「ヘモグロビンを増やす食べ物」はご存知ですか?避けた方が良いものも医師が解説!
ヘモグロビンを増やす食べ物とは?Medical DOC監修医が貧血予防や鉄分不足解消におすすめのレシピやポイント、気をつけたい病気等を解説します。
監修医師:
伊藤 陽子(医師)
目次 -INDEX-
鉄とたんぱく質から成る血液中のヘモグロビンとは?(Hb/血色素量)
ヘモグロビンとは血液を構成する成分の一つである、赤血球の中にあるたんぱく質です。鉄を含むヘムという赤色素とグロビンというたんぱく質からできています。血液が赤く見えるのはヘモグロビンの影響です。ヘモグロビン量は血色素量とも呼ばれます。
ヘモグロビンの働きは酸素を運搬し、二酸化炭素を回収することです。肺で酸素と結合し、全身に酸素を運び、不要な二酸化炭素を回収し肺に戻ります。
ヘモグロビンを作るには鉄とたんぱく質が不可欠です。体内の鉄が不足し、ヘモグロビンが作られなくなると赤血球も作られなくなり、全身に酸素が送られにくくなります。体内の鉄は多くが体の中で再利用されていますが、生理的代謝(汗や尿や便)で損失するため、食事からも補わないと体内の鉄が不足します。
ヘモグロビンの正常値は成人男性で13.1~16.3g/dL、成人女性で12.1~14.5g/dLです。この値より低い場合を貧血といいます。貧血の最も多い原因は鉄欠乏性貧血であり、若い女性でよくみられます。
血液中のヘモグロビンを増やす食べ物とは?
血液中のヘモグロビンを増やす食べ物は、鉄やたんぱく質(ヘモグロビンの材料)・ビタミンCや動物性たんぱく質(鉄の吸収を助ける)・葉酸やビタミンB12(造血作用)・酸味の強い食品や香辛料(胃酸の分泌を促し鉄の吸収を高める)を摂取することがおすすめです。摂取した鉄を効率よく吸収するために、鉄の吸収を阻害する食品を避けましょう。
●積極的に食べた方が良いもの
食品に含まれる鉄は、肉や魚に含まれるヘム鉄(吸収率10~30%)と野菜類に含まれる非ヘム鉄(吸収率1~8%)です。ヘム鉄は二価鉄、非ヘム鉄は三価鉄とも呼ばれます。
動物性たんぱく質に含まれるアミノ酸は、三価の鉄を二価に変え吸収を高める効果があり、ビタミンCやクエン酸は、非ヘム鉄を二価に変えて鉄の吸収を助けます。胃酸を分泌させ鉄の吸収を高めてくれる、柑橘類など酸味の強い食品や香辛料も取り入れましょう。
無理なダイエットや偏食は栄養素の不足を招きます。食べ方のポイントは、1日3食、主食・主菜・副菜をそろえて栄養のバランスがよくなるように摂取することです。たんぱく質は1回に吸収される量は決まっていて、余分なものは排泄されます。主菜になる肉・魚・卵・大豆製品を毎食摂ることがおすすめです。また、副菜は野菜・きのこ・海藻・乳製品を摂ることで鉄分や造血作用のある栄養素(ビタミンB2、B6、B12、銅、葉酸)が補給できます。
チョコレートには造血作用のある栄養素である鉄分や銅が含まれます。また、ナッツはビタミンB2や銅・果物は葉酸を含むため、間食におすすめです。しかし、食べ過ぎは肥満の原因になるので注意が必要です。
●食べ方の注意点、工夫
胃酸の分泌は鉄の吸収をよくするので、ゆっくりよく噛んで食べましょう。
鉄製の調理器具の使用もおすすめです。鉄瓶で沸かしたお湯には鉄分が溶けだしますが、ステンレスや電気ポットからは鉄分が抽出できません。
●避けた方が良いもの
鉄の吸収を阻害するタンニンは緑茶・烏龍茶・紅茶・コーヒーに多く含まれます。食事中や食直後は控えるようにしましょう。
また、加工品に多く含まれるリン酸塩も鉄の吸収を阻害します。ハムやソーセージ、清涼飲料水、スナック菓子などの摂りすぎに注意しましょう。
食品は薬ではないので、摂取してすぐに効果は現れず、即効性を感じるのは難しいですが、毎日続けていればヘモグロビンを増やす効果があります。さらに、食べた方が良い食品について次に詳しく解説します。
魚介類
魚介類は動物性たんぱく質が豊富です。動物性たんぱく質は鉄の還元作用のあるアミノ酸を含み、三価の鉄を二価に変え、吸収をよくする働きがあります。たんぱく質は赤血球の材料になります。
かつお・まぐろ・ぶりやあさり・かきなどは鉄が豊富です。魚に含まれる鉄はヘム鉄なので吸収されやすく効率よく利用できます。魚介類は造血作用があるビタミンB2、B6、B12、銅を多く含みます。
鉄は水溶性のため、蒸すか焼く、汁ごと食べる調理法がおすすめです。
