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人の脳内から「マイクロプラスチック」初めて検出 人体が侵されることによる“健康被害”とは

 公開日:2024/10/02

ブラジルのサンパウロ大学らの研究グループは、「ヒトの脳内で嗅覚を司る嗅球からマイクロプラスチックが検出された」という研究結果を発表しました。この内容について勝木医師に伺いました。

勝木 将人

監修医師
勝木 将人(医師)

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2016年東北大学卒業 / 現在は諏訪日赤に脳外科医、頭痛外来で勤務。 / 専門は頭痛、データサイエンス、AI.

研究グループが発表した内容とは?

ブラジルのサンパウロ大学らの研究グループが発表した内容を教えてください。

勝木 将人先生勝木先生

今回発表された研究は、ブラジルのサンパウロ大学らの研究グループが発表したもので、研究結果は学術誌「JAMA Network Open」に掲載されています。

マイクロプラスチックは、ヒトの様々な組織で検出されているものの、脳内での存在は記録されていませんでした。研究グループは、潜在的な神経毒性効果とマイクロプラスチックが脳組織に到達するメカニズムについて明らかにする必要を示し、ヒトの嗅球におけるマイクロプラスチックの存在を調べました。研究の対象となったのは、ブラジルのサンパウロに5年以上居住し、監察医による検死を受けた15人の成人です。

研究の結果、死亡した15人の年齢中央値は69.5歳で、男性が12人、女性が3人、そして15人中8人の嗅球からマイクロプラスチックが検出されました。また、合計16個のプラスチックの粒子と繊維が確認され、そのうち75%が粒子で、25%が繊維でした。最も多く検出されたプラスチックは「ポリプロピレン」で全体の43.8%でした。ポリプロピレン以外には、ポリアミド、ナイロン、エチレン酢酸ビニルも見つかったとのことです。

今回得られた結果について、研究グループは「本研究は、マイクロプラスチックが人間の嗅球に存在している証拠を提供しており、マイクロプラスチックが脳に移動する潜在的な経路を示唆しています。この発見は、マイクロプラスチックへの曝露が健康に及ぼす影響、特に神経毒性とマイクロプラスチックが血液脳関門を回避する可能性に関するさらなる研究の必要性を強調している」と考察しています。

マイクロプラスチックの研究は?

今回の研究では、マイクロプラスチックがテーマになっていますが、マイクロプラスチックが健康に及ぼす影響については、ほかにはどのような研究があるでしょうか?

勝木 将人先生勝木先生

マイクロプラスチックに関する研究は世界中でおこなわれており、人体への影響は大いに注目されています。

例えば、イタリアのカンパニア大学ルイジヴァンヴィテッリらの研究グループは、体内に侵入する化学物質を含んだ小さなプラスチック片が心臓の健康にどう影響するのかを調べています。この研究は、257人の患者に対して術後3年近く追跡がおこなわれ、58.4%にあたる150人の患者の頸動脈プラークからポリエチレンが検出されました。電子顕微鏡検査では、プラークのマクロファージ中に、目に見えるギザギザのエッジをもった異物が存在していることも確認されました。頸動脈プラークにマイクロプラスチックが確認された人は、そうでなかった人と比べて、心臓発作や脳卒中の発症、何らかの原因での死亡が約4倍多いという結果が示されました。

この研究成果は学術誌「The New England Journal of Medicine」に掲載されているので、興味があれば一読するのも面白いと思います。

研究グループが発表した内容への受け止めは?

ブラジルのサンパウロ大学らの研究グループが発表した内容への受け止めを教えてください。

勝木 将人先生勝木先生

マイクロプラスチックによる環境汚染は、健康に関する新たな懸念事項となっています。

これまでも肺や腸などの臓器でマイクロプラスチックが検出されていましたが、脳で発見されたのは初めてです。脳には、血液中の物質が簡単には届かない「血液脳関門」というバリアがあるのですが、それを超えてマイクロプラスチックが脳に届いているというのは驚きです。もしくは、鼻から直接神経に入り込んだ可能性もあります。マイクロプラスチックによる脳の健康への直接的な影響は現時点で不明ですが、マイクロプラスチックによる環境汚染が様々な臓器に影響を与え得ることを示唆する報告です。

今後もマイクロプラスチックに関する研究やどのような病気が起き得るのか報告が期待されます。

まとめ

ブラジルのサンパウロ大学らの研究グループは、「ヒトの脳内で嗅覚を司る嗅球からマイクロプラスチックが検出された」という研究結果を発表しました。環境だけではなく人体へも影響を及ぼすことが示され始めているマイクロプラスチックが脳内から見つかったことは、大きな注目を集めそうです。

この記事の監修医師