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「女性化乳房」とは?症状・原因・治療法についても解説!

 更新日:2023/03/27
「女性化乳房」とは?症状・原因・治療法についても解説!

乳房の発育は女性ホルモンが影響しているものですが、男性でもみられる場合があります。この症状は「女性化乳房症」と呼ばれており、なかなか人にはいいづらくて密かに悩んでいる人も多い病気です。そのためどの程度、発症率するものなのか明確にわかっていない症状でもあります。
今回は、女性化乳房症の状態・症状や原因、受診科目などを紹介します。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

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大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

女性化乳房症とは

女性化乳房症とはどのような状態でしょうか?

女性化乳房症とは、わかりやすくいうと男性でも女性のように乳房が大きくなることです。これは乳腺の増殖によるもので、「後天的」なものと「遺伝的」なものに分けられます。男性の胸が膨らむ、というデリケートな部分の症状のため人にはいいづらく、悩んでいてもほとんどの患者が適切な診断や治療を受けられていないと考えられています。

そして、この症状はホルモンバランスが関係するものなので年齢に伴うことが多く、さらに一時的であることが多いのが特徴です。身体の変化だけでなく、精神的苦痛も女性化乳房症の症状のひとつだといわれています。

女性化乳房症という名前なので男性だけのものと思われがちですが、実は女性でもなる病気でもあります。女性の場合は不妊にもつながることがあるため、妊娠を希望する人はとくに気を付けておきましょう。

女性化乳房症の症状は

女性化乳房症はどのような症状が現れますか?

男性の女性化乳房症は、名前の通り男性なのに女性のように乳房が発育し、ふっくらと変化する症状が現れます。症状がみられるのは両方の乳房の場合もありますが、片方だけの場合もあります。
男性では外見に対する精神的な苦痛をともなうだけでなく、女性ホルモンの影響であるために、低身長や精巣機能などの症状も引き起こすことがあります。さらに合併症として、性欲の低下もあげられます。

では、女性の場合はどのような症状が現れるでしょうか?

女性では、巨大乳房、低身長、不正性器出血などが症状として現れます。そして、女性の合併症としては、高エストロゲン血症となるために、乳癌や子宮体癌だけでなく、不妊症になることもあります。乳癌のしこりの可能性もあるため、女性の場合はとくに注意しておきましょう。

女性化乳房の原因

女性化乳房の原因にはどのようなことが関係しているのでしょうか?

女性化乳房症の原因ですが、乳腺組織でのエストロゲンとアンドロゲンのバランスが崩れることによって引き起こされます。女性ホルモンであるエストロゲンの比率が高くなることによって発症するのです。そして、女性化乳房症には、後天性のものと先天性のものがあります。

後天性のもの

後天性の女性化乳房の原因はなんでしょうか?

後天性の女性化乳房症は肝疾患・甲状腺中毒症・肝硬変など、肝臓機能が落ちている場合に起こりやすいとされています。これは、肝臓で分解・不活されるはずの女性ホルモンが、肝臓機能の低下によって分解・不活されずそのまま留まることになるからです。

そのため、本来の女性ホルモンの比率よりもかなり高い割合で女性ホルモンがある状態になってしまいます。もともと男性にも女性ホルモンは存在するので、男性・女性に関わらず発症するのです。
また、薬剤服用の副作用でも起こる場合があります。利尿剤や降圧剤、胃潰瘍の薬を服用することで、肝臓の動きがにぶくなりホルモンバランスが崩れ発症すると報告されています。
そして一番多い原因は年齢によるものです。

15歳頃の思春期や60歳以上の高齢期では男性ホルモンの割合が急速に高まるのですが、変化が急なのでバランスが崩れやすく、結果女性ホルモンが多くなることもあるのです。そういうことからも、この時期の発症が多くみられる要因になっています。

先天性のもの

では、先天性の女性化乳房の原因はなんでしょうか?

先天性の女性化乳房症では、小児期より発症するものもあります。それは、遺伝性のもので、もともとの身体がもっている染色体が異常をきたしているのが原因と推定される症例が報告されています。

報告では染色体のなんらかの変化によって、エストロゲン過剰を引き起こし、結果的に女性化乳房症になるとされます。その場合、低身長など身体の変化も同時に起こりやすくなっています。

遺伝性のものはまだ研究が進んでいませんが、エストロゲンが持続的に高値となるために、さまざまな症状の原因になることがわかっています。どの原因でも女性化乳房症はホルモンのバランスの崩れによって引き起こされるものです。

女性化乳房の受診科目

女性化乳房のような症状が現れたら何科を受診すればいいでしょうか?

乳腺外来のある病院を受診しましょう。男性の場合、少し相談しづらい症状ではあるのですが、専門医に診てもらうことが大切です。乳がん検診を行っている病院でも受診できます。まずは一度医師に相談してみましょう。

どんな検査を行うか

どんな検査を行うか

女性化乳房ではどのような検査を行いますか?

検査の主流は超音波検査やマンモグラフィーです。症状のあるところを中心にみていきます。乳癌との鑑別が必要な場合は、判断するにあたって細胞診や針生検などを行います。

女性化乳房の治療法は?

女性化乳房の治療法はあるのでしょうか?

発症が疑われたら、すぐに治療するわけではありません。通常は一時的である場合が多いため経過観察をします。

様子をみていてもなくならない、もしくはさらに肥大してきて精神的苦痛を伴う、というときは手術で乳腺組織を除去する方法もあります。20分〜30分ほどの簡単な手術ですが、乳輪に沿って1/3〜1/2周ほど切開をして乳化組織を取り除きます。これによってもう二度と症状がでなくなるのです。

女性化乳房の原因として薬物の副作用が疑われる場合は、一時的に原因となる休薬や減薬をして様子をみます。徐々に身体が元の状態にもどれば、薬物の副作用だったというのがわかります。ですが、どうしても様子をみるうえで疼痛が強いときは、痛み止めを服用しながら経過を観察します。女性の乳腺症用の薬を使うこともあります。

女性化乳房の性差・年齢差など

女性化乳房の性差・年齢差など

女性化乳房には性別差や年齢差などはあるのでしょうか?

ホルモンバランスの変化によるものなので、15歳前後の思春期や60歳からの高齢期のホルモンバランスが崩れやすい時期の男性に起こります。遺伝性では小児期より発症する場合もあるので年齢差はありません。高齢の方になると、男性乳がんとの鑑別が重要にもなってきます。
そして、女性でも発症することがあります。そのため性差もないといえるでしょう。

編集部まとめ

女性化乳房は男性だと胸が膨らむなど、誰にも相談できないような精神的にも辛い症状です。ホルモンバランスの崩れによるものなので一時的な場合もありますが、長期的に続いて合併症がでたりすることもあるので、気になったら早めの受診をおすすめします。
成長の過程や年齢によるものでしたら、経過観察する中で治まることもありますが、中には遺伝が原因の場合もあるので、しっかり調べることが大切です。女性でも起こる症状のため、あてはまる症状がみられたら乳腺外来のある病院で相談してください。

この記事の監修医師