「婦人科検診」は何を持参した方が良い?検査内容や分かる病気、注意点を医師が解説!

婦人科検診とは?検査内容の詳細や分かる病気、注意事項を医師が徹底解説

監修医師:
木村 香菜(医師)
目次 -INDEX-
婦人科検診とは
婦人科検診は女性の健康を維持するために定期的に行うべき検査です。
婦人科検診は、女性の健康を損ない、命を奪うこともある子宮頸がんや乳がんなどの早期発見に繋がる、大事なものです。早期発見、早期治療で命を救い、治療後の生活を維持することができます。
検診のため検査費用はそれなりに必要ですが、自治体から補助金が出るので、安価に受けることができます。会社によりますが、勤務先の補助で安価に受けることもできます。子宮頸がん検査や乳がん検査を中心に、年齢に応じた検診を行いましょう。
とはいえ、婦人科検診は痛いのか、恥ずかしくないのか心配があるかもしれません。婦人科検診の内容やわかること、検診の頻度などを紹介します。
婦人科検診を受けるべき時期
子宮頸がん検診、乳がん検診は最低限、2年に一回は行いましょう。厚生労働省は、子宮頸がん検診は20歳以上の方、乳がん検診は40歳以上の方に対して、2年に一回の頻度で検診を受けることを推奨しています。
婦人科検診の検査内容
婦人科検診は、一般的には乳がん検診、子宮頸がん検診など、女性特有のがん検診を指すことが多いと考えられます。
乳視触診
乳視触診は、視診と触診で行う検査法です。特別な機材がなくても行うことができます。
乳房やわきの下にしこり、腫れ、乳首から分泌物がないかを目視、触診で確認し、乳がんや乳腺症、繊維腺腫などの疾患を見つけます。
厚生労働省の見解では、乳視触診は乳がんの早期発見には推奨しないという見解を示しています。そのため乳視触診を行う場合でも、エコー検査やマンモグラフィと併用することがほとんどです。
マンモグラフィ(乳房X線撮影検査)
乳房を2枚の板で挟み込み、圧迫して薄くしながらX線を照射します。
平たくすることで乳腺組織の詳細な画像が撮影できます。そして、超音波検査では見つかりにくい、ごく小さな腫瘤や石灰化などの異常を見つけやすくします。
特に乳腺が少ない40歳以上の女性や、乳がんリスクの高い方に推奨される検査です。痛みや息苦しさはありますが、挟むときにゆっくり息を吐くように意識すると、少しは痛みが和らぎます。
胸が張りやすい月経直前を避けた方が、痛みは少なくなるでしょう。
乳腺エコー検査(乳腺超音波検査)
乳房の内部に超音波を当て、病変を調べる検査です。超音波は安全で無害なため、妊娠中でも安心して受けられます。専用の超音波プローブ(探触子;たんしょくし)を乳房の表面に当て、内部の画像を確認します。
乳腺エコー検査は若い世代の女性に有効です。若い女性は乳腺が密で、従来のマンモグラフィでは映りにくいためです。超音波は乳腺に邪魔されないため、比較的病変が見つけやすくなります。
痛みはマンモグラフィに比べて軽いですが、乳房にプローブを強く押し付けながら転がすため、痛みはゼロではありません。
子宮体がん検査(子宮体部細胞診、経膣エコー検査)
子宮体がんは、経腟エコー検査で見つけることができます。
子宮体がんの疑いがあれば、まずは子宮体部細胞診を行います。膣から子宮に小さな細いブラシを入れ、がん病変が疑われる場所をこすり、細胞を採取する方法です。顕微鏡で観察することで子宮体がんの診断を行います。
子宮頸がん検査(子宮頸部細胞診、HPV検査)
子宮頸がん検査は、子宮頸部細胞診、またはHPV検査で行います。HPV検査単独法は近年実施が始まった検診です。市町村の判断によって、子宮頸部細胞診もしくはこのHPB検査単独法のいずれかを、30歳以上の女性に対して5年に一度行います。
子宮頸部細胞診は、子宮頸部を柔らかいブラシでこすって細胞を採取し、顕微鏡でがん細胞、がんの前段階の細胞を目視で検査します。
HPV検査も子宮頸部細胞診と同じ方法で細胞を採取しますが、検査する対象は子宮頸がんの主な原因になるヒトパピローマウイルス(HPV)感染です。これらの検査は、定期的に行うことで子宮頸がんの早期発見につながります。
経膣エコー検査(経膣超音波検査)
経膣超音波プローブという器具を使い、子宮や卵巣の状態を観察する検査です。プローブを膣内に挿入し、超音波で画像を作成します。
