「メタボリックシンドロームの診断基準値」はご存知ですか?予防する食べ物も医解説!
メタボリックシンドロームの診断基準値はどれくらい?Medical DOC監修医がメタボリックシンドロームの診断基準値・予備軍と診断される基準値・基準値が高いと発症する病気・予防する食べ物や食生活・予防法などを解説します。
監修医師:
伊藤 陽子(医師)
目次 -INDEX-
メタボリックシンドロームとは?
メタボリックシンドロームとは、内臓脂肪型肥満と代謝異常があり、心血管疾患や脳血管疾患を発症する恐れのある病態です。
食べ過ぎや運動不足など生活習慣の乱れによって、消費しきれないエネルギーは中性脂肪となり体内に貯蔵され、腸や腹腔内の臓器に過剰に溜まると内臓脂肪型肥満となります。
内臓脂肪型肥満は、高血糖・高血圧・脂質異常症などの代謝異常が起こりやすくし、動脈硬化を進行させ、心血管疾患や脳血管疾患を発症するリスクが高まります。
令和元年の国民健康・栄養調査によると、男性は40歳代以降、女性は50歳代以降からメタボリックシンドロームが強く疑われる・予備軍と考えられる割合が増加し、男性・女性共に年齢が上がるにつれ増加傾向です。メタボリックシンドロームの割合は男性の方が女性よりも多いです。
メタボリックシンドロームの診断基準値
メタボリックシンドロームの診断基準は内臓脂肪蓄積・脂質代謝異常・血圧・糖代謝の数値で判断します。
内臓脂肪蓄積の項目は必須で、基準値は男女共に内臓脂肪の面積が100cm2です。内臓脂肪の面積はCTで測定できますが、健康診断などでは簡易マーカーとしてウエスト周囲長(へそ周りの長さ)を測定します。内臓脂肪蓄積に加え、糖代謝・血圧・脂質代謝の3項目のうち2項目が該当すればメタボリックシンドロームと診断されます。
糖代謝・血圧・脂質代謝の基準値
1)脂質代謝
中性脂肪(TG)値 ≧150mg/dL かつ/またはHDLコレステロール <40mg/dL
2)血圧
収縮期血圧 ≧130mmHg かつ/または拡張期血圧 ≧85mmHg
3)糖代謝
空腹時血糖値 ≧110mg/dL
男女別・メタボリックシンドロームの診断基準値
男女で基準値が異なるのは、ウエスト周囲長です。男性85cm以上、女性90cm以上です。女性は皮下脂肪が男性に比べて多いため、女性のウエスト周囲長の基準値は男性より大きく設定されています。
糖代謝・血圧・脂質代謝は男女共に同じ基準値になります。
メタボリックシンドロームの計算方法
メタボリックシンドロームは計算で算出された数値では診断しません。ウエスト周囲長と血糖・血圧・脂質の数値が診断基準です。メタボリックシンドロームを解消することで、動脈硬化の進行や心血管疾患の発症リスクを低減させることが期待できます。
メタボリックシンドロームは肥満症と混同されやすいですが、診断基準が異なります。
肥満症はBMI(体格指数)が25以上で、内臓脂肪蓄積型、糖代謝異常・高血圧・脂質代謝異常などの健康障害が1つ以上ある場合に診断されます。BMIは身長と体重を用いて計算して算出するため、皮下脂肪蓄積型か内臓脂肪蓄積型かの判別はできません。
BMIが25以下で標準体重の範囲でも、ウエスト周囲長と糖代謝・血圧・脂質代謝の2項目以上が基準値に該当する場合はメタボリックシンドロームと診断されます。
メタボリックシンドロームの予備軍と診断される基準値
メタボリックシンドロームの診断基準の必須項目である、ウエスト周囲長が男性85cm以上、女性90cm以上あり、糖代謝・血圧・脂質代謝の3項目の診断基準値のうち1項目が該当するとメタボリックシンドロームの予備軍と診断されます。
メタボリックシンドロームの基準値が高いとどんな病気を発症しやすい?
