「片頭痛」持ちの人は要注意 脳卒中リスク増加の要因になることが判明

今回紹介するのはデンマークのオーフス大学らの研究グループがおこなった研究で、「PLOS Medicine」に論文が掲載されています。

研究の対象になったのは、1996～2018年に片頭痛薬を少なくとも2回処方された18～60歳の片頭痛患者22万437例です。女性が17万9680例で平均年齢41.5歳、男性が4万757例で平均年齢は40.3歳でした。さらに、対照群として110万2140例を1：5の割合で組み入れました。中央値で8.8年間追跡した結果、対照における早期発症心筋梗塞の絶対リスクは女性が1.0%だったのに対して男性は3.1%と、男性の方が高リスクという結果になりました。早期発症虚血性脳卒中についても、男性の方が高リスクであるという結果が示されました。早期発症出血性脳卒中リスクについては、男女共に同レベルのリスクとなりました。対照群に対する片頭痛患者の早期発症心筋梗塞のハザード比は女性が22％有意に高くなりましたが、男性では有意な関連は認められませんでした。また、対照群に対する片頭痛患者の早期発症虚血性脳卒中におけるハザード比は男性で23％、女性で21％有意に高くなりました。さらに、対照に対する片頭痛患者の早期発症出血性脳卒中におけるハザード比は女性が13％有意に高くなりましたが、男性では有意な関連は認められませんでした。

研究グループは、「片頭痛は男女において同様に早期虚血性脳卒中リスクの増加と関連していることが観察された。早発性心筋梗塞と出血性脳卒中については、女性においてのみ片頭痛に関連したリスク増加の可能性がある」と論文で結論づけています。

虚血性脳卒中は、一般的には「脳梗塞」という名称で知られていて、「ラクナ梗塞」「アテローム血栓性脳梗塞」「心原性脳塞栓症」「その他の脳梗塞」に分かれています。

脳梗塞は超急性期の治療が大切で、発症から治療開始が早ければ早いほど救命率が上がり、後遺症が少なくなります。発症から4.5時間以内であれば、血栓溶解療法をおこないます。血栓溶解療法の時期を逸しても発症から6時間以内であれば、血栓回収術をおこないます。

虚血性脳卒中の症状は突然起こることが多く、始まって2～3分後に最も重症化します。ほとんどの虚血性脳卒中は突然発症して急速に発達し、数分から数時間以内に脳組織の壊死が起こります。その後、安定してそれ以上の損傷はほとんど、または全く起こりません。

片頭痛患者において、心血管病リスクが通常例に比較して高まっている可能性が示されたと言えるでしょう。ただし、今回の研究で取り扱った研究対象者は比較的若年層が多く、心筋梗塞や虚血性脳卒中などの心臓脳血管疾患の発症が比較的少ない年代で得られたデータであることには、一定の注意が必要であると考えられます。

今回の研究報告を通じて、片頭痛と虚血性脳卒中発症リスク上昇との関連性は60歳以下の成人男女で大差はないことが分かりましたが、片頭痛患者は主に女性に発症例が多いことから、片頭痛関連疾患による健康的・社会的負担は女性でより増大する可能性が示唆されました。