経腟エコーで見つかる疾患は多く、子宮筋腫、卵巣嚢腫、子宮体がん、子宮内膜の厚さや異常などを診断できます。痛みは少なく、放射線被曝の心配もありませんが、内診台に乗って診断を受けるのに抵抗があるかもしれません。
経膣エコー検査の後には少量の出血があることがありますが、自然に治ることが大半です。
婦人科検診でわかること・病気
婦人科検診では、子宮頸がんや子宮体がん、卵巣がん、子宮筋腫、卵巣嚢腫などの病気を見つけるために行います。定期的に受けることで、早期発見と早期治療ができる可能性を上げ、健康維持に役立ちます。必ず定期的に検診を行い、早期発見に繋げましょう。
自覚症状がある時は、早急に婦人科を受診してください。
子宮頸がん
膣と子宮をつなぐ、子宮頸管に発生するがんです。
子宮頸がんは、ヒトパピローマウイルス(HPV)との関連が強く疑われるがんです。HPVが子宮頸部に長期感染を起こし、徐々にがん化します。
HPVは多くの人が持つありふれたウイルスで、性交渉がある場合には50%以上の方が生涯に一度は感染するといわれています。
感染しても多くの女性は2年以内に排除できますが、一部は長期間感染が続き、がん化します。
特に子宮頸がんは働き盛りの20代や30代、40代の女性が発症しやすく、年間11,000人の方が発症し、2,900人程度の方が亡くなっています(2021年)。中学生までに子宮頸がんワクチンを接種すれば、子宮頸がんリスクを大幅に下げることができます。
初期症状はほとんど自覚できませんが、進行すると不正出血、性交痛、下腹部痛、腰痛、血尿などが起こります。これらの症状が続くときは、ただちに婦人科を受診しましょう。
子宮体がん
50代以降の閉経後の女性に発症リスクが高いがんで、子宮内膜ががん化した疾患です。
自覚症状で一番多いのは出血で、月経周期以外の時期や閉経後に出血があれば、子宮体がんの可能性があります。進行すると腰痛、下肢のむくみを併発することがあります。
肥満、糖尿病、高血圧など基礎疾患がある方、未婚、出産経験がない方、ホルモン補充治療を行う方はリスクが高いため、注意が必要です。
乳がん
乳がんは、乳房の乳腺に発生するがんです。女性特有のがんと思われがちですが、ごく少数ですが男性患者さんもいます。乳房、わきの下のしこり、乳頭からの分泌物が出る、乳房がゆがみ、皮膚の異常などが現れます。
女性ホルモンのエストロゲンに長期間さらされると、乳がんの発症リスクが上がります。加齢、初潮が早い、閉経が遅い、初産年齢が高い、ホルモン療法などがリスク要因です。肥満、糖尿病など基礎疾患もリスクを上げると考えられています。定期検診を受け、早期発見に繋げましょう。
子宮筋腫
子宮筋腫は、子宮の筋層に発生する良性の腫瘍です。比較的ありふれた疾患で、良性腫瘍のため、突然大きくならない限りは命の危機はありません。しかし月経量が多すぎる(過多月経)、不正出血、月経痛、下腹部の圧迫感や痛み、貧血、不妊など、QOLを低下させる厄介な疾患です。無症状の方が多く、検診で初めて見つかることがあります。
検診では経膣エコー検査で発見されます。MRIなどで筋腫の位置や大きさを把握し、治療方法を決めます。子宮筋腫が見つかったら、必ず定期的に検診を行ってください。
子宮内膜症
子宮内膜症は、子宮内膜の組織が子宮外の場所で増殖してしまう病気です。子宮の裏側にある腹膜(ダグラス窩)や卵巣、子宮の表面や筋肉の壁の内部などに発生します。卵巣に子宮内膜があると卵巣内に血が溜まり、チョコレート色の古い血で満たされます(卵巣チョコレート嚢胞)。放置すると排卵に深刻な影響を与えます。
月経周期に合わせ、子宮内膜症の組織も肥大し、出血します。そのため激しい腹痛や月経痛、不妊症などの症状が現れます。不妊症の主な原因の一つで、症状を緩和しながら妊娠しやすくする治療を行います。
経腟エコーやMRIで症状を把握できますが、確定するには腹腔鏡検査で組織を取り出し、顕微鏡で観察することが必要です。子宮内膜症は閉経するまで症状が続くため、緩和治療を行いながら長く付き合うことになります。
卵巣腫瘍
卵巣腫瘍は卵巣に発生する腫瘍で、良性と悪性、中間(境界悪性腫瘍)があります。腫瘍のうち約90%は良性ですが、約10%が悪性とされています。
良性腫瘍は大きくならない限りは無害で、大きくなっても手術で取り除くことができます。悪性腫瘍は卵巣がんとして知られ、進行すると他の臓器に転移することがあります。
経腟エコーで発見されることが多く、MRIやCTなど画像診断で良性、悪性を把握します。