メタボリックシンドロームの基準値が高いと、糖尿病・高血圧・脂質異常症などの生活習慣病の発症や動脈硬化が進行しやすくなります。動脈硬化は心血管疾患・脳血管疾患などの発症リスクになります。
糖尿病
メタボリックシンドロームでは、内臓脂肪が過剰に蓄積することで、インスリンという血糖を下げるホルモンが作用不足になり、高血糖が持続し糖尿病を発症しやすくなります。メタボリックシンドロームの人では2型糖尿病の発症リスクが非メタボリックシンドロームの人と比較して3~7倍上昇します。
食事療法と運動療法が治療の基本です。内臓脂肪を減少させることで、糖代謝異常の改善がみられます。現体重からまずは3%の減量を目指します。
運動療法はウォーキングなどの有酸素運動がおすすめですが、運動の習慣がない場合、階段を使う・座位の時間を減らすなど、日常の生活の中で、活動量を増やすことを意識しましょう。食事療法と運動療法で十分な効果が得られない場合は薬物療法を併用します。
健康診断でメタボリックシンドロームや高血糖やHbA1cの高値を指摘されたり、体重減少・口渇・多尿・倦怠感・見えづらいなどの症状がある場合はすみやかに一般内科を受診しましょう。
高血圧
メタボリックシンドロームでは、内臓脂肪が過剰に蓄積することで、体内のホルモンバランスが乱れ、高血圧を発症しやすくなります。高血圧は動脈硬化を進行させる原因であり、心血管疾患・脳血管疾患発症の危険因子です。
メタボリックシンドロームや肥満の他に、食塩摂取過剰・過剰飲酒・喫煙などが発症の原因になります。 高血圧の診断基準は診察室での収縮期血圧が140mmHg以上、拡張期血圧が90mmHg以上です。
メタボリックシンドロームや肥満症を合併している場合は、現体重から3~5%の減量で降圧効果が期待できます。食塩制限・節酒・禁煙など生活習慣の改善が治療の基本です。
体重減少や生活改善をしても、降圧効果が不十分であったり、合併症がある場合では、必要に応じて薬物療法を検討します。
健康診断でメタボリックシンドロームや高血圧を指摘されたり、家庭での測定血圧が繰り返し基準値を越える状態が続くような場合は早めに一般内科を受診しましょう。
高TG(トリグリセライド)血症・低HDLコレステロール血症
高TG血症や低HDLコレステロール血症はメタボリックシンドロームや肥満との関連があります。エネルギー摂取と消費のバランスが乱れ、消費しきれなかったエネルギーは中性脂肪となり、体内に蓄えられ、腸管や腹腔内に過剰に中性脂肪が溜まると内臓脂肪型肥満となります。
高TG血症は空腹時のTG(中性脂肪)が150mg/dL以上、低HDLコレステロールはHDLコレステロールが40mg/dL未満が診断基準です。
メタボリックシンドロームでは、脂質の代謝異常を招き動脈硬化を進行させるため、心血管疾患・脳血管疾患発症の危険因子になります。
エネルギーや糖質の過剰摂取・肥満・過剰飲酒・運動不足などが主な原因です。
適正量のエネルギー摂取にして内臓脂肪の減少や肥満の解消をするなどの食事療法と運動療法が治療の基本です。内臓脂肪を減少させることで、脂質代謝異常の改善がみられます。現体重からまずは3%の減量を目指しましょう。
体重減少や生活改善を行っても改善しない場合は薬の併用も検討されます。
健康診断でメタボリックシンドロームや高TG血症や低HDL血症を指摘されたら早めに一般内科を受診しましょう。
メタボリックシンドロームの基準値が高い人が生活習慣で注意するべきこと
メタボリックシンドロームを改善するには内臓脂肪の減少が重要です。肥満の解消や現体重から1~3%の体重を減らすことで内臓脂肪が減少し、メタボリックシンドロームの改善が期待できます。
高齢者に多い隠れ肥満(サルコペニア肥満)は、筋肉量に比べて内臓脂肪が多くなっている状態です。エネルギー制限ではなく、食べる内容や食べ方を見直し、運動不足を解消しましょう。
内臓脂肪を減らしましょう
メタボリックシンドロームは内臓脂肪が過剰に体内に蓄積することで、動脈硬化の進行リスクになる代謝異常を招いた状態です。内臓脂肪や体重を減らすことで、糖代謝異常・高血圧・脂質代謝異常が改善されます。体重や内臓脂肪を減らすには食事と運動習慣を見直し生活習慣を改善しましょう。
内臓脂肪は皮下脂肪に比べて、つきやすく落ちやすい脂肪です。減量の目標は3~6ヶ月で、現在の体重から3%以上の減少です。
適正なエネルギー摂取量にしましょう
メタボリックシンドロームはエネルギー摂取量が消費量を上回り、過剰分が体内に蓄積した状態です。適正量のエネルギー摂取にすることで摂取エネルギーと消費エネルギーのバランスをとりましょう。満腹まで食べず腹八分目にすることや、ゆっくりとよく噛んで食べることは食べ過ぎの防止になります。