おすすめのメニューは、まぐろのカルパッチョやあさりとキャベツの酒蒸しなどです。
コンビニやスーパーで揃えられるおすすめの組み合わせ:
赤飯・あさりの味噌汁・いわしの梅煮・ほうれん草のお浸し
鉄を多く含む魚介類ランキング
食品名 | 100g含有量(mg) | 1回使用量 | |
---|---|---|---|
目安量 | 含有量(mg) | ||
かつお | 1.9 | 1切れ(100g) | 1.9 |
まぐろ脂身 | 1.6 | 1切れ(100g) | 1.6 |
ぶり | 1.3 | 1切れ(100g) | 1.3 |
まいわし | 2.1 | 1尾(60g) | 1.3 |
わかさぎ | 0.8 | 2尾(50g) | 0.4 |
あさり水煮缶 | 27.7 | 25g | 7.4 |
生かき | 2.1 | むき身4個(50g) | 1.1 |
乳製品
乳製品のたんぱく質は動物性たんぱく質です。鉄の吸収を高める働きがあり、赤血球の材料になります。牛乳に含まれるカゼインというたんぱく質はミネラルと結び付きやすいため鉄の吸収率が高まります。
牛乳やヨーグルトやチーズは造血作用があるビタミンB2、B12、葉酸が豊富です。非ヘム鉄を含むため、ビタミンCを多く含む食品と一緒に摂取すると鉄の吸収率が上がります。
おすすめのメニューはあさりのクラムチャウダーやほうれん草のグラタンなどです。
コンビニやスーパーで揃えられるおすすめの組み合わせ:
卵とツナのサンドイッチ・棒々鶏サラダ・牛乳・カットフルーツ
肉類
肉類のたんぱく質は動物性たんぱく質です。鉄の吸収を高める働きがあり、赤血球の材料になります。肉類はヘム鉄を多く含み、造血作用のあるビタミンB2、B12、銅、葉酸が豊富です。鶏レバー・豚レバー・牛レバーには鉄・ビタミンB2、B12、銅、葉酸が多く含まれています。
おすすめのメニューは牛肉とアスパラガスのソテー・レバニラなどです。
コンビニやスーパーで揃えられるおすすめの組み合わせ:
枝豆おにぎり・砂肝焼き・小松菜のゴマ和え・ヨーグルト
鉄を多く含む肉類ランキング
食品名 | 100g含有量(mg) | 1回使用量 | |
---|---|---|---|
目安量 | 含有量(mg) | ||
豚レバー | 13.0 | 50g | 6.5 |
鶏レバー | 9.0 | 50g | 4.5 |
豚レバー | 13.0 | 50g | 6.5 |
牛レバー | 4.0 | 50g | 2.0 |
和牛もも肉 | 2.8 | 80g | 2.2 |
輸入牛ヒレ肉 | 2.8 | 80g | 2.2 |
牛肩ロース(赤肉) | 2.4 | 80g | 1.9 |
大豆製品
大豆製品は良質なたんぱく質を含み、鉄の吸収を助ける働きがあります。非ヘム鉄や造血作用のあるビタミンB2、B6、B12、銅が豊富です。
納豆は鉄・ビタミンB2、B6、葉酸を多く含みます。
おすすめのメニューはオクラと納豆の和え物やがんもどきとほうれん草の含め煮などです。
コンビニで揃えられるおすすめの組み合わせ:
納豆巻き・焼き魚・切り干し大根とひじきの煮物・酢の物
卵
卵のたんぱく質は動物性たんぱく質で、鉄の吸収を高める働きがあり、赤血球の材料になります。非ヘム鉄や造血作用のあるビタミンB2、B12、葉酸が豊富です。
おすすめのメニューはほうれん草の卵炒めやひじきと挽き肉の卵焼きなどです。
コンビニで揃えられるおすすめの組み合わせ:
ゆで卵・鮏おにぎり・ほうれん草の白和え・豚汁
健康診断・血液検査で「ヘモグロビンが低い」と診断された場合に気をつけたい病気・疾患
ここではMedical DOC監修医が、「ヘモグロビンが低い」に関する病気を紹介します。
どのような病気や症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。
鉄欠乏性貧血
鉄欠乏性貧血とは体内の鉄の需要の増大・供給量の減少により鉄が欠乏して起こる貧血で、多くが鉄欠乏性貧血です。体内の鉄が不足し、赤血球の骨髄中でのヘモグロビンの合成が低下するために起こります。原因は食事からの鉄分や栄養素の摂取不足による、供給量不足や吸収の低下であることが多いです。
慢性の出血が原因で生じることもあります。慢性の出血の原因は女性では月経が最も多く、男性や閉経後の女性では消化管からの出血を疑います。妊娠中や授乳中の女性や運動選手・成長期の貧血は、筋肉量の増大のため鉄の需要が増大し、鉄が不足することが原因です。吸収障害でも鉄が不足します。また、胃を切除した後は胃酸の分泌が減少し、鉄の吸収が低下するため、体内に取り込まれる鉄が減少するため注意しましょう。
