「MRI検査の費用はいくら」かご存じですか?発見できる病気についても医師が解説!

MRI検査の費用はいくら?Medical DOC監修医が健診の保険適応の有無や会社員・自営業・後期高齢者が受診した場合の相場などを解説します。

監修医師:
木村 香菜(医師)
目次 -INDEX-
MRI検査の費用はいくらかかるの?
MRI(Magnetic Resonance Imaging,磁気共鳴画像)検査は、放射線を使わずに体の様子を調べることができる画像検査です。今回の記事では、このMRI検査の費用はどれくらいなのか、またどのような病気がわかるのかについて解説します。
MRI検査の費用
MRI検査の費用は、検査する部位やMRIの機器の性能、また保険適用の場合には年齢によって変わります。また、造影剤を用いると料金は高くなります。造影剤の量は、体重によって異なり、また検査を受ける部位によってその種類が変わるので、料金も多少異なってきます。概算としては、以下のようになります。
項目 | 単純MRI | 造影MRI |
---|---|---|
自費 | 約20,000〜30,000円 | 約30,000〜50,000円 |
1割負担 | 約2,000〜3,000円 | 約3,000〜5,000円 |
3割負担 | 約6,000〜9,000円 | 約9,000〜15,000円 |
ここから、このMRI検査の費用について詳しくみていきます。
MRI検査の費用の目安・保険適用で3割負担になる?
医師が必要と判断した場合には、MRI検査は保険適用となります。例えば、何らかの症状がある場合やがんが疑われる場合、または人間ドックや健康診断の精密検査をする場合などが該当します。日本では、小学校入学後から69歳までは医療費の自己負担は3割になります。なお、小学生入学後でも自治体によって医療費の助成が行われている場合があります。
自営業など個人で受診したMRI検査の費用の目安・保険適用がないと自費?
自営業の方でも、健康診断の精密検査や症状がある場合に医療機関でMRI検査を受けると、保険が適用されます。日本では原則として誰もが公的医療保険に加入しており、自営業の方は主に国民健康保険に加入しているケースが多いです。そのため、医療費は保険によって自己負担額が異なります。
小学校入学後から69歳までは3割負担、70歳から74歳までは2割負担(現役並みの収入がある場合は3割負担)です。さらに、75歳以上は1割負担となります。
一方、保険適用外となるのは、ご自身で希望して受ける健康診断や人間ドックなどの場合です。この場合、費用は全額自己負担(10割負担)になりますが、地域の検診などを利用する場合には自治体からの補助が出ることもあります。
高齢者が受診したMRI検査の費用の目安・保険適用で1割負担になる?
75歳以上の高齢者の方は、公的医療保険制度により医療費の自己負担が1割となります。
症状がある場合や精密検査のMRI検査を受けた場合、医師が必要と判断したケースに相当するため、保険が適用されます。
MRI検査の目的と検査項目
ここでは、MRI検査の目的と検査項目について解説します。
MRI検査の目的
MRI検査は、腫瘍や血管の異常、脳や脊椎の損傷などを高精度で確認する目的で行われます。がんの診断や進行状況の把握、他の疾患の早期発見にも広く利用されています。
MRIは、強力な磁場と電波を利用して、体内の臓器や組織の詳細な断層画像を撮影する検査です。この検査は、放射線を使用しないため、身体への負担が比較的少ないことがメリットです。
MRI検査の検査項目
MRI検査では、以下のようなことがわかります。
1.全身MRI検査
全身をスキャンし、体内の広範な異常や病変を一度に確認できる検査です。
がんや血管病変、神経系の異常など全身の疾患リスクを早期に発見することを目的としています。
がんの転移や早期がんの発見、血管の異常(動脈瘤や血管の狭窄など)、その他、臓器や骨、筋肉の異常について調べることが可能です。
2. 頭部MRI検査
脳や脳血管の状態を詳しく調べます。
脳梗塞や脳出血の有無、脳腫瘍の発見、脳の萎縮による認知症リスクの評価、脳動脈瘤などの血管異常などが可能です。
3. 脊椎MRI検査
脊椎(頸椎、胸椎、腰椎)とその周辺の神経組織を調べます。
椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症、神経の圧迫状態や炎症、脊椎の腫瘍や感染症、加齢による脊椎の変性などがわかります。
4.胸部MRI検査
胸部の心臓や血管を主に確認します。
心臓の形や機能の異常、動脈や静脈の血流異常、血栓の有無、リンパ節の腫れなどを調べることが可能です。
5.腹部MRI検査
腹部の臓器(肝臓、膵臓、腎臓、胆のうなど)を調べます。
肝臓や腎臓の腫瘍、嚢胞(のうほう、袋のようなもの)、膵臓の炎症や腫瘍の有無、胆のう結石や胆管の狭窄(きょうさく、せまくなること)などを詳しく調べることができます。
また、腹部大動脈瘤などの血管病変も検出可能です。
6.骨盤MRI検査
骨盤内の臓器(前立腺、子宮、卵巣など)を検査します。
前立腺や子宮、卵巣の腫瘍、骨盤内の炎症や感染症、骨盤内のリンパ節の腫れ、子宮内膜症などの婦人科疾患を調べることができます。
7.骨・関節MRI検査
主に四肢や関節の軟部組織と骨の状態を確認します。
靱帯や軟骨の損傷、骨折や骨の腫瘍、関節炎や変形性関節症、筋肉や腱の損傷などを詳しく評価することが可能です。
全身MRI検査は、一度に多くの部位をスクリーニングできる利点があります。一方で、特定部位の精密診断にはそれぞれの部位に特化したMRI検査が適しています。
※全身MRI検査と主な部位別の検査項目をリストアップしてそれぞれでわかることを解説してください。
MRI検査とCT検査の違い
MRI検査は磁場とラジオ波で体内の詳細な断層画像を撮影し、主に脳や脊椎、筋肉などの軟部組織の評価に優れています。放射線を使わないため被曝がなく、撮影時間が長めです。
一方、CT検査はX線を使用して短時間で画像を取得する検査で、骨や肺、急性の出血などの診断に向いています。放射線を使うため被曝は避けられませんが、緊急で診断しなければならない場合にはとても効果的です。
このように、両者は得意分野や技術の違いで使い分けられています。
MRI検査でわかる病気・疾患は?