摂取エネルギーの適正量は、デスクワークなど座位が多い場合、25~30kcal×目標体重(kg)以下/日です。
目標体重が65kgの場合
25~30kcal×65(kg)=1日1625~1950kcal以下になります。
適正量は年齢や体格など個人により異なります。毎日体重測定をし、体重変化によって調整することをおすすめします。
極端なエネルギー制限は体重減少の効果は早く現れますが、継続が難しいこと、筋肉量の減少により基礎代謝が落ちやすくなるためおすすめできません。
消費エネルギーを増やしましょう
内臓脂肪の蓄積はエネルギーの摂取と消費のアンバランスが原因となります。運動や日常生活の中で活動量を増やし、消費エネルギーを増やしましょう。
厚生労働省で策定された「健康づくりのための身体活動・運動ガイドライン2023」では、
成人の場合
身体活動として
・1日60分以上(8000歩相当)の歩行または同程度の身体活動
運動として
・息が弾み汗をかく程度の運動を週60分以上
・筋力トレーニングを週2~3回行う
ことを推奨しています。
日常生活では座ったままの生活を避け、時々立ち上がったり、こまめに動くことが推奨されています。
高齢者のメタボリックシンドロームでは加齢によって筋肉量が減少し、基礎代謝や身体活動量の減少によって内臓脂肪が蓄積している場合が多いです。心血管疾患の発症だけでなく、転倒や骨折によって看護や介護が必要になるリスクも高くなります。高齢者では食事と運動習慣の改善を合わせて行い、筋肉量を維持することが重要です。
メタボリックシンドロームにならないための食べ物・食生活
メタボリックシンドロームにならないためには、内臓脂肪が蓄積されにくい食生活や運動習慣がポイントになります。過食にならないようにして、摂取エネルギーと消費エネルギーのバランスをとりましょう。色々な食材をバランスよく摂取することもおすすめです。たんぱく質・食物繊維・ビタミン・ミネラルなどは、筋肉量減少の予防やエネルギー代謝に関係します。十分な量を摂取しましょう。
魚を食べましょう
魚は良質なたんぱく質を多く含みます。たんぱく質は筋肉など体の組織を作る栄養素です。不足すると筋肉量が減少しやすくなり、基礎代謝が低下してしまいます。体内での利用効率がよい、肉・魚・卵・大豆製品などを毎食1品摂れば、たんばく質の必要量はほぼ充足されます。
魚の中でも特に青魚はn-3系脂肪酸を多く含み、中性脂肪を下げる作用や食後の中性脂肪の吸収抑制効果があるためおすすめです。摂りすぎはエネルギーの過剰摂取につながるため注意しましょう。切り身の魚なら1食に1切れ程度が適量です。
大豆製品を食べましょう
豆腐や納豆などの大豆製品はたんぱく質が多く、食物繊維やミネラル、ビタミンも含みます。大豆製品は肉や魚に比べて低エネルギーの食品です。肉類を大豆製品に置き換えると脂質やエネルギーを減少できます。
野菜を食べましょう
野菜に多く含まれている食物繊維は中性脂肪や血糖の上昇を抑制します。十分な食物繊維の摂取は体重減少に効果があります。目標量を満たすよう摂取しましょう。
日本人の食事摂取基準(2020年版)では、食物繊維摂取目標量は
18~64歳の男性21g以上、女性18g以上
65歳以上の男性20g以上、女性17g以上
とされています。
糖質・脂質・たんばく質の代謝に必要な栄養素である、ビタミンやミネラルも野菜には多く含まれています。
野菜を毎食食べるようにして、緑黄色野菜と淡色野菜を合わせて1日350g摂りましょう。
野菜類の中でも、じゃがいもやさつまいもなどの芋類やとうもろこしなどは、糖質が多く、エネルギーが比較的多いため摂取量に注意が必要です。
海藻を食べましょう
海藻は食物繊維・ビタミン・ミネラルを多く含む食品です。野菜と合わせて1日に350g摂取しましょう。市販のもずく酢や、めかぶは、簡単に摂取できる利点がありますが、食塩を多く含むものもあります。食塩過剰摂取にならないよう、栄養成分表示で食塩含有量を確認することをおすすめします。
きのこを食べましょう
きのこは食物繊維・ビタミン・ミネラルを多く含む食品です。低エネルギーであるため、食事の量が物足りない時のかさましにもおすすめです。野菜と合わせて1日に350g摂取しましょう。
メタボリックシンドロームの予防法
メタボリックシンドロームの予防は食生活や運動習慣を見直し、必要に応じて改善しましょう。肥満があれば減量をお勧めします。体重の減少は、内臓脂肪の減少や代謝異常の改善効果があります。
バランスよく食べましょう