太っていないのにウエストだけ太くなった、下腹部痛があるなどの自覚症状が出ることもありますが、無症状のことが多いのが特徴です。婦人科検診などで卵巣に腫瘍が見つかったら、必ず精密検査を受けましょう。
婦人科検診の頻度は1年に1度を推奨
厚生労働省は子宮頸がん検診の頻度を2年に1度と指定していますが、これは必要最低限の頻度です。
病気の早期発見のために、できるだけ1年に1度、決まった時期の検診をおすすめします。
婦人科検診の費用の相場
補助金の有無で費用は大きく変わります。補助金がある場合は自治体により異なりますが、500~2,000円弱で受けられます。助成のお知らせが来たら、必ず受けましょう。
定期健診の一環で受ける「任意型検診」は実費です。乳がん検診、子宮頸がん検診、超音波検診は数千円から10,000円ほど負担します。
勤務先が指定した医療機関で検診を受けると、会社の保険組合から一部補助が受けられることがあります。詳細は総務課か、保険組合にお問い合わせください。
婦人科検診を受けるにあたっての注意事項
婦人科検診では、守ることがいくつかあります。もし守れないと検診当日に断られる可能性があります。前日は十分な睡眠を取り、できるだけ体調を整えましょう。
生理時の検診は控える
子宮頸がん検診は、月経中は受けることができないことがあります。
月経中でも子宮頸がん検診を受けることができますが、誤診のおそれがあるため断られることがあります。事前に必ず窓口でご確認下さい。
月経中に子宮頸がん検診を受ける場合は、洗浄はしてはいけません。
膣洗浄をすると、細胞が洗い流されることがあり、検査が正しくできない可能性があるからです。
受診前日の性交渉は控える
不正出血と誤診されるおそれがあるので、前日の性交渉は控えましょう。早めに就寝して明日に備えましょう。
ナプキンを持参する
医療機関でナプキンを用意していることが大半ですが、使い慣れたナプキンを使用したい場合には念の為数枚持参した方が安心でしょう。
子宮頸がん検診の後は出血することもあるため、下着が汚れるのが気になるのであれば検査当日はナプキンを付けて、なるべく無理せずに過ごしましょう。
「婦人科検診」についてよくある質問
ここまで婦人科検診について紹介しました。ここでは「婦人科検診」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
婦人科検診に補助金は出るのでしょうか?
木村 香菜 医師
多くの自治体では乳がん検診(40歳以上)、子宮頸がん検診(20・25・30・35・40歳)の補助金が出ます。自治体の提携医療機関や保健所で検診を受けると補助金額を差し引いた料金になりますが、その他の医療機関で受けた時は、後ほど書類を提出して補助金を請求します。また、加入している保険組合からも婦人検診に対して補助金が出ることもあります。自治体や保険組合により補助金が支給される年齢や期間、金額が変わるため、詳しくはHPなどでご確認下さい。
診察や手術前に陰部の毛の処理は必要でしょうか?
木村 香菜 医師
診察や手術の前に隠部の毛の処理は必要ありません。陰毛があっても婦人科検診に支障はないので、処理せずに検診を受けて下さい。抜け毛などの心配は不要です。また、婦人科系の手術を受ける場合でも、術前に剃毛(ていもう)といって、看護師など医療スタッフが処理をしてくれます。かえって自己流の毛の処理をすると皮膚が荒れるリスクがあります。
まとめ 20歳以上の女性は、定期的に婦人科検診を!
20歳になったら、定期的に婦人科検診を行いましょう。20歳以上の女性は子宮頸がんリスクが非常に高いのが特徴です。必ず2年に一度、できるだけ1年に一度は子宮頸がん検診を行いましょう。HPVワクチンを接種すると子宮頸がんリスクを大幅に減らせます。しかしHPVウイルス以外のリスクは防げないため、定期的な検診は必要です。40歳以上になると、乳がんリスクが上がります。40歳以上の方はマンモグラフィなど、精度が高い検診をおすすめします。さらに高齢になると子宮体がんの発症率が上がります。どちらも早期発見、早期治療で命が助かり、妊孕性(にんようせい;妊娠する能力)やQOLを保つことができます。
「婦人科検診」に関連する病気や症状
「婦人科検診」から医師が考えられる病気は7個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
参考文献