ここではMedical DOC監修医がmri検査でわかる病気・疾患について解説します。
※代表的な病気を記載してください。
脳卒中
脳卒中は、脳梗塞や脳出血、くも膜下出血を総称した、脳血管障害のことです。高血圧が主な原因となり、動脈硬化が進行した結果として起こります。脳の血管が破れる(脳出血)、血管が詰まる(脳梗塞)、また、動脈瘤ができて破裂するくも膜下出血があります。
脳卒中の治療法は、脳梗塞の場合には血栓溶解療法が主に用いられます。rt-PA(遺伝子組み替え組織型プラスミノーゲン・アクチベータ)を用いた経静脈的線溶療法や、カテーテルを用いた経動脈的血行再建療法が普及しています。脳出血の治療は、薬物療法で可能な限り血圧を下げることが基本となります。出血が大きくなったり、症状がどんどん進行してしまったりする場合には手術を行います。くも膜下出血の治療は、動脈瘤クリッピング術や脳動脈瘤コイル塞栓術の2つが代表的です。
頭部MRIは、脳卒中の超早期の診断に特に優れています。
脳卒中の典型的な症状は、突然のろれつ困難や手足のまひなどがあります。また、くも膜下出血の場合には、突然の激しい頭痛が典型的です。こうした症状がみられた場合には、早急に医療機関を受診しましょう。脳神経内科や脳神経外科の受診をお勧めします。場合によっては、救急車を呼ぶこともためらわないようにしましょう。
椎間板ヘルニア
背骨の骨と骨の間は、椎間板というクッションのような構造があります。椎間板ヘルニアは、この椎間板が外側にはみ出してしまうことで脊髄や神経根を圧迫し、さまざまな症状が現れる病気です。頸椎(首の骨)のヘルニアの症状には首や肩甲骨、腕の痛みなどがあります。また、腰の骨である腰椎のヘルニアでは腰やお尻の痛み、下肢のしびれや痛みなどがあります。
脊椎のMRIでは、椎間板の変性の度合いや、どれくらい脊髄や神経根を圧迫しているのかがよくわかります。脊髄が変性を起こしている場合には、その評価も可能です。
治療法としては、まずは消炎鎮痛薬などで痛みを和らげます。安静やコルセットの装着も行います。痛みがひどくなる場合には、神経ブロック療法も行われます。それでも症状が強くなる際には、手術療法が選択されることもあります。
手足や腰の痛み、しびれなどがある際には、まずは整形外科を受診するようにしましょう。
大腿骨頭壊死
大腿骨という太ももの太い骨には、股関節部分に骨頭(こっとう)という部分があります。大腿骨頭壊死は、大腿骨頭への血流が何らかの原因で低下し、凹みが生じ、股関節の機能が障害されてしまう病気のことです。
ステロイド治療やアルコールの多飲などが原因となっている場合もありますが、明らかな原因がわからない特発性(とくはつせい)もあります。
MRIのT1強調像という種類の撮像方法では、骨頭内帯状低信号域という黒っぽい線のようなものがみられるものが特徴的な所見です。
壊死部分が小さく体重がかからない部分にある場合には保存的な治療を行います。しかし、壊死部が大きい際には手術が行われることもあります。
股関節に痛みが続く場合、特にステロイド治療をしていたり、アルコール多飲歴があったりする方では大腿骨頭壊死のリスクが高いです。整形外科を受診しましょう。
肝臓がん
肝臓がんは、その多くは肝細胞ががん化した肝細胞がんです。肝細胞がんは、B型・C型ウイルス感染、アルコール性肝障害、非アルコール性脂肪肝などが関与しているといわれています。肝臓に慢性的な炎症が起こっていることや肝硬変が影響していると考えられています。肝細胞がんの画像診断においては、造影剤を用いたMRI検査が有効です。
肝細胞がんの治療は、もともとの肝機能やがんの進行度合いによって変わります。手術やラジオ波焼却療法、塞栓療法、肝動注化学療法、薬物療法、肝移植、緩和ケアのいずれかが選択されます。
肝臓のがんは、初期の段階では無症状のことも多いです。しかし、進行すると肝機能障害が進み、黄疸やむくみ、腹部の膨満感、違和感が現れることがあります。こうした症状が現れた場合には、早めに消化器内科を受診するようにしましょう。
子宮がん
何科へ受診すべきか子宮がんは、子宮の入り口である子宮頸部にできる子宮頸がんと、子宮の奥の部分である子宮体部にできる子宮体がんがあります。