麺類やパンのみの食事では、糖質や脂質が多く、たんぱく質やビタミン、ミネラルが不足しがちです。糖質や脂質が多い食事は高エネルギーのものが多く、中性脂肪を増やし、内臓脂肪が増加しやすくなります。
糖質・脂質・たんぱく質・ミネラル・ビタミンなどの栄養素をバランスよく摂取するには、定食のように主食(ごはんやパンやめん)・主菜(肉や魚や大豆製品や卵)・副菜(野菜や海藻やきのこ)をそろえた食事がおすすめです。
菓子やジュース類の取り過ぎに注意しましょう
菓子・アイス・ジュースやコーヒーなどの糖入り飲料は、摂取エネルギーが過剰になりやすく、内臓脂肪が蓄積されやすくなります。これらの食材を摂らないようにする・摂取量や回数を減らす・低エネルギーのものに替えるなどで摂取エネルギーを減らすことができます。
購入する時や食べる前にエネルギー量を確認することを習慣にしましょう。
夕食の食べ過ぎや夜食を控えましょう
寝ている間はエネルギーが消費されにくいため、夕食の食べ過ぎ・夜食は内蔵脂肪がつきやすくなり、体重増加の原因にもなります。
夕食のエネルギーは朝食・昼食より少なくなるように摂取すること、夕食後は果物・菓子・ジュース類など、エネルギーのあるものを摂取しないことがおすすめです。
ゆっくりよく噛んで食べましょう
食べ過ぎ防止や食後高血糖の予防のため、早食いせず、よく噛んで食べましょう。
満腹中枢が刺激されるには食事をしてから15~20分かかるため、早食いをすると食べ過ぎてしまい、エネルギー過剰摂取の原因になります。
早食いを予防するには、よく噛んで食べる・口に入れたものを飲み込んでから次の食べ物を入れる・一口の量を減らす・嚙みごたえのある食材を選ぶなどがおすすめです。
アルコールは適量にしましょう
アルコールは1gで7kcalあります。糖質やたんぱく質は1gで4kcal、脂質は1gで9kcalです。アルコールは高エネルギーの物質といえます。
缶ビール(アルコール5%)350mLで約140kcal、缶チューハイ(アルコール8%)350mLで約200kcalあります。
アルコール摂取時は同時につまみも摂取することが多いため、エネルギー過剰摂取になりやすく、内臓脂肪の蓄積や肥満の原因になります。
毎日飲酒する習慣があれば、飲酒量や回数を減らしたり、休肝日を作りましょう。
「メタボリックシンドロームの診断基準」についてよくある質問
ここまでメタボリックシンドロームの診断基準について紹介しました。ここでは「メタボリックシンドロームの診断基準」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
メタボリックシンドロームと診断されるBMI値はいくつからでしょうか?
伊藤 陽子(医師)
メタボリックシンドロームは内臓脂肪の蓄積と代謝異常が診断基準になっています。内臓脂肪の蓄積は腹部CTによる内臓脂肪面積の把握またはウエスト周囲長で判断します。
肥満症の診断で用いられるBMIは身長と体重から算出します。体重は皮下脂肪や内臓脂肪などの体脂肪と骨格筋などを含めた重さを測定しているため、BMIと内臓脂肪が必ずしも相関するわけではなく、メタボリックシンドロームの診断基準にBMIは用いられていません。
BMIが標準体重の範囲でもウエスト周囲長が基準値以上で代謝異常が2項目以上あればメタボリックシンドロームと診断されます。
編集部まとめ メタボリックシンドロームの診断基準は内臓脂肪蓄積型肥満!
食生活の乱れや運動不足により余分なエネルギーが体内に溜まり、内臓脂肪が過剰に蓄積されます。この状態によって糖や脂質の代謝異常や血圧高値などを引き起こされたものをメタボリックシンドロームと呼んでいます。内臓脂肪の過剰な蓄積はインスリン抵抗性などを生じ、動脈硬化の進行や心血管疾患・脳血管疾患発症の高リスクになります。
内臓脂肪はつきやすく落ちやすい脂肪です。食事や運動など生活習慣を改善し、内臓脂肪や体重を減らすことで、メタボリックシンドロームの解消や予防が期待できます。
「メタボリックシンドローム」の異常で考えられる病気
「メタボリックシンドローム」から医師が考えられる病気は10個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
循環器科の病気
- 心血管疾患
脳神経科の病気
- 脳血管疾患
腎臓科の病気
- 腎臓病
メタボリックシンドロームは放置すると動脈硬化を進行させ、様々な病気の発症リスクになります。健康診断などでメタボリックシンドロームを指摘されたら、早めに内科を受診し、生活習慣の改善をして病気の発症を予防しましょう。