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「多血症(赤血球増加症)」とは?症状・原因・治療法についても解説!

 更新日:2023/03/27
「多血症(赤血球増加症)」とは?症状・原因・治療法についても解説!

健康診断で赤血球数の増加により可能性を指摘される「多血症(赤血球増加症)」は、初期の段階では自覚症状がなく、進行することでさまざまな症状が現れます。特に二次性多血症は働きざかりに起こりやすい病気としても知られており、適切な治療が必要です。
今回は、多血症の特徴や症状、原因、治療方法、受診科目などを紹介します。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

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大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

多血症(赤血球増加症)とは

多血症とはどのような病気ですか?

多血症は医学名を「赤血球増加症」「赤血球増多症」といいます。血液中の赤血球やヘモグロビンの量が、基準値よりも多くなる病気です。診断基準は体重1kgあたりの赤血球量が男性は36ml以上、女性は32ml以上です。

赤血球とヘモグロビンは体の中でどのような働きをしているのですか?

血液は、全身に栄養や酸素を運んだり、侵入してきたウイルスや菌から防衛したりする役割を担っています。その血液の主成分は骨髄から作られる赤血球・白血球・血小板で、血液成分の約45%を占めています。
赤血球の主成分はヘモグロビンです。赤血球内のヘモグロビンに酸素がくっつき、それを赤血球が運びます。そのためヘモグロビンが不足すると、酸素が十分に運ばれません。このヘモグロビンが不足する状態が貧血です。

反対に、赤血球とヘモグロビンが増加するのが多血症です。

多血症(赤血球増加症)の症状

多血症(赤血球増加症)の症状

多血症になるとどのような症状が現れますか?

多血症は初期の段階では無症状の場合が多いため、症状が出てから受診して発見されるというより、大半は健康診断などで発見されます。
しかし、病気が進行して赤血球数が大きく増加すると、皮膚が赤くなる、かゆくなる、目の充血、高血圧などの症状が現れます。皮膚の赤みは特に顔に現れやすいようです。
さらに赤血球の増加により血流が悪くなるため、頭痛や視力障害、めまいや耳鳴りなどの症状が現れます。血栓ができて脳梗塞や心筋梗塞を引き起こすこともあるので、注意が必要です。脾臓の腫れや痛風などが見られることもあります。

多血症(赤血球増加症)の原因

多血症の原因は何ですか?

多血症は原因によって2つに分類されます。
一つは骨髄で血球を作る造血幹細胞に異常が起こる骨髄増殖性腫瘍により、赤血球が増える「真性多血症」です。
もう一つは高地滞在や心臓疾患、肺疾患や喫煙などが原因で、造血ホルモンである血中エリスロポエチンの濃度が高くなって赤血球が増える「二次性多血症」です。

真性多血症

真性多血症はどのようにして起こるのですか?

真性多血症の原因はわかっていませんが、ヤヌスキナーゼ2(JAK2)と呼ばれる遺伝子の突然変異が、95%以上の患者に見られます。これにより、赤血球・白血球・血小板の産生が過剰になってしまいます。

二次性多血症

二次性多血症はどのようにして起こるのですか?

二次性多血症は病気や酸素欠乏によって、造血ホルモンであるエリスロポエチンの分泌が増加することで起こります。
心疾患や肺疾患、脳・肝臓・副腎の腫瘍、肝硬変などの病気がエリスロポエチンの分泌を増加させる可能性があります。
また、喫煙や一酸化炭素中毒、高地滞在などによる酸素欠乏も、エリスロポエチンの分泌を増加させる原因です。

多血症(赤血球増加症)の受診科目

健康診断で多血症の可能性を指摘されたら何科を受診すればよいですか?

内科や血液内科を受診して詳しい検査を受けてください。その後、医師の指示に従って治療を行いましょう。

多血症(赤血球増加症)の検査

多血症ではどのような検査を行いますか?

まず血液検査を行い、赤血球数が高いことを確認します。真性多血症であればヘモグロビン量とヘマトクリット値(血液中の赤血球の割合)が高くなり、二次性多血症であればエリスロポエチン濃度が高くなります。
真性多血症が疑われる場合は、ヤヌスキナーゼ2の突然変異がないか遺伝子検査を行う場合もあります。また二次性多血症が疑われる場合は、エリスロポエチン濃度増加の原因となる疾患が他にないか、さまざまな検査が行われます。

多血症(赤血球増加症)の性差・年齢差

多血症に性差や年齢差はありますか?

真性多血症は、10万人中およそ2人が発症します。診断時の平均年齢は60歳です。性差はわずかですが、男性のほうが女性より多く見られます。
二次性多血症は心疾患や肺疾患、脳・肝臓・副腎の腫瘍、肝硬変など、エリスロポエチン増加の原因となる疾患を持つ人に多い傾向があります。そのため、喫煙などの習慣のある人や肥満気味の人に多いと考えられます。

多血症(赤血球増加症)の治療方法

多血症(赤血球増加症)の治療方法

多血症ではどのような治療を行いますか?

多血症の治療は、真性多血症か二次性多血症かによって違います。真性多血症の場合は赤血球を減らすために「瀉血(しゃけつ)」と「薬物療法」が用いられます。
しかし真性多血症は、原因の多くが遺伝子の突然変異であるため治癒できません。それでも治療を続けることで、数十年延命できる可能性があります。一方で、急性白血病を患うリスクもありますので注意が必要です。
二次性多血症では、エリスロポエチン増加の原因を取り除く治療を行います。

真性多血症の治療

瀉血とはどのような方法ですか?

瀉血は、献血のように血液を抜き取り赤血球の数を減らす方法です。300~400ml(最大500ml)の血液を1日おきに抜き取り、ヘマトクリット値を正常に戻します。平常値に戻ったら、数週間から数カ月おきに瀉血を行い、ヘマトクリット値を維持します。

薬物療法とはどのような方法ですか?

薬物療法は赤血球や血小板を減らす薬、症状を抑える薬などを必要に応じて使用します。瀉血後も症状が続く場合、赤血球と血小板の産生を抑える薬を使います。インターフェロンアルファ-2b、ヒドロキシカルバミドや、ヤヌスキナーゼ2の活性を抑えるルキソリチニブなどです。
70歳以上の高齢者や血栓による症状がある人、頻回の瀉血が必要な人は、抗腫瘍薬のハイドレキシウレアで赤血球を減らすこともあります。

二次性多血症の治療

二次性多血症では、どのような治療を行いますか?

二次性多血症の治療では、エリスロポエチン増加の原因を取り除くことが重要です。喫煙者は酸素欠乏を防ぐために、禁煙を行います。腫瘍が原因となってなっている場合は、腫瘍を除去する手術が必要です。その他の原因となる疾患も治療しなければなりません。
まれに瀉血を行って、赤血球数を減らすこともあります。

編集部まとめ

多血症は医学名を「赤血球増加症」「赤血球増多症」といい、血液中の赤血球やヘモグロビンの量が、基準値よりも多くなる病気です。多血症は原因によって真性多血症と二次性多血症の2つに分類されます。

多血症は初期の段階ではほぼ無症状です。しかし、病気が進行して赤血球数が大きく増加すると、皮膚が赤くなる、かゆくなる、目の充血、高血圧などの症状が現れます。血栓ができて脳梗塞や心筋梗塞を引き起こすこともあるので、注意が必要です。

受診すると、血液検査や原因を特定するための検査を行い、瀉血、薬物療法、原因を取り除く治療が行われます。多血症と診断された場合は医師の指示に従い、赤血球量をコントロールする治療を継続しましょう。

この記事の監修医師