症状は慢性的にゆっくり進行することが多く、気が付かないことも多いです。貧血が進行すると、酸素不足による疲労・脱力感・蒼白・息切れなどが起こります。スプーン爪、嚥下困難、異食症などの症状が現れることもあります。
予防は、普段の食生活を見直しましょう。原因疾患の治療も重要です。体の代謝によっても毎日鉄は損失します。男性は約1.0mg、女性は約0.8mg、月経中はさらに0.5mg損失しています。
治療は食生活の改善をします。1日3食、主食・主菜・副菜をそろえた食事をし、鉄分・動物性たんぱく質・ビタミンなど鉄の吸収や造血作用のある栄養素を摂りましょう。日本人の食事摂取基準(2020版)では、鉄の1日の推奨量は男性7.5mg、月経のある女性10.5mg、月経のない女性6.5mgです。
食事の改善で効果が不十分な場合や、慢性的な出血がある場合は鉄剤を使用します。
通常治療は、内服薬を使用します。しかし、副作用に吐き気・胃痛・下痢など胃腸障害がでる・症状がつらい場合や鉄の吸収障害がある場合には注射を使う事もあります。貯蔵鉄を補充するため、貧血改善後も3~4ヶ月は継続投与が必要です。
健康診断などでヘモグロビン値が低いと指摘されたら、早めに一般内科を受診しましょう。
「ヘモグロビンを増やす食べ物」についてよくある質問
ここまでヘモグロビンを増やす食べ物について紹介しました。ここでは「ヘモグロビンを増やす食べ物」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
ヘモグロビンの量を増やす方法を教えてください。
伊藤 陽子(医師)
原因により異なりますが、貧血の原因として一番多いものは、鉄欠乏性貧血です。この場合には、鉄分が豊富に含まれる動物性タンパク質がお勧めです。今までの解説のお勧めの食材を参考にして、試してみてください。
鉄分不足でヘモグロビンを増やすのに即効性のある飲み物はありますか?
伊藤 陽子(医師)
飲み物や食べ物は薬と違い即効性はあまり期待できませんが、ココア、豆乳、アサイージュース、プルーンジュースには鉄分が豊富に含まれています。鉄の吸収や造血に必要な栄養素も含まれます。鉄分が強化された牛乳・のむヨーグルト・果汁ジュース・野菜ジュースなどもスーパーやコンビニで手に入れやすいでしょう。エネルギーや糖質を含むため、摂りすぎは糖尿病の発症や肥満のリスクがあります。基本的には3食で鉄分補給をし、飲み物からの鉄分補給は補助として考えましょう。
バナナはヘモグロビンを増やして貧血予防になる食べ物なのでしょうか?
伊藤 陽子(医師)
バナナ1本(100g)には鉄分が約0.3mg含まれています。野菜で鉄分の多い小松菜は100g中、鉄分が2.8mg含まれていることと比較すると、決して鉄分が豊富な食材ではありません。しかし、バナナには鉄分以外に亜鉛、銅、葉酸、ビタミンB2、B6など造血作用のある栄養素が少量づつではありますがバランスよく含まれています。このため、鉄分豊富な食材と一緒にバナナを食べることは、貧血の予防効果があると考えられます。
まとめ ヘモグロビンを増やす食べ物を知って貧血を予防しよう
ヘモグロビンは鉄分の不足や、ダイエットなど偏った食生活が原因で低くなることがあります。ヘモグロビン値が低いと貧血と診断され、食事と関連が深い鉄欠乏性貧血の場合が多いです。鉄は生理的代謝で毎日損失されるため、食事から補わないと不足してしまいます。
貧血予防のために、1日3食の中でたんぱく質や鉄分や鉄の吸収を高めるビタミンや、造血作用のある栄養素をバランスよく食べ、貧血を予防しましょう。
「ヘモグロビン」の異常で考えられる病気
「ヘモグロビン」から医師が考えられる病気は7個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
消化器系の病気
- 胃・十二指腸潰瘍
- 胃がん
- 大腸がん
呼吸器系の病気
- 肺疾患
腎臓系の病気
- 腎臓病
ヘモグロビンは基準値より高くても、低くても異常値となります。詳しく検査をすることで、原因となる疾患がわかり効果的な治療ができます。放っておくと重症化する危険もあるため、異常値を指摘されたら早めに医療機関を受診しましょう。