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「レム睡眠行動障害」の症状・原因はご存知ですか?医師が監修!

 更新日:2023/03/27
「レム睡眠行動障害」の症状・原因はご存知ですか?医師が監修!

近年、心身の健康を維持する要素の一つとして睡眠の重要性が注目されており、みなさんの中にもご自身の睡眠の状態が気になる方がいらっしゃるのではないでしょうか。

睡眠は年齢とともに変化しているといわれており、睡眠障害で悩む方も増えていきます。また、ご本人は気がついていなくても、睡眠障害に伴う異常行動が出現する睡眠時随伴症のために周囲の人が不眠などの睡眠障害を抱えてしまうこともあります。

そこで、今回はご自身では気が付いていないかもしれない睡眠に関する病気の中でも、レム睡眠行動障害という病気について詳しく解説をしていきます。

郷 正憲

監修医師
郷 正憲(徳島赤十字病院)

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徳島赤十字病院勤務。著書は「看護師と研修医のための全身管理の本」。日本麻酔科学会専門医、日本救急医学会ICLSコースディレクター、JB-POT。

レム睡眠行動障害とは?

女性がベッドで頭を抱えている

レム睡眠行動障害とはどんな病気?

睡眠には大きく分けてREM(レム)睡眠とNREM(ノンレム)睡眠の2種類があります。レム睡眠行動障害は、このREM睡眠中に異常行動が見られる病気になります。
外から見るとしっかりと眠っているにもかかわらず、大きな寝言を言うことや、ベッドから転落する、一緒に寝ている人を叩いたり蹴ったりしてしまうなどの行動もみられます。これにより、ご本人や周囲の人が怪我を負ってしまうことや、家族の不眠などに繋がることもあるのです。

レム睡眠行動障害は何が原因で発症してしまうのでしょうか?

REM睡眠の間、脳は活動をしているのですが、身体を休めるために全身の筋肉は弛緩している状態になります。しかし、年齢を重ねることでこの筋肉の緊張を弛緩させる神経調整システムが障害され、REM睡眠中の脳の活動と同調して身体も動いてしまいます。
神経調整システムが障害される直接的な原因は明らかにはなっていませんが、加齢の他にもアルコール・睡眠不足などの生活習慣や精神疾患症状の治療で使用される抗うつ薬などの薬剤、頭部の外傷・髄膜炎・脳炎といった炎症性疾患、パーキンソン病・レビー小体型認知症・多系統萎縮症などの神経変性疾患とも関連していると考えられています。

レム睡眠行動障害ではどんな症状がみられますか?

レム睡眠行動障害の症状には様々なものがありますが、REM睡眠中に見ている夢体験と同じ行動をとることが一般的であるといわれています。眠っているにもかかわらず、突然はっきりとしゃべり出す・腕や足などを振り回すような行動が見られる・ベッドから転落する・立ち上がる、というような症状もみられます。
また、一緒に寝ている人を叩く・蹴る・首を絞める、などの暴力的な行動が見られることもあります。睡眠時随伴症状が出ている時に起こすと、すぐに目が覚めて意思疎通がとれ、本人は夢を見ていた内容を覚えていることも特徴です。

レム睡眠行動障害の特徴や受診のタイミング

問診をする白衣を着たシニアの男性医師

レム睡眠行動障害を発症しやすい人の特徴を教えてください。

レム睡眠行動障害は年齢とともに発症のリスクが高まります。性別では50歳以降の男性に多く、若年性の場合はうつ病などの精神疾患に伴い薬剤を服用している場合や生活習慣が乱れている場合などは発症のリスクが上がると考えられているのです。
また、他にも先ほど述べたようなパーキンソン病・レビー小体型認知症などの神経変性疾患に罹患している場合や、頭部の外傷・髄膜炎や脳炎といった炎症性疾患を有している場合は、レム睡眠行動障害を合併していることがあります。

レム睡眠行動障害と夢遊病は違うのですか?

レム睡眠行動障害と似ている睡眠時随伴症の中には夢遊病と呼ばれるものがあります。もしかすると、こちらの方が一般的に聞きなれた疾患であるかもしれません。レム睡眠行動障害と夢遊病が大きく異なる点は、夢遊病は入眠してから1~3時間のNREM睡眠中に生じることが確認されており、主に大人よりも子供に多く発症するといわれています。
大人でも夢遊病を発症することがありますが、その多くは精神的ストレスが原因であると考えられており、この点もレム睡眠行動障害とは異なります。

レム睡眠行動障害を放置するリスクはありますか?

