「ひざ痛」を予防する運動・生活習慣を整形外科医が解説 カギは太ももの筋肉!?
梅雨や台風の時期などは、膝の痛みに悩まされる方が多いようです。「どこも怪我していないのに、膝が痛い」という方は、どうしたら良いのでしょうか? 膝痛予防について整形外科医の矢吹 尚彦先生(矢吹整形外科院長)にMedical DOC編集部が話を聞きました。
監修医師:
矢吹 尚彦(矢吹整形外科)
目次 -INDEX-
膝の痛みはどうして起こるの? 「年のせい」にはせずに予防できるってホント?
編集部
大きな怪我や骨折でなくても整形外科にかかる方は多いのですか?
矢吹先生
そうですね。慢性的な痛みや、肩こりなどの不調で相談に来られる患者さんもたくさんいらっしゃいます。当院の傾向だと、男性は腰痛が多く、女性は膝の痛みに悩まされている方が多い印象です。
編集部
膝が痛いという方はとても多いと聞きます。膝痛はどうして起こるのでしょうか?
矢吹先生
明らかな外傷などを除くと、膝や腰の痛みは、長年の姿勢や体力の問題や体の使い方から生じていることが多いのです。つまり、体の使い方や姿勢に気をつけることで、腰痛、膝痛を感じにくくなることが期待できます。特に膝痛については、生活習慣との関係は大きいと考えています。無意識のうちに膝に負担のかかる体の使い方や動き方を続けていて、いつのまにか痛みを感じるようになってしまっているのでしょう。
編集部
普段の生活で、膝痛を予防することができるのですか?
矢吹先生
そうですね。「膝に負担がかからないようにする」ことが、膝痛予防のポイントだと思います。例えば、体重を少し減らした上で、歩くときや走るとき、立ち上がるとき、階段を上り下りするときなどに、上手に膝を曲げ伸ばしすることです。そうすることで、膝の関節や軟骨を傷めないようにすることが期待できます。
膝痛予防のための生活習慣や運動習慣を医師が徹底解説
編集部
「上手な膝を曲げ伸ばし」についてもう少し詳しく教えてください。
矢吹先生
確かにやや抽象的でわかりにくいかもしれませんね。ポイントは、X脚やO脚にならないようにすることです。つまり、外股や内股にならないように、膝を正面に向けて曲げ伸ばしをすることがとても大事です。
編集部
なるほど。それなら日頃から意識できそうです。
矢吹先生
ぜひ意識してみてください。ご自身の意識だけでは少し難しいという方は、膝サポーターなどを使ってみると良いでしょう。すでにX脚やO脚に変形してしまった状態をサポーターで矯正するのは難しいかもしれませんが、「動かし方のクセ」を和らげてくれる効果は期待できます。
編集部
運動にも予防効果はありますか?
矢吹先生
運動もとても大事です。特に膝痛予防に大事なのは、太腿(ふともも)の筋力です。筋力がなければ、軟骨に負担がかかるようになってしまいます。普段の生活の中で、意識して歩くだけでも良いのですが、理想としてはもう少し負荷をかけた運動、例えばスクワットや自転車などがおすすめです。
編集部
スクワットをするときのコツはありますか?
矢吹先生
繰り返しになりますが、X脚やO脚にならないように、真っ直ぐな状態で曲げ伸ばしすることです。また、完全にしゃがみ込むまで膝を曲げたり、スピードを早くしたりする必要はありません。お尻を20〜30cm落とすくらいでもよく、少し負荷をかけながら太腿の筋肉をしっかりと伸ばし、しっかりと縮めることを意識してください。
編集部
どのくらい行うと良いのでしょう?
矢吹先生
回数にこだわる必要はありません。それぞれの体力や持久力に合わせて、「少し心拍数が上がるけれど、笑顔で続けられる」くらいが理想的です。それを、週に2回以上行なっていただくと、2〜3ヶ月で効果が感じられると思います。
膝痛予防のトレーニングで気をつけることは? 雨や台風の日に痛みが増すのはどうして?
編集部
日によって、膝の調子の良い時と悪い時とがあります。
矢吹先生
梅雨や台風の時期などは、痛みが増す方も多いですね。雨が降ると低気圧の影響で自律神経のバランスが乱れることで、炎症性の成分が増えてしまい、痛みを感じやすくなります。低気圧になると体が変調をきたすのには理由があるのです。そういう時は無理をしないようにしてください。
編集部
ほかに、気をつけることなどありますか?
矢吹先生
運動の前と後に、たんぱく質やアミノ酸を積極的に摂ることと、1日に6時間半以上の睡眠時間を確保していただくことです。筋肉をつけるために必要となります。
編集部
それを続けていれば膝だけでなく、体全体が元気になりそうですね。
矢吹先生
おっしゃる通りです。筋肉が大きく、強くなると、糖や炭水化物を代謝しやすくなり、糖尿病や心臓・血管系の病気の予防にもなります。これだけやってもし結果や効果を実感できていないようでしたら、やり方が間違っているか、負荷をかけすぎている可能性がありますので、専門の方にトレーニングのやり方をチェックしてもらいましょう。正しいやり方をすれば、必ず何らかの効果を実感していただけると思います。
編集部
最後に、Medical DOC読者へのメッセージがあればお願いします。
矢吹先生
痛みの予防に大事なのは、トレーニングを始めて、効果が出るまで続けることです。初めのうちは面倒に感じることもあるかもしれませんが、2~3ヶ月続けて効果が実感できるようになると、トレーニングが好きになってくると思います。真面目な人ほど、負荷が強すぎるくらいに頑張ってしまう傾向がありますが、それは逆効果です。例えば運動経験がほとんどない人などは、いきなりスクワットではなく、まずは散歩などから始めてみるのも良いでしょう。
編集部まとめ
正しい方法、適切な負荷量で運動し、それを続けることで膝の痛みを予防することができるようです。頑張っても効果を感じられない方は、お近くの整形外科などに相談してみてはいかがでしょうか。
医院情報
所在地 | 〒235-0011 神奈川県横浜市磯子区丸山2丁目3-6 |
アクセス | JR根岸線「磯子駅」 バスで10分 |
診療科目 | 整形外科、リハビリテーション科、皮膚科 |