アルツハイマー治療薬「レカネマブ」の承認を了承、早ければ年内に使用開始
2023年8月21日、厚生労働省の専門家部会は日本の製薬大手エーザイとアメリカの医薬品大手バイオジェンが共同開発したアルツハイマー病の治療薬「レカネマブ」の承認を了承しました。このニュースについて中路先生にお話を伺います。
監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
目次 -INDEX-
今回のニュースの内容とは?
今回、ニュースになっている内容について教えてください。
中路先生
製薬大手のエーザイがアメリカのバイオジェンと共同開発したアルツハイマー病の治療薬「レカネマブ」について、8月21日に厚生労働省の専門家部会は使用を認めることを了承しました。専門家部会はレカネマブについて、「有効性が確認でき、安全性にも重大な懸念はない」としています。アルツハイマー病の原因物質に直接働きかけ、取り除くための薬が国内で了承されるのは初となります。
認知症を発症する前の軽度認知障害の人や、アルツハイマー病の発症後早い段階の人を使用の対象とすることも了承されました。薬の価格は、すでに承認されているアメリカでは1人あたり平均で年間2万6500ドル、日本円に換算しておよそ385万円と設定されています。日本での価格はまだ決まっていません。
エーザイは公的医療保険の適用を求める申請をおこなう見通しで、承認から遅くとも90日以内に中央社会保険医療協議会で、保険適用と価格についての結論が出され、早ければ年内にも患者に使用されるものとみられます。
レカネマブとは?
厚生労働省の専門家部会が承認したレカネマブについて教えてください。
中路先生
アルツハイマーは「アミロイドβ」という老廃物が脳に溜まることで起きる病気です。アミロイドβが蓄積されていくと「プロトフィブリル」と呼ばれる塊になります。抗アミロイドβ抗体薬であるレカネマブは、薬の成分がプロトフィブリルに作用して目印の役割を果たします。そこに体内の免疫細胞が集まって攻撃することになります。856人が参加したレカネマブの中期治験では、同薬の投与によってアミロイドβの減少が大半の参加者で確認されたとされています。
ニュース内容への受け止めは?
厚生労働省の専門家部会がレカマネブの承認を了承したことに対しての受け止めを教えてください。
中路先生
人口の高齢化に伴い、アルツハイマー病の患者数は世界的に急増しています。日本でも認知症と診断された高齢者の約6割をアルツハイマー病が占めており、今後患者数の増加が見込まれています。そのため、新薬のレカネマブへの期待は高まります。しかし、対象が軽度認知症と軽度認知障害(MCI)の人に限られていること、投与後に副作用である脳内出血をチェックすること、抗血栓薬を内服している人への注意喚起が必要などの条件があります。また、レカネマブは遺伝子組換え技術を用いた抗体製剤であるため製造コストが高額で、薬価は日本でも年間百万円単位になる可能性があります。ただし、高額療養費制度があるため、患者側の自己負担は年齢・所得により上限が設けられます。
今後、どのようにして患者選択・経過観察・薬剤費用負担をマネジメントしていくかが課題となりそうです。
まとめ
2023年8月21日、厚生労働省の専門家部会は日本の製薬大手エーザイと米医薬品大手バイオジェンが共同開発したアルツハイマー病治療薬「レカネマブ」の承認を了承しました。早ければ年内にも使用される可能性があり、今後も注目が集まりそうです。