レム睡眠行動障害を放置することによる一番大きなリスクは、この睡眠時随伴症による二次障害によってご本人や一緒に眠っている家族・パートナーが怪我をする危険性があるということです。ご本人は気が付いていないことも多く、家族関係の悪化やストレスの増大も深刻であり、ご家族が不眠症やうつ病を発症してしまうケースもあります。
また、原因疾患等がない場合は、将来的なパーキンソン病・レビー小体型認知症などの神経変性疾患の発症に先立って前駆症状として出現している場合もあり、将来の神経変性疾患の発症に繋がるリスクがあることも知られています。

レム睡眠行動障害に心当たりがある場合は何科を受診したら良いのでしょう?

レム睡眠行動障害に心当たりがある場合は、まずは睡眠外来が設置されている病院やクリニックに相談をしていただくとよいでしょう。レム睡眠行動障害が生じている原因は多岐に渡るため、まずは睡眠障害を専門に扱う医師により症状や睡眠の状態を細かく検査してもらい、そこから原因となる専門医に繋いでいただくという方法があります。
もし、お近くの病院に睡眠外来がなく、前述のようなレム睡眠行動障害に特有の症状がある場合は、脳神経内科を受診することをおすすめします。

受診するタイミングが知りたいです。

レム睡眠行動障害の場合はご本人に自覚がなく、ご家族が悩まれている場合が多くあります。ご家族に指摘をうけた場合は、睡眠時随伴症状による二次障害のリスクがありますので、なるべく早く受診をするようにしてください。
また、ご家族と同居されていない場合でも、朝起きた際に身体に身に覚えのない傷や痣がよくある場合などは、睡眠時随伴症状が出ている可能性がありますので、すぐに受診することをお勧めします。

レム睡眠行動障害の診断・治療方法

診断書と聴診器

レム睡眠行動障害はどのように診断するのでしょうか?

まず、睡眠中のエピソードに関する問診が必須であるため、同居のご家族がいる場合は問診を行います。また、他の睡眠障害との鑑別を行うために各種スクリーニング問診票を用いた評価も行うことが必要です。代表的なものには、RBD screening questionnaire日本語版(RBDSQ-J)やRBD日本語訳された questionnaire-Hong Kong (RBDQ-JP)などの問診票があり、家庭で行うことができる簡便な質問票も開発されています 。
また、睡眠中の状態を客観的に確認するために、睡眠ポリグラフ(PSG)という機器を用いて検査を行います。睡眠中の様子を動画で撮影しながら、睡眠ポリグラフ(PSG)でREM睡眠中の脳波・心電図・筋電図・呼吸・いびき等を測り、異常な行動が生じるかを調べて他の疾患等との鑑別をします。検査は各種機器を取り付けた状態で一晩寝ていただくため入院が必要となりますが、痛み等は全くない検査です。

レム睡眠行動障害の治療方法を教えてください。

レム睡眠行動障害と診断された場合は、これ以上の悪化を防ぐためにも、まずは睡眠環境や生活習慣の見直しなどを行います。軽症の場合は非薬物療法でも症状が軽減しますが、効果がない場合は抗てんかん薬などの薬物療法で症状を押さえる治療を行います。
また、頭部の炎症性疾患や神経変性疾患など、レム睡眠行動障害を引き起こす原因疾患がある場合は、そちらの治療も並行して進めることが必要です 。

レム睡眠行動障害は治療で完治しますか?

原因が不明であることも多く、原因も多岐に渡るため、レム睡眠行動障害の疾患自体は完治しない場合もありますが、ほとんどは薬物療法で症状が改善されることがわかっています。

レム睡眠行動障害の治療中の過ごし方や生活で気をつけることがあれば教えてください。

まずはご自身の生活習慣を見直してみてください。睡眠不足の状態が長く続いていないかを確認し、寝付く前にアルコールやカフェインを多く飲用する習慣がある場合は、それらを抑えることも効果的です。
また、症状が改善するまでは、ご本人やご家族の心身を守るためにも、ベッドサイドに危険なものを置かないことや、ご家族とは寝室やベッドを別にするなどの工夫も必要に応じて行うようにしてください。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

睡眠は様々な健康障害のリスク因子としても知られており、生活の質を保つためにも、とても重要で欠かすことのできないものです。
レム睡眠行動障害は症状を軽減することができる疾患です。もし、ご本人やご家族の中で心当たりがあり、困っている場合は、おひとりで悩まずに、まずは専門家にご相談をしてみてください。きっと解決の糸口がみつかるはずです。

編集部まとめ

ベッドで仲良く寝ている若い夫婦
レム睡眠行動障害は、50歳以降の男性に多く、年齢とともに発症のリスクが高まります。誰しも発症する可能性がありますが、症状を軽減できる病気でもあります。

病気の特性上、ご本人は気が付いていないことも多く、一緒に暮らしているご家族やパートナーが悩み、ストレスを抱えてしまうこともあるのです。

ご自身とともに一緒に暮らすパートナー・家族の身の安全を守り、良質な睡眠を得て快適な暮らしを保つためにも、気になる方は専門家にご相談をしてみてください。

この記事の監修医師