子宮頸がんの発生には、ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染が関係していることがわかっています。一方、子宮体がんに関連している疾患として、子宮内膜増殖症という子宮内膜が正常よりも厚くなる状態があります。子宮内膜増殖症の中でも、特に子宮内膜の細胞に異型(いけい:正常と異なること)があると、子宮体がん一歩手前の状態といわれています。
MRIでは、子宮の内膜の状態や骨盤の中などのリンパ節の腫れなどを詳しく調べることができます。
治療方法は、がんの進み具合であるステージングや、患者さんの状態によって決定されます。手術や放射線治療、化学療法を単独あるいは組み合わせます。
子宮頸がんや子宮体がんは、早期では無症状のこともあります。子宮頸がんに関しては、30歳以上の女性は定期的に検診(HPV単独法)を受けることが推奨されています。一方、体がんに関しては、現時点では有効な検診は提唱されていません。不正出血がある場合や、月経が不規則になっている場合には、婦人科を受診するようにしましょう。
「MRI検査の費用」についてよくある質問
ここまで心電図検査の費用などを紹介しました。ここでは「MRI検査の費用」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
会社員のMRI検査は自費のオプションを付けなければ無料ですか?
木村 香菜 医師
会社の健康診断や特定の検診では基本的な項目が無料で受けられることが多いです。一方でMRI検査はオプションとして追加される場合が多いため、自費での負担が必要になることが一般的です。ただし、勤務先によっては検診内容が充実しているところもあるため、福利厚生や保険の範囲を確認してみましょう。
個人事業主のMRI検査の費用相場はどれくらいが一般的でしょうか?
木村 香菜 医師
個人事業主の場合、健康保険組合や企業のサポートがないため、一般的にMRI検査の費用は全額自己負担になります。費用は部位や医療機関によって異なりますが、1回のMRI検査はおおよそ2万円から5万円程度が相場です。自分の健康管理として、検診費用を計画的に積み立てることもおすすめです。
MRI検査費用を会社が負担する場合、1年に何回受診した方がいいですか?
木村 香菜 医師
はい、症状がなく健康チェックの目的で受けるMRI検査は保険適用外となり、自己負担が必要です。しかし、医師が必要と判断した場合や、病気が疑われる症状がある場合には保険が適用されることが多いです。目的によって保険の適用条件が異なるため、事前に医師に確認することが重要です。
MRI検査の費用が保険適用なしの自費・自己負担になるケースはありますか?
木村 香菜 医師
はい、症状がなく健康チェックの目的で受けるMRI検査は保険適用外となり、自己負担が必要です。しかし、医師が必要と判断した場合や、病気が疑われる症状がある場合には保険が適用されることが多いです。目的によって保険の適用条件が異なるため、事前に医師に確認することが重要です。
MRI検査と人間ドックの費用はどちらも保険適用になりますか?
木村 香菜 医師
基本的に人間ドックや健康診断の一環で行われるMRI検査は、保険適用外で自己負担になります。医療保険が適用されるのは、医師が必要と判断した場合のみに限られます。人間ドックでは、必要な検査を効率的に受けられますが、検査費用は通常、自己負担での支払いとなるため、検査内容と費用を事前に確認することをおすすめします。
まとめ MRI検査の費用はケースバイケース!
今回の記事では、MRI検査の費用やMRI検査でわかる病気について解説しました。
MRI検査の費用は、撮影する部位や造影剤の使用の有無、さらに保険適用かどうかで変わってきます。人間ドックや健康診断でMRI検査を受ける際には、自費となることが大半ですが、加入している保険や勤めている会社などの補助が出る場合もあります。何らかの症状が出ている場合は医療機関を受診しましょう。また、健康管理の一環として、定期的に受けることも検討してみてもよいでしょう。
「MRI検査」の異常で考えられる病気
「MRI検査」から医師が考えられる病気は13個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
整形外科系の病気
- 椎間板ヘルニア(頸椎、胸椎、腰椎)
- 大腿骨頭壊死
消化器系
- 肝臓がん
- 膵臓がん
- 膵嚢胞性疾患
MRI検査では、さまざまな病気がわかります。気になる症状がある方は、適切な診断と治療を受けるためにも医療機関での受診をおすすめします。