感染症の予防以外のワクチンの効果を示唆した大変興味深い研究であると考えられます。

まとめ

インフルエンザや新型コロナウイルス、肺炎などのワクチンの最新状況を常に把握しておくことは、感染による重篤化を回避するだけでなく、今回取り上げた研究のように認知症予防など、様々な面で重要になってくるかもしれません。

この記事